ξ゚听)ξツンが感情を喰うようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:32:51.82 ID:stkPrZYNO
  



 僕の怒りは、君を哀しませるのかな



川 ゚ -゚)「渡辺、君の話を聞かせてほしい」

从'ー'从「へ?」




 僕の楽しみは、君を喜ばせるのかな



(,,゚Д゚)「しつこいな……」

ミ,,゚Д゚彡「一歩も引く気はないし、これで終わらせる」

( *゚ー゚)「……ギコ君」



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:34:03.02 ID:stkPrZYNO
  


僕の憎しみは、君を恐がらせるのかな



( ゚∀゚)「ドクオはどうした」

('、`*川「……」

从 ゚∀从「俺がお前ボコボコにして、ぜーんぶ終わりなんだよ」




僕の嫉妬は、君への愛情なのかな



( ^ω^)「……何の用だお」

ξ゚听)ξ「決まってるでしょ。餌の話よ」




僕の感情は、誰かを救えるのかな



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:35:17.71 ID:stkPrZYNO
  






20 ひねくれ者の純粋な涙 前編






9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:36:40.71 ID:stkPrZYNO
川 ゚ -゚)「喜びは私が説得する。
      だが場合によっては、彼女に無理強いはさせない」

(´・ω・`)「まぁ、君がそれでいいなら」

( 'A`)「高岡はどうすんだ?」

从 ゚∀从「俺はドクオ君の意見を尊重しますですよ?
     だからお家でおとなしくしていますです」

( 'A`)「……嘘だろ」

从;゚∀从「う、嘘じゃねぇよ!」

ミ,,゚Д゚彡「楽しみは、ツン一人か」

( *゚ー゚)「ヒートちゃんは家に居てね」

ノパ听)「把握した!」

(´・ω・`)「嫉妬は……」

ミ,,゚Д゚彡「誰か一人くらい知ってるだろ」

( 'A`)「んじゃあ、そういう事で」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:38:17.41 ID:stkPrZYNO
(´・ω・`)「君は病院抜け出すんだよね?」

( 'A`)「えぇ、脅して痛み止めでも貰いますよ」



――――



日曜日、ここは病院。
予定の10時になったが、ドクオは今だ病院に居た。


(♯'A`)「どけっつってんだろが! ぶっ飛ばすぞ!」

「いいから寝てなさい!」

(♯'A`)「離せやコラァ!!」


医者や看護士が、5人がかりでドクオを押さえる。
ドクオが起きた時、彼らは既に待機していた。
先程から20分余り、抗争を繰り返している。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:40:20.71 ID:stkPrZYNO
「麻酔持って来い!」

「アパーム! 弾持って来い!」

(♯'A`)「退けよぉぉお!!」


所詮は怪我人。
腕も足も体も押され、ベッドに無理矢理寝かされるドクオ。
叫びながら必死の抵抗をするが、右腕から注入された薬品により、すぐに寝息を立て始めた。



――――



从'ー'从「私はね、ドジで馬鹿で……
     運動も勉強も……何一つ取り柄が無いの」

川 ゚ -゚)「……」


ある公園のベンチに、二人の少女が座る。
片方は長い黒髪と黒のワイシャツ。
反対に、スカートは白く短い。
無言で話しを聞いている。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:42:46.47 ID:stkPrZYNO
もう一人は、普通だ。
可愛いが、特別オシャレや化粧をしている訳でもない。
どこにでも居そうな女の子。

その女の子が、俯きながらも微笑んで話す。


从'ー'从「餌、だっけ? 私はこれがなきゃ駄目なの。
     1ヵ月前まで全然駄目だったのに、いっぱい友達もできた。
     ……好きな人も、できたの」

川 ゚ -゚)「……君は、まだ必要なのか?
      餌の力は、人に無理矢理感情を与えるんだぞ?」

从'ー'从「なんで? 私は喜びを与えるんでしょ?
     だったら凄い良い事だよ〜!」

川 ゚ -゚)「良い事さ、確かにな。誰だって幸福を求めている。
      だが君は君なんだ、自分も大事にして生きろ。
      その力は永遠の物じゃない、ひどく脆い力だ」

从#'ー'从「関係ないもん! 私はみんなが笑顔になればいいの!」


渡辺が立ち上がる。

公園では、子供達が楽しそうに遊んでいた。
満面の笑みを浮かべて。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:44:37.19 ID:stkPrZYNO
川 ゚ -゚)「……君は恐いんだろう? 元に戻るのが。
      その気持ちは判るがな、いつまでも逃げるなんてのは……」

