ξ゚听)ξツンが感情を喰うようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 22:37:54.56 ID:a9brf9l9O
- 20 ひねくれ者の純粋な涙 中編
(´・ω・`)「ほら漕いで漕いで!」
(;'A`)「ウォォォォォォオ!!」
上半身裸の男が、立ち乗りで自転車を漕いでいる。
頭と手の包帯が痛々しい。
(;'A`)「なんで俺が前なんすか!!」
(´・ω・`)「君の方が体力あるだろ」
後ろに座った男、ショボンが涼しげに言う。
2人乗りとは思えないスピードだった自転車。
だが5分程で河川敷まで来ると、ドクオも疲れて座ってしまった。
息を切らしながらも、足は止めていない。
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 22:40:08.75 ID:a9brf9l9O
- (´・ω・`)「ところで、ハインは強いの?」
(;'A`)「あー……まぁ、そのへんの奴になら負けないっすよ」
(´・ω・`)「へぇ〜」
( 'A`)「……前に2人でゲーセン行った時、
アイツが金貸してくれって言ってきたんすよ。」
(´・ω・`)「それで?」
( 'A`)「そん時もう3000円は貸してて。
お前返さないから嫌だ、って言ったら……」
(´・ω・`)「嫌な予感がする」
(;'A`)「突然暴れだして……。
ゲーセンの椅子で殴られました」
(´・ω・`)「あちゃー」
(;'A`)「キレると止まらないんすよ。
しかもアイツ、どこが沸点か判らなくて……」
(´・ω・`)「……ただのDQNじゃないか」
( 'A`)「だからジョルジュが憎しみ与えたら、死人が出ますよ」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 22:43:06.69 ID:a9brf9l9O
- (´・ω・`)「じゃあ急がないと」
(;'A`)「はい……」
(´・ω・`)「……」
(;'A`)「……」
(´・ω・`)「……」
(;'A`)(降りろよ……)
(´・ω・`)「……」
(;'A`)「……」
(´・ω・`)「……」
(♯'A`)「チクショォォォォォォオ!!」
(´・ω・`)「GO GO GO!!」
――――
从'ー'从「つまり、クーちゃんには意味が無いんだね?」
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 22:46:19.71 ID:a9brf9l9O
- 川 ゚ -゚)「あぁ、まぁそういう事だ……」
从'ー'从「なるほどなぁ〜」
川 ゚ -゚)「それで、だ」
かしこまるように、渡辺の方を向くクー。
いつもの様に顔は涼しげだが、目は少し泳いでいる。
川 ゚ -゚)「私の力は、私には必要無い。
君の力も……だ」
从'ー'从「……必要だよ、私には」
川 ゚ -゚)「必要ないさ。君は幸せを知っているだろう?
自分を信じて、その幸せを目指すんだ」
从'ー'从「……無理だよ」
川 ゚ -゚)「私も手伝う! 出来る事は何だってする!」
从'ー'从「……無理なの」
川;゚ -゚)「無理じゃない! やるんだ!」
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 22:48:21.46 ID:a9brf9l9O
- 从 − 从「いじめられてた子が、みんなを笑わせるなんて……」
絶望の井戸の底に居た。
そこに垂らされた希望の糸。
掴んだ先で、自分は輝いた。
もう1度、底に行く勇気は……。
川 ゚ -゚)「好きな人が居るんだろう!?
君を支えてくれる人は、たくさん居る!」
从 ー 从「そんな事ないもん……」
喜びは至福のものだ。
渡辺のそばに居れば、喜べる。
渡辺は、喜びを知りすぎた。
从;−;从「私と居れば喜べるから、みんな私の傍に来たの!!
