ξ゚听)ξツンが感情を喰うようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:55:52.68 ID:23yYgIijO
後悔先に立たず



俺の一番嫌いな言葉だ。


後悔したって過去は過去。
それは判ってる。実際そうだ。


あの時〜〜すればよかった。
そんな後悔は意味が無いのも判ってる。


だけど俺は、あの時どうすればよかったか判らない。
いや、今なら判るか。


ただ殴りゃあよかったんだ。
あのヘラヘラした顔をぶん殴ってやればよかった。


それが無理でも、逃げ出せばよかった。
あんな腐った家からは、一生の縁を切ればよかった。


今思っても、そりゃ遅いさ。
もう10年以上も昔だ。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:57:21.39 ID:23yYgIijO
ならあの時、たった4歳のガキにそんな事思いつけたか?


ただ一握りの愛を待ってて何がいけない?


もしかしたら明日からは昔のように優しい両親に戻るかもしれない。


そう思って毎日懸命に耐える日を、ただの諺で壊すんじゃねぇよ。


偉そうにすんな。


何も知らないくせに偉そうにすんな。
同情もすんな。
誰よりも俺が一番判ってる。


後悔したなら、それを後に生かせばいい。


だから俺は、弱者を殴る奴は許せねぇ。


でけぇ顔する奴は、誰だろうと殴る。
別に俺に諂わなくてもいい。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 21:59:49.68 ID:23yYgIijO
人間皆平等。


だからドクオ。


てめぇが嫌いなんだ。


嫌いなんだ、お前みたいに強い奴が。
俺より弱い奴を、殴るお前が。


だけど、最近疲れたね。


もう馬鹿みたいに……過去は憎みたくねぇんだよ


皆が俺を頼ってくれるのは嬉しい。


だけどその心底では、俺は常に過去を憎んでる。


だからドクオ。



俺を―――――――



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:01:59.23 ID:23yYgIijO






20 ひねくれ者の純粋な涙 後編








13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:04:16.06 ID:23yYgIijO
今日は日曜日。
兄者は昼まで寝ているだろうな。

今日は天気がいい。
渡辺を誘ってどこかに行こうかな。

とりあえず朝風呂に入り、パンを焼いて朝飯にした。
適当に服を選び、ベッドに放ってある携帯を取る。

待ち受けの時計によると、時間は11時14分。
今日昨日と、家には俺と兄者だけ。
ついつい遅くまで起きてしまった。

リビングに戻り一息つき、渡辺にメールでもしようか、という時。
来客を知らせるチャイムが聞こえた。

玄関まで小走りで行き覗き穴から外を見る。
普段ならわざわざ来客を確認したりしないが今回は別だ。

普通の客はチャイムを連打したりしない。


Σ(´<_`;)「うおっ!!」


魚眼レンズとでも言うのか、覗き穴から見えたのはドアップになった目。

そちらからは何も見えないのだろう。
一度顔を引くと、不思議そうに小首を傾げる渡辺が玄関先に居た。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:06:04.95 ID:23yYgIijO
(´<_`;)「そっちから覗くな……ビックリするわ」


まさか向こうから来るとは思わなかった。
少し気分を弾ませドアを開く。

真っ先に飛び込んできたのは愛しの彼女ではなく、いかつい男。


(,,゚Д゚)「よう兄ちゃん、ちょっといいか?」

(´<_`;)「えぇぇぇぇぇぇ……」


同じ学校の3年、猛将ギコだ。
噂は聞いてはいたが、見ると聞くでは大違い。

隙を見せれば……死ぬ――――


(´<_`;)「な、何の御用でしょうか……」

(,,゚Д゚)「とりあえず上がるぜ」

(´<_`;)「え……あ、はい。どうぞ」


ズカズカと家に上がるギコに続き、黒服の男も玄関に入り込んでくる。
脇腹を押さえ、顔に青アザを作っている。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:08:04.84 ID:23yYgIijO
ミ,,゚Д゚彡「悪いな突然……」

(´<_`;)「あ、いえいえお気になさらず」

川 ゚ -゚)「邪魔するぞ」

从'ー'从「おじゃましま〜す」


黒服に続き、黒髪の美女まで現われる。

厨二全開の兄者なら、テンションがMAXまで上がるだろう。


(´<_`;)「ちょ、渡辺はタンマ」

从'ー'从「?」

(´<_`;)「この人達……誰?」


靴を脱ぎ俺の横に立つ女を指差し、渡辺に尋ねる。


川 ゚ -゚)「それを今から説明するんだ。
      ただ、それなりの覚悟はしておけよ」


それだけ言うと、廊下を真直ぐに進みリビングへと向かっていった。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:10:06.87 ID:23yYgIijO
从'ー'从「……行こ、私達も」

(´<_`;)「あぁ……」


いい予感は、しない。



――――



(´<_` )「俺が嫉妬を……」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、間違いない。ただ……」

(´<_` )「ただ?」

ミ,,゚Д゚彡「そこまでは出ていない。
      その程度なら日常生活に支障は無い、って感じか」

从'ー'从「……」

(´<_` )「正直、信じられんな……」


それはそうだろうな。
突然、君は感情を撒いているんだ! なんて言われても、な。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:12:04.40 ID:23yYgIijO
(,,゚Д゚)「うし、ちょっとこっち見ろ」

(´<_` )「へ?」

(,,゚Д゚)「うっぴょ〜ん」

(゚<_゚;)「ギャァァァァァァア!!!!」


……何だコレ。


(,,゚Д゚)「信じたか?」

((((´<_`;))))「……はい」


端から見る限りは只の馬鹿。
だがまぁ、恐怖を与えたんだろうな、という予想は出来る。
私は喰う事しか出来ないから渡辺に説明するのは面倒だったが、
今回はスマートに行きそうだ。


