ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと30,120秒 :2008/01/10(木) 21:47:28.44 ID:CiKpMNOe0
第二部 第十四話『狂熱果てる時! 宇宙大魔王VS正義のヒーロー!!』

〜前回までのあらすじ〜

12月某日、某会社での出来事

('A`)「おつかれーっす。 今日はもう帰りまーす」

( ゚∀゚)「ところがどっこい帰れません。
     今年度中の決済に計算の合わないところがあるんで年が明ける前までにその修正ね。
     あと他の備え付け簿冊の手入れと、来年度用の書類綴じの準備もあるから。
     ついでに来年になったらさっそく新年一発目の企画書も出してね。
     勿論、草案なんかじゃなくてきっちり仕上げたの。
     それらが全部終わるまで休みは無いんでヨロシコ」

('A`)「嫌でちゅー。
   僕は定時に帰って年末休み、正月休みもしっかり取るんでちゅー。
   そんでエロゲやってコミケ行って現行小説も書くんでちゅー」



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと29,583秒 :2008/01/10(木) 21:48:36.04 ID:CiKpMNOe0
(#゚∀゚)「あ? お前明日から自分の席が無くなっててもいいってことか?」

('A`)「うるせーこれでも喰らえ。 ぺっぺ」

(#゚∀゚)「てめえくるァそこに直れこの給料泥棒が。
     その腐った性根叩きなおしてやる」

('A`)「うっせ、この社畜が。 過労死しろ」

(#゚∀゚)「殺す! 社会的に殺す! いやボーナスカットだ!」

(;'A`)「すいません勘弁して下さいごめんなさい」
              


                この話はフィクションです多分



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:31:02.74 ID:OvlBNkTJ0


                *以下、何事も無かったかのように再開*


( ФωФ)「…………」
とある星の、とある国の古城――
その中庭で、ロマネスクは何をするでもなく暇を持て余していた。

この城は、数ヶ月前この星に来た際に元の城主から奪い取ったものだ。

宇宙を支配する為の旅を続ける途中、
気紛れに立ち寄ってみた星なのだが――

その城下町を最初に見た時、
ロマネスクはその余りの惨状に閉口したものだった。

田畑は荒れ果て、用水路は濁り、
街には病が蔓延し、役人の不正が横行していた。
民草は、疲弊し切っていた。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:31:23.28 ID:OvlBNkTJ0
だが、領主はそんな状況を改善しようとするどころか、
逆に理不尽なまでの重税を民に課し、
より一層民衆を苦しめていたのだ。

下種め。
ロマネスクはそう感じずにはいられなかった。

圧倒的な暴力で人々を支配する。
それはいい。
強者が弱者を支配するのは世の理だ。

だが、私利私欲の為だけに、
何の理念理想も無く、何の考えも無く人々を治めるなど、
支配者の器ではない。

無目的に民衆から税を搾り取ったところで、
結局はそれがもとで国力が弱まって自滅していくのが関の山。

より効率的に民衆から搾取する為には、
支配者が率先して治安を整え、生活の下地を創ってやる必要があるのだ。

それをしない支配者に、
支配者となる資格等ない。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:31:49.27 ID:OvlBNkTJ0
何より――
ロマネスクが気に入らなかったことは、
圧制に逆らう民衆の処刑の方法だった。

領主に逆らった者はギロチン刑。
それがこの国の法律であり、その刑の執行は処刑人が行っていたのだったが、
ロマネスクにはそれが許せなかった。

自分に歯向かう者を処刑するのも支配者の務めではあるが――
それは、支配者自らの手によって行われるべきなのだ。

それを人任せに、しかも反逆者の反逆の理由すら聞く事なく処刑するなど――
下種な行いにも程があった。

そして、そんな輩をロマネスクが見逃しておく筈もなかった。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:32:16.45 ID:OvlBNkTJ0
ロマネスクは手始めに領主とその奸臣をまとめて一掃すると、
自分が新たに支配者へと成り代わった。

そしてまずは蔓延していた病の治療薬を調合して城下に配布し、
堕落し切っていた官憲の体制を改め、
荒廃していた土地と河川の復元に努めた。

そんな甲斐もあって――
この数ヶ月で、城下町には以前までには考えられない程の活気が戻っていた。

当然、仮にも一国の領主を排除して新たな領主となるなどといった蛮行を、
他の国が許す筈もなく、ロマネスクの国には幾度と無く討伐の為の兵が送られてきた。
無論、ロマネスクは残らずそれを返り討ちにしてきたのだが。

民衆からは、そんなロマネスクを褒め称える声で持ちきりだったが――
ロマネスクにはそれが不満だった。

ロマネスクが目指すのは、
あくまで人々を恐怖のどん底に陥れる為の悪の大魔王であり、
人々から感謝される魔王など様にならないのにも程がある。

まあいい。
今のうちに精々勘違いして、束の間の平和を味わっているがいい。
時が来れば、復興した街を完膚無きまでに蹂躙し尽くして、
絶望の谷底へと叩き落してやる。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:32:34.80 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「…………?」
と、城の入り口の方から扉が打ち破られる音が聞こえてきた。
恐らく、何者かが城に攻め入って来たのだろう。

またか。
ロマネスクは辟易する。
あれだけ何回も叩きのめしてきたというのに、
また倒される為にやって来るとは、学習能力が無いにも程がある。

( ФωФ)「?」
こちらに近付いて来る足音の数に、ロマネスクは首を傾げた。

足音は、たった一つ。

馬鹿な。
何百何千の兵を動員してもこの自分を倒せなかったことは、
分かっている筈だ。
それを、たった一人で攻め込んでくるだと?

暗殺か?
いや、ならば足音を隠そうともしないのは不自然だ。
そして、この自信に満ちた足音。
まさか、本当に一人でこの自分を倒そうと――



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:33:54.23 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「――――!?」
ロマネスクの皮膚に、針で刺されるような戦慄が襲い掛かった。

これは――
この感覚は何だ!?

それは、ロマネスクにとって初めての感覚だった。
心臓を鷲掴みにされたような、
全身の体温が一気に冷やされるようなこの感覚。

これは――これは、まさか恐怖だとでもいうのか?

そんな筈はない。
これまでどんな相手だって真正面から闘って打ち倒してきた。
どんな大軍とだって、たった一人で闘い、滅ぼしてきたのだ。

それが――
たった一人の、まだ姿すら見ていない相手に対して、
敗北の恐怖を感じてしまっているだと!?