力の無い私なんか必要無いの!」
最悪の考え方。
だが渡辺には、その考えしか出来なかった。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 22:50:10.95 ID:a9brf9l9O
- 川 ゚ -゚)「……逃げないで、現実を見るんだ。
君がいじめられたという事実は、今は昔の事だ。
力が消えても、思い出は消えない」
从;−;从「……判ってるよ、全部。
でも、私には勇気なんか無いもん。
絶対じゃない事を試す勇気なんか、無いんだもん……」
川 ゚ -゚)「……自分の為に、だ。
私が生きる為に、君には生きてほしい。
君が自分の為になら、いくらでも私を使っていい!」
从;−;从「先に辛い事しか無い人生なら……いらない!!」
渡辺は、ブーンに似ていた。
そして渡辺は、クーにも似ていた。
川 ゚ -゚)「渡辺……私はそう言って、自殺しようとしたんだ」
从;−;从「ぇ?」
川 ゚ -゚)「希望を貰ったんだ、1人の少女に。
だがその少女も、ただの人間なんだ」
川 ゚ -゚)「……私には、帰った時に抱き締めてくれる人がいる。
私は君を、抱き締めてあげたい」
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 22:55:17.78 ID:a9brf9l9O
- 川 ゚ -゚)「君を喜ばせたい」
从;−;从「……ありがとう。
でもやっぱり、私には力が必要なの」
川 ゚ -゚)「必要ないんだ! 君が笑えば、私も笑う!
力なんか無くても、君は私を喜ばせる事が出来る!」
『何か』とは、『他人』だった。
川;゚ -゚)「私が嬉しかった事を、君にも教えてあげたいんだ!!」
从 ‐ 从「……力は……私の」
ハインとヒートの様に真っすぐ生きる人間になりたい。
从;‐;从「私の生命なの! 誰にも奪う権利なんてないの!」
川;゚ -゚)「君は十分、十分に魅力的だ。
自分に自身を持つんだ」
从;‐;从「嘘よ!! だまされないもんっ!
私なんか……何もできないんだよっ!!」
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 22:58:00.95 ID:a9brf9l9O
- 川 ゚ -゚)「私は嘘はつかない。泣くな、渡辺」
ゆっくりと、渡辺に近づく。
从;‐;从「来ないでよ! 私の存在意義を!
奪わないでよぉぉぉぉぉぉお!!」
近寄るクーを右腕を払い、遠ざける。
渡辺はそのまま、駆け出した。
現実から逃げ、公園を飛び出る。
川;゚ -゚)「渡辺!! 待て!!」
クーも走りだし、渡辺の後を追う。
2人は街中に入って行った。
あまりに人が多い街中に。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 22:59:37.68 ID:a9brf9l9O
嫌……嫌……嫌……
なんで私を否定するの?
なんで私を馬鹿にするの?
なんで私に纏わりつくの?
从;‐;从「……なんで」
なんでみんな笑ってるの
私が泣いてるのになんで笑ってるの
なにが可笑しいの
私が可笑しいの?
笑わないでよ……こっちを見ないでよ……
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:01:23.05 ID:a9brf9l9O
- 喜ばないでよ……喜ばないでよぉ……
私が泣いてるのに、喜ばないでよぉ……
「関係ないもん! 私はみんなが笑顔になればいいの!」
……うるさい
「それじゃあ私が笑顔にならないもん!」
……何がいけないの?
「良い事さ、確かにな。誰だって幸福を求めている。
だが君は君なんだ、自分も大事にして生きろ。
その力は永遠の物じゃない、ひどく脆い力だ」
……自分を大事に? 私は私?
いじめられないために餌の力が与えられた?
なら尚更捨てたくないよ……
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:02:26.42 ID:a9brf9l9O
- じゃあなんでみんな笑ってるの?
私が泣きながら走ってるのを横目で見て、なんで笑ってるの?
……全然変わってない
みんなが笑顔になって、私も笑顔
それが私の幸せだよ?