川 ゚ -゚)「そういえば、餌は器用とか不器用とかなかったか?」


確かしぃがそんな事を言っていた覚えがある。
ヒートはひどく不器用だ、みたいな事を。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:14:18.70 ID:23yYgIijO
(,,゚Д゚)「あぁ、ちょっと面倒な説明になるし、
      何しろ全部判っている訳じゃないんだが……説明するか?」

川 ゚ -゚)「是非頼む」


私がそう言うと、ギコは改める様にソファーに座り直した。


(,,゚Д゚)「まず餌の力を操るにあたって、2つの『好意』が比べられる。
      1つは餌の力、ないしその感情に対する『好意』。
      もう1つは1番好きな人間に対する『好意』だ」

从'ー'从「好意って?」

(´<_` )「好きかどいか、だな」

(,,゚Д゚)「まぁそんな所だな。
      んで、『感情への好意』−『人間への好意』=『器用度』になる。
      まぁ、あくまで俺が知ってる連中からの統計だがな」

从'ー'从「???」

(,,゚Д゚)「例えばジョルジュなら……10−1=+9
      んで、1番器用なのはアイツだな。
      次いで俺と内藤、伊藤って感じだ」

ミ,,゚Д゚彡「ふ〜ん……」

川 ゚ -゚)「じゃあ渡辺は器用な方なのか?」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:16:04.48 ID:23yYgIijO
ジョルジュというのには会った事がないから知らないが、
私の知ってる中で、渡辺は1番餌の力を必要としていた。


(,,゚Д゚)「それは本人に聞いてみろ。
      要はコイツが好きかどうか、だからな」


言いながら弟者を指差すギコ。
……もう少し時と場合というのを考えられないのか。


从*'ー'从「え……私はぁ〜」

ミ,,゚Д゚彡「聞くまでもないな」

(,,゚Д゚)「あぁ。渡辺はまぁ器用な方だな」


……この馬鹿兄弟、女心というのを知らんらしい。


从////从「ぉ……弟者くんの事……好きだよ?」

(,,゚Д゚)「ヒュー、言うねぇ」

ミ,,゚Д゚彡「おい兄ちゃん、答えt

川#゚ -゚)「……」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:18:06.98 ID:23yYgIijO
言い終わる前にフサギコの顎を蹴り上げる。
ガフッと息を吐きながら、馬鹿兄はうずくまった。


川#゚ -゚)「少し席を外すぞ」

(,,;゚Д゚)「あ、はい……」

ミ,,;゚Д゚彡「血がァァァア」


唇から血を流す馬鹿兄を引っ張り、リビングから出ようとした時。
渡辺の小さな、震える声が聞こえた。


从 ー 从「でも……私、わかんないの。
     弟者くんが嫉妬を撒いていて、私はそれに反応して好きになっていた気がするの。
     もしそうだとしたら……私……」

(´<_`;)「渡辺……」

ミ,,゚Д゚彡「……嬢ちゃん。それは違うぜ」


また余計な事をホザくのかと思い殴りかける。
だがさっきまでのフサギコの雰囲気とは違い、彼の目は大人の目に変わっていた。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:20:03.83 ID:23yYgIijO
ミ,,゚Д゚彡「煙の無い所に火は立たない、ってな。
      感情だってそうだ。
      いくら強制的とはいえ、対象が無いと感情は生まれない」


全員の視線がフサギコへと向く。
右手の甲で血を拭いながら、彼は話し続ける。


ミ,,゚Д゚彡「嫉妬は、立派な愛の形だと俺は思ってる。
      その男を他の奴に盗られたくないってのは、十分な愛情だ。
      それに、そいつからは大して嫉妬は撒かれちゃいないしな」


ミ,,゚Д゚彡「自分を疑っちまったら、好きもクソも無ぇ。
      自分を信じて夢中になるのが、愛だ。
      人が持つ、唯一といっていい素晴らしい物が、愛情なんだよ」


川;゚ -゚)「……」

(,,;゚Д゚)「……」


……愛の伝導師が降臨なさったぞ。


ミ,,゚Д゚彡「まぁ、こんな異常事態。信じられなくなるのも無理はない。
      だがよぉ、そいつもお前も、悪い奴じゃないだろ?」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:22:15.75 ID:23yYgIijO
从'ー'从「うん……弟者くんは、凄い好い人だよ」

(´<_` )「……ありがとう、渡辺」


渡辺は落ち着いたようだ。
既に次の言葉を考え、少し俯いている。


ミ,,゚Д゚彡「うし、行くぞ」

(,,;゚Д゚)「あ、あぁ」

川 ゚ -゚)「……渡辺、喜びを押さえて本心で話し合え」

从;'ー'从「う、うん」

川 ゚ー゚)「大丈夫、君なら、大丈夫だ」


少し戸惑った表情の渡辺の頭を撫で、私はリビングから廊下へと出た。




(,,゚Д゚)「にしても……兄貴があそこまで愛を語るとはな」

ミ,,゚Д゚彡「自分でもビックリだ」

川;゚ -゚)「狙ってたんじゃないのか……」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:24:09.52 ID:23yYgIijO
自然にあれだけ言えるのは凄い事だ。
まぁ見直しはしたが、顎を蹴った事は謝らないさ。


