ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:34:52.04 ID:Txl/Fs0I0
第二部 第十六話 『夢の終わり 〜銀獣VS魔弾〜』

〜ネタ切れ〜

イ从゚ ー゚ノi、「るうあああああああああああああああ!!」
銀が前への跳躍で間合いを詰めながら、右から横薙ぎに白刃を閃かせた。

( ´∀`)「ッ!!」
後ろに跳んで、モナーがそれをかわす。
そして跳んだ瞬間には既に、モナーは弓矢を構えていた。

イ从゚ ー゚ノi、「!!!」
銀の心臓目掛けて、モナーの放った矢が飛来する。

避けられない。
瞬時に、銀はそれを理解した。

この矢だけなら何とかかわすことが出来るかもしれない。
しかし、避けて体勢を崩したところに、次の矢が飛んでくる。
そうなると、致命傷は避けられないだろう。

ならば――

ミ,,゚(叉)「おおおおお!!」
体を変化させながら、銀は矢を避けることなく正面から突っ込んだ。

否、正確に言えば避けなかったわけではない。
ほんの少し、そう、ほんの数センチ分だけ、体を右に捩ったのだ。



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:35:50.52 ID:Txl/Fs0I0
ミ,,゚(叉)「――――!」
銀の胸部を矢が貫く。
だが、完全に心臓を貫いたかに見えたその矢はしかし、
銀の動きを止めることは無かった。

( ´∀`)「――――!」
モナーが微かに表情を強張らせる。

どうせ避けることが出来ないなら、そのダメージを最小限に抑えるまで。
銀は僅かに体の軸をずらすことで、内臓に深刻な損傷を与えない部分を矢が貫くように誘導したのだ。

ミ,,゚(叉)「るおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
返しの刃を銀が振るう。

最高の角度、最高のタイミング、最高の速度でのその斬撃が、
モナーの胴を二つに裂くと見えた瞬間――



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:36:29.27 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「そう来るのは『視えて』たんだよ」
ミ,,゚(叉)「!!!」
甲高い音と共に、銀の刀が虚空を薙いだ。
銀刃がモナーに届く寸前、モナーが弓でその斬撃を受けたのだ。

無論いくら弓が金属製とはいえ、
まともに受けただけでは銀の刀は容易く弓ごとモナーを真っ二つに切り裂いていただろう。

そうならないように、モナーは正面から受け止めるのではなく、
刀を受け流し、攻撃のベクトルをずらす形で防御を行ったのだ。

しかしこれは、口で言う程簡単なものではない。
神速に等しき銀の斬撃を狙った通りに防御するなど、事実上不可能に近い。

にも関わらず、モナーはさも当然のようにそれをやってのけたのだ。
そう、まるで最初からその結果が判っていたかのように。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:37:59.60 ID:Txl/Fs0I0
ミ,,゚(叉)「――千里眼」
銀は舌打ちをした。

全てを見通す、異能の瞳。
何であろうと、その眼に見えないものは無い。
そう、例えそれが、未来であろうと。

( ´∀`)「御明察」
モナーが得意気に鼻を鳴らした。

( ´∀`)「判ってんだろ、銀獣?
      この眼がある限り、お前の攻撃は先の先までお見通しだ。
      俺には、お前の動きが手に取るように視えるんだよ」
言って、銀に向けて弓を構える。

しかし、銀は些かも怯んだ様子を見せず、
ミ,,゚(叉)「そんな事は百も承知よ。
     六十年前、お前と闘った時からな。
     その眼、確かに恐るべき眼じゃ。
     筋肉や空気の流れを『視て』、さながら未来を視るかのように何十手先までも予測する。
     正に『千里眼』。
     その恐ろしさ、骨身に染みて判っておる。
     同時に――」
銀が僅かに腰を落とした。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:39:00.10 ID:Txl/Fs0I0
ミ,,゚(叉)「――その眼が、決して万能ではないこともな」
銀が、そう言って微笑んだ瞬間、
(;´∀`)「――――!?」
モナーの腹部に赤い線が走り、そこから血と内臓が零れ出た。

(;´∀`)「なッ――あァ!?」
いつやられた。
モナーが大きく狼狽する。

まさか、さっきか。
見切っていたと思っていたのに。
かわし切れていなかったのか……!