从#'ー'从「うるさい!!
      昨日出会ったくらいで、私の事何にも知らないで!
      偉そうに言わないでよぉ!」


彼女は、ブーンに似ている。
とにかく自分に自身が無く、常に自己という存在が判らない。
簡単に言えば、なんで生きているのか?である。

大抵は目的など見つけられず朽ちていくのが人生。
だが稀に、心に強い槍を持った人間がいる。

誰かの為に、自己犠牲をも気にせず、献身的に生きる人間。

誰かに感謝され、それらに必要とされ、それらは自分が居なければ、生きていけないと思う。
だから自分は生きている、誰かの為に。

それは悪い事では無い。
誰かの為に生きる事を、否定できる人間など居ないだろう。

渡辺はそんな人間だ。
今まで周りから見下されていた。
だから今は、自分を保っていたかった。

誰かを笑顔にする事で、自分の存在を確固たる物としていたのだ。

だからこそ、力が消えた時が恐ろしい。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:46:22.63 ID:stkPrZYNO
从#'ー'从「私いじめられてたんだよ!?
      そんな時にみんな笑顔になって……!
      私をいじめるなんて事も、しなくなったの!」

川 ゚ -゚)「……そうか」

从#'ー'从「喜びはね! 心を満たすの!
      私が居るだけで全部良い事になるの!
      なんで私が駄目みたいに言うの!?」

川 ゚ -゚)「……渡辺、君の気持ちは判ったよ。
      私は君の考え次第では、君の側に付くつもりだった」


クーもゆっくりと立ち上がり、渡辺の目を見る。
冷たい目だなと、渡辺は思った。


川 ゚ -゚)「私は君に、こんな力必要無いと絶対に思わせる。
      そうじゃないと、誰も喜ぶ結果にならないんだ」

从#'ー'从「なにそれ! 他の人を棚に上げるの!?」

川 ゚ -゚)「何とでも言え。事実は事実だ」

从#'ー'从「きったない! 私が悪者みたいじゃん!」

川 ゚ -゚)「悪者だろう? 自分を大事にしていたいんだから。
      他人なんかどうでもいいなら、君は悪者さ」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:48:04.74 ID:stkPrZYNO
从#'ー'从「む〜! 違うもん!
      皆を笑顔にしたいの! ただそれだけ!」

川 ゚ -゚)「だったら力を消そう。それで終わりだ」

从#'ー'从「それじゃあ私が笑顔にならないもん!」

川 ゚ -゚)「やっぱり悪者じゃないか」

从#'ー'从「んぐぐ……」


あぁ言えばこう言う。
もともと少しヌケている渡辺にとって、クーは物凄い嫌いな存在となった。

その後も渡辺が果敢に攻めるも、クーに躱される。

クーは渡辺が疲れるのを待っていた。



――――



( ゚∀゚)「おい伊藤」

('、`*川「はい?」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:50:05.37 ID:stkPrZYNO
( ゚∀゚)「行け」

('、`;川「え゙!?」


薄く茂った草しかない河川敷に、3人の男女。
犬の散歩や、ランニングをする人が居てもよさそうなものだ。
だが無銭敷は、不良の溜まり場として有名だった。
そのため今は、彼女らしか居ない。


( ゚∀゚)「なんだよ、え゙って」

('、`;川「いやだってアレ……高岡ですよ!?
      正面からじゃ無理ですよ! ぶっ殺さr……」


まくしたてる様に喋っていたペニサスの口が止まる。
見れば彼女の顔の前に、ジョルジュが平手を構えている。

憎しみを、与えたのだ。


( ゚∀゚)「……行け」

('、`♯川「……高岡ァァァァァア!!」

从 ゚∀从「……ハハハ」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:52:40.90 ID:stkPrZYNO
一瞬で勝負はついた。

殴りかかるため突進してきたペニサス。
寸でに迫った所で、ハインが身体を投げ出しペニサスに飛び込んだ。
ペニサスからすれば、予想外の行動。
そのまま押し倒されると、腹に強い衝撃が一つ。