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:34:24.65 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「!!!!!!!!」
次の瞬間、中庭の出入り口の扉が音を立てて粉砕した。

その奥から、一つの影が姿を現す。
炎の様に、血の様に、どこまでも真っ赤な、その姿。

ノパ听)「よお」
真紅の女が、片手を挙げてロマネスクに声をかける。

( ФωФ)「……何者だ」
内心の動揺を隠しながら、ロマネスクが訊ねた。

これが――こいつが、先程感じた恐怖の正体だというのか?
どこにでもいるような、この女が?

ノパ听)「お前をぶっ倒しに来た刺客だよ。
     って言っても、アタシは弱い者虐めする趣味はねーからな。
     逃げるんなら、今の内だぜ?」
ロマネスクと刺客との距離、およそ20メートル。
その距離を一歩一歩、ゆっくりと狭めながら女は言った。

( ФωФ)「逃げる、だと――?」
この自分が、弱者だというのか。
逃げるとでもいうのか。

先程感じたプレッシャーで、萎縮しかけていたロマネスクの魂が、
再び熱く燃え上がる。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:34:53.17 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「……はん。 どうやらやる気満々みたいだな。
     ま、こっちも穏便に話が片付くとは思ってなかったけどな」
10メートルの距離の所で、女は足を止めた。

ノパ听)「しっかし、驚いたよ。
     魔王に侵略された国っていうから、どんな地獄になってるのかと思ったら、
     前とは比べ物にならないぐらい立派な所になってるじゃんか」
( ФωФ)「勘違いするな。 別に善意でも何でもない。
       我輩はいずれこの星の全てを支配する。
       その第一歩となる所がみすぼらしくては、我輩の威信に関わってしまうからな。
       それだけだ」
そう、断じて人々の為などではない。
自分の為。
それだけだ。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:35:57.91 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「ま、そういうことにしといてやるよ。
     んじゃ、そろそろおっぱじめるか」
女が少し腰を落とし、構えを取る。

ロマネスクはそれを制するように左手を前に出して、
( ФωФ)「待て。 貴様――名は何という?」
そう訊ねた。

自分でも、何でこんなことを聞いたのかは分からない。
ただ、無性に名前を知っておきたかったのだ。

ノパ听)「アタシは――
     いや、やっぱ後にしとこう」
名前を言いかけて、女は止めた。

ノパ听)「30分後に、お前がまだくたばってなかったら教えてやるよ!!」
( ФωФ)「笑えない――冗談だ!!」
黒衣の魔王と、紅蓮の勇者の影が、
弾けるように飛び立ち、激突した。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:36:53.21 ID:OvlBNkTJ0

                 ・

                 ・

                 ・

ノパ听)「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ!!」
( ФωФ)「ぐッ……!」
両手を合わせた手四つの体勢のまま、ロマネスクは動けずにいた。
いや、動かせなかった。

全身の筋力を総動員して素直ヒートを押し返そうとしているのだが、
素直ヒートの体はビクともしない。
どころか、少し気を抜いただけでそのまま押し潰されてしまいそうな位、
自分は追い詰められている。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:38:40.87 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「アハハハハハハハハ!!」
( ФωФ)「…………ッ!」
素直ヒートの手に、更なる力が込められる。

常識外れの握力がロマネスクの手を締め付け、
手の骨がメキメキと今にも砕けそうな音を立てて軋んだ。

( ФωФ)「!!?」
と、ロマネスクの両足が突然地面を離れた。
素直ヒートが、ロマネスクの手を握ったままその体を持ち上げたのだ。

ノパ听)「ハアァッ!!」
力任せに、素直ヒートがロマネスクの体を投げ飛ばす。

( ФωФ)「ぐあッ!!」
矢の様な速さでロマネスクの体が宙を舞い、
そのまま地面に叩きつけられた。
思わず、ロマネスクの口から呻き声が漏れる。

ノパ听)「どうした、ロマネスク? そんなもんか?」
放り投げたロマネスクに近付きながら、素直ヒートは言った。

ノパ听)「それとも、尻尾巻いて逃げるかい?
     それならそれで構わないぜ。
     アタシも弱い者虐めをする趣味はねーからな。
     逃げるんなら、今の内だぜ?」
10メートル程距離を開けた所で、素直ヒートは立ち止まった。
まるで、あの日のことを再現するかのように。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:39:09.97 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「黙れ……!
       偽者如きが、あの女の真似をするな……!」
拳を固め、ロマネスクが立ち上がる。

負ける訳にはいかない。
自分は、こんな奴に、あの女の偽者なんかに、
負ける訳にはいかないのだ……!

ノパ听)「ああそう。 折角見逃してやるっつってんのにな。
     ま、しょうがないか。
     じゃあ――」
素直ヒートが腰を落とし、
ノパ听)「さっさとおっ死ねよ!!!」
( ФωФ)「ほざくな、偽者が!!!」
黒衣の魔王と、紅蓮の勇者の影が、
弾けるように飛び立ち、激突した。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:39:31.06 ID:OvlBNkTJ0





最初に重い衝撃がロマネスクの顔面を襲った。                  最初に重い衝撃がロマネスクの顔面を襲った。
素直ヒートの右拳が一直線にロマネスクの右頬を捉え、             女の右拳が一直線にロマネスクの右頬を捉え、
その威力にロマネスクの頬が大きく歪む。                     その威力にロマネスクの頬が大きく歪む。

( ФωФ)「ぐうッ!!」                                ( ФωФ)「ぐうッ!!」
崩れそうになる膝を無理矢理支え、                         崩れそうになる膝を無理矢理支え、
ロマネスクが倒れまいと踏ん張る。                         ロマネスクが倒れまいと踏ん張る。

ノパ听)「らああ!!」                                  ノパ听)「らああ!!」
続けて、素直ヒートの爪先がロマネスクの顎にめり込んだ。          続けて、女の爪先がロマネスクの顎にめり込んだ。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:40:28.03 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「がふッ!」                                 ( ФωФ)「がふッ!」
ロマネスクの顔が跳ね上がり、上空を仰ぐ。                    ロマネスクの顔が跳ね上がり、上空を仰ぐ。
そのダメージを感じる暇も無いうちに、                        そのダメージを感じる暇も無いうちに、
右脇腹への素直ヒートの左フック。                          右脇腹への女の左フック。

肝臓を突き抜けるような衝撃に、                           肝臓を突き抜けるような衝撃に、
思わずロマネスクが身を屈める。                           思わずロマネスクが身を屈める。

ノパ听)「どうしたどうした!!」                             ノパ听)「どうしたどうした!!」
頭を屈めたところに、                                  頭を屈めたところに、
頭上から素直ヒートの踵が唸りを上げて降りかかる。              頭上から女の踵が唸りを上げて降りかかる。

( ФωФ)「がッ!!」                                 ( ФωФ)「がッ!!」
踵が正確に頭頂部を捉え、                              踵が正確に頭頂部を捉え、
ロマネスクが顔面から地面に突っ伏した。                     ロマネスクが顔面から地面に突っ伏した。

何だ、これは。                                      馬鹿な。
まさか――これはまさか。                               何だこの女の出鱈目な強さは。
今までの攻撃、これは――                              この自分が――ここまでいい様にやられるだと!?



