ξ゚听)ξツンが感情を喰うようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 19:56:55.72 ID:MpHLtmH1O
夏祭りの時、私は誰か男を適当に誘って、ツン達と行ったんだったな。
別に好きでも何でもない、ただの他人。
今じゃ名前も覚えちゃいない。

なら何故、わざわざ連れて行ったのか。

ツンとブーン 私とそいつ。
ほら、2-2になるだろう?

ツンはすぐに拗ねてしまうからな。
私なりの配慮というやつだ。

ツンが好きなんだ。
彼女のお陰で、私は変われた。
私に気を止めてくれ、私と居てくれる、初めての親友。

ブーンも、好きだ。
彼は優しさの固まりのような人間だから……。

……私よりも、もっと弱いツンの傍に居るべきなんだ。


ヒートの気持ちを全て無視した。
でもヒートは、それでも私が好きだと言ってくれた。

高岡に助けられた。
言い訳で死ぬなと、他人なのに私を叱ってくれた。

私は渡辺を支えれたのか?
彼女を、大切にして生きられるだろうか?



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 19:57:54.60 ID:MpHLtmH1O



私は、強くなりたい。






  21 汚く 強い 美しい 心










4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 19:58:57.75 ID:MpHLtmH1O
( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「……はぁ」

( ^ω^)「ため息つくと……幸せ逃げるお……」

ξ゚听)ξ「そうかもね……」


内藤家の玄関先に、並びながら腰を掛ける2人。
青い空をぼんやり見上げるブーンと、髪を軽くいじりながら虚空を見つめるツン。

口数は少なく、無いと言ってもいい程だ。
目の前の一車線の道路に車でも通らなければ、鳥の小さな鳴き声しか聞こえない。

説得開始から、1時間が経過していた。


ξ゚听)ξ「まだ……力捨てる気無いの?」

( ^ω^)「……うん」

ξ )ξ「あっそ……」


不意に立ち上がるツン。
ブーンはその小柄な彼女を目で追いながらも、立ち上がりはしない。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:01:49.21 ID:MpHLtmH1O
疲れているのだろう。
1時間も感情論をした、その結果。
ツンの、長年の付き合いからくる、ブーンに対する決断。


ξ゚听)ξ「……無理矢理連れてく」

(;^ω^)「お?」


腰に両の手をやり、偉そうに宣言したツン。
『言って駄目ならぶっ叩け』
ツン家の家訓である。


ξ#゚听)ξ「来なさい」

(;^ω^)「ちょっ!!」


ブーンの腕を引っ掴むと、彼を引きずりながら歩を進めるツン。
ズルズルと擦れる音が辺りに響く。
ふと見たツンの額の青筋が、彼女の怒りを切に伝えた。


(;^ω^)「痛いお! 離すぉぉぉお!!」

ξ#゚听)ξ「うるさい!」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:06:35.41 ID:MpHLtmH1OO

(;^ω^)「無理矢理連れてくとか……ひどすぎるお!!
       それでも貴様は人間か!!」

ξ#゚听)ξ「アンタ言ったって聞かないじゃない!
      キッパリ決断しないなら、私が無理矢理させてやるわよ!」


優柔不断を地で行く男、ブーン。
ファミレスでは最長1時間メニューを迷った事がある。

彼が決断を下す時は、いつも傍らにツンが居た。
無理矢理ハンバーグを頼まされ、半分以上ツンに食われた経験もある。

無理矢理彼女と同じ学校を受けたり、
無理矢理彼女を引っ張り、夜空に星を見に行ったりもした。

どこかズレているが、それでも純粋で。

それがブーン。


(;^ω^)「ぜってーいかねーお!!」

ξ#゚听)ξ「アンタの意見は一切無視よ!
      腕引きちぎってでも連れていくからね!」


我が強く、変にプライドの高いツン。
頼る人間を自然と選び、弱さも見せる。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:09:19.25 ID:MpHLtmH1O

だからこそ、普段は隠すように気丈に振る舞う。
だからこそ、本質は脆い。

それがツン。


(;^ω^)「は〜な〜せ〜お〜!!」

ξ#゚听)ξ「離さん!!」


駄々をこねる子供と母親が如く、アスファルトにズボンを擦りながらブーンが動く。
その光景をあきれ顔で見つめる者が、展開を大きく変えた。


川 ゚ -゚)「……またランクが下がったな」

(;^ω^)「おぉ! クー!」


確認するや否や、さっきまで断固として上げる事の無かった腰を立たせ、
鬼から逃げるようにクーに駆け寄るブーン。
すがるように彼女の両肩を掴むブーンに、クーは戸惑った表情を浮かべた。