みんなを笑顔にする為に、私が辛い人生を歩むのは嫌
……嫌
助けて……苦しいよぉ……
嫌なの……全部嫌……
助けて……救けて……
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:03:30.19 ID:a9brf9l9O
- ……誰か私を救けてよぉ
从;―;从「助けてよぉぉ……」
…………
………
……
…
从'ー'从「嫉妬?」
(´<_` )「あぁ、嫉妬だ。した事無いか?」
弟者くん……。
私の前の席で、一ヵ月前に話し掛けてきた。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:05:03.44 ID:a9brf9l9O
- _,、_
从'−'从「ん〜……嫉妬……む〜……」
(´<_`;)「そんな考えるか……」
……私の好きな人。
从'ー'从「よくわかんないなぁ〜」
(´<_` )「そうか、まぁ判らないならいいよ」
从'ー'从「それで? 嫉妬がどうかしたの〜?」
嫉妬って……感情?
嫉妬の餌もあるの?
弟者くん?
私は……弟者くんに嫉妬してたの?
違う。
弟者くんに嫉妬してたんじゃない
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:06:06.64 ID:a9brf9l9O
- 弟者くんを誰にも渡したくなかった
弟者くんに話し掛けてる子を忌々しく思った。
“嫉妬”してたんだ
もし弟者くんが“そう”なら、私はまだ彼を好きなのかな……?
わからない、わからないよ……
川;゚ -゚)「渡辺!!」
……クーちゃん、足早いなぁ
从;−;从「クーちゃん……助けて……」
自殺って……絶望した時にするんだなぁ……
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:07:46.10 ID:a9brf9l9O
- 川 ゚ -゚)「あぁ、絶対に君を……」
もう一度生きようって思う時は……
从;ー;从「ありがとう」
希望が見えた時なんだなぁ……
――――
川 ゚ -゚)「そうか、嫉妬が……」
草むらに座り、明るい日を浴びながら海を見つめる二人。
どこかぼんやりとした表情で、クーが呟く。
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:09:28.01 ID:a9brf9l9O
- 街中を抜けた先、海が見える小さな丘。
夕方時にもなれば綺麗な夕日が見れるであろう場所。
少し丸みを帯びた水平線が見える。
从 − 从「……もうわかんないよ。何もしたくない。
何をすればいいのかも……わかんない」
体育座りをしながら、渡辺が言う。
頭を膝につけ、顔が隠れる。
川 ゚ -゚)「簡単さ。確かめに行こう。
君の好きな人の所へ、君の気持ちを確かめに。
いつまでも止まってはいられない」
从 − 从「……」
川 ゚ -゚)「私も一緒に行く。それなら心細くないだろ?」
从 − 从「……うん」
川 ゚ -゚)「それで……力を消そう。
やっぱり必要無い。誰にも、だ」
从 − 从「……うん」
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:10:45.10 ID:a9brf9l9O
- 川 ゚ -゚)「……恐いか?」
从 − 从「……恐い、よ。
でも行かないと……駄目なんだよね?」
川 ゚ -゚)「誰かの為ではなく、自分の為にだ。
私も私の為に、君を手伝う」
从 ー 从「……正直だね、クーちゃん」
川 ゚ -゚)「む……すまない」
从'ー'从「うぅん、そっちの方が嬉しいよ。
今、笑わないでいてくれるのはクーちゃんだけだから」
川 ゚ -゚)「……渡辺」
顔を上げた渡辺に向き直り、クーが言う。
今はその冷たい目がありがたかった。
赤い目をしながら、渡辺は思った。
川 ゚ -゚)「笑顔を嫌いにならないでくれ。
他人を嫌いにならないでくれ。
その力を嫌いにならないでくれ。
自分を嫌いにならないでくれ」
从;'ー'从「な、なに突然……」
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:12:08.55 ID:a9brf9l9O