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:40:50.55 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「シィィィィッ!!」                                ノパ听)「シィィィィッ!!」
ロマネスクの頭を踏み潰そうと、                            ロマネスクの頭を踏み潰そうと、
素直ヒートが足を振り下ろしてくるのを、                       女が足を振り下ろしてくるのを、                    
倒れた姿勢から横転して直前でかわす。                      倒れた姿勢から横転して直前でかわす。

ノパ听)「じゃッ!!」                                   ノパ听)「じゃッ!!」
ロマネスクが地面を転がりながら起き上がろうとしたところに、         ロマネスクが地面を転がりながら起き上がろうとしたところに、
狙いすましていたかのような素直ヒートの追撃が命中した。           狙いすましていたかのような女の追撃が命中した。

( ФωФ)「がはァッ!!」                               ( ФωФ)「がはァッ!!」
起き上がる最中、無防備になっていた喉元への手刀。              起き上がる最中、無防備になっていた喉元への手刀。
喉を突き破られるような一撃を受け、                        喉を突き破られるような一撃を受け、
ロマネスクは血を吐きながら再び地面を転がる。                 ロマネスクは血を吐きながら再び地面を転がる。

この攻撃、間違いない。                                糞、何ということだ。
これは、あの時と、全く同じ流れの攻撃だ。                    完全に、油断し切っていた。
となれば次は――                                   これ程の手練れが、このような辺鄙な星に潜んでいようとは……!



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:41:13.27 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「うおおおお!!」                               ノパ听)「うおおおお!!」
鳩尾への前蹴り。                                   鳩尾への前蹴り。

インパクトの瞬間、腹筋に力を込めることで筋肉を硬直させ、         インパクトの瞬間、腹筋に力を込めることで筋肉を硬直させ、
蹴りによるダメージを最小限にまで抑える。                    蹴りによるダメージを最小限にまで抑える。

( ФωФ)「ぐふッ!」                                 ( ФωФ)「ぐふッ!」
が、それでもその一撃は痛烈だった。                       ロマネスクは驚きを隠せなかった。
深く突き刺さった足先が、内臓に深刻なダメージを蓄積させる。       ダメージを抑えて、この威力、だと……!?

( ФωФ)「ぬうぅッ!」                                ( ФωФ)「ぬうぅッ!」
しかし、ロマネスクは胃から内容物が逆流しそうになるのを          だが、ここで怯む訳にはいかない。
根性だけで押さえ込み、反撃に転じる。                      自分は、宇宙大魔王なのだ。

小細工無しの、真正面からの右ストレート。                    小細工無しの、真正面からの右ストレート。
いかなる防御でも打ち抜くパンチ。                         いかなる防御でも打ち抜くパンチ。

タイミング、体重移動、インパクトの角度。                     いける。
どれを取っても申し分の無い、必殺の一撃。                   ロマネスクがそう確信する程の、会心の一撃だった。
その一撃が――                                    その一撃が――



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:41:34.21 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「ぬるいんだよ」                                 ノパ听)「ぬるいんだよ」
あの時のように、その一撃はいとも簡単に片手で受け止められた。     その一撃が、いとも簡単に片手で受け止められた。

( ФωФ)「くゥッ!!」                                ( ФωФ)「くゥッ!!」
ロマネスクが自由な方の左手で、                          ロマネスクが自由な方の左手で、
素直ヒートの顔面にパンチを打ち込もうとする。                  女の顔面にパンチを打ち込もうとする。

が――                                           が――

ノパ听)「うるあァ!!」                                  ノパ听)「うるあァ!!」
パンチが命中するより先に、                              パンチが命中するより先に、
素直ヒートの頭突きがロマネスクの顔面にめり込んだ。             女の頭突きがロマネスクの顔面にめり込んだ。

( ФωФ)「がッ……!」                                ( ФωФ)「がッ……!」
出鼻を挫かれ、ロマネスクがたたらを踏みながら後退する。           出鼻を挫かれ、ロマネスクがたたらを踏みながら後退する。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:42:08.54 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「らあァッ!!」                                  ノパ听)「らあァッ!!」
そこへ、素直ヒートの後ろ回し蹴りが飛んでくる。                  そこへ、女の後ろ回し蹴りが飛んでくる。

( ФωФ)「ぐあッ!!」                                 ( ФωФ)「ぐあッ!!」
完璧なタイミングで放たれたそれは、                         完璧なタイミングで放たれたそれは、
吸い込まれるようにロマネスクの胴体へと突き刺さった。             吸い込まれるようにロマネスクの胴体へと突き刺さった。

まともにその蹴りを喰らったロマネスクは、                      まともにその蹴りを喰らったロマネスクは、
ひとたまりもなく後方へと吹き飛ばされる。                      ひとたまりもなく後方へと吹き飛ばされる。

おのれ。                                           馬鹿な。
何故だ。                                           この自分が、圧倒されている!?
何故、超えられない。                                   年端もいかぬ、こんな小娘一人に!?

全てあの時と同じ。                                    認めない。
あの時とおなじ攻撃なのに、                               断じて、このようなことがあってはならない。
次に何が来るかなんて、                                 いずれこの全宇宙を支配するこの自分が、
思い出す必要すら無いというのに、                          宇宙大魔王である、この杉浦ロマネスクが――
何故、何ら為す術も無く打ちのめされるのだ……!                こんな所で敗れるなど、あってはならないのだ……!