ミ,,゚(叉)「どこを見ている!」
(;´∀`)「!?」
モナーが驚愕している隙をついて、銀は一気に間合いを詰めていた。

ミ,,゚(叉)「るゥああ!!」
モナーが気付いて銀に向き直った時には既に遅く、
銀の拳がモナーの顔面を捉える。

(;´∀`)「がはァッ!!」
殴り飛ばされ、モナーがバウンドしながら地面を転がった。
が、即座に体勢を立て直し、片膝を付いた状態で銀に向き直る。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:40:31.01 ID:Txl/Fs0I0
ミ,,゚(叉)「どうした、魔弾。
     儂の動き、見切っているのではなかったのか」
銀はそれ以上追撃せず、距離を取った位置からモナーを見下ろす。

(;´∀`)「……チッ」
モナーは舌打ちをした。

予想外だった。
以前闘った時よりずっと、銀の動きが鋭くなっている。
それが、モナーの読みを少しだけ外したのだ。

先程銀が言った通り、モナーの千里眼は万能という訳ではない。
確定した未来が視える訳ではないし、
『視る』ことにある程度集中しなければ、その予測も曖昧になる。
加えて、例え予測出来たとしても、自身の反応速度を上回るスピードで来られてはどうしようもないのだ。

(;´∀`)「…………」
モナーはちらりと自分の腹の傷口を見た。
傷はそう深くはない筈だ。
とにかくこの傷をどうにかして――



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:42:42.26 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「――――!?」
モナーは目を見開いた。
さっき、確かに自分は腹を切り裂かれた筈。
内臓まで、出てきていた筈なのだ。
それが、もうすっかり傷口が塞がってしまっている。

そういえば、先程殴られた顔も、全然痛くない。
手で触れてみても、少しも腫れている様子も無かった。

もう、再生したというのか。
あれだけの傷が――

( ´∀`)「――フ、フハハ――」
モナーの口から笑い声が漏れた。

( ´∀`)「ハハハハハ! ハハッ!
      ハァーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハアァ!!」
やおら、モナーは大声で笑い出した。
まるで狂ったかのように。
いや、きっと彼は、とっくの昔に狂ってしまっていたのだろう。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:44:15.35 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「何だァ!? 何だよこの体は!?
      あんだけやられて、もう治ったっていうのか!
      予想以上だぜ! これが、人外の力ってやつなのか!!」
モナーが爪を立てて顔面を掻き毟る。
肉が削れて血が滲み出し、直後に薄く煙を上げながら傷口があっという間に再生していく。

( ´∀`)「これが! これが不老不死の肉体か!
      思ってた以上だぜ! これが! これが! こんなのが!!」
ガリガリと顔面の肉を削りながら、モナーが笑い続ける。
手と顔を血で真っ赤に染めながら笑うその姿は、
さながら鬼の様でもあった。

( ´∀`)「永遠の命―― ハッ! 人間だった時じゃ、勝てなかった訳だ!
      こんな反則な体を持ってたなんてなァ!!」
手を動かすのを止め、モナーが銀に視線を移した。

( ´∀`)「だが――今ならこっちも同じだぜ。
      さあ、続きだ銀獣!
      この体、どこまでやったらくたばれるのか、存分に試し合うとしようじゃねえか!!」
射抜く様な視線を銀に向けるモナー。
その目には最早人間性の欠片も残ってはおらず、
ただ、深く昏い闇だけがどこまでも広がっていた。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:45:00.56 ID:Txl/Fs0I0
ミ,,゚(叉)「――クッ」
銀はそんなモナーを嘲るかのように失笑した。

ミ,,゚(叉)「矢張りお主はただの餓鬼じゃな。
     その程度の不死性で、何を得意気に。
     そんなもの、人外にとっては当然のことに過ぎん」
からかうように、銀が言った。

( ´∀`)「ただの餓鬼――だと?」
モナーが銀を睨む。

ミ,,゚(叉)「ああ、餓鬼じゃ。
     お前は、何も判っていない。
     人外のことを、死なないということを、死ねないということを、まるで判っていない。
     そしてモナー。 だからこそ、お前は儂には勝てない」
( ´∀`)「ハッ! 大きく出たじゃねえか。
      俺がお前に勝てないだと!?」
モナーが今にも噛み付かんばかりの表情で、銀にそう言った。

が、銀はそれを軽く受け流すかのように、
ミ,,゚(叉)「ああ、そうじゃ。 お前は負ける、モナー。
     人外になって一年も経っていないような、尻の青い餓鬼が――
     本気で儂に勝てるとでも思っていたのか?
     舐めるなよ、小僧。 儂が、何百年人外をやってきたと思うておる」
そう、凄むように返した。

ミ,,゚(叉)「来るがいい、小僧。
     人外の闘いというもの、とくと教えてやろう」
言って、銀が日本刀を構え直した。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:47:36.79 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「クッ、クハハ。 クハハハハハハ――」
モナーが乾いた笑いを漏らし、天を仰ぎ見る。
そして再び銀に視線を戻すと――