ミ,,゚Д゚彡「あいつらは大丈夫だな。
      お前さんはツンの所に行ってやりな」

川;゚ -゚)「む、だが……」


渡辺を放って行く事は……

そこまで言い掛け、私は昨夜を思いだす。

昨日、私が渡辺の元へ行くとツンに電話で告げた時、
ツンは一人で大丈夫だと言ってくれた。

先に一緒に行こうと言ったのは私。
それだけに情けなくなってしまった。
申し訳なかった。

渡辺の所に行った本質は自分の為。
そんな下らない事の為に親友を放って置いた自分が……。


……つくづく嫌になる。

私はすぐこうだ。

そんな下らない事、なんて、私に言う義務など無い。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:26:03.70 ID:23yYgIijO
その判断を下していいのは渡辺だけだ。

私じゃない。


ミ,,゚Д゚彡「どうした?」

川 ゚ -゚)「ん……いや、何でもない。
      少し……疲れただけだ」


言いながら玄関の方へと足を運ぶ。
矢張り私は行くべきだ。


(,,゚Д゚)「さっきの説明の……『感情への好意』
      その好意が強い程、厄介なんだよ。
      それに内藤は気が強いタイプではないしな」

ミ,,゚Д゚彡「渡辺は大丈夫だ。何かあっても俺達が何とかする」

川 ゚ -゚)「……判った、頼んだぞ」


玄関のドアを開け外に出る。
暖かい日差しによる丁度いい気温が眠気を誘う。
正直もう面倒事は勘弁だ、と嘆く自分も居る。

昔、ツンにネガティブすぎると言われた事がある。
ブーンには、一人で考え込むのは私の悪い癖と言われた。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:28:16.25 ID:23yYgIijO
他人に対してはズバズバと言える方だと思う。
だが自分の事となると……私は駄目だ。

最後の一歩が踏み出せない。

だから他人に道を譲る。
途中で嫌になり、投げ出すことも多い。

一番の放棄は、ツンに、ブーンを――――


川#゚ -゚)「ッ!」


何を考えてる?

そんな事、今更許される訳が無いだろう?

そんな最低な事……


川 ゚ -゚)「……早く、行こう」


そう呟き、私は歩を早めた。
少しでも一人になる時間を短くしたかった。

もう嫌だ。下らない自問自答は。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:29:07.78 ID:23yYgIijO
川 ゚ -゚)「……ブーン」


友人が道を踏み外したら、手伝い治してあげなければならない。
そうだ。ただそれだけなんだ。


他意など……無い。



――――




47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:32:04.88 ID:23yYgIijO
(♯'A`)「―――ッ!!」


側面を見せながら、右足でジョルジュの腹を押すように蹴る。
勢いもあり、力も込めた蹴り。
だが結果としては、硬い腹筋によりダメージなどほとんど与えられなかった。

まるで木を蹴ったような。
そうドクオが思った時、ジョルジュが両手で足を掴み、引いた。

強制的にドクオを近づかせ、左手を脇腹に叩きつける。
完全に腕は振りぬかれ、ドクオは転がるように吹き飛んだ。


(; A )「イッ……」


脇腹を押さえゆっくりと立ち上がるドクオ。
ジョルジュは追撃を仕掛けるより、挑発を選んだ。


( ゚∀゚)「おいおい……もう終わりか?」

(;'A`)「まだ始まってもいねーよ……」


少しずつ距離を狭めながら、思考を働かせる。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:34:31.93 ID:23yYgIijO
頭部を守る為、凶器からの攻撃は全て両手に回した。
その結果として、とてもじゃないが殴れる状態ではない。
リーチの差を活かしての蹴りも、強靱といえるジョルジュの肉体には、ほぼ無意味。


( 'A`)(……なら、頭だな)


互いの距離が後4歩程に近付いた時、ドクオが動いた。

サッカーボールを蹴るようなステップで、ジョルジュの右脛にローキック。
顔に苦痛を浮かべながらも、ジョルジュは即反撃に移る。


(♯゚∀゚)「ウラァ!」


大振りの右フックを、ドクオは予期したようにバックステップで躱す。


(;゚∀゚)「チッ!」


右側面ががら空きになったジョルジュの隙を見逃さず、
ドクオは右足でハイキックを打ち込む。

側頭部への衝撃を受け、ジョルジュは苦悶の表情を浮かべる。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:36:58.06 ID:23yYgIijO
(; ∀ )「ッ!」


遮二無二に、右の腕を裏拳気味に正面へと払う。
反射的に出されたその攻撃を、ドクオは難なく躱した。

先に続き、今度は正面が、顎ががら空きになる。
ドクオは軽く勢いをのせ、その顎を蹴り上げる。

強力な一撃。

爪先が食い込み、無理矢理にジョルジュは空を見上げさせられた。
脳を揺らされ朦朧とするも、追撃の手は止まない。

真っ青な空を見るジョルジュの頭を掴み、抱き寄せるように持ってくる。
視界に飛び込んできたのは、ドクオの右膝。


(♯'A`)「ッラァ!!」

(; ∀ )「ッグ!!!!」


ゴッという鈍い音。次いで鼻から鮮血。
思わず鼻を抑えるも、指の隙間から血は流れる。
確実なダメージが見て取れた。


( 'A`)「まだまだ……」



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:38:04.41 ID:23yYgIijO
ジョルジュの血の付いた右足を、空を持ち上げるように上げる。
踵落とし。
頭を執拗に、ドクオは狙う。


(♯゚∀゚)「……調子にぃ!!」


振り下ろされた踵を左腕でガード。
すぐさま肘を回すようにして、足を脇で挟む。

固定は完了。
ジョルジュは間合いを詰めず、血だらけの右手でドクオの左脛を掴む。

力尽くで両足を持ち上げ、膝を脇に通した。
ジャイアントスイングの構え。


(;'A`)「ちょ!」

(♯゚∀゚)「ォォォォォォォオオオ!!」

(;'A`)「マジかァァァァァァァア!!!!」


叫びながら、ドクオが回る。
数多のプロレス技の中でも有名で、パフォーマンス色の強い大技。
まさか使ってくるとは……。
そう驚愕しながらドクオは回る。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:40:03.59 ID:23yYgIijO
(♯゚∀゚)「ォォォオオ、ラァッ!!」