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:42:46.57 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「どうだ、懐かしいだろ。 なあ、ロマネスク?」               ノパ听)「どうした。 こんなもんで終わりか?」
倒れたロマネスクを嘲るように見やり、素直ヒートは言った。           倒れたロマネスクを見やり、女は言った。

( ФωФ)「貴様……!」                                ( ФωФ)「貴様……!」
やっぱりだ。                                         どういうわけだ。
こいつは、意図的に以前と同じ攻撃を仕掛けてきている。             自分の攻撃が、かすりもしない。
それも、寸分違わず。                                   いや、当たるとすら思えない。

以前こいつは言っていた。                                 初めての経験だった。
偽者ということ以外は、身体能力も記憶も全て同じ、と。               この自分が、手も足も出ないなんて。
まさか、それがここまでのものだったとは。                       敗北を――予感するなんて。

だが――                                            だが――

( ФωФ)「この程度で、勝ったつもりか!!」                     ( ФωФ)「このまま負けるなど、認められるものか!!」
倒れた姿勢から背筋の力だけで飛び上がって、                    倒れた姿勢から背筋の力だけで飛び上がって、
素直ヒートに向かって突撃した。                              女に向かって突撃した。

( ФωФ)「うおおおおおおおお!!」                          ( ФωФ)「うおおおおおおおお!!」
突進からの、右ストレート。                                 突進からの、右ストレート。

ノパ听)「当たるか!」                                     ノパ听)「当たるか!」
左腕一本で、そのパンチを捌かれる。                          左腕一本で、そのパンチを捌かれる。

だがそれでいい。                                       だがそれでいい。
そこまでは想定の範囲内。                                 そこまでは想定の範囲内。
本命は、そこからの――                                  本命は、そこからの――



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:43:33.72 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「左脚でのミドルキック、だろ?」                         ノパ听)「左脚でのミドルキック、だろ?」
( ФωФ)「――――!」                                  ( ФωФ)「――――!」
読まれていた。                                        読まれていた!?
いや、読まれない筈がないのだ。                             まさか、こいつ、この短時間で。

何故ならこれも、あの時と同じ――                            この自分の攻撃パターンを――

( ФωФ)「くッ!!」                                     ( ФωФ)「くッ!!」
動作を緊急停止させようにも、もう遅かった。                       動作を緊急停止させようにも、もう遅かった。
既に攻撃は形になってしまっており、                           既に攻撃は形になってしまっており、
当たらないと分かっていながらも蹴りを放つしかない。                 当たらないと分かっていながらも蹴りを放つしかない。

ノパ听)「りゃあッ!!」                                     ノパ听)「りゃあッ!!」
素直ヒートが蹴りを肘で受け、                                女が蹴りを肘で受け、
即座にロマネスクの軸足を蹴り払う。                            即座にロマネスクの軸足を蹴り払う。

( ФωФ)「!!!!!」                                   ( ФωФ)「!!!!!」
支えとなる足を失い、ロマネスクの体が一瞬宙に浮く。                 支えとなる足を失い、ロマネスクの体が一瞬宙に浮く。
その顔面に――                                         その顔面に――



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:46:24.39 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「うおおおおおおおおおおおらあああああッ!!!」               ノパ听)「うおおおおおおおおおおおらあああああッ!!!」
顔面に、素直ヒートの蹴りが、めり込んだ。                         顔面に、女の蹴りが、めり込んだ。

( ФωФ)「がはあァッ!!」                                 ( ФωФ)「がはあァッ!!」
顔面をサッカーボールのように蹴り飛ばされ、                       顔面をサッカーボールのように蹴り飛ばされ、
勢い良く地面を転がりながらロマネスクが吹き飛ぶ。                  勢い良く地面を転がりながらロマネスクが吹き飛ぶ。

その一撃が決定打だった。                                  その一撃が決定打だった。
何十メートルも蹴り飛ばされたところで、                          何十メートルも蹴り飛ばされたところで、
ようやくロマネスクの体が動きを止める。                          ようやくロマネスクの体が動きを止める。

( ФωФ)「…………」                                     ( ФωФ)「…………」
今まで素直ヒートから受けた傷は、                             今まで女から受けた傷は、
戦闘不能に陥るのに充分過ぎる程のダメージだった。                  戦闘不能に陥るのに充分過ぎる程のダメージだった。

( ФωФ)「…………!」                                   ( ФωФ)「…………」
満身創痍の体に、先程の致命的な一撃。                          満身創痍の体に、先程の致命的な一撃。
それでも、ロマネスクは立ち上がるのだった。                       そのまま、ロマネスクは起き上がれなかった。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:48:05.63 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「ぐッ……!」
ロマネスクは、立ち上がっていた。

もう体のどこにも力は残っていない筈なのに、
それでも、両足でしっかりと立っていた。

だが、それだけ。
立っているだけ。

勝つ為の力も、作戦も何も無い。
徒に、苦痛の時間の引き延ばしているに過ぎない。

それでも、立っていたのだ。

何故立ち上がったのか、それはロマネスクにも分からない。

負けたくないからか。
負ける訳にはいかないからか。

自分の為か。
それとも――あの女の為なのか。

ロマネスクには、分からなかった。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:48:34.54 ID:OvlBNkTJ0
(*゚ー゚)「これは予想外ね。
    素直ヒートの記憶だと、ここで終わりだった筈なんだけど」
それまでロマネスクと素直ヒートとの闘いを外野から観戦していたしぃが、驚いた風に言った。

( ФωФ)「見くびるな……!
       この我輩が、以前と同じようにしてやられると思うな!!」
虚勢だった。

しかし、まだ虚勢を張るだけの力と意地は残っていたということか。
そう考えると、少しだけ元気が出てくる。

(*゚ー゚)「そうね、正直あなたを甘く見ていたわ。 ごめんなさい。
    それなら――こっちも少し、趣向を凝らさないとね」

しぃが悪魔のような笑みを浮かべ、ロマネスクを見る。
すると――



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:50:14.38 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「!!?」
ロマネスクの内部を、強烈な違和感が襲った。

何だ、これは?
何かが自分の頭に――心に、侵入してきている!?

いや、この感覚、一度味わったことがある。
これは――

( ФωФ)「貴様の仕業か……!」
ロマネスクがしぃを睨んだ。

確か、『心殺術』と言っていたか。
相手の心に侵入し、精神を殺す能力。
しかし――

( ФωФ)「この程度で、我輩の心を操れるとでも!?」
いくら体を傷つけられようと、まだ心は折れていない。
ならば、この程度の能力はどうということもない筈である。

(*゚ー゚)「勘違いしないで。 誰もあなたの心を操るなんて言ってないわ。
    私の『心殺術』、ここからが本番よ」
しぃが少し目を細めると――



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:53:09.09 ID:OvlBNkTJ0
.