(;^ω^)「クゥゥ! 助けてくれお!」

ξ#゚听)ξ「クー!! そのわからず屋とっちめなさい!!」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:12:08.48 ID:MpHLtmH1O

川;゚ -゚)「とっちめ……
      まぁ、とりあえず落ち着くんだ。ツンもブーンも」

(;^ω^)「落ち着けないお!! ツンったらひどいんだお!?」


制止の言葉も聞かず、鼻息を荒くしながら捲し立てるブーン。
その後ろでは鬼の顔でゆっくりと近づいてくるツン。

とりあえずは、普段と変わらない2人。


(;^ω^)「ツンは僕を無理矢理連れてこうとしたんだお!
       僕の意見は丸っきり無視だお! ひどいんだお!」

川 ゚ -゚)「……本当か? ツン」

ξ#゚听)ξ「だってしょうがないじゃない!
      コイツは優柔不断なんだから!」

川  - )「成る程……把握したよ」


普段と変わらない2人。

今この状況に置いて、クーはそんな物は望んでいなかった。

実質的に、ブーンの事はツンに任せた。
こうなる事も、もしかしたら予感していたのかもしれない。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:13:15.46 ID:MpHLtmH1O


川 ゚ -゚)「なら私は、君にブーンを渡さない」


言うが早いか、クーはその豊満な夢が詰まった胸元へと、ブーンを抱き寄せた。


(; ω )「ブフォッ!?」

ξ;゚听)ξ「なッ――――」

川 ゚ -゚)「君には失望したよ、ツン。
     君はブーンのメニューを決めるように、彼の人生を決めさせたんだ」

ξ♯゚听)ξ「ふ……ふざけんじゃないわよッ!!」

川 ゚ -゚)「ふざけてなどいない。
      私はブーンが好きなんだ。
      君みたいに自分勝手な人間に、ブーンをやる事は出来ない」

ξ♯゚听)ξ「どっちが自分勝手よ!!
       やるとかやらないとか、第一なんで今それを言うのよ!!」

川 ゚ -゚)「今だからこそ、だ。
      君は自分の事しか考えちゃいない。
      そんな君が私の好きな人を裏切る様を見過ごせる程、私の気は長くはない」

ξ♯゚听)ξ「ブーンの気持ちも考えたわよ!!
       さっきから偉そうに何なの!?」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:18:06.59 ID:MpHLtmH1O
川#゚ -゚)「ブーンがなぜ餌の力が必要なのか、よく考えたのか!?」


渡辺に比べれば、ブーンの場合なんか。
どこかでそう考え、ツンならば大丈夫という確信もあった。
互いが互いを必要としているから、大丈夫だ、と。

だが返ってきた返答は、自分勝手なツンの考え。


ξ  )ξ「……考えたし、私だって必死に言ったわよ……!
      それを何? 突然現われて、人を悪者みたいに……!」

川 ゚ -゚)「……すまないな。
     だが、私だってもう我慢できない」

ξ#゚听)ξ「好きなら好きって、最初から言いなさいよ。
      今更、しかもブーンの弱みに付け込むようなやり方なんかしないでさぁ……!」

川 ゚ -゚)「そういう事じゃないだろう……!?
      私は、ブーンを支える必要があると思っているんだ。
      だから君がブーンを支えれないなら、私が支えると言ってるんだ」

ξ#゚听)ξ「……なによそれ」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:20:04.39 ID:MpHLtmH1O
自分の行動を全否定された。
ツンはブーンに必死に言い、必死に自分の気持ちを伝えた。
確かにそれは、「餌の力を消せ」だけの言葉だったかもしれない。

