ξ゚听)ξツンが感情を喰うようです

3: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 22:56:12.35 ID:Tfv7UY3TO
  
外は涙のように、雨が降り注いでいる
ドクオの病室、今は一人部屋だ
特に機械に繋がれる訳でもなく、彼は眠りについている

頭には白い包帯、所々にも治療の後。
現在11時、彼は15時間以上も眠り続けている

病室の扉が静かに開いた。
初老のおばさんが中に入ってくる。
手にはスーパーの物と思われる、不透明な白い袋


J( 'ー`)し「あら、ハインちゃん…?」


ドクオは白い布団を被りながら眠る。
その白のベッドの横から、
ドクオの胸を借りる形でハインが寝息をたてていた


J( 'ー`)し「ハインちゃん、風邪引いちゃうわよ?」


おばさんがハインの肩を優しく揺すった。

雨は降り続いている



4: 短大生(コネチカット州) :2007/04/20(金) 22:59:08.07 ID:Tfv7UY3TO
  
12 楽して金を



――――



土曜日の11時
私はあの非日常を忘れたくて、お向いの彼を呼んだ


( ^ω^)「おじゃましまーすおー」

ξ#゚听)ξ「ちょっと!足拭きなさいよ!」

( ^ω^)「大丈夫だおー!」


もはや我が家が如く、ドタドタと上がり込むブーン。
まぁ、昔からお互い家族ぐるみの仲だけどさぁ…



5: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:01:19.90 ID:Tfv7UY3TO
  
ξ;゚听)ξ「まるで小学生よ…」


リビングに駆け込んだブーンを、駆け足で追う
水で足跡がくっきりだ



川 ゚ -゚)「久しぶりだなブーン」

( ^ω^)「……」

( ゚ω゚)「……」

( ^ω^)「クーおいすー」

ξ;゚听)ξ「順応早いなぁ」


ソファに横になり、TVを見ていたクー
彼女は昨日、家に泊まっていった

クーも中々ずうずうしいが…まぁいいや。
今は親も居ないし、超お気楽一家だし



8: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:10:51.36 ID:Tfv7UY3TO
  
( ^ω^)「久しぶりだおね、学校辞めたんだお?」

ξ;゚听)ξ「直球すぎるわよ馬鹿」

川 ゚ -゚)「いや、構わんさ。
     今は後悔しているしな」


クーが体を起こし、
矢吹ジョーの真っ白な灰になったぜスタイルになり、語り出した。


 ∧_∧
川 ー )「一人よがりだったんだ、私は。
     人の気持ちなんて考える気も無かった。
     まさか高岡に気付かされるなんて…な」


ξ゚听)ξ「ハインか…。
      まぁ、とりあえずフードを取りなさい」


クーは私のパジャマを着ている。
白色のモッフリとしたパジャマ

まぁ問題点はネコ耳フードが付いてる事か…
ブーンが去年の誕生日プレゼントに寄越しやがった



11: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:14:29.15 ID:Tfv7UY3TO
  
( ^ω^)「ハイン?誰だお?」


いつの間にかクーの横に座っていたブーンが聞いた。
なんで私が立ちっぱなしなのよ


ξ゚听)ξ「後輩よ。あんたはテレビでも見てなさい」


昨日は家に帰ってすぐ爆睡だった
起きたのもついさっき。
クーと ちゃんと話すのは今が初めてだった


(;^ω^)「なんで呼んだんだお…?」

ξ゚听)ξ「どうせ暇でしょうが」

( ^ω^)「ビリーズブートキャンプ買おっかなー」


もうテレビショッピングに夢中である。
私は気にせず一人掛けのソファに座った



12: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:16:08.99 ID:Tfv7UY3TO
  
ξ゚听)ξ「所で、あのヒートって子は…」


フードを取った矢吹スタイルのクーは、その口を開く


川 ゚ -゚)「双子だ、私が姉でヒートが妹。
     11の頃、親が離婚してな…理由なんか知らんが。
     母親の方に私が引き取られ、離れ離れになったんだ」