「軍隊はいつでも出陣出来る用意を整えてある。
 我々が合図をすれば、すぐにでもあの街に攻め込む手筈となっている」

「止めてみるかね? まあ、君の力ならそれも可能だろう。
 だが――それでも何人かは犠牲になるだろうがね」

ノパ听)「やめろ! 街の人達は何の関係も無い筈だ!
     無関係な人を殺して、何になるっていうんだ!!」

「人聞きの悪い。 誰もまだ善良な市民を殺すだなんて言ってはおらんよ」

「だがまあ――君の出方次第によっては、分からんがね」

ノパ听)「――――!」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:53:46.05 ID:OvlBNkTJ0

.



( ФωФ)「――――!?」
ロマネスクの心に、強制的に映像が流された。

何だこれは!?
何の光景だ!?

あれは――あの女の姿があった。
そしてあの女の周囲にいたあの下卑た男達――

あいつらも、どこかで見た記憶がある。

何だ。
今のは、何だというのだ。



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:54:33.00 ID:OvlBNkTJ0
.




ノパ听)「本当に、アタシが抵抗しなければ、街の人達には手を出さないんだな……?」

「ああ、勿論だとも。 約束しよう」

「だがまあ――今は、自分の心配をした方がいいんじゃないかね?」





( ФωФ)「!!!!!!」
思い出した。
あいつらは、あの時、自分が殺した男達だ。

あの女を陥れ、辱めたあの外道共。
だとすれば、まさか。
まさかこの先は。

形容できない程嫌な予感が全身を駆け巡る。

止めろ。
この続きの光景を見せるのを止めろ。
この先の、あの女の姿を、見せないでくれ……!



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:55:56.10 ID:OvlBNkTJ0
.




ノハ;凵G)





あの女の裸体が露になる。
その白い肌を、おぞましい外道共の手が虫の様に這っていった。



(#ФωФ)「貴様!! 止めろ!! 今すぐに止めろ!!!」
我知らず、ロマネスクは叫んでいた。

間違い無い。
この光景。
素直ヒートの、記憶の中の光景だ……!



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:56:35.82 ID:OvlBNkTJ0
(*゚ー゚)「あははははははははは!! どうかしら、私の『心殺術は』?
     遠慮しないで楽しみなさいな。
     折角、棺桶死オサムが変身した素直ヒートの記憶の中から、
     ピンポイントであの時の光景を抽出してあなたの心に送り込んでるんだから。
     こんなの、滅多に見れないわよ?」
心底おかしそうに、しぃは笑う。

ロマネスクのうろたえる様に。
傷つく様に。



ノハ;凵G)



(#ФωФ)「いいから止めろ!!
       この光景を、これ以上我輩に見せるな!!!」
汚されていく気がした。

あの女との思い出を、
あの女の誇りを、
根こそぎ汚されていくような気がした。

だから、ロマネスクにはそれが許せなかった。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:57:50.85 ID:OvlBNkTJ0
(*゚ー゚)「嫌よ。 私のモットーは、『人が嫌がることを進んでやる』ことだからねえ。
     あなたには死ぬまでこの光景を見続けてもらうわ」
しぃがなおもクスクスと笑う。
悪魔の様に、ではない。
彼女は正しく、正真正銘の悪魔だった。

(#ФωФ)「貴様アァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
半狂乱で、ロマネスクはしぃに突っ込んでいった。
形振り構わず。
脇目も振らず。

そしてそれは、致命的な失敗だった。
あの素直ヒートと闘っているというのに、
それから目を離してしまっていたのだ。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:59:00.42 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「何余所見してんだよ」
ロマネスクの眼前に、素直ヒートが躍り出た。

( ФωФ)「!!!!!」
反射的に、パンチを打とうとする。
だが、



ノハ;凵G)



( ФωФ)「!!!」
あの女の顔と、目の前の素直ヒートの顔とが重なり、
ロマネスクはパンチを打ち込むことが出来なかった。

( ФωФ)「くッ……!」
分かっていた筈なのに。
目の前の素直ヒートは、断じてあの女ではないと。
そんなことは、分かっていた筈なのに。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:59:33.18 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「りィいいあァァァ!!!」
そして、その隙を見逃す素直ヒートではなかった。

がら空きになったロマネスクの頭部に、
容赦無く渾身の拳を叩き込む。

( ФωФ)「がはッ……!!」
パンチの勢いに後頭部から地面に叩きつけられ、
地面がそのあまりの威力にクレーターの様に陥没した。

( ФωФ)「――――」
ロマネスクの体が、ビクン、と一度だけ痙攣し、そのまま動かなくなる。
その目には、最早先程までの光は無くなっていた。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:00:43.87 ID:OvlBNkTJ0
.




「この魔王め!」

「よくも今まで、俺達を騙してやがったな!!」

「さっさと火達磨になって死んじまえ!!」





消えかかる意識の中、
ロマネスクはあの女の最期の光景を見る。

助けることが出来なかった、
間に合わなかった、
自分の後悔の象徴。

あの女が、火炙りになる光景を。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:01:22.73 ID:OvlBNkTJ0
人々の為に闘い、
人々を護り、
その人々を盾に取られ、
最後はその人々にすら裏切られて死んでいった、あの女。

誰にも助けられなかった、正義のヒーロー。
素直ヒート。




ノパー゚)




なのに――
なのにあの女は、最後まで笑っていた。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:01:54.27 ID:OvlBNkTJ0
.