決して早くはなかったが、綺麗な円を描き、地面と平行に5回転。
多大な遠心力を使い、ジョルジュはドクオを放る。

平衡感覚を失いながらも、なんとか立ち上がるドクオ。
3m程放られた。
だが既にジョルジュは、拳を打ち込める間合いに到達していた。

風を切るというよりも、無理矢理に貫くように。
100%の勢いで、ジョルジュの右拳はドクオの腹を殴った。



――――



从 ゚∀从「あっちゃ〜、完ッ璧に入ったなぁ」

(´・ω・`)「なんでそんな冷静に……」


腰を下ろし、あぐらをかきながら2人の喧嘩を見るハイン。
ショボンとペニサスはハインを挟む位置で、立ち見をしている。



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:43:13.16 ID:23yYgIijO
ハインはたまに感想を洩らし、ペニサスはジョルジュを心配しながら見つめている。


从 ゚∀从「っつーかショボン、お前こんな所から感情喰えんのか?」

(´・ω・`)「喰えないよ。喰う物もないしね」

从 ゚∀从「あ? アイツって常に感情撒いてんじゃないのか?」

('、`*川「ジョルジュさんは、普段は全く撒かない……」

从 ゚∀从「んじゃあ必要ないんじゃねぇか、力なんざ」

('、`*川「……そうかも、ね」

(´・ω・`)「君はどうなんだい?」


ショボンがペニサスに問う。
睨むように視線をショボンに移すペニサスは、
まだジョルジュを馬鹿呼ばわりした事を怒っているようだ。

一遍し、またジョルジュに視線を戻す。


('、`*川「必要不必要で言えば……不必要かもね。
      でも使う事で受けられる恩恵は、決して小さくない」

从 ゚∀从「なんだよ恩恵って」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:46:05.35 ID:23yYgIijO
('、`*川「哀しみは……人を弱くする。
      たとえどんなに、強い人間でも」

(´・ω・`)「君は……」

从 ゚∀从「……判りやすく頼む」

(´・ω・`)「簡単に言えば……ジョルジュを泣かして慰める、と」

从#゚∀从「はぁ!? バッカじゃねぇの!?」


怒気を含みながら立ち上がるハイン。
今にも掴みかかろうとするハインを止めたのは、
冷静な表情を崩さないショボンだった。


(´・ω・`)「ハイン。
       みんながみんな、君みたいな人間じゃあない」

从#゚∀从「だからなんだよ!!」

(´・ω・`)「道を外れたまま、自分から元には戻れない人間。
       道を外れても、自分を恥じ、自分から元の道に戻る人間。
       道を外れない人間。
       世の中には様々な人間がいる」

(´・ω・`)「その中に、一番上も一番下もない。
       唯一に一番下なのは、道を外れたままの人間だ」



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:48:04.87 ID:23yYgIijO
(´・ω・`)「僕らに強制的に与えられた力の、
       その善悪も判らずに、判ろうともせずに使い続ける人間が……
       道を外れたままの人間なんだ」

(´・ω・`)「彼女は善悪を見分け、だが自分だけでは元に戻れない人間だ。
       だからハインちゃんが彼女を責めるのを、僕は許さない」

从#゚∀从「長々と演説しやがってこのショボくれ!」

(´・ω・`)「……彼女を元の道に戻せるのは、ハインちゃんじゃない。
       ジョルジュ君だと、僕は思うよ」

('、`*川「……」

从#゚∀从「どーせ俺は役には立たねぇよ!」

(;´・ω・`)「そんな事言ってn」

从#゚∀从「うるせぇ! お前の眉毛むかつくんだよ!
     俺様が全部抜いてやる!」


一瞬でショボンにマウントを取り、片眉をぶちぶち抜くハイン。
絶叫が響く中、ペニサスの目は何かを懇願するように、ジョルジュを見つめていた。



――――



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:50:07.20 ID:23yYgIijO
(; A )「ウッ……」


両肘を地面につき、両膝を地面につき。
屈伏するような態勢だが、まだ心は折れていない。

口から出た胃液を拭い、腫れた腹を押えながら立ち上がるドクオ。

鼻血を横に拭い、唾に交じった血を横に吐き捨てるジョルジュ。

距離は、5m程。


( 'A`)「なぁ……とりあえず力、捨てねぇか?」

( ゚∀゚)「嫌だね」

( 'A`)「強情と馬鹿は違うんだぜ……」


同時に合い構える2人。

軽くステップを刻みながら、ゆるりと構えるドクオ。
腰を落とし、両腕で守るように構えるジョルジュ。

特に格闘技を学んだ事はなく、負ける事が恥となる生きざまの中で自然と生まれた構え。

その構えを崩し、息を吐きながら下段の蹴りを放つドクオ。
数歩のステップで近付き、左脛を狙う。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:52:39.40 ID:23yYgIijO
リーチではドクオの方が長い。
しかも下段となると、ガードは困難。