クーは冷静に、まるで他人事の様に話す。


川 ゚ -゚)「中学2年の時に母親が再婚した。
     だが先月、元父親がヒートを預けて来たんだ」

ξ゚听)ξ「なら…よかったじゃない」


私がそう言うと、クーは俯きながら声のトーンを下げた


川 ゚ -゚)「私は…彼女の事を考えなかったんだ
     いや、判る筈も無かっただろうな…
     感情に…踊らされたんだ」

( *^ω^)「ビリーかっこよす!」



13: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:18:23.91 ID:Tfv7UY3TO
  

――――



(´・ω・`)「やぁようこそ」

ミ,,゚Д゚彡「貸し切りか、贅沢だな」


喫茶バーボンハウス
カウンター内に、無駄にカラフルなエプロンを着たショボン
カウンター席にはタバコを吹かす黒服のフサギコ


(´・ω・`)「フサギコ…さん」

ミ,,゚Д゚彡「呼び捨てで構わん」

(´・ω・`)「フサギコは仕事何やってんのさ」

ミ,,゚Д゚彡「ホスト」


ふぅー…と、煙を吐き出す。
ショボンはコーヒーを注ぐと、ホストの前に置いた



15: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:21:22.16 ID:Tfv7UY3TO
  
ミ,,゚Д゚彡「あ、ミルクと砂糖とガムシロ2つずつ」

(´・ω・`)「…君の株が急激に下がったよ」


フサギコはタバコをもみ消し、コーヒーに糖分を入れまくった


ミ,,゚Д゚彡「お前、ここは一人でやってんのか?」


茶がかったコーヒーをスプーンで掻き混ぜながら、フサギコが聞いた


(´・ω・`)「19の時に兄さんから任されたんだ。
      経営難でバイトとかは雇ってない」


ショボンはもう一杯コーヒーを注ぐと、フサギコの隣に座る


(´・ω・`)「ふぅ…我ながら美味い。
      …幼少時代は貧乏でさ
      お金があれば…なんて何度思ったか」

ミ,,゚Д゚彡「俺にはお前が「楽して稼ぎたい」
      って言ってる様に聞こえたんだが」



17: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:23:07.09 ID:Tfv7UY3TO
  
昨夜の言い争い。
フサギコは弟を想い、ショボンは自分を想っていた。

今わだかまりが無いように見えるのは、彼らが接客業だからかもしれない


(´・ω・`)「楽して稼ぐ、最高だと思うよ」

ミ,,゚Д゚彡「俺だってそうさ。実際役に立ってる」


嫉妬を喰うフサギコ、ホストとして使わない手はないだろう。


ミ,,゚Д゚彡「だがギコは、弟は恐怖で上に立ってるんだ。
      その危うさ、判るだろう?」


力強く、言った。

目の前には楽して金を稼ぐ方法があり、後方には不幸になる人間がいる

それがショボンの状況である。



20: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:26:04.94 ID:Tfv7UY3TO
  
(´・ω・`)「…今、兄さんの事業が成功している
      実家の方にも仕送りはしているから、安泰かな
      …僕が頑張る必要は、自分の為なんだ」


ショボンは淡々と語る。
彼の気持ち、人間として恥じるべき考えでは無い


(´・ω・`)「この店を継いだのは楽そうだからさ
      人の気持ちを知るのも楽しいしね。
      ただ、経営が保たなくなってきたんだ」
ミ,,゚Д゚彡「……」


2人は目を合わす事なく、正面を見ている。
お互いの胸の内を曝け出している。
自分の弱い所を、相手に見せている。

だけどショボンは、自分の弱さを恥じていた
生きる上で、他人を考える事の危うさを知っていたから

幼少時代の極貧生活は、彼の他人に対する考えを変えた。
金が全ての世の中で、人を信じない事。
それは人生の強さであり、心の弱さだ。



21: 短大生(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:30:37.65 ID:Tfv7UY3TO
  
ショボンはその、弱さを恥じた。

だからこその、結論。


(´・ω・`)「だけどさ…僕は大人なんだよね。
      子供の頃とは違う心で生きてみるのも…いいのかもしれない」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、案外楽しいかもしれないぜ」


2人が目を合わせる。
フサギコはニッと、爽やかな笑いを見せた

ショボンも微笑み、明るい声で言葉を紡いだ。


(´・ω・`)「人の幸せを願うのも…格好良いかな?」

ミ,,゚Д゚彡「最高に、格好いいぜ」


他人の幸せを願う。
それこそが幸せな事かもしれないと、ショボンは気付いた。



――――



22: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:32:05.69 ID:Tfv7UY3TO
  


……



あの…金髪が……



畜生……



俺は……



弱いなぁ……




( 'A`)「……ぁ」


どこだ?白い天井が見えるが…
つか頭痛いな……



24: 短大生(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:34:57.11 ID:Tfv7UY3TO
  
从;゚∀从「ドクヲ!」



高岡………ヲ?



J(;'ー`)し「たけし!」



カーチャン………たけし?