              *              *              *



( ФωФ)「――――」
気がつくと、ロマネスクは小高い丘の上に立っていた。

ここは?
自分は、さっきまで素直ヒートと闘っていた筈なのに。

( ФωФ)「…………」
周囲を見渡す。

緑豊かな山に囲まれた、のどかな風景。
どこかで見たことがある場所。

いや、どこかで見たことがある、ではない。
自分は確かに、どこかでこの風景を見ている。

ここは――



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:03:16.67 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「これは……」
丘の上に、墓が立てられていた。

素直ヒートと墓碑銘の刻まれた、小さな墓。
正義のヒーローの末路。

そうだ、ここは。
ここは、あの丘だ。

この宇宙の全てを支配すると、
宇宙大魔王になると、
あの女に誓った墓だ――

( ФωФ)「…………」
とすれば、ここは死後の世界か。

自分は、負けたのか。
あの女の、偽者に。

自分は、約束を果たすことが出来なかったのか。
渡辺との、あの女との誓いを、破ってしまったのか。

自分は――



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:04:54.04 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「な〜にしみったれた顔してんだよ」
いきなり、後ろから声をかけられた。

( ФωФ)「!!!」
振り返って声の主を確認して、驚きのあまり心臓が口から飛び出しそうになる。
そこにいたのは、自分の良く知る、あの女の姿だったからだ。

ノパ听)「よっす。 久し振りだな、ロマネスク」
道端で偶然出会ったかのように、
軽い口調でその女は言った。

( ФωФ)「お前は――」
この女まで出てきたということは、
いよいよここは死後の世界ということか。

宇宙大魔王たる自分であれば、
当然地獄に落ちるものかと思っていたのだが、
地獄にしては随分とのどかな場所に落ちてきたものだ。

ノパ听)「地獄じゃねえよ。 アタシまで地獄に落とすつもりか」
いささか不満そうに、女は口を膨らませた。



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:06:21.69 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「なら、お前はどうして――」
どうして、こんな所にいるのだ?」

ノパ听)「ああ。 どっかの馬鹿がケチョンケチョンにボコられてたんでな、ちいっとヤキ入れにきた訳さ」
( ФωФ)「…………」
返す言葉も無い。

威勢良く全宇宙を支配すると啖呵を切ったところで、結局この様だ。
自分は最後まで、この女には勝てなかった。

ノパ听)「まあ、それは半分冗談だな。
     ちょっと、懐かしい顔を見たかったからさ」
そう言ってはにかむと、素直ヒートはロマネスクに背中を向けた。

ノパ听)「……お前には、見られたくないとこ見せちまったな」
小さく、呟くように言った。

背中を向けている為、ロマネスクからはどんな表情でその言葉を言っているのかは分からない。



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:21:08.30 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「軽蔑したろ?
     正義のヒーローたって、所詮はあんなもんさ」
( ФωФ)「軽蔑など――する訳がない」
本心だった。

どんな結果になったとはいえ、どんなに体を汚されたとはいえ、
それは、誰かを護る為の、何かを護る為の、尊い行いであった筈なのだ。

ならば、その心までが、その信念までが、
汚されていよう筈がない。

この女の気高さは、美しさは、
何一つ、変わってなどいない。

だが――

( ФωФ)「お前は――」

だが、ロマネスクにとっては、それが、

( ФωФ)「お前は、後悔していないのか?
       必死に闘ってきたのに、それが、あんな――」
それが、不思議でならなかった。

あれだけのことをされて、
なおも変わらぬ魂の美しさ。
それが、不思議だったのだ。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:21:58.60 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「してるに決まってんじゃねえか」
素直ヒートが振り返り、そう答えた。
その顔に、穏やかな笑みを浮かべた。

ノパ听)「あの時のことだけじゃねえ。
     人生、いつだって失敗と苦悩と後悔の連続さ。
     上手くいったことなんて数える程しかない。
     いつも、ああすれば良かった、こうすれば良かったって思いっぱなしだ」
( ФωФ)「――――」
それは、ロマネスクにとっては意外な答えだった。

後悔している。
この女は確かにそう言った。

なのに――
ならばどうして、最後にあんな笑顔でいることが出来たのだ?

ノパ听)「だけどな、アタシはそんな後悔だらけの人生を誇りに思ってるぜ。
     逆に考えてみろよ。 失敗や後悔すら残らない人生なんて、それこそつまんねえだろが」
( ФωФ)「――――」
後悔はある。
失敗はある。
だけど、この女はそれを笑い飛ばした。
笑い飛ばしてみせた。



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:22:53.86 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「それにな、こんな人生でも、良かったと思えることはそれなりにあったさ。
     誰かを護ることが出来たし、誰かを大切に想うことも出来た。
     人の笑顔を見て嬉しいと感じ、悲しいことに涙を流すことだって出来た」
それでも、そんな後悔だらけの人生でも良かったと、
それでよかったと、女は言った。
それが、自分の生き方だったのだと。

ノパ听)「それに――お前にだって会えた。
     それだけで、アタシの人生もまんざら捨てたもんじゃなかったって、
     心の底から思えるんだ」
真っ直ぐにロマネスクを見据えて、素直ヒートは言った。

( ФωФ)「――何故だ」

ノパ听)「んあ?」

( ФωФ)「何故、お前はそう言い切ることが出来るのだ!
       何故本気でそう思うことが出来るのだ!
       何故――」
護るべき人の為にその身を汚され。
挙句はその護ってきた人々にすら裏切られ、憎まれて。

なのにどうして。
どうして、そんなに強くいられることが出来るのだ……!



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:24:39.18 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「決まってんだろ。
     それはアタシが、正義のヒーローだからさ」
一寸の迷いも無く、微塵の淀みも無く、
きっぱりと、その女は言い切った。

ノパ听)「お前だってそうだろ? 宇宙大魔王」

( ФωФ)「――――」
ああ――そうか。
そうだったのだな。

この女が、そうだったのだ。
この女こそが、本物の正義のヒーローだったのだ。

いいや、そんなことは、
ずっと昔から分かり切っていたことじゃないか。

この女だけが、正義のヒーローだったのだ。

いくら身体能力や記憶が同じだったとしても、
そんなことは関係ない。

この魂こそが、正義のヒーローたる所以だったのだ。

何で、あんな偽者なんかを、
本物と勘違いしていたのだろう。

本当の正義のヒーローは、
いつだって、こんなに近くに居たというのに。



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:25:35.82 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「ったく、今更気付いても遅えっての。
     腹立った。 やっぱり一発ヤキ入れてやる」
そう言ってぎゅっと拳を固め、

ノパ听)「…………」

トン、と、
軽く、ロマネスクの胸を叩いた。

ノパー゚)「……効いたろ? これが、正義のヒーローのパンチだ」
その笑顔は、あの時と全く同じの笑顔で――



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:26:51.15 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「ああ――効いた」
重い、何て重いパンチなのだろう。