(#´∀`)「舐めてんじゃねえぞ、銀獣!
      俺を――俺を誰だと思ってやがる!!」
神速の如き早業で矢筒から矢を抜き出し、弓に番え、
雨の様な魔弾を銀に向かって浴びせかけた。

ミ,,゚(叉)「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
矢の嵐に怯むことなく、銀が真正面からモナーの魔弾を迎え撃つ。

ミ,,゚(叉)「るうううううううああああああああああ!!」
矢が命中する寸前に、横に跳躍。
矢をかわしながらも、少しでもモナーに接近する為に斜め前に跳ぶ。

ミ,,゚(叉)「!!!」
その動きを見透かしていたかのように、銀が跳躍した場所に矢が飛んできていた。

すかさず、日本刀で打ち落とす。
が、打ち落とした次の瞬間、かわした筈の矢が軌道を変え、
銀の背後から襲い掛かる。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:48:07.45 ID:Txl/Fs0I0
ミ,,゚(叉)「ぬゥッ!!」
後ろ回し蹴りの要領で、背中まで接近していた魔弾を払い落とした。
が、そのうちの何本かは銀の蹴りをすり抜け、
数本の矢が深々と銀の体に突き刺さる。

ミ,,゚(叉)「ぐッ……!」
魔弾の直撃を受け、銀が空中で大きく体勢を崩した。
そのままぐらりと体を傾け、地面に墜落しそうになる。

( ´∀`)「貰ったァ!!」
その隙を逃さず、モナーが銀に向けて弓を構えた。
狙うは頭蓋。
いかに不死の肉体を持つ人外といえど、頭部を破壊されれば致命的なダメージとなる。

( ´∀`)「死ィ――」
モナーが魔弾を放とうとした瞬間――

( ´∀`)「――!!」
モナーの肩口に、一本の匕首が突き刺さった。
空中でバランスを崩しながらも、銀がモナーに向かって匕首を投げていたのだ。

ミ,,゚(叉)「何も、飛び道具はお主の専売特許という訳ではないぞ?」
受身を取りながら地面に落ちた銀が、にやりと笑った。
だが、その時――



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:50:53.02 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「『視えて』いたさ。 それ位はな……!」
ミ,,゚(叉)「!!?」
銀の右太腿を、モナーの魔弾が貫通した。

不意を討たれ、驚きながらモナーの方に向く銀。
見ると、モナーの手には、矢が握られていない。

撃ったというのか。
匕首が命中する寸前に、既に魔弾を……!

( ´∀`)「大口叩いた割にはこの程度かよ、銀獣。
      これで、俺に勝つつもりだったのかよ――」
ミ,,゚(叉)「…………」
モナーの問いに、銀は何も答えない。

( ´∀`)「判ってんだろ、銀獣。
      お前じゃ無理だってことが」
モナーが構えていた弓を下ろし、真っ直ぐに銀を見据えた。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:53:09.06 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「もう一度だけ聞くぜ、銀獣。
      俺のものになれ。 これから先の永遠の人生、俺と共に歩んでくれ。
      お前が必要なんだよ、銀獣!
      たった一人で、こんなふざけた体で生き続けるのは嫌なんだ!!」
モナーは叫んだ。
きっとそれが、モナーに残されていた最後の人間としての部分だったのだろう。
その人間としての心が、悲鳴を上げてたのだ。

拒否すれば、殺す。
それだけの決意を込めた懇願だった。

ミ,,゚(叉)「――断る」
だが、それでも銀は、きっぱりとそう言い放った。

ミ,,゚(叉)「何度も言わせるな、モナー。
     お前の様な糞餓鬼の相手をするなど、御免被る」
突き放すように、そう言い切った。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:56:06.24 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「……そうかよ」
モナーの顔から一切の表情が消える。
だがその能面の様な顔の下には、憤怒、狂気、絶望といった、
あらゆる負の感情が蠢いていた。

( ´∀`)「結局お前は、あの男の方を選ぶんだな。
      決して、その心を変えることは出来ないんだな――」
だったら。
モナーが銀の顔を見る。

(#´∀`)「だったら、やっぱりここでお前を殺すまでだ!!!」
モナーは己の『千里眼』に全神経を集中させた。

視ろ。
銀獣の全てを。
その肉を。
その呼吸を。
その心を。

奴が次にどう動くか、どう対応するのか、
それのみに己の全てをつぎ込め。

一手先の動きを、その先の動きを、その先の先の動きを、その先の先の先の動きを、
この眼にしっかりと焼き付けるのだ。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 09:58:18.20 ID:Txl/Fs0I0
(#´∀`)「――――!」
モナーの頭に、脳の神経回路が焼き切れるかのような痛みが走る。
だが、それでもモナーは『千里眼』を発動し続けた。

視ろ。
そして予測しろ。
奴の動きを。
未来の結果を。

(#´∀`)「――――!」
モナーの両目から血涙が流れた。
限界を超える千里眼の使用で視神経が悲鳴を上げ、
モナーの視界が紅く染まっていく。

視ろ。
もっと先を。
もっともっと先を……!