- 川 ゚ -゚)「悪い物なんか、なんにも無いんだ。
私は他人が嫌いだが、君には全てを愛してほしい」
从'ー'从「……できるかな? 私なんかに」
川 ゚ -゚)「できるさ。今まで君はそうだったんだから。
力だってそうだ。力が無ければ、私達は出会う事は無かったよ」
从'ー'从「……じゃあ、クーちゃんも約束して」
川 ゚ -゚)「ん、何だ? 金ならやらんぞ」
从#'ー'从「違うよぉ〜! この場面でそんな事言わないよ!」
川 ゚ー゚)「ははは、冗談だよ。
それで? 約束とは何だ?」
渡辺は膝に鼻が付くくらい小さくなり、上目使いで口を開いた。
从' '从「私と……友達になってくれる?」
川 ゚ -゚)「だが断る」
从;'д'从「えっ!?」
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:13:35.57 ID:a9brf9l9O
- 驚き顔を上げた渡辺の頭に、クーが手を置いた。
川 ゚ー゚)「親友になら、なってやろう」
頭を優しく撫でながら、クーはそう言った。
渡辺は……
从*;ー;从「……うん」
川 ゚ー゚)「泣くな渡辺。君が泣いていたら、誰も笑えない」
从*;ー;从「だってぇ……嬉しいんだもん」
人差し指で、渡辺の涙を拭うクー。
少しくすぐったがりながら、渡辺は嬉しそうに笑った。
从*^ー^从「ありがとう、クーちゃん」
川 ゚ー゚)「あぁ、素晴らしい笑顔だよ」
言いながらクーは立ち上がり、手を差し出した。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:15:07.35 ID:a9brf9l9O
- 川 ゚ー゚)「それじゃあ行こうか」
从'ー'从「うん……」
川 ゚ー゚)「大丈夫、ほんの少しの勇気でいいんだ。
半歩でも踏み出せば、それは前進なんだから」
差し出しされた手を握り、渡辺が立ち上がる。
潮風が渡辺の涙を乾かしていた。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:16:37.03 ID:a9brf9l9O
从'ー'从「弟者くんの家に行くんだよね?」
川 ゚ -゚)「あぁ、だがその前に……」
言いながら携帯を取り出すと、少しいじり、耳に当てた。
3秒程で耳から離し、携帯を見つめるクー。
渡辺は小首を傾げ、不思議そうに見ている。
すぐに携帯は鳴りだし、クーはもう一度耳に当てた。
『もしもしクーちゃん? どうしたの?』
川 ゚ -゚)「ワンコだ。通話代がもったいないからな」
『せこいわね……』
川 ゚∀゚)「これでもニートだからな! わーはっはっはっは!」
『……。それで? どうかした?』
川 ゚ -゚)「ゴホン……うむ、嫉妬が見つかったんだ。
今から渡辺と一緒に行くつもりだ」
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:18:36.79 ID:a9brf9l9O
- 『ホント!? ちょっと待ってて!』
『―――フサギコさん! 嫉妬の餌が見つかったそうです!』
『―――な、なんだってぇー!!』
『―――動くなよ!』
『―――いって! てめぇ優しくやれやゴラァ!』
『―――だから動くなって言ったんだろがゴラァ!』
『―――てめぇ兄貴に向かってなんだその口の聞き方は!!』
『―――平等っつたのどこの誰だよゴラァ!』
『―――言葉の綾だろうが!』
『―――てめぇ嘘つきやがったのか!!』
『――― 一晩考えた必死の策だ文句あっかゴラァ!』
『――― 一晩考えてあんなガキみたいnゴフッ!!』
『―――………』
『―――すみませんでした』
川 ゚ -゚)「……もしもーし」
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:20:19.30 ID:a9brf9l9O
――――
从♯゚∀从「死ね! 3回死ね!」
(;゚∀゚)「本当に女か……?」
('、`♯川「暴れんな!」
薄い草原にハインがうつぶせになっている。
背中の上にはペニサスが乗り、片腕を絞められていた。
恐らくハインに殴れたのだろう、左頬を押さえながらジョルジュが言う。
( ゚∀゚)「ドクオはどうした」
从♯゚∀从「来ねぇよ!」
( ゚∀゚)「……自分から呼んどいて、来ないだと?