一瞬で、ペニサスはマウントを取られた。


从 ゚∀从「ギャハハハハハハハハ!!」


そのまま右腕を振り上げ、ペニサスの顔に向かって――――



(;゚∀゚)「オラァ!」

从 ∀从「てっ!」


ジョルジュの飛び蹴りが、ハインをペニサスから剥がす。
左肩を押さえながら、ハインはジョルジュを睨み付ける。


从♯゚∀从「てめぇが最初っから来いよ!
      くだらねぇ事してんじゃねぇ!」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:55:05.34 ID:stkPrZYNO
(♯゚∀゚)「ドクオを呼べ!」

从♯゚∀从「来ねぇよアイツはぁ!」


ペニサスを蔑ろにしたジョルジュへの怒りか、
ジョルジュの餌による憎しみか。
定かではない感情のまま、ハインは殴りかかった。



――――



ミ,, Д 彡「ハァ……ハァ……」

(,,#゚Д゚)「ゴラァ!」


ギコの拳が、兄の腹を突く。
痛みで背中を丸めた先に、下げた顔をギコの膝が襲った。


ミ;,, Д 彡「〜〜っ!!」

(,,#゚Д゚)「ッラア!!」


血が漏れた鼻を押さえ顔を上げた時、フサギコの右頬に拳がめり込んだ。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 19:58:45.61 ID:stkPrZYNO
1発1発が重たい攻撃で、フサギコは立って居られなくなる。


ミ,, Д 彡「……」

(,,#゚Д゚)「ハァ……ハァ……」


タコ殴り、とでも言うべきか。
フサギコは抵抗する事無く、ただ殴られ続けていた。


(,,#゚Д゚)「立てゴラァ!」

ミ,, Д 彡「ッ!」


不器用な男が一晩悩んで考え付いた、とても暑苦しい説得方法。


「好きなだけ俺を殴れ」


(,,#゚Д゚)「ゴラァ!」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:00:06.60 ID:stkPrZYNO
  




「……ごめん」

「うるせー謝んな」

「……ごめん」

「謝んなっつてんだろ!!」

「……」

「……お前さー」

「ん?」

「なんで昨日殴られてたんだ?」

「……俺も中学ん時は、不良だったんだよ」

「ふ〜ん」

「……だけどこのままじゃ駄目だって思って、な」

「だから退学したくなかったのか?」

「俺の家、カーチャンしか居なくて……。
 しかも身体弱いし、金持ちなわけもないし」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:02:16.11 ID:stkPrZYNO
「……」

「だから、せめての親孝行したくてよ」

「あいつらガ高の奴らだよな?」

「……あぁ、俺も誘われたんだけど、VIP来たくてよ」

「よく受かったな」

「必死に勉強した。ていうか、お前の方が……」

「俺はやればできる子なんだよ! ギャハハ!」

「カンニングしたろ」

「ばっ! するかそんな事!」

「怪しいな……」

「してねっつの!」

「ところで、さっきから鼻が痛いんだが」

「俺だって痛ぇよ。普通女の顔殴るか?」

「女に見えなかったんだよ」

「てめぇ……」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:04:38.10 ID:stkPrZYNO
「うっしゃ、帰るか」

「なんだその 一緒に帰るぞ。みたいなふいんきは」

「雰囲気だ、馬鹿」

「あぁ!? 誰が馬鹿だ!」

「お前だよ、ほら帰るぞ」

「なんで俺がお前なんかと……」

「ボディーガードだよ、いいだろ?」

「……まぁ、暇だし付き合ってやるよ」

「ありがとさん」

「その代わり、明日サボるぞ」

「……ははは、いいぜ」



結局、俺らは1週間の停学貰ったんだったな。
毎日アイツに付き合わされて……次第に不良に戻ってて……。

すげぇ楽しかったな。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:06:08.93 ID:stkPrZYNO
戻れるかな、あの頃に


……一ヵ月前


高岡から、感情が見えた時


すっげぇ嬉しかったな……


俺もすぐ減っちまって、誰かれ構わず喰って……


この力が消えた時


俺は、人が楽しいって思ってるって判るのかな


今までは見たくなくても見えた物が、突然見えなくなったら。


俺は不安になるだろうな。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:08:13.24 ID:stkPrZYNO
だけど、良いことが一つあるな。


今までは、少し押さえてた。


俺の楽しいって感情


力が消えれば、俺は全力で笑えるんだ。


高岡と……笑ってられる。


その為にも……俺は……



起きなければ。


起きて、あのひねくれ者を殴らなければ。


起きて、あのひねくれ者に思いを伝えなければ。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:10:03.02 ID:stkPrZYNO
動け





動け……!!







J(♯'ー`)し「オラァ!」

「がはぁっ!!」

「院長ー!!」



……カーチャン?