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:00:58.93 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「――視えた」
確信のこもった口調で、モナーが呟くように言った。

確かに、見た。
この闘いの結果を。
銀獣の、末路を。

( ´∀`)「…………」
一歩、モナーが銀に踏み出す。

ミ,,゚(叉)「…………!」
先程までと明らかに雰囲気の変わったモナーに、銀が身構える。

こいつ、何かが。
さっきとは何かが決定的に違う……!

( ´∀`)「……予言してやる、銀獣」
静かに、モナーが告げた。

( ´∀`)「今から85秒後、お前は両手両足をもがれて地面に磔になる。
      この勝負、俺の勝ちだ」
断言するように――否、モナーは断言した。
ボールを投げれば地面に落ちる、それぐらいに、当然のことのように。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:02:41.13 ID:Txl/Fs0I0
ミ,,゚(叉)「フッ。 それはまた随分と――」
( ´∀`)「…………!」
モナーは銀が言い終わるまで待たなかった。

一閃。
文字通り光が走るかの如き速さで、
魔弾が銀に向かって襲い来る。

ミ,,゚(叉)「くッ……!」
銀がその魔弾を振り払おうと、刀を翻した。
が、魔弾はまるで刀をすり抜けるかのように軌道を変えると、
銀の右腕に喰らいついた。

ミ,,゚(叉)「――――!!」
肉と骨が弾け飛び、刀を握っていた銀の右腕が銀の体から切り離された。

ミ,,゚(叉)「お――ぐあァッ!!」
痛みを気にしている暇は無かった。
その間にも次々と、魔弾は銀に向かって飛んできている。

ミ,,゚(叉)「くううッ!!」
地面を転がりながら、銀は魔弾をかわしていった。
銀が転がる後を追う様にして、魔弾が地面に突き刺さっていく。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:03:08.69 ID:Txl/Fs0I0
ミ,,゚(叉)「ちィッ!」
残った左腕を支えにして、銀が転がりながらも立ち上がった。
即座に、投擲する為に左手で懐に忍ばせておいた匕首を掴む。
そして匕首をモナーに投げようとした、その瞬間――

ミ,,゚(叉)「――――!?」
頭上から降り注いだ魔弾が、銀の左腕の肘から先を抉り落とした。
銀の足元に、その左腕が転がる。

ミ,,゚(叉)「な――あ!!」
銀の背筋に恐怖が走る。

何だ、これは。
避けることも出来ないまま、矢を喰らっていく。

どうしてなのか、何が原因なのかも判らない。
これが魔弾だと、これが千里眼だというのか――!



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:08:09.28 ID:Txl/Fs0I0
ミ,,゚(叉)「くッ……!」
だが、そのままじっとしている訳にはいかなかった。
止まっていれば、魔弾のいい標的だ。
両腕を失った状態にも関わらず、銀はモナーに向かって突進する。

( ´∀`)「――あと15秒」
ミ,,゚(叉)「!!!」
突撃する銀に、モナーが更なる魔弾を放った。
矢は大きく右なりに弧を描きながら、銀の足目掛けて襲い掛かる。

ミ,,゚(叉)「くッ!」
左後ろに跳んで、寸前の所でその魔弾をかわした。
脚を奪われるのは、まずい。
脚を封じられては、避けるどころの騒ぎではなくなるからだ。

ミ,,゚(叉)「!!」
今度は、左側から魔弾が飛んで来ていた。
まるで、銀がそこへ回避するのを最初から知っていたかのように。

ミ,,゚(叉)「ちィ!!」
銀がその場でばく転しながら、二の矢の魔弾を回避した。
魔弾が、先程まで銀の左足があった部分を高速で通り過ぎていく。
もし、喰らっていれば、間違いなく左脚がすっ飛んでいただろう。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:09:32.12 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「――あと10秒」
だが、それすらモナーが『視た』未来の展開通りであった。

ミ,,゚(叉)「!!」
二の矢の魔弾が、対象を失い中空を彷徨っていた一の矢の魔弾にぶつかり、
銀の予想を遥かに超えた軌道修正をして襲い掛かる。

まさか。
銀は戦慄した。

まさか、最初からこれが狙いだったのか。
わざと自分が二本の魔弾をかわすことが出来るように撃って、
そのかわした魔弾と魔弾がぶつかるように――

ミ,,゚(叉)「!!!!!」
直後、銀の右足が根元からごっそりと切り離された。
鮮血が撒き散り、銀がその余波で大きく吹き飛ぶ。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:10:20.94 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「あと5秒!!」
そこに向かって、モナーが次の魔弾を撃った。
魔弾が空気を切り裂き、一直線に銀の左足に向かって走る。