舐めやがってよぉ……」
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:22:13.20 ID:a9brf9l9O
- 从 ゚∀从「……なんでドクオを狙うんだよ」
( ゚∀゚)「お前らと一緒だ。気に入らない奴は殴る。
ドクオみたいな奴は大っ嫌いなんでね」
その言葉に一つ反応し、ハインはジョルジュを睨む。
怒声でも上げるかと思われたが、その意に反してハインは小さく話す。
从 ∀从「んな事聞いてねぇんだよ……。
なんで襲ったかって聞いてんだ」
( ゚∀゚)「言っただろうが。“嫌い”だからだ」
ジョルジュが見下しながら言った言葉。
ハインは腕を掴むペニサスを力尽くで振りほどき、立ち上がる。
从♯゚∀从「嫌いなら最初っから正々堂々てめぇでやれよ!!
嫌いって理由だけで殺しかける様な真似すんじゃねぇよ!!」
( ゚∀゚)「親切に忠告してやったよ、俺は。
まぁ聞く耳持ってなかったがな」
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:24:10.44 ID:a9brf9l9O
- このジョルジュの言葉を切っ掛けにハインが動く。
一瞬反応したジョルジュだったが、ハインの両手はペニサスの襟元を掴んだ。
腕を振りほどかれ、尻餅をついていたペニサスを無理矢理立たし、ハインは怒鳴る。
从♯゚∀从「てめぇもてめぇだ!! なんでアイツに何もしてやんねぇ!!」
('、`♯川「みんながみんなアンタみたいに強くないのよ……!」
从♯゚∀从「好きな奴が間違ってる事してたら、殴ってでも止めるんだよ!!
それくらいできるだろ!!
恐いんなら最初から好きになんてなるんじゃねぇよ!!」
怒声で捲し立てるハイン。
少しだけ、自分に言い聞かせるように。
('、`♯川「私は嫌われたくないの!
ジョルジュさんがしたい事はさせるの!」
从♯゚∀从「人殺しもさせんのか!」
('、`;川「それは……そうだけど」
从 ゚∀从「だけど、なんだよ」
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:26:45.97 ID:a9brf9l9O
- ('、`*川「……私とアンタは違うのよ。
ジョルジュさんがYesなら、私もYesなの」
ペニサスが言うと、ハインは焦った顔をしながら手を離した。
一歩後退したハインを、ペニサスは不思議そうな目で見つめる。
ついさっきまでキレていた人間とは思えぬトーンでハインが口を開いた。
从;゚∀从「お前、まさか……」
('、`*川「……なによ?」
从 ゚∀从「 ┣" M だ な ? 」
('、`;川「なっ!?」
从 ゚∀从「アレだろ? 命令されたいんだろ?
無茶な命令とかされたいんだろ?」
('、`♯川「されたくないわよ!」
从 ゚∀从「や〜いや〜い、へんたーい!」
('、`♯川「誰が変態よ!」
从 ゚∀从「尻ひっぱたいてやろうか?」
('、`♯川「死ね!」
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:28:28.26 ID:a9brf9l9O
- ( ゚∀゚)「……帰るかな」
ジョルジュが踵を返し川の方に背を向ける。
あまりに馬鹿げた会話をする2人を置いて帰ろうとした時。
丘の上に、待ち望んでいた人間の姿を見つけた。
( ゚∀゚)「……ドクオ」
从;゚∀从「なにぃ!?」
――――
畜生頭いてぇなぁ……。
喧嘩なんかできんのか……?
両手ヒビはいってるんだぜ?