ジョルジュはカウンターを狙いつつも、ドクオの胸元へと一歩踏み込んだ。
そのまま左の拳をドクオの顔へ。

その攻撃を首だけで躱し、直ぐ様右肘で顎を打つ。
ジョルジュが怯んだ隙に一歩踏み込み、左肘で頬を打つ。

その勢いを利用しローリングソバットを放つ。
右足裏で、腹への一撃。

矢張り大したダメージにはならず、あっさりと腹部の足を払われた。
続け様にジョルジュの右アッパー。


(; A )「ッ!!」


脳が揺れる。
次の瞬間には、腹を殴られていた。

先程とは違い、吹っ飛ぶことはなかった。



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:54:04.29 ID:23yYgIijO
だが良い事ではない。
腹を押さえ中腰になった所を


(♯゚∀゚)「オォォォ!!」

(;'A`)「ッ!!」


地面を削るようにして、ジョルジュの右手が顔に迫る。
アッパー気味の、早く重い一撃。

喰らえば、負ける。


(♯'A`)「―――――!!」


右足を軸にし、反時計回りに、ドクオは回った。

頬を磨るようにして、空を切るジョルジュの右手。

身体を伸ばしながら、ドクオは左肘でジョルジュの右腕を払う。
自然と前に出るジョルジュの頭。


(;゚∀゚)「な―――――」



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:56:04.89 ID:23yYgIijO
回転の勢いをフルに乗せた、上段回し蹴り。
完璧なタイミング
吸い込まれるようにして、ジョルジュの左側頭部にドクオの右足が打ち込まれた。


(  ∀ )「ッ――――――」


糸が切れた人形の如く、プツリと切れたジョルジュの意識は、
結果として彼の身体を地面へと伏せさせた。


(;'A`)「―――ッ……ハァ……ハァ……」


自分の左に倒れたジョルジュと距離をおくように、ドクオは足を進める。

手応えは確実にあった。
だがまだ、ジョルジュは立てるだろう。

ドクオ自身ダメージはでかい。
だから一度距離を置いて、展開を建て直そうとした。

3歩程歩いた時、ゆっくりと地面が近づいてきた。


( 'A`)「あ……れ……?」


もう限界だったのか、ドクオは地に伏せ、その意識は遠くへと失せていった。



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:00:16.73 ID:23yYgIijO
――――



(´<_` )「嫉妬、か……」


突然告げられた驚愕の事実、とでも言うべきか。
まぁ私生活に影響は無いと言われた時点で、大した事では無い。

それに、薄々だが異変は感じてはいた。
渡辺にそれとなく聞いた事もあったが、結局判らずじまいだった。


从'ー'从「弟者くん……私はね、私は……」

(´<_` )「渡辺も……餌、なのか?」


膝の高さ程のテーブルを挟み、向かい合うようにソファーに座る俺達。
なんか離婚話でも始めるかの様な雰囲気を、渡辺は醸し出している。


从'ー'从「私は……喜びの餌なんだって」

(´<_` )「……喜び、か」

从;'ー'从「あんまり驚かないんだね」



92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:02:34.74 ID:23yYgIijO
(´<_` )「正直な所、今は安心しているんだ。
       影響が無いとは言われたが、0では無かったしな」

从'ー'从「私は……弟者くんとは違う。
     私の場合は、無理矢理笑顔にさせちゃうもん。
     どんなに喜びたくなくても……喜ばせちゃうもん」


そこまで言うと、渡辺は意気消沈とばかりに肩を落とした。


(´<_` )「俺が嫌いな人間は、人の気持ちを無下にする奴だ」


こういう状況では、言いたい事を言うだけだろう。
渡辺を支える為に、俺は俺を曝け出す事しか出来ない。


(´<_` )「俺自身、そういう人間にはなりたくない。
       だが全てを受けとめるなんて、至難の技だと思わないか?」

从'ー'从「……うん」

(´<_` )「だけど渡辺を見た時、君はそんな人間だと思ったんだ。
       それがたとえ餌の力だとしても、関係無いと思う」


今の高校、VIPに入学してすぐ。1年の時、彼女を知った。
渡辺と俺は同じクラスだったが、全くと言っていい程話した事は無かった。



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:04:06.24 ID:23yYgIijO
(´<_` )「渡辺……中学の時もいじめられてたんだよな?」

从'−'从「……うん」


渡辺とは中学が違う。
俺はVIP中学出身だから、クラスの連中はほぼ中学時代からの知り合い。

その中で渡辺は知らぬ内に浮いてしまっていた。
隣県から、わざわざVIPに来た渡辺。

その過去に興味を持つ人間は少なくなかった。


(´<_`♯)「……反吐が出る。
       アイツらにも、何もしてやれなかった自分にも」

从 − 从「……」

(´<_` )「……ごめん。今更、だよな」

从 − 从「うん……今更、だよ……」


いじめ、と言っても大した物じゃない。

クラスからの空気扱い、委員など面倒な事を押しつける。
本当に些細なものだった。

……俺からすれば。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:06:37.21 ID:23yYgIijO
(´<_` )「……2年でクラスが変わって、偶然同じクラスになって。
       先月からか? 渡辺は笑顔が増えた」


幸いVIP高校は生徒数は多い。
2年だけで8クラスもある。
全員の顔を知ってる奴も居ないだろう。

クラスメートが変わったから、渡辺はいじめられなくなったんだと思ってた。
でもそれは違う。確かに彼女の周りに友人もできていた。


从'ー'从「……恐かった。
     私に親しくしてくれても、いつか裏切られる気がして……」

(´<_` )「そんな時に手に入れた、相手を喜ばせる力、か……」


最初は同情心か、ただの好奇心か。
たまたま席が近くになり自然と話し掛け、彼女の笑顔を喜ぶ自分が居た。


从'ー'从「出来るなら、私はずっと、ずっと力を持ってたい」

(´<_` )「……」

从'ー'从「でも違うって、そんなのは違うって……気付いたの」



98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:08:05.05 ID:23yYgIijO
もしかしたらと、日々を耐え続ける事が出来るだろうか。
これは違うと、自分から待ち望んだ日々を捨てれるだろうか。