ミ,,゚(叉)「ぐあああああああああああああ!!!」
右足に続けて、銀はその左足までをも奪われた。
血と肉片と共に、左足が宙へ舞い上がる。

( ´∀`)「これで――」
モナーが銀の心臓へと狙いを定め、弓を引き絞った。

外さない。
外す筈などない。

必中必殺。
だからこその魔弾。

それが、モナーの持つ全てだった。

( ´∀`)「終わりだアァァァァァァァァァ!!!」
モナーの手元から、最後の魔弾が放たれた。
唸りを上げながら、その死神の化身の如き矢が、
銀の心臓に喰らいつこうと疾駆する。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:12:58.90 ID:Txl/Fs0I0
ミ,,゚(叉)「…………!」
だが、銀には最早打つ手は残されていなかった。

両手両足をもぎ取られたその体では、
最早魔弾をかわそうとすることすら出来はしない。

その銀に向かって、
魔弾は無慈悲にも直進し続けていた。

ミ,,゚(叉)「がはッ……!!!」
しかして、魔弾は寸分の狂いも無く銀の心臓を射抜く。
そのまま魔弾は銀の体を地面へと引っ張り、その体を地へと縫いとめた。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:14:05.37 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「ハアッ、ハアッ、ハハ、ハハハハ――」
モナーが息を荒立てながら笑う。
『千里眼』の酷使による反動から、彼の体も既に限界に近かった。

だが、それで充分だった。
消耗はしたが、銀獣を斃すことは出来たのだ。
全て、自分の予測通りだ。
あとは、銀獣に止めを刺すだけ。

( ´∀`)「まだ生きてるか、銀獣」
銀のすぐ傍まで近付いて、モナーは銀を見下ろした。

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
銀は何も言わず、目だけでモナーに答える。
変化の解けた銀は既に虫の息で、生きているのがやっとという状態なのは、
傍から視ても明らかだった。

( ´∀`)「俺の勝ちだ、銀獣。
      ……待ってろ、今楽にしてやる」
肩で息をしながら、モナーが倒れた銀に弓を構える。
狙うは、頭。
そこに魔弾を一発放てば、全てが終わる。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:17:26.83 ID:Txl/Fs0I0
イ从゚ ー゚ノi、「くく……」
だが、口から血を流しながらも、それでも銀は笑った。
諦めや開き直りからの笑いではない。
勝利を確信した、自信に満ちた笑い方で。

( ´∀`)「……何がおかしい」
モナーが低い声で銀に言った。

イ从゚ ー゚ノi、「……お前が『千里眼』で『視た』のはここまでのようじゃな。
       成る程、確かに儂は両手両足を失った。
       じゃが、所詮そこまでじゃったか」
笑みを崩さず、銀は告げた。
それが、モナーの神経を苛立たせる。

( ´∀`)「何言ってんのかわかんねーよ。
      まさかお前、この状態から勝つとでもいうのかよ?」
訳が判らなかった。
最早銀には、武器どころか手足すら無いのだ。
その状態で、どうやってこの自分を斃す?

イ从゚ ー゚ノi、「……矢張り、お前は何も判っていない。
       人外がどういうものか、不死身とはどういうことなのか、まるで判っていない。
       もしお前があと数十年、人外として生きていたならば、
       この程度で勝ちを確信したりはしなかった。
       『千里眼』で、この先まで見ていた筈じゃ」
(#´∀`)「だから! 手前は一体何が言いてえ――」
モナーが声を荒げようとしたその時――



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:18:55.51 ID:Txl/Fs0I0
( ´∀`)「――あ?」
モナーの胸から、日本刀の刃が突き出ていた。

(;´∀`)「な、な――あァァ!?」
モナーは激しく狼狽した。

何だこれは!?
銀獣の日本刀!?
それが、何で――

(;´∀`)「!!?」
モナーは見た。
千切れた銀の右腕が、日本刀でモナーを背中から一突きにしているという光景を。

イ从゚ ー゚ノi、「教えてやる、モナー。
       人外というのは、化物というのは――」
銀が地面に倒れた状態からモナーを見つめる。
その表情は、憐憫と、哀れみと、悲しみに満ちていた。

イ从゚ ー゚ノi、「化物というのは――」
そう、自分は、化物なのだ。
そしてモナー。
今やお前も。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:20:38.91 ID:Txl/Fs0I0
イ从゚ ー゚ノi、「こういうことじゃ!!!!!!!」
千切れた銀の右腕が、一人でに動き出した。