なんで医者を殴ってるんですか……?



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:14:03.46 ID:stkPrZYNO
(;'A`)「え? 何してんの?」

J(♯'ー`)し「あんたが何してんの!! とっとと行きなさい!!」


言いながら、また一人の白衣を殴るカーチャン。
ボクサーさながらのそのパンチで、医者は壁まで吹っ飛ぶ。


J(♯'ー`)し「あんたがどんな道を進もうが、あんたの勝手さ!!
      だけどね!! 一つだけ守りなさい!!」


ガタイのいい医者に羽交い絞めにされるも、壁を蹴って一回転。
そのまま医者の後ろに回り、首にチョップ。
映画でも見ているかの様で、俺は惚けてしまう。


J(♯'ー`)し「一人だけでいいわ!!」


後ろから迫るナースに裏拳。
母は強しってレベルじゃねーぞ……。

カーチャンは一息つくと、俺に言う。


J( 'ー`)し「絶対に幸せにさせなさい!!」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:16:03.54 ID:stkPrZYNO
それが、俺が守るべき事。
なら、俺がやる事は一つ……!!


( 'A`)「行ってくる」


俺は着替えの入った紙袋を掴むと、病室を飛び出た。


J( 'ー`)し「……いってらっしゃい、ドクオ」




俺は走る。


親不孝で馬鹿な俺が


やっと判った親孝行の仕方


高岡を、幸せにする



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:18:05.65 ID:stkPrZYNO
俺は走る。


頭は痛いし、手も痛い。


だがそんなもん関係無い


泣かせたなら、その倍笑わせてやる。



俺は入院服を脱ぎ捨て、紙袋から私服を……


(;'A`)「短パン!?」


紙袋から出てきた服は、白のランニングにジーンズの短パンだった。
こんなもんを着るのは裸の大将だけだ。

だがいつまでも、パンツ一丁で走るわけにもいかない。
俺は走りながら、短パンに足を通した。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:20:03.55 ID:stkPrZYNO
(;'A`)「短ッ!」


せめて膝は隠して欲しかった。
短パンを腰まで下ろし、紙袋に入っていたビーチサンダルも履く。


(♯'A`)「ちっくしょぉぉぉぉお!!」


ランニングをポケットに詰め込み、走る。
夏のビーチなら、絵になったろうが……。


「止まりなさい!」

(♯'A`)「どけやぁぁあ!」


医者をドロップキックで吹っ飛ばし、前転をしてまた走る。

2分程の疾走で、やっと出入口が見えた。
階段を使った為かなり息が切れたが、全速で外に出た。


(;'A`)「寒ッ!」


上半身は裸、下は短パン。寒いわけがない。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:22:03.27 ID:stkPrZYNO
秋風の冷たさで身を縮ませていると、男の声が耳に入る。


(´・ω・`)「やぁ、遅かったね」

(;'A`)「ショボンさん!!」

(´・ω・`)「用意は出来てるよ。さぁ、乗るんだ!」


そう言いながら男は、ママチャリの後ろに座った。



――――



从♯'ー'从「朝は、ご飯って決まってるの!」

川 ゚ -゚)「いつまでも日本に捕われていてはいけない。
      時代はラーメンに餃子だ」

从♯'ー'从「朝からそんな重いもの食べないよ!」

川 ゚ -゚)「そうか?」

从♯'ー'从「そう……だよ……!」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:24:02.45 ID:stkPrZYNO
肩で息をする渡辺。
対するクーは、ベンチに足を組み座っている。

さっきから全く関係無い話題で口喧嘩をする2人。
最初は不思議そうに見ていた周りの人間も、
あまりのくだらなさに今や見向きもしていない。


从♯'ー'从「……疲れた」

川 ゚ -゚)「おや、ギブアップか? 大した事ないな」

从♯'ー'从「〜ッ!!」


まだまだ、口喧嘩は終わりそうになかった。



――――



所変わってブーンの家。
玄関先に、ツンが腕組みをしている。
睨み付ける視線の先には、内藤ホライゾン。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:26:16.32 ID:stkPrZYNO
( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「……私はね、ブーン」