だからいくら言っても、ブーンから良い返事は出なかった。
それはブーンが恐れているから。
今のツンはブーンからすれば、恐れの対象でしかない。

確かな恐怖を抱いていたブーン。
ならその恐怖を喰えばいいだけだ。
そうすればすんなりと事は運ぶ。

だがツンは、そんな事はしなかった。
彼女のプライドが、ブーンの個として抱いた感情を否定する事を許さなかった。

だけどクーは、そんな必死の想いを否定してきた。
挙げ句の果てには、ブーンが好きだ、と。


ξ#゚听)ξ「もう……いいわよッ! 勝手にすればいいじゃない!!」

川 ゚ -゚)「またそうやって逃げるのか?」

ξ  )ξ「ッ!」

川 ゚ -゚)「君はいつもそうじゃないか。
      いい加減大人になったらどうなんだ?」

ξ# )ξ「……さっきから……偉そうにぃ……!!」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:22:05.66 ID:MpHLtmH1O
川 ゚ -゚)「まぁ逃げるなら逃げろ。
      君が居なくても、私がブーンを支えるから」


裏切られた。
信頼していた友人に、裏切られた。

たった、それだけ。
もっと考える事はあっただろう。
だがツンは、それだけしか思い浮かばなかった。


ξ;凵G)ξ「クーの馬鹿ッ……!!」


結局、ツンは逃げ出してしまった。
嫌な事から、全部。






(;゚ω゚)「ズハァッ!! ……ハァッ……ハァッ……」

川 ゚ -゚)「……大丈夫か?」


ツンは彼女の家の外壁を通り、裏庭の方へと行ったようだ。
クーはそれを見届けると、胸元で窒息状態だったブーンを解放した。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:24:18.34 ID:MpHLtmH1O
口を大きく開き、息を荒くし必死に酸素を吸うブーン。
少し青みがかっていた顔に生気が戻ったのを確認すると、
クーはゆっくりと、彼の目を見ながら話し始めた。


川 ゚ -゚)「……なぁ、ブーン」

( ^ω^)「……なんだお?」

川 ゚ -゚)「私は君が好きだ」

( ^ω^)「ぉ……」

(;^ω^)「え?」

川 ゚ -゚)「それにツンも君が好きだ。
      いわゆる三角関係だな」

(;^ω^)「……何で、僕なんか……」

川 ゚ -゚)「おっと、勘違いするな。
      私は今の君は嫌いだ。間違っているからな」


大げさに、片手で待ったのポーズ。
普段より更に冷静な表情。

クーの、彼女なりの決断。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:26:14.83 ID:MpHLtmH1O

川 ゚ -゚)「私達は、前の君が好きだ。
      力なんか知らない、ただ純粋に生きる君が。
      だから君から餌の力が無くても、私達は君を嫌いにはならない」

( ^ω^)「……クーもツンも、判らないんだお。
       1ヵ月当たり前にあったそれを失う恐さが……判らないんだお」

川 ゚ -゚)「たった1ヵ月だろ?」

(♯^ω^)「……たったじゃなんか、ないおッ!
       もう忘れる程の、長い1ヵ月なんだお!!」

川#゚ -゚)「たった1ヵ月だ!!
      だが君とツンは、17年の付き合いだろう!?
      比べものになんかならない程の差だ!!
      ツンを信じろッ!!」

(  ω )「……信じてるお……でも、恐いんだお」

川 ゚ -゚)「ツンは弱いんだ。君だって知ってるだろう?
      不器用だし、素直でもない。
      だから、君を無理矢理に連れて行こうとしたんだ」

(  ω )「……」

川 ゚ -゚)「……君の事を嫌いで、力を失わさせようとした。
      そんな事を、ツンがすると思うか?」

(  ω )「……思わない、お」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:30:03.17 ID:MpHLtmH1O

川 ゚ -゚)「無理矢理、なんてのは私は認めない。そんな事は、今やってはいけない。
      だけど、それがツンなんだ。
      判らないというのなら、それは彼女を好きじゃないって事だ」

( ^ω^)「……クー」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

( ^ω^)「ツンは、どっちに行ったんだお?」


クーは微笑すると、ツンが向かった方を指差した。
これが、彼女なりの答え。


( ^ω^)「………行ってくるお!」

川 ゚ー゚)「あぁ、行ってこい」


ブーンと、ツン。

自分はヒートや渡辺を見なければならない。
だから、ブーンを、ツンを。
今度こそ。


ツンに、ブーンに、託した。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:34:55.10 ID:MpHLtmH1O