モナーの心臓から左肩口に斬り上げ、
続けて右脇腹へと斬り抜けてモナーの胴体を二分する。

( ´∀`)「がはァッ!!!」
上半身と下半身を切り離されたモナーの上半身だけが、
支えを失って銀の横へと崩れ落ちる。

イ从゚ ー゚ノi、「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
四散していた銀の四肢が、銀の意思に合わせて胴体へと戻ってくる。
そして傷口の切断面と切断面が合わさり、おぞましいがまでの速度で再生を始めた。

イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
完全ではないまでも、銀の手足が元通りに癒着する。

( ´∀`)「な――あ――」
モナーは言葉を失った。

決して過信しているつもりではなかった。
人外の再生力を。
その異能を。
不死性を。

だが、目の前にいる『これ』は何だ?
『これ』は、本当にこの世の者なのか?

異形の生命力。
人外になって日の浅いモナーには、それが充分に理解出来ていなかった。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:24:04.22 ID:Txl/Fs0I0
イ从゚ ー゚ノi、「るああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
倒れたモナーに、銀が白刃を閃かせた。

徹底的に、斬り刻む。
その腕を。 その脚を。 その体を。

再生するより早く、再生が追いつかなくなるまで執拗に、
木っ端微塵に破壊する。

イ从゚ ー゚ノi、「モナアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
頭と胸部だけになったモナーの胸に、銀は日本刀を突き立てた。

( ´∀`)「――ごぼッ……!」
口から血の泡を吐きながら、モナーがびくりと体を痙攣させた。
体の斬り離された部分は比喩でなく残さず挽肉の状態になっており、
こうなっては最早、人外の再生力でもすぐには回復出来ない。

もしモナーが人外の不死性の恐ろしさを知っていれば、
手足を奪っただけでは油断せず、完全に頭部を破壊して息の根を止めるまで、
『千里眼』で視ていただろう。

だが、モナーはそれをしなかった。
手足を奪ったところで『千里眼』で視るのを止め、
結果最大のチャンスを失ってしまった。

それがモナーの敗因。

人外として生きてきた時間の長さ。
それが、この勝負の明暗を分けたのだった。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:26:29.17 ID:Txl/Fs0I0



イ从゚ ー゚ノi、「…………」
銀は、静かにモナーを見下ろしていた。
何も言わず、ただ、じっと。

銀の体からは、止めど無く血が流れ続けていた。
それも当然の話ではある。

いくら超常の生命力を持つからとはいえ、その力も無限ではない。
あのような自然の摂理を無視するような再生を行えば、その反動も凄まじいものになる。
銀の体は、満身創痍もいいところの状態だった。

( ´∀`)「……何してんだ。
      さっさと、殺れよ……」
か細い声で、モナーが呻くように告げた。

モナーの息は絶え絶えで、
仮に銀が止めを刺さなくとも、長くはないだろう。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:27:51.06 ID:Txl/Fs0I0
イ从゚ ー゚ノi、「モナー……」
銀は探していた。
最後に、モナーにかけるべき言葉を。

だが、だが銀がモナーに、何を言えるというのだろう。

モナーは銀を想うが故その魂を闇に堕とし、
その体を異形へとやつした。

だが、銀はそんなモナーを受け入れなかった。
受け止めることが出来なかったのだ。

イ从゚ ー゚ノi、「モナー、お前は……」
それでも、銀は必死に言葉を探していた。

何か、何かここで言葉を遺してやらなければ、
モナーはきっと、独りのまま死んでいくことになってしまう。

それだけは、救ってやりたかった。
救ってやらなければならなかった。

何故なら、独りぼっちの苦しみは、
誰よりも銀は知っているのだから。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:42:09.26 ID:x1NV07/J0
イ从; ー;ノi、「――お前は、こうするしか出来なかったのか。
        こんなことをして儂が喜ぶと、思っていたのか。
        思っていたのか」
涙が流れていた。

モナーは確かに道を踏み外した。
だが、その原因の一端はこの自分。

そんな自分が、この憐れな少年に、何をしてやれるというのだろうか。

( ´∀`)「――いいえ」
モナーの口調が、かつて老人だった時のものに戻っていた。

( ´∀`)「だけど、それでも私は諦められなかった。
      あなたと同じ時を生きたかった。
      あなたの隣を、歩いていきたかった――」
モナーの言葉に迷いは無かった。

後悔があるとすればただ一つ。
ついに銀獣の心を、手にすることは出来なかったことだけ。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:44:11.07 ID:x1NV07/J0
イ从; ー;ノi、「モナー……!」
銀は最後に、モナーの手を握ってやろうとして、
それが出来ないことに気が付いた。
モナーの五体は、銀が破壊し尽してしまっているのだ。