体にではなく、心に響くパンチ。
魂の込められた、正義のヒーローの拳。

この拳に比べれば、
あの偽者の拳なんて、蚊に刺された様なものではないか――

ノパ听)「もう、大丈夫だな」
澄んだ瞳でロマネスクを見据え、女は言った。

( ФωФ)「――ああ」
力強く答え、ロマネスクが一度頷く。
その顔に、最早何の迷いも無い。

ノパ听)「行ってこい。 行って、ぶっ飛ばしてこい。
     アタシの偽者を、お前を縛り付けていた、下らない過去を、
     完膚無きまで叩きのめしてこい。
     全部に、ケリをつけてこい!」
( ФωФ)「ああ……!」
ロマネスクがもう一度答える。

二度と負けないと、
二度と間違えないとその心に誓って。

ノパ听)「……それじゃあな。 さよならだ、ロマネスク。
     アタシは先に行ってるとするぜ」
また会おうとは言わなかった。
そんな言葉など必要無かったから。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:27:27.87 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「……待て!」
最後に、引き止めるように、ロマネスクは叫んだ。

ノパ听)「?」
女が、不思議そうな顔でロマネスクを見る。

( ФωФ)「名前を――
       名前を聞かせてくれ。
       この我輩を倒した――正義のヒーローの名前を」
聞くまでもなく分かっていること。
だがそれでも、ロマネスクは聞いておきたかったのだ。

おそらくは生涯、忘れることのないその名前。

ノパ听)「――いいさ。 何度だって聞かせてやる」
女はそう言って微笑んで、

ノパ听)「アタシは素直ヒート!
     どこにでもいる『正義のヒーロー』さ!!」



97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:27:55.75 ID:OvlBNkTJ0
.


               *              *               *



ノパ听)「さーて、と。 どうやら完璧にくたばったみたいだな」
横たわったロマネスクの体を足蹴にし、素直ヒートが一つ大欠伸をした。

(*゚ー゚)「遊んでいる暇は無いわよ。
    変身していられるうちに、残りの二人も始末しないと」
ノパ听)「へいへい」
素直ヒートがロマネスクに背を向け、その場を離れようとした。

その時――

ノパ听)「――――!」
素直ヒートの背骨に、氷柱が突き刺さったかのような悪寒が走った。

この気配は!?
まさか――



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:29:32.39 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「…………」
ロマネスクが、立ち上がっていた。

馬鹿な。
即死級の一撃を、叩き込んだ筈だ。

なのに――
なのにどうして、こいつはまだ生きている!?

( ФωФ)「……礼を言うぞ、棺桶死オサム」
ゆっくりと、ロマネスクは口を開く。

( ФωФ)「貴様のおかげで、思い出すことが出来た。
       自分が何であるかを、あの女の拳の重さを。
       はっきりと思い出すことが出来た」
不気味な程力のこもった瞳で、ロマネスクが告げる。
それは、先程までの瀕死の男とはまるで別人のようであった。

ノパ听)「…………!」
・ ・ ・ ・ ・ ・
棺桶死オサムの額を冷や汗が伝った。

何だこいつは。
こいつ――さっきまでとは、何かが違う……!



109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:31:20.78 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「う――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
だが、棺桶死オサムは怯まなかった。
叫び声をあげながら、ロマネスク目掛けて疾駆する。
そのまま――

ノパ听)「るああああ!!!」
そのまま、全体重を乗せたパンチを、ロマネスクの顔に叩きつけた。
が――

( ФωФ)「――――」
倒れなかった。

自画自賛などではない。
昏倒確実の、完璧な一発だった筈だ。

事実、今までロマネスクはその一撃で叩きのめされてきたのだ。
だが――
その一撃を浴びたというのに、ロマネスクは倒れない。

ノパ听)「くッ、この――」
こんなことがあるわけない。
そう、こんな筈がない。



112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:32:07.87 ID:OvlBNkTJ0
ノパ听)「砕けろォッ!!」
今度は、右足でのハイキックがロマネスクの頭に叩き込まれた。
だが、それでもロマネスクは倒れない。

ノパ听)「砕けろ!! 壊れろ!! 折れろ!! 潰れろ!! へしゃげろ!! 倒れろ!!」
次々と、棺桶死オサムの攻撃がロマネスクに命中していく。

しかし、倒れない。
ロマネスクの体がビクともしない。

ノパ听)「倒れろォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
棺桶死オサムが咆哮する。
渾身の、これ以上無い程の右拳でのパンチ。
そのパンチが――

ノハ;゚听)「!!?」
そのパンチが、片手で受け止められた。



117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:32:51.59 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「――軽い。 何という軽い拳だ。
       この程度の拳であの女に化けようなど、冗談にも程がある」
ノハ;゚听)「ヒッ!!」
棺桶死オサムが慌てて拳を引っ込めようとする寸前、
ロマネスクが拳を受け止めていた手に力を込めて脱出を阻んだ。

( ФωФ)「魂の込もらぬ拳など何のこともない。
        貴様では、我輩を倒せない」
棺桶死オサムの拳を掴んだロマネスクの手に、
更に力が込められていく。

( ФωФ)「我輩を倒すことが出来るのは、魂の込められた拳のみ!
       我輩を倒すことが出来るのは――」
二度と負けないと。
誰にも負けないと。
そして、必ずや全宇宙を支配し、
あの女こそが唯一の正義のヒーローだったと証明すると、
そう誓った。

その自分が、もし敗れるとするのなら、それは――

( ФωФ)「魂の込められた拳でなければ、
       正義のヒーローの拳でなければ――」
それは、あの女と同じ、あの拳でなければ、



122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:34:17.57 ID:OvlBNkTJ0
(#ФωФ)「正義のヒーローの拳でなければ、いけないのだ!!!!!」
吼えた。

一気に掴んでいた手に力を込め、
棺桶死オサムの手を握り潰す。

ノパ听)「ぎ い゛ い゛ い゛ い゛ い゛ い゛ い゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛!!!!!」
骨が砕け、肉から突き出た拳をおさえながら、
棺桶死オサムが呻き声をあげる。

それが、失敗だった。
痛がっている暇があるのなら、逃げればよかったのだ。

(#ФωФ)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
固く拳を握り、ロマネスクが右腕を振りかぶる。

コンビネーションだのフェイントだのそんな小難しいことはどうだっていい。
一撃。
必殺の、ただ一撃を。

(#ФωФ)「教えてやる!! 棺桶死オサム!!
       これが――」
あの時届かなかった力。
それに、少しでも手を伸ばそうとして、



124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:35:14.67 ID:OvlBNkTJ0
(#ФωФ)「これが、魂の込められた拳だ!!!!!!!」
彼方の丘で、素直ヒートが軽くロマネスクの胸を叩いたのと全く同じ場所に、
ロマネスクの拳が突き刺さった。