そう思うと、彼女を本当に愛しく思えた。


从'ー'从「……もしかしたら私の事、嫌いになっちゃうかもしれない」

(´<_` )「……?」

从'ー'从「私は……私も喜びたいの。
     喜ぶって……今のままじゃ、違うの」


彼女自身、何が言いたいのかは判ってるはずだ。
だけど、どう言葉にすればいいか判らない。

そんな雰囲気で、少しずつ彼女は言う。


从'ー'从「私が泣いてたら……本心から心配してくれて……。
     私が間違ってたら……本心から怒ってくれて……」

(´<_` )「そんなの……普通じゃないか」

从'ー'从「うん……普通なの。普通に、私と笑い合ってほしいの」


微笑を携え、俺の目を見つめる。



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:10:28.96 ID:23yYgIijO
最初から、渡辺は強いんじゃなくて、
彼女なりに迷い、彼女なりの決意。

誰が笑えるか。誰が無下にできるか。


(´<_` )「できるなら……できるならお前と居たい」

从'ー'从「……私から餌の力が無くなっても、同じ事が言える?」

(´<_` )「言える。たとえ嘘でも……言ってやる」


なんで?
小さく渡辺が言う。返答なんか、決まってる。


(´<_` )「好きだからだよ。それ以上でも、以下でもない。
       好きなんだ。餌だろうが何だろうが、関係無い。
       渡辺が迷ったら、一緒に迷う。渡辺が笑ったら、俺も笑う」


正直、顔から火が出る程恥ずかしい。
だけど今言わなきゃいけない。

渡辺が俺の事を好きと言ってくれた。
俺は渡辺を嫌いじゃない。好きだ。本心から。

だから本当に顔から火が出ようが炎が出ようが、言う。



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:12:03.77 ID:23yYgIijO
(´<_` )「好きだ、渡辺。
       俺に出来る事も、言える事も、それしかない」

从////从「……ぅん」


……とんだ日曜日になったもんだ。


(´<_`;)「……はぁ、緊張した」


一番良い、日曜日になった。


从* ー 从「……なんか、誘導尋問みたいになっちゃったね」


語尾に笑いを含みながら、俯き気味に彼女は言った。
顔を隠す髪の隙間から、僅かに見えた赤い頬。

俺は彼女が喜んでくれた、それだけで楽しくなった。


そして、ゆっくりと、渡辺は倒れた。



108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:14:16.92 ID:23yYgIijO
――――



ラン ランララ ラ ラ ラン

ラン ランラ(ry


(=゚ω゚)ノ『勝ったか……流石だな』

(;'A`)「またアンタか……」

(=゚ω゚)ノ『……大きくなったな、ドクオ』

(;'A`)「……え?」

(=゚ω゚)ノ『お前はあの時、まだ3才だったな』

(;'A`)「……トーチャン?」

(=゚ω゚)ノ『お前とカーチャンには、辛い思いをさせてしまったな』

( 'A`)「本当に……トーチャン、なのか?」



112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:16:26.49 ID:23yYgIijO
(=゚ω゚)ノ『ずっとここから、お前達を見守っていた。
      ……何もしてやれないのが悔しかった』

( 'A`)「……」

(=゚ω゚)ノ『……お前は俺に似てる。トーチャンも生前は不良だった。
      無銭敷の名付け親は他の誰でもない、このトーチャンだ』

(;'A`)「そんな、凄いだろ!みたいに言われてもなぁ……」

(=゚ω゚)ノ『時に、カーチャンは元気か?』

(;'A`)「まぁ、対セガール戦でも3分は闘えそうなくらい元気だよ」

(=゚ω゚)ノ『あの力は、全盛期の俺の物を与えたんだ。
      お前達にできる、最初で最後の手助けになった』

( 'A`)「……逝くの、か?」

(=゚ω゚)ノ『あぁ、これが本当に最期になる』

( 'A`)「そっか……」

(=゚ω゚)ノ『……あの子は昔のカーチャンによく似ている。
      『狂った狂犬』。それがカーチャンの異名だ』

(;'A`)「感動的にしたいのか、笑いにしたいのか……」

(=゚ω゚)ノ『あの子を選ぶのなら、この先苦労する事になるぞ、ドクオ』



115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:18:04.18 ID:23yYgIijO
( 'A`)「……それでも、アイツが好きなんだ」

(=゚ω゚)ノ『……ならば何も言うまい。
      だが一つだけアドバイスをしよう』

( 'A`)「アドバイス?」

(=゚ω゚)ノ『告白は星空の下行え。
      トーチャンはそれでカーチャンを女にした』

(;'A`)「……まぁ、参考にはするよ」

(=゚ω゚)ノ『ベッドの上のカーチャンは、まさに狂った狂k

(;'A`)「やめてくれぇ!!」

(=゚ω゚)ノ『おっと、そろそろ時間が来たようだ』

(;'A`)「……」

(=゚ω゚)ノ『幸せってのは少しずつしか貰えない。神様はケチだからな。
      だからその幸せを噛み締めて生きる。それが巧い人生への秘訣だ』

( 'A`)「あぁ」

(=゚ω゚)ノ『だがな、他人を幸せにする事も素晴らしい事なんだ。
      たとえそれで自分の幸せが減ったとしても』

( 'A`)「……」



118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:20:05.65 ID:23yYgIijO
(=゚ω゚)ノ『泥臭い生き方なんてのは、誰もが出来る事だ。
      だがやってる人間は少ない。何故か判るか?』