川 ゚ -゚)「……」


だがクーは、両手を広げながら走るブーンの背中を、何処か寂しげに見つめていた。


川 ゚ -゚)「……これで、よかったんだ。
     ツンもブーンも、私より強いかr

「お〜れだッ!!」


言い聞かせるように一人呟くクーの視界が、突然暗くなった。
後ろから彼女の視界を塞ぐ両手。
その主を、一瞬にしてクーは理解した。


川; - )「高岡……」

从 ゚∀从「せ〜いか〜い」


振り返った先に居たのは、おどけているのか真性なのか、たまに判らなくなる女。
その後ろには、鼻にティッシュを積めたジョルジュを筆頭に個性的な面々。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:36:39.24 ID:MpHLtmH1O

川 ゚ -゚)「ショボン……眉毛どうした」

( ゚∀゚)「流石に可愛そうだからよぉ、俺の鼻血で書いてやった」

(´・ω・`)「……死にたい」

('、`*川「優しいなぁジョルジュさんは……」

(;'A`)「……」


左眉が赤いショボン。彼が潔癖性ならば発狂していただろう。
クーは顔にこそ出さないものの、ぶっちゃけ引いていた。


川 ゚ -゚)「ん? 君は確かヒートを誘拐した……」

('、`;川「誘拐……」

( ゚∀゚)「堕ちたな、伊藤」

('、`;川「ジョルジュさんが言ったんじゃないですか!
      ドクオの様子見てこい、って……」

( ゚∀゚)「あんなうるせぇの連れて来い、とは言ってねぇだろ」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:38:50.87 ID:MpHLtmH1O

(´・ω・`)「餌を見つけたら、力の説明をする為に連れていく。
       僕からギコ君に提案した事だ」

川 ゚ -゚)「ん? ヒートはなんら変わってはいなかったが?」

( ゚∀゚)「伊藤がぶち切れたから逃がしたんだよ。
      今にもぶん殴りそうな勢いだったからな」

从 ゚∀从「弱いものイジメか。最低だなお前」

川 ゚ -゚)「……」

('、`;川「……」


実際の所は、ジョルジュがふざけてペニサスに憎しみを与えた上に、
ヒートの怒りも相まってぶちギレ金剛になってしまっただけの話。

だが、自分もヒートを殴った事を忘れ、言葉の暴力を振るうハイン。
表情は変わらずとも、威圧的に自分を見るクー。

理不尽だと思いながらも、ペニサスは押し黙ってしまった。


川 ゚ -゚)「まぁ彼女は許さないとして、
      君はヒートに手を出してないんだな?」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:40:35.17 ID:MpHLtmH1O
( ゚∀゚)「当たり前だろうが。
      それに……」

  _
( ゚∀゚)「あのサイズなら何処にでも居る」


( ゚∀゚)「第一俺は女は殴らん。パシリには使うが」

从 ゚∀从「お前……俺の腹殴ったろ」

( ゚∀゚)「あ?」

  _
( ゚∀゚)「……」


( ゚∀゚)「おこがましいわ」

从 ゚∀从「……なんか腹立つが……それよりクー。
     お前こんな所で何してんだよ。喜びはどうした?」


ジョルジュの発言に怪訝な表情を浮かべた一同。
意味を知ればハインもキレかねないが、昨日の晩の事もあり、
今はクーの方が気になったようだ。


川 ゚ -゚)「渡辺なら大丈夫だ。彼女はもう迷わないだろう。
      今はツンとブーンを待っている」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:42:04.28 ID:MpHLtmH1O
( ゚∀゚)「ブーン? 外人か?」

('、`*川「確か内藤君のあだ名です」

( ゚∀゚)「あぁ、内藤かぁ……アレが1番厄介だな。
      餌の力大好きちゃんだからなぁ、アイツ」

川 ゚ -゚)「……おい、ブーンを馬鹿にするような言い方はやめろ」

( ゚∀゚)「あ? 俺に指図すんのk

( 'A`)「はいはい、向こう行きましょーねー」

(´・ω・`)「流石に扱いが手慣れてるな……」


メンチをきるジョルジュを押しながら退場するドクオ。
ショボンもそれに続き、少し離れた所へと向かった。


('、`*川「御免なさい……口は悪いけど、ギリギリ悪い人じゃないんです……」

川 ゚ -゚)「……あぁ、私も少し……カリカリしてる、な。
      謝っておいてくれ……」


小さく、うん、と返事をし、ペニサスもドクオ達の方へと向かった。
さっきは許さないとは言ったが、その意を覆してもなんら問題は無さそうだ。

彼女は、優しい。自分と違って。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:44:19.72 ID:MpHLtmH1O
从 ゚∀从「……なんか元気ねーな。
     何かあったのか?」