先程まで静寂だった2人の空間。
今はツンの無感情な声が聞こえる。


ξ゚听)ξ「アンタがその力で笑わせて、それでいいと思ってるのが気に食わないの。
      人を思う上での行動なら、結果じゃなくて過程を大事にしなさいよ」

( ^ω^)「……僕には無理だお」

ξ゚听)ξ「無理じゃないわよ……!
      今まで私と笑っていたじゃない?」

( ^ω^)「……判らないんだお、どうすればいいのか」

ξ゚听)ξ「ブーン……」


ぬるま湯に浸かりすぎたのだろう。
消極的だったブーンが、目標をツンの笑顔へと、やっと決めれた時。
彼はたった一歩で、目標を踏みしめた。

それは努力無しの餌の力。
いくら頭で判っていても、得た物を全て投げ出すような真似。
そんな事、今の彼には出来そうに無かった。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:28:18.56 ID:stkPrZYNO
( ^ω^)「……ツン、笑ってお」

ξ゚听)ξ「え?」

( ^ω^)「笑ってくれお……」


ツンの口元がゆるむ。
頭は晴れ晴れとし、心が弾む。

「楽しい」と心が言った。


ξ゚ー゚)ξ「……」

( ^ω^)「やっぱりその顔がいいお」

ξ゚ー゚)ξ「おっそろしい力ねー」


どんなに怒っていても、どんなに悲しんでいても。
彼が力を使えば、全ての人間が喜ぶのだ。

「個人の否定」
ツンは以前感情を喰う事を、こう言った。

ならば餌の場合は

どんな感情を抱いてようが、無力と化す力。
つまり「感情の否定」。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:30:19.89 ID:stkPrZYNO
人の心を動かす、強力無比な力。


ξ゚ー゚)ξ「そんな力、ブーンには似合わないわよ?」

( ^ω^)「……僕にこそ必要なんだお。
       僕みたいになんの取り柄も無い人間にこそ、必要な力なんだお!」

ξ゚ー゚)ξ「じゃあ、アンタが力を得る前の私は、なんで笑ってたの?」

( ^ω^)「……もう忘れたお」

ξ゚ー゚)ξ「……そっか」


ξ゚听)ξ「それじゃあ、もうアンタには会わないわよ。
      私に近寄ることも、私は許さないから」

(;^ω^)「……ぉ?」

ξ゚听)ξ「じゃあ、さよなら」

(;^ω^)「ちょ、待ってくれお!」


逃がすまいとツンの腕を掴むブーン。
今まで何度となく睨まれたが、今回が1番、1番恐い目だった。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:32:39.66 ID:stkPrZYNO
ξ゚听)ξ「触んないでよ」

(;^ω^)「ツン……嫌だお」

ξ゚听)ξ「なら、その力を捨てなさい」

(;^ω^)「それは……嫌だお」

ξ゚听)ξ「アンタ、いつからそんなに弱くなったの?」

( ^ω^)「……僕は昔かr

ξ#゚听)ξ「そんな事ないじゃない!! 忘れたの!?
      アンタ、受かるはずもないラウンジ受けたじゃない!!
      そんなの強い人間にしかできないわよ!!」

( ^ω^)「あの時は……夢中だったんだお」

ξ  )ξ「なら……」


ただツンと居たかった。
ツンに、学校なんか楽しくないなんて言って欲しくなかった。
だから夢中で、夢中で……


ξ;凵G)ξ「なら今も!! 私を夢中で好きになってよ!!」



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:34:09.96 ID:stkPrZYNO
  


――――



(,,#゚Д゚)「ハァ……ハァ……!!」

ミ,, Д 彡「……」

( *゚ー゚)「……もう、いいでしょ?」

(,,#゚Д゚)「……まだだ!」


ギコとフサギコの家の近くにある空き地。
そこに重々しい打撃音と、呻き声が響く。


(,,#゚Д゚)「起きろよ兄貴! まだ終わんねぇぞゴラァ!」


ギコは兄の髪を掴み、無理矢理引き起こす。
鼻と口からの血が、痛々しい程鮮やかだった。


(,,#゚Д゚)「糞兄貴が……!!」

ミ,, Д 彡「……」



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:36:27.51 ID:stkPrZYNO
(,,#゚Д゚)「いつもらしく殴り返せよゴラァ!
       なんで……抵抗しねぇんだよぉ!!」