これが、人外の、化物としての生。
手に入れようとしたものは、全部、結局自分で台無しにしてしまう。

( ´∀`)「――ああ、夢が――終わる。
      あの――夏の日からの、夢が――」
モナーが虚空を見つめ、うわ言の様に呟く。
その目は最早、銀の姿すら映してはいなかった。

( ´∀`)「――銀獣――あなたは、いつまで――夢を見る――
      いつまで――この――夢を――」
その言葉を遺し、モナーは静かに目を閉じるのだった。



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:45:07.48 ID:x1NV07/J0



イ从゚ ー゚ノi、「…………」
銀はモナーの死体の横で、膝をついたまま俯いていた。

また、一つの命が自分の横を通り過ぎていった。
全てが、自分を取り残していく。
全てが、自分を置き去りにしていく。

永遠に続く孤独――
自分はいつまで、この悪夢を見続けねばならないのか。

(’e’)「素晴らしい!!
    実に見事な見世物だった!!
    こんなに素晴らしいものを見たのは実に数百年ぶりだ!!!」
どこから現れたのか――
セントジョーンズが銀の後ろで拍手をしながら賛辞の言葉を送っていた。

(’e’)「まさかここまでのものに仕上がるとは!
    矢張り、モナーは稀に見る逸材だったな。
    怪人製造施術――この研究は、彼の為にあったと言っても過言ではない!!」
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
銀がゆっくりと、セントジョーンズに振り向く。



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:47:56.77 ID:x1NV07/J0
(’e’)「おっと。 私を恨むというのなら、それはお門違いというものだ。
    彼は、彼の意思で人外の道を選んだ。
    私はきっかけすら与えてはいないよ」
そのきっかけはお前にある、と暗に言い含めて、
セントジョーンズは皮肉めいた笑みを銀に向ける。

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
銀はゆっくりと立ち上がり、日本刀を構えた。
そして真正面に、セントジョーンズを見据える。

(’e’)「私と闘うかね? だが、知っているだろう。
    君では私を斃すことは出来ない。
    私の空間跳躍能力――知らない訳ではあるまい?」
挑発するように、セントジョーンズは告げた。

(’e’)「私を斃すことが出来たのは、他ならぬモナーのみ。
    だがその彼はもういない。
    さて、それでも私に立ち向かうというのかね?」
セントジョーンズは構えすら取らなかった。
しかしそれも当然だった。
彼の能力ならば、銀の刃が届く前に、どこへでも逃げおおせることが出来る。

彼にとって脅威となるのは、
空間転移の転移先まで見通すことの出来る、モナーの『千里眼』のみ。

加えて、銀はモナーとの闘いで消耗し切っている。
あれだけ無茶な再生をすれば、もう殆ど力は残されていない筈だ。



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:48:36.76 ID:x1NV07/J0
イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
だが、それでも銀はセントジョーンズに斬りかかった。
大上段に刀を振り上げ、唐竹割りにセントジョーンズの脳天目掛けて斬り下ろす。

(’e’)「やれやれ、無駄なことを」
銀の刃がセントジョーンズに触れる寸前、
セントジョーンズの姿がその場から消失した。

(’e’)「どうする? 付き合っても構わないが、延々と無意味なことを続けるつもりかね?
直後、銀の背後にセントジョーンズが姿を現す。
そう、このまま銀はセントジョーンズに触ることすら出来ない、その筈だった。
だが――

(’e’)「…………?」
だが、触れることすら出来ない筈のセントジョーンズの心臓に、
銀の投げた匕首が突き刺さっていた。



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:49:19.47 ID:x1NV07/J0
(’e’)「な――何ィ!?」
セントジョーンズが叫んだ。

何故だ。
何故、こんな攻撃を喰らった?

適当に投げた匕首が、まぐれ当たりをしたのか?
いや、あの女はそんなものを期待するような奴ではない。
この匕首は、はっきりこの自分に当てるつもりで投げたのだ。

だけど、どうして。
どうして空間転移する先が予測出来て――

イ从゚ ー゚ノi、「るおォォォッ!!」
混乱するセントジョーンズを他所に、銀はすかさず斬りかかった。

(’e’)「くッ!!」
再度、攻撃が命中する寸前に空間転移で回避する。

まずい。
何が起こっているのかは判らないが、とにかくまずい。
ここは兎に角、逃げ――



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:50:17.39 ID:x1NV07/J0
(’e’)「――?」
空間を転移した瞬間、セントジョーンズは見た。
銀の振るった刃が、セントジョーンズの首の、すぐ直前まで迫っているのを。