(´・ω・`)「大丈夫かい?」
( 'A`)「まぁ……何とかなるんじゃないすか?」
言いながら自転車を降りる。
何とかなる、とは言ったが……
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:30:07.19 ID:a9brf9l9O
- 内心は緊張しまくってたりする。
ジョルジュと喧嘩する事にビビってる訳じゃない。
実際ジョルジュは強いが……
緊張してるのは、その後の出来事についてだ。
高岡に……あれ? いないぞアイツ。
丘の下には腕組みして睨み付けるジョルジュと、哀しみの餌……なんとかさんしか居ない。
さっきまでアイツは
从♯゚∀从「うぉい!!」
(;'A`)「うぉお!?」
从♯゚∀从「お前なんで来てんだよ!」
いきなり目の前に現われんなよ……。
そして服掴めないからって首を絞めるな
从♯゚∀从「おい! 何とか言え!」
(; A )「ぐ……ぐるじ……ぃ」
从♯゚∀从「あ!? ちゃんと喋れや!!」
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:32:22.45 ID:a9brf9l9O
- (´・ω・`)「うわぁ、青くなってるなぁ……。
間近で見るとグロいなぁ……」
( A )「……」
ラン ランララ ラ ラ ラン
ラン ランラララ〜
ラ ラン ランララ ラ ラ ラン
ラ〜 ララララ ラン ラン ラ〜
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:34:04.66 ID:a9brf9l9O
- (=゚ω゚)ノ『力が欲しいか?』
(;'A`)「誰?」
(=゚ω゚)ノ『力が欲しいか?』
(;'A`)「いや……とりあえず気道を確保してほしい」
(=゚ω゚)ノ『力が欲しいか?』
(;'A`)「聞けよ……」
(=゚ω゚)ノ『なんか文字を武器にしたりぶっといビーム撃ったり
格好いいバイク乗ったり変身したりしたいか?』
(;'A`)「そんな力使ったらジョルジュ死んじゃうだろ……」
(=゚ω゚)ノ『力が欲しいか?』
(;'A`)「もう帰ってくれ……」
( ゚A゚)「もうそうがあらがいあるふぁがせいぎに」
(;´・ω・`)「流石にストップ! 手を離しなさい!」
- 71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:36:02.68 ID:a9brf9l9O
- 瞳孔を全開にし、意味不明な事を呟く俺。
……俺?
あれれ〜? 身体が透けてるよ〜?
自分を俯瞰で見ているよ〜?
从 ∀从「……なんで来たんだよ」
……高岡?
从♯゚∀从「そんなに俺が信用できねぇのかよ!
頼れよ! 頼ってくれよ!」
家でおとなしくしてるって言ったの、どこの誰だよ……
(;´・ω・`)「ハイン! 死んじゃうから!」
从♯゚∀从「……」
額に青筋を入れ、眉間に皺をよせる高岡。
……そんな顔しないでくれ
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:37:25.67 ID:a9brf9l9O
- ショボンさんが俺と高岡の間に割って入る。
そのまま肩を掴み、高岡の両手を俺の首から離した。
さっきまで俺の意識は魂の方に行ってたのだろう。
幽体離脱ってやつだ。非現実的だが……何を今更。
そんな思案の中で、無意識に身体が必死に酸素を吸う。
瞬間、俺の視界は俯瞰ではなくなった。
代わりに見えたのは、右目に涙を浮かべる高岡の姿。
左目は見えないけど、まぁ同じだろう。
そんなどうでもいい予想はできるのに、俺は何故高岡が泣いているのか判らなかった。
从 ∀从「ハハ……もういいや」
(;'A`)「……?」
从 ∀从「馬鹿らしいんだよ……無駄な心配なんだろ?
俺が何言ったってお前は聞きやしねぇんだから」
……違う。
そういう事じゃないんだ
(;'A`)「た……」
从 ゚∀从「行けよ。んで馬鹿みたいに殴りあってろ」
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:40:19.48 ID:a9brf9l9O
- 高岡の目は冷たく俺を見る。
首に強い違和感があり、かなり息苦しい。
(;'A`)「高岡……違うんだって」
从 ゚∀从「何がどう違うんだよ」
( 'A`)「……よし、いいか? よく聞けよ?