川 ゚ -゚)「高岡……」


気付けば2人しかいない。
なら、弱さを曝け出しても問題は無いとクーは判断した。

実際、クーが自殺しようとした事を知ってるのはハインだけ。
ツンには劣るだろうが、彼女も彼女なりにプライドが高かった。

どこかで“他人に対する自分”を作り上げていた。
そんな物がある限り、自分を大きく変えれる訳がない。
判っていながら、クーはそれを庇っていた。


川 ゚ -゚)「……私の事、どう思う?」

从 ゚∀从「馬鹿で頭堅くて無駄にプライド高い奴」

川;゚ -゚)「……」

从 ゚∀从「お前ほど駄目駄目な奴はいねぇよ。うん」

川;゚ -゚)「……また死にたくなった」

从♯゚∀从「なにぃ!? 人がこんなに誉めてやってんのにッ!!」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:46:09.07 ID:MpHLtmH1O
川;゚ -゚)「誉めてたのか……」

从 ゚∀从「誉め言葉だろうが。……いいか?
     どんなに汚い人間って言われても、俺は気にしねぇよ。
     なんでか分かるか、クー」

川 ゚ -゚)「いや……」

从 ゚∀从「汚いって事は、そんだけ色々経験してるって事だからだよ。
     その経験そのままにして、汚いまんま生きてる方が格好いいじゃねぇかよ」

从 ゚∀从「お前は双子の妹に勝手にキレて、
     まだ見えねぇ人生に勝手に絶望して死のうとして。
     駄目駄目な奴じゃねぇか」

川 ゚ -゚)「あぁ……」


ヒートに会いたい。
会って、会って抱き締めてやりたい、と。

確かにまだ見えぬ未来を知った風にし、死のうとした。
だが今、そんな事は思ってはいない。

クーは人の手を借りながらも、確かにそれらを乗り越えてきた。
無様でも、汚くても。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:49:02.12 ID:MpHLtmH1O

从 ゚∀从「それを隠すなよ。お前の汚い所、全部だ。
     他人から嫌われるのなんか、気にすんな。
     少なくとも俺は、そんなお前だから好きだしよ」

川  - )「……高岡」

从 ゚∀从「……昨日はさ、ごめん……な。
     ありゃーちょっと、言い過ぎた」

川 ー )「……気にするな。
     君が何て言おうが、私は君に感謝している」

从 ゚∀从「感謝ねぇ……まぁ、悪い気はしねーな!!
     ギャハハハハハ!!」

川  - )「……なぁ、高岡。
     “強い”って……なんだ?」


俯きながら、クーが問う。
ハインは彼女からすれば、とても強い人間だ。

だから彼女から教えて欲しかった。ハインなりの、強さとは何なのか、を。

数秒考え、ハインはその片目でクーを見据えながら、ゆっくりと口を開いた。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/07(土) 20:52:21.12 ID:MpHLtmH1O
从 ゚∀从「強ぇってのは、弱い自分から逃げない事だ。
     どんだけ馬鹿みたいな生き方でも、馬鹿にされても。
     負けねぇで、曲げねぇで生きるのが、強さだ
     ……と、思うぜ。俺はよ」

从 ゚∀从「あ、これは俺がこう生きたいって話だからな?
     お前にはお前の生き方がある。
     だけど俺は、お前が汚なければ汚いほど、綺麗だと思うぜ」

川 ー )「……ありがとう……高岡……」

从 ゚∀从「ん。ただし、また死にてぇなんてホザいたら、ぶん殴るからな?」

川 ー )「あぁ……もう絶対に……言わない……
     言わないから……少し胸を貸してくれ……」


言いながらクーは高岡に抱かれ、小さく嗚咽をあげた。
嬉しくもあり、悔しくもあり。
全てを分かっているようなハインの、全ての言葉が、クーの心を掴んで離さなかった。


从 ゚∀从「ギャハハハ!! 泣け泣け!!
     誰にも笑わせたりさせねぇからよ!!」


どうすればいいかなんてのは次に考えよう。
今はただ、彼女に甘えていたい。
でも、多分ヒートや渡辺やツンには、こんな姿は見せないだろう。
そう思い、自嘲するように一息、高岡のまな板のような胸の中でクーは笑った。



戻る22へ