( 'A`)「……自分が大事だから」

(=゚ω゚)ノ『俺はそれを、死んでから気付いたんだ。
      やり直したい。何度もそう思い、何度も後悔した。
      事故とはいえ……本当に情けない』

( 'A`)「トーチャン……」

(=゚ω゚)ノ『もし、輪廻という物があるならば。
      俺は今すぐにでも逝きたい。
      だから最期に、お前達に何かしてやりたかった』

( 'A`)「助かったよ。ありがとう」

(=゚ω゚)ノ『お前には、今俺と話す事が手助けになると思った。
      自分勝手な親父で、すまなかったな……』

( 'A`)「……」


( 'A`)「……俺も、トーチャンに言いたい事がある」

(=゚ω゚)ノ『なんだ?』



120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:20:56.58 ID:23yYgIijO
( 'A`)「カーチャンと結婚してくれて、ありがとう」


(=゚ω゚)ノ『ドクオ……。
      立派に育ってくれて、ありがとう』





――――さよなら






从;゚∀从「おい! しっかりしろ、ドクオ!!」


あそこは……三途の川の無銭敷だったのかな。

そう思うと何故か哀しくて……

そう思わなくても、哀しくて。



122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:22:25.30 ID:23yYgIijO
( ;A;)「た……かお」

从;゚∀从「な、なに泣いてんだよ! どっかイテェのか!?」


……トーチャン、本当にありがとう。
俺、精一杯生きる。

俺は馬鹿だから、間近にならないと判らないんだ。

トーチャンのお陰で、俺は死が怖くなった。

もう戻れない、それの恐さ。
今だって俺は生きてるから、高岡に心配してもらえる。
あんだけ達観した様に俺の喧嘩を見てたくせに……


从;゚∀从「てめぇ馬鹿野郎! 何だこの野郎!」

(;うA`)「なに言ってんだよ……」


必死の形相で俺を心配する高岡が、可愛くて仕方がない。
そんな恥ずかしい事、口に出す訳はない。

俺は涙を拭い、半身を起こす。
ジョルジュは大の字のまま、気絶しているようだ。



125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:24:13.93 ID:23yYgIijO
从;゚∀从「大丈夫か!?」

( 'A`)「ん? あぁ、大丈夫だ。
      むしろ回復したくらいだよ」

从;゚∀从「なんじゃそりゃ……。
      まぁ、何ともないならよかったぜ……」


できるなら高岡に喰ってほしかった。
だってこれは、喜ぶべき事だから。
泣いていい場面じゃない。

だけど忘れてはいけない。
心に刻み込み、生きていく。



しかし、トーチャンがあんなだったとは……



――――



129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:26:14.84 ID:23yYgIijO
…………背中がチクチクする。
草だな、この感触は。

……なに寝てんだよ、俺は。

まだ、やれるだろ。
まだ動く。身体は動く。
今はただ脳を揺らされて気絶しただけだ。

立って、立って……闘う……

何の為にだよ……
誰が、俺が勝って喜ぶ?

……ずっと判ってた。
矛盾だ。俺が勝つ事自体が。

でも俺は、感情を捨てられなかった。
幼心に得た感情を、操る力。

それがある限り、俺は変われない―――



132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:28:07.22 ID:23yYgIijO
('、`;川「ジョルジュさん!」

(  ∀ )「…………なぁ、伊藤」

('、`;川「 !! 大丈夫ですか、ジョルジュさん!?」

(  ∀ )「……なんでお前、俺の傍にいてくれるんだ?」


俺は3年で、伊藤は2年。
ただの不良好きとかじゃないのは判ってる。


('、`*川「私が1年生の時、ジョルジュさん、助けてくれましたよね」

(  ∀ )「……覚えてねーな」

('、`*川「……私は一時も忘れた事はありませんよ。
      ジョルジュさんは、私のヒーローだから」

(  ∀ )「……でも俺は、1年のガキに負ける様な男だ。
      見栄っぱりだけは一人前の、……弱い男だ」


伊藤の顔は見えない。
見れない。見たくない。

情けなくて、情けなくて見る事なんか出来ない。



137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:30:06.99 ID:23yYgIijO
('、`*川「ジョルジュさんは、私より強いです。
      私が知ってる中で、ジョルジュさんが一番強いです。
      どれだけ負けたとしても、一生変わりません」


……照れるじゃねぇか馬鹿野郎。


(  ∀ )「いい奴だな……お前」

('、`*川「そんな事ないです……。
      だって私、ジョルジュさんを無理矢理哀しませて……」


薄々感付いてはいた。
だけど俺は、親からの愛を知らない。
それどころか……愛情なんか、端っぽすらわかんねぇ。

そんな俺でも、伊藤に慰めて貰った時程、心地好い事は知らない。


(  ∀ )「言われて気付く様な事はするな、とかさ……。
      そういう偉そうな言葉、俺は嫌いだ……」

('、`*川「はい……」

(  ∀ )「俺は負けず嫌いだから……頭の隅では判ってるから……。
      一々、わざわざ偉そうに言われるのが嫌いなんだな……」



139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:32:05.68 ID:23yYgIijO
……最初から判ってた。
必要ないものと、必要なものの区別なんて、最初から。