これから凄い大事な話するからな?」
从 ゚∀从「大事な話?」
( 'A`)「俺は今からジョルジュと喧嘩する。
多分あいつは憎しみを撒くだろうが、今回はショボンさんが居る。
俺は絶対に負けない。絶対に、だ」
从 ゚∀从「……で? 負けないからなんだよ」
たとえ両手が砕けようが、ジョルジュをボコボコにしようが。
最後に立ってればいい。
口さえ動けばいい。
その後も生きれればいい。
無駄な感情なら、何一ついらねぇ。
- 77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:42:05.22 ID:a9brf9l9O
- ( 'A`)「お前が居ればいいよ」
从;゚∀从「……ハ!?」
高岡が素っ頓狂な声をあげた。
その理由、俺が肩に手を置いて言った言葉を理解したんだろう。
半端に敏感な奴だな、コイツ。
从;゚∀从「なななななななな」
(;'A`)「落ち着け。ほら、行くぞ?」
(´・ω・`)「全員泣きながら、なんてのは勘弁だしね」
俺とショボンさんは、雑草が薄く茂った斜面を下りる。
高岡も少しボーッとしながらついて来た。
ジョルジュは腕組みをしながら仁王立ち、堂々とコチラを待っている。
服装は……ヤンキーが深夜にコンビニ行く格好だ。
足元が広く膨らんだ黒いジャージから、辛うじてサンダルが見える。
街中で見たら少し距離を置く見た目だ。
- 82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:44:03.03 ID:a9brf9l9O
- ( 'A`)「待たせたな」
( ゚∀゚)「おぉ、逃げたかと思ったぜ」
だが格好なら俺も負けちゃいない。
何せこのまま川に飛び込んでも不自然では無いからな。
ちなみに乳首は寒くてビンビンだ。
( ゚∀゚)「お前……ヘイトレッドか?」
(´・ω・`)「あぁ。今日は憎しみ抜きに勝負できるよ」
( ゚∀゚)「……俺の感情を勝手に喰うなよ。
憎しみは俺の力だ」
('、`*川「……」
(´・ω・`)「……ぉk。君から直接は喰わないでおくよ」
俺とジョルジュの距離は5m程。
周りには人も木も建物も何もない。
純粋な殴り合いになるな……。
( 'A`)「……俺が勝ったら、力を消す為に協力をしてくれ」
- 83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:45:04.05 ID:a9brf9l9O
- ( ゚∀゚)「なら俺が勝ったら……そうだな。
この街から出て、二度と俺の前に現われんな」
( 'A`)「……死ね、とか言わないんだな」
( ゚∀゚)「うるせぇよ。オラ、かかってこい!」
言いながら上のジャージを脱ぎ捨てるジョルジュ。
黒の下からは白いタンクトップ。
更にその下からは強靱な筋肉が見えた。
……すげぇ強そうだよ。
特別鍛えたわけでもない俺。
元来の運動神経とリーチが俺の武器だが……どうみてもジョルジュは俺を凌駕している。
从 ゚∀从「ドクオ」
(;'A`)「ぁ、あ? どうした?」
从 ゚∀从「……負けんなよ」
ズッシリと構えをとるジョルジュに少し恐怖を感じた俺。
だが、今、完全に吹っ切れた。
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/23(水) 23:46:04.34 ID:a9brf9l9O
- ( 'A`)「……おう、ぶっ飛ばして来るぜ」
もう誰にも負ける気がしない。
俺は一歩前に進み、両手で構えを作る。
絶対に、負けない。
打ち倒し、幸せにする。
今の俺が抱く感情は、安心。
ジョルジュに対する恐怖は無い。
高岡が俺の味方になってくれた、その安心感だけ
カーチャンの為に、自分の為に、感情を喰う人間の為に、餌の人間の為に
从 ゚∀从「やっちまえ馬鹿野郎ぉ!!」
(♯'A`)「ウォォォォォオ!!」
――――何より、お前の為に
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