ノパ听)「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
直後、棺桶死オサムの体が爆発した。

比喩でも何でもない。
ロマネスクの一撃の、その凄まじい衝撃で、
棺桶死オサムの体が内部から弾けるように爆散したのだ。

ノパ听)「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
肉片と内臓象と骨片を撒き散らしながら、
棺桶死オサムが吹っ飛んでいく。

ノパ听)「がばアッ!!!」
(*゚ー゚)「!!!」
肉の潰れる音を立てて、
棺桶死オサムの体が、しぃの足元に墜落するように叩きつけられた。

【+  】ゞ゚)「…………」
変身が解け、頭部と左半身が辛うじて残っているだけの、
ボロ雑巾のような姿の棺桶死オサム。
その体は、ピクリとも動かない。



129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:36:36.49 ID:OvlBNkTJ0
(*゚ー゚)「な――あ、あ――!」
しぃは戦慄していた。

あの、素直ヒートに変身していた棺桶死オサムが敗れた!?

ありえない。
だってあれは、あの怪物、杉浦ロマネスクに勝った、唯一の――

( ФωФ)「…………」
(*゚ー゚)「ヒッ!」
そこでようやく、しぃは気付いた。

棺桶死オサムのいなくなった今、
次なる標的はこの自分。
そしてロマネスクが、しぃを逃がす筈もない。

(*゚ー゚)「あ――ああううあ!!」
最早言葉ですらない悲鳴をあげながら、
しぃがその場から逃げ出そうとした。

(;*゚ー゚)「!!?」
だが、逃げ出そうとした足を何かが掴む。
慌てて足元を見ると――



131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:37:40.83 ID:OvlBNkTJ0
【+  】ゞ゚)「……待……待って…… 置いて……かないで……」
(;*゚ー゚)「オ、オサム!?」
しぃの足を掴んでいたのは棺桶死オサムだった。

体の大部分を欠損させながら、
なおも彼はまだ生きていたのだ。

(;*゚ー゚)「離して! 離しなさい、オサム!!」
しぃが棺桶死オサムの体を蹴飛ばしながら、
何とか掴まれている足を引き抜こうとする。
が、棺桶死オサムの手はしっかりとしぃの足に食い込んだまま離れない。



133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:38:18.37 ID:OvlBNkTJ0
【+  】ゞ゚)「助け…… しぃ……助けて……」
(;*゚ー゚)「離しなさいって言ってんでしょ、この死に損ないがあああああああああ!!!」
ぐちゃりと音を立て、しぃが棺桶死オサムの頭を踏み潰した。
頭部を完全に破壊され、今度こそ棺桶死オサムが絶命する。

(;*゚ー゚)「は、早く、早くこの手を――」
しぃが死体となった棺桶死オサムの手を何とか引き剥がそうとした。

しかし、遅すぎた。
全ては遅すぎたのだ。

( ФωФ)「…………」
(;*゚ー゚)「!!!」
ロマネスクは、既にしぃの目前にまで迫っていた。
そのまま、ロマネスクは黙ってその腕を振り上げる。

(;*゚ー゚)「ヒ――ヒィ――ひあああああああああああああああああああああああああ!!!」
直後、しぃの頭部は彼女が棺桶死オサムにやったのとまるで同じ様に、
無残に砕け散るのであった。



135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:39:03.75 ID:OvlBNkTJ0
.




( ФωФ)「…………」
棺桶死オサムとしぃの死体を見下ろし、ロマネスクは一つ息をついた。

勝った。
偽者とはいえ、あの素直ヒートに勝ったのだ。

――いや、感慨に耽っている暇は無い。
すぐに、自分もマスク仮面達を追いかけないと――

( ФωФ)「――――!?」
と、ロマネスクの膝がガクンと崩れた。

駄目だ。
倒れるな。
自分はまだ、やることが残っているのだ。
こんな所で倒れる訳には――



「いいや、お前の役目はここまでだよ」



どこかから、声が聞こえた。
どこかで聞いたことがある、あの声。



138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:39:40.97 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「何を言う! 我輩はまだ――」


「お前はよくやったよ。 もうゆっくり休みな。
 どのみち、その体じゃこれ以上闘うのは無理だ」


( ФωФ)「駄目だ! まだ闘える! 闘わねば――ならないのだ……!」


「意地張んなって。 残りは、あいつらが上手くやってくれる。
 後のことは心配するな。 あいつは――お前が信じた正義のヒーローだろ?」


( ФωФ)「――――」
――そうか。
そうだったな。

あいつには――あの女のマントを、託していたんだった。

ならば、大丈夫だろう。
あいつなら、きっとやり遂げる筈だ。
何せ、この自分が、あの女以外に正義のヒーローと認めた、
ただ一人の男なのだから。



140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:40:36.51 ID:OvlBNkTJ0
( ФωФ)「フッ――」
思わず含み笑いが漏れた。

ここから先は、正義のヒーローの仕事ということか。
ならば、宇宙大魔王である自分に出る幕は無い。

この自分が途中退場するのは癪に障るが――
まあ、良しとしてやろう。
今は、久し振りに気分が良い。


「分かればいんだよ。 最初から、そうやって大人しく寝とけってんだ」


( ФωФ)「……フン。 余計なお世話だ」
倒れこむように横たわり、軽口に軽口で返す。

瞼が自然に落ちる。
どうやら、意識を保っていられるのもあと少しのようだ。



142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:41:11.54 ID:OvlBNkTJ0


「――じゃあな、ロマネスク」


( ФωФ)「――ああ、さよならだ。 素直ヒート」
その名前を呼んで、ロマネスクは静かに目を閉じた。

今はゆっくり眠るとしよう。
後は、あの男に任せればいい。

( ФωФ)「後は頼んだぞ、ドクオ……」
そう言って、ロマネスクは深い眠りに落ちる。
その顔は、まるで無邪気な少年の様にも見えた。


〜第二部 第十四話『狂熱果てる時! 宇宙大魔王VS正義のヒーロー!!』 終
 次回、『理想の末路! 正義のヒーローになれなかった男VS正義のヒーローになりたかった男!!』
 乞うご期待!〜



144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 19:41:29.96 ID:OvlBNkTJ0
この番組は、

前回途中で席立ちして申し訳ありませんでした。

の提供でお送りしました。



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