無理矢理立たせ、その顔を殴る。
フサギコは力無く倒れた。


(,,#゚Д゚)「オメェが言ったんじゃねぇか!!
       気に入らなければ殴れって!!」


ギコが懇願するように叫ぶ。
やがて、低い声が聞こえた。


ミ,, Д 彡「確かに、言った……。
      現に俺は、それが正しいと信じてる。
      俺が持ってる唯一の……武器だからな」


呻きながら、よろつきながら。
フサギコが立ち上がる。


ミ,,゚Д 彡「覚悟なんだよ!! 俺のぉ!!
      懺悔する時はただ殴られるのが、俺の覚悟だ!!」



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:38:03.05 ID:stkPrZYNO
(,,゚Д゚)「……なんだよ、懺悔って」

ミ,,゚Д 彡「俺はお前を見下していた。
      だけど今から、対等の立場になりたいんだ」

(,,゚Д゚)「……」

ミ,,゚Д 彡「だから……、精一杯力になってやる……。
      お前を笑う奴が居るなら……一緒に……」


そこまで行って、フサギコは倒れた。
前方へゆっくりと、手など付かず倒れた。


(;゚ー゚)「フサギコさん!!」

(,,゚Д゚)「……ずっと恐怖撒いてたのによぉ
      もう止めてくれって言わせる為に……ずっと撒いてたのに」


フサギコに駆け寄るしぃ。
薄目で彼女を確認すると、ゆっくりと口を開く。


ミ,, Д 彡「しぃちゃん……アイツ頼むわ……
      アイツ、不器用なだけだから……」

( *゚ー゚)「はい……少し眠ってて下さい」



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:40:04.94 ID:stkPrZYNO
ミ,, Д 彡「あぁ……」


ゆっくりと、フサギコの頭をおろす。
静かな吐息が聞こえた。


(,,#゚Д゚)「なんで言わねぇんだよ……糞兄貴が……!!」

( *゚ー゚)「……所詮、感情なんか一時的なものよ」

(,,゚Д゚)「……」

( *゚ー゚)「気持ちと感情は違うの。
      フサギコさんの気持ちは、簡単には折れない」

(,,゚Д゚)「しぃ、俺は……」

( *゚ー゚)「私もだよ? ギコ君。
      私もギコ君の恐怖なんかには負けない。
      もう、ギコ君を……恐いなんて思わない」

(,,゚Д゚)「……なんでそこまでするんだよ」

( *゚ー゚)「好きだからに決まってるでしょ?
      ギコ君が力を失ったら、私達2人でギコ君を支える。
      ……覚悟の気持ちよ」



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:42:10.50 ID:stkPrZYNO
情けない。

ギコは、自分一人で生きてみたかった。
少しだけ、甘えるのを止めたかった。

だけど、一人で出来る事なんか……。


(,, Д )「意味ねぇ事だ……」

( *゚ー゚)「足りない分は補ってあげる。
      だからギコ君も、もっともっと私達を頼って?」


最初から相談すればよかった。
力を得て、しぃが自分から距離をおいた。
その時彼は、自分の弱さを知った。

だから少しだけ……背伸びしてみた。

背伸びして、精一杯見ようとした先は……


ただの、荒野だった。


(,, Д )「兄貴と俺は……対等なんかじゃねぇ……
      何倍も、何万倍も……俺より強い……」



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:44:07.76 ID:stkPrZYNO
( *゚ー゚)「私が手伝ってあげるよ。
      その代わりに、私と一緒に居て?」


何にも無かった荒野に、一輪の花が咲いた。

男の仕事は、その花に水をやり、守る事。

花の仕事は、男を癒し、共に進む事。

もう一人の男は、2人の為に水を運んでくる。


たった3人の、小さな関係。


(,, Д )「しぃ……好きだ……」

( *゚ー゚)「うん……知ってる」


たった3人の、素晴らしい関係。


そこには恐怖も怒りも嫉妬も、そんな感情は一つも無かった。



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/11(金) 20:46:05.33 ID:stkPrZYNO
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从'ー'从「クーちゃんは私と居て、なんで笑わないの?」

川 ゚ -゚)「私が君とは反対の存在だからだ」

从'ー'从「?」

川 ゚ -゚)「君は喜びを与えるが、私は喜びを喰う」

从'ー'从「……?」

川 ゚ -゚)「……簡単に言えば、君が撒く喜びでは私は喜ばないという事だ」

从'ー'从「つまり……どういう事?」

川;゚ -゚)「……」


クーの作戦通り、渡辺は疲れていた。
もうさっきまでの気迫は無い。
後はゆっくりと説得すれば……

だが、ここで誤算が起きる。

渡辺は、ヒートを遥かに越える天然だったのだ。

隣にちょこんと座った彼女に全てを説明するには、まだまだ時間が必要そうだった。



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