(’e’)「え――?」
何が起こったのか考える暇も、
空間転移で逃げる暇も無く、
セントジョーンズの首が斬り離され、頭部が宙を舞った。

(’e’)「どうして――」
その時、偶然にセントジョーンズの視界にあるものが移った。

モナーの死体。
その死体から、右目が無くなっているのだ。

(’e’)「ま、まさか――!」
首だけの状態で目だけ動かして、セントジョーンズは銀の顔を見た。
そこには――

イ从゚ ー゚ノi、「――――」
セントジョーンズの知る銀の目とは、明らかに異なる右目。
全てを見通すかのような、昏い瞳。
それはまさに、モナーの瞳に相違無かった。

(’e’)「まさか、モナーの――」
セントジョーンズの頭が、ごとりと地面に落ちた。



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:52:34.32 ID:x1NV07/J0



イ从゚ ー゚ノi、「どうした、空間転移で逃げないのか?」
転がったセントジョーンズの首を見下ろしながら、銀が言った。

(’e’)「……無茶を言うな。
    この状態で能力を使う力など、残っているものか」
首だけの状態で、セントジョーンズが答える。

(’e’)「……しかしまさか、モナーの千里眼を移植するとは――
    本当に最後まで、君は私を楽しませてくれる……」
イ从゚ ー゚ノi、「それ以上下らないことを抜かすな。
       儂は、お前を楽しませる為に生きているわけではない」
吐き捨てるように、銀は言った。

(’e’)「どちらでもいい……
    私が、勝手に楽しんでいるだけのことだ。
    楽しかったぞ。 人間や人外が、駒の様に私の手の平で踊るのは。
    ……そのうち、君にも判るだろう」
イ从゚ ー゚ノi、「判ってたまるものか!
       ――儂は、貴様とは違う……!」
銀は言って、セントジョーンズを睨んだ。



98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:54:32.68 ID:x1NV07/J0
(’e’)「……違わないさ。 君も結局、私と同じ。
    その身の内に、孤独と退屈という狂気を飼う化物だ。
    断言しよう。 君は必ず、私と同じ道を辿る。
    何故なら君は、私と同じ化物だからだ……」
イ从゚ ー゚ノi、「……遺言はそれだけか。
       なら、もう黙らせてやる。
       これ以上、貴様の戯言など聞きたくはない」
銀がセントジョーンズに日本刀の切っ先を向けた。

(’e’)「ククク…… 私を殺して、どうするのかな?
    モナーを殺した今、君の理解者はもう誰もいない。
    あのドクオという男も、君のことなど判りはしない。
    何故なら彼は、所詮は人間だからだ」
セントジョーンズが、呪いのように言葉を紡ぐ。

(’e’)「誰も君の傍には居てくれない。
    何故なら君は化物だからだ。
    君は、永遠に一人ぼっち――」
イ从゚ ー゚ノi、「――――!」
セントジョーンズが最後まで言い終わる前に、
銀はその頭部を真っ二つに斬り裂いた。
続けて、原形を止めなくなるまでその肉片を斬り刻む。

イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
何度も何度も、細切れになるまで斬り刻み続けた。
だが、セントジョーンズのあの邪悪な笑みが、脳裏に焼きついたまま離れない。



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:56:13.81 ID:x1NV07/J0



(’e’)「君は、永遠に一人ぼっちなのさ」



イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
そんな事は判っている。

だがそれでも、誰かと共に生きたいと願ってはいけないのか。
そんなことすら、許されないのか……!

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
……今はそんなことを考えるのは止めよう。
こうしている間にも、ドクオはどこかで闘っている筈だ。
すぐに、助けに行かなければ――

イ从゚ ー゚ノi、「!!?」
と、銀の体が地面に崩れ落ちた。
慌てて立ち上がろうとするも、指一本動かせない。



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:57:07.67 ID:x1NV07/J0
イ从゚ ー゚ノi、「な……!」
無理も無いことだった。
モナーとの闘いで既に体は限界を超え、
加えてモナーの『千里眼』を移植するという行為は、
確実に銀の体力を奪っていた。

イ从゚ ー゚ノi、「く……そ……!」
駄目だ。
こんなところで倒れているわけにはいかない。

ドクオが、まだ闘っているのだ。
行かなければ。
行かな――

イ从゚ ー゚ノi、「――――」
だが、銀の意識を辛うじて繋ぎとめていた精神も磨耗し切り、
銀はそのまま深い眠りの闇へと落ちていくのだった。


〜第二部 第十六話 『夢の終わり 〜銀獣VS魔弾〜』 終
 次回、『ドクオは正義のヒーローになれないようです』乞うご期待!〜



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/20(日) 10:57:58.27 ID:x1NV07/J0
この番組は

多分次で最終回
俺達の闘いはこれからだッ!

の提供でお送りしました。



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