(;'A`)「だ…誰だよ…たけしって…」



从;゚∀从「ドクオ!大丈夫か!?」

J(#'ー`)し「ナァース!コオォール!でやぁ!」


…高岡が俺をぐわんぐわん揺さぶり、カーチャンはボタンを連打している

…何だここは



26: 短大生(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:36:07.95 ID:Tfv7UY3TO
  
从;゚∀从「大丈夫なのか!? おい!おい!おい!」


頭が痛いです


((((;''AA``)))「とり…あえ…ず…落ち…着け」

J(;'ー`)し「ホゥアタタタタタタタタタタァ!!」


カーチャン!そこは経絡秘孔じゃないよ!


「どうしました!」


あぁ…白衣の天使とはまさにこの事だ…

てゆか病院だったのか。地獄かと思ったぜ…



――――



28: 短大生(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:39:13.80 ID:Tfv7UY3TO
  
从 ゚∀从「…大丈夫か?」

( 'A`)「お前のせいで傷口が開きかけたそうだ」

从;゚∀从「…ごみん」


ごみんで済むか…とも思ったが、まぁ心配してくれたんだろう。


J( 'ー`)し「あんたのせいでナースコーラーがバラバラに砕け散ったわ」

(;'A`)「お前がやったんだろが!
     つーか、それナースコーラーっていうのか!?」

从 ゚∀从「…お前そんな突っ込みキャラだったか?」


誰のせいだよ…


( 'A`)「んで、俺はいつ治る」

J( 'ー`)し「全治1ヵ月よ」

从 ゚∀从「安心しろ、俺が仇討つからよ」



30: 短大生(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:41:05.74 ID:Tfv7UY3TO
  
高岡が肩に手をやり、親指を立てて言った。
見えはしないが、誰でもわかる。

高岡とカーチャンの喜びが


( 'A`)「…心配かけて、ごめん」

J( 'ー`)し「ハインちゃんは一晩中付き添ってくれてたんだから」


…マジで?


( 'A`)「高岡…お前…」

从 ゚∀从「…死ななくてよかったぜ」


高岡の目が少し潤んだ。
俺はそれだけで、胸が一杯になる


J( 'ー`)し「ふふ…邪魔者は退室〜」


ムーンウォークで病室を出て行くカーチャン。


…しっかり出入口の隙間から除いてやがる。



31: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:43:19.83 ID:Tfv7UY3TO
  
从 ゚∀从「…悪かったな」

( 'A`)「あ?なんだ急に」


高岡が窓の外を見つめ、話しだした。
雨か…灰色の空と、水滴の模様が窓に掛かっている。


从 ゚∀从「あの日俺だけサボってさ…」

( 'A`)「…お前、そんな事考えてたのか」


何言うかと思ったら…
そんな事で責任感じてたなんてな…


( '∀`)「強がってても、やっぱり女の子なんだな」

从 ゚∀从「ドクオ…」


高岡が振り返り、こちらに近づく。


从#゚∀从「調子乗んな」

(;'A`)「ごふぁ!!」



32: 解放軍(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:45:08.04 ID:Tfv7UY3TO
  
肘に全体重をかけ、俺の腹に飛び乗ってきた。
仮にも怪我人に、いや一般人にもやっちゃダメ!絶対!



( *゚ー゚)「こんにちは」


腹の激痛に耐えていると、しぃさんがやって来た。
手には花。
お見舞いか…そういえば入院なんか初めてだ。


( *゚ー゚)「具合はどう?」

( 'A`)「高岡が居なければ最高でした」

从#゚∀从「人がどれだけ心配したと!?」


鬼気迫る顔で、俺に迫る高岡


( 'A`)「はいはいすみませんでした〜」


その顔を見ると、からかいたくなる



33: 短大生(コネチカット州) :2007/04/20(金) 23:48:27.28 ID:Tfv7UY3TO
  
从#゚∀从「流石に切れたぜ…!」


腕をブンブン回す高岡の前に、颯爽としぃさんが現われた


( *゚ー゚)「ほら、もう時間よ?」

从 ゚∀从「…あ〜」


怒りを喰ったな…朦朧としている…
目は虚ろで口は開きっぱなしだ


( *゚ー゚)「それじゃあドクオ君、また来るわね」

从 ゚∀从「ギャハハハハハハハ」

(;'A`)「あ、はい…」


突然笑いだした高岡を引っ張って、しぃさんが退出。

不気味な高笑いが病院の廊下に響き渡っていた。



戻る13へ