だから反抗してたんだ。
自分達は間違ってないってツラしてる、アイツらに。


(  ∀ )「死んだ人間は殴れない……。
      そんな事……判ってたんだよな……」

('、`*川「……私は、ジョルジュさんがした事を咎めたりしません。
      私が出来る事は、ジョルジュさんの傍に居る事だけです」


……本当に、いい奴だよ。伊藤。


(  ∀ )「俺は、お前を守れるだけで、いいんだよ……な」

('、`*川「……ぇ?」

(  ∀ )「もう……憎しみなんか、いらねぇ。必要ねぇ。
      俺は、俺はお前より……強いんだから」


いつだって、傍に居てくれた。
当たり前が当たり前だから怖いんだ。

無くす前に名前を書いておけば、もしかしたら見つかるかもしれない。
どんな感情よりも、俺は人の方が必要な、弱い人間なんだ。



144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:34:34.87 ID:23yYgIijO
('ー`*川「ジョルジュさんが必要ないなら、私もいらないです」



目を開ける。空だ。青い空が見える。
思った事はそれだけ。あぁ、青いなぁ。それだけ。

でも横で、少しうるっときてる馬鹿女を見ると、色んな思いが心を襲う。

だから思わず、目を逸らした。


( ゚∀゚)「……オラ、行くぞ」


立ち上がり手を伸ばし、伊藤の腕を掴み立たせる。
細い腕だ。強く掴めば、簡単に壊せそうな程の。

だからこそ、なのかもな……。


('、`*川「ジョルジュさん?」

( ゚∀゚)「……重い。もう少し痩せろ」

('、`;川「うっ……」



149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:36:52.82 ID:23yYgIijO
パッと腕を離して、俺を打ち負かした男を見る。
体の所々に赤青い痣。俺が殴った跡だ。

全力で殴ってやったのに、アイツは折れなかった。
喰う連中は、どいつこいつも強いのか?

……違う、俺達が弱いんだ。

異能力に頼り、異能力を有難いと思った俺達が。


( ゚∀゚)「俺の負けだよ、ドクオ」

( 'A`)「……いいのか? まだやれんだろ」

( ゚∀゚)「一度でも負けを認めちまったら負けなんだよ。
      それより本当にこの力、消せんのか?」

('A`;)「……大丈夫なんすよね?」

(¨・ω・`)「うむ、無問題だよ」

('、`*川「眉毛……」

( ゚∀゚)「どうにも信用できねぇな」

( 'A`)「その気持ちは判らんでもない」

从 ゚∀从「……なんで?」



152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:38:25.15 ID:23yYgIijO
何はともあれ、今はコイツ等を信用する事しかできない。
それに、俺はドクオを気に入った。
清々しいっていうのか、なんというか。

解放感ってのは……素晴らしいもんなんだな。


( ゚∀゚)「……ありがとうよ」

( 'A`)「……気にすんな」

从 ゚∀从「ギャハハハ! 友情か! 青春だね〜」

('、`*川「……アンタとは仲良くやれそうもないわ」


だが俺は諦めちゃいねぇ。
俺の半分は負けず嫌いで出来てるからな。

餌の力が無くなって、怪我が完治したら……


( ゚∀゚)「また勝負しろよ」



155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:40:49.78 ID:23yYgIijO
下らないけど、俺はそうやって生きてやる。
死んだアイツらに、俺が憎んでいた両親に、精一杯生きる俺を見せ付けてやる。

せいぜい後悔すればいいさ。


そして、守ってやる。


俺より弱い、コイツを。



――――



158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:42:04.17 ID:23yYgIijO
(,,゚Д゚)「感情爆発を自力で抑えてたせいだな」

ミ,,;゚Д゚彡「感情溜め込むとぶっ倒れんのかよ……」

(´<_`;)「それで……渡辺は大丈夫なのか?」

(,,゚Д゚)「あぁ、10分くらいで目覚ますと思うぜ」


言いながら一人掛けのソファに座るギコ。
対面するソファには、気持ち良さそうな寝顔を浮かべる渡辺が横になっている。


(´<_` )「感情……喜びを抑えてたのか……」

(,,゚Д゚)「感情爆発を抑えるってのは、中々しんどいんだよなぁ」

(´<_` )「なんで、そんな……」

ミ,,゚Д゚彡「決別を決め込んだ人間を揺るがすのは、他人からの裏切りだけだ。
      渡辺は餌の力を使用しないって、決め込んでたんだろうな……」


腕組みをしながらフサギコが言う。
と、唐突に彼の懐から電子音が響く。
携帯の着信のようで、フサギコはリビングを出ていった。



159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:44:04.92 ID:23yYgIijO
(´<_` )「馬鹿だな……わざわざ必死に抑えるなよ……
       素直に笑ってくれるだけで十分なのに……」


ため息をつきながらも、弟者は笑みを浮かべる。
抱え込んでいたのか、渡辺自身気付いていなかったのか。
どちらにしよ彼女の傍に居たいと、尚更思いを強くした。

と、突然ドアが開き、フサギコが顔だけ覗かせる。


ミ,,゚Д゚彡「なぁ、ここに全員来てもいいか?」

(´<_` )「へ? 全員て?」

(,,゚Д゚)「7×2−4だから……10人だな」

(´<_`;)「えぇぇぇ……」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫そうだな」


言いながら引っ込み、3秒程で携帯を仕舞いながらフサギコがリビングに戻ってくる。


(,,゚Д゚)「誰からだ?」

ミ,,゚Д゚彡「ショボン。今からこっちに来るそうだ」



161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:46:48.40 ID:23yYgIijO
(,,゚Д゚)「んじゃあ後は……」

ミ,,゚Д゚彡「ツンと内藤、だな」


現状を把握し、兄弟は人の家のソファへ深く座り込む。
渡辺は暫らく動けず、今は待機しかできない。

身体を休めるように、偉そうに2人は一息ついた。

一方住人は……


(´<_`;)「お茶くらい出さないとな……。
       コップ14個もあるか?」


接客の準備に慌てていた。



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