ξ゚听)ξツンが感情を喰うようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 00:47:13.35 ID:LAG1jzwOO

24 ごちそうさまでした




川 ゚ -゚)「やぁ、渡辺とは上手くいったか?」


家の、ピンポーンという呼び鈴。それが鳴ったかどうか、俺には分からなかった。
余りにリビングが騒がしかったからだ。

だが聞こえた人も居たらしく、少し疑いながらも玄関を目指した。


(´<_`;)「え……あ、はい。なんとか」

川 ゚ -゚)「そうか。……よかった、ありがとう」


リビング並に騒がしい玄関先、ドアを開けたらすぐにこの人が質問。
何事かと、とりあえず無難に返事をしておいたが、何故だか感謝をされた。

渡辺とは上手くいったか、か……果たして本当に上手くいったのだろうか?

話が突飛しすぎてたから、俺は俺の気持ちを話ただけだし……。
渡辺が喜んでくれたのは分かったから、俺はそれで十分なんだが……。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 00:50:44.63 ID:LAG1jzwOO

川 ゚ -゚)「ではお邪魔させてもらうぞ」

(´<_`;)「あ、はい……どうz」


言い終わる前に、この人は家へと上がり込んでいた。
既に家の中には俺を含め6人が居る。
先程また2人、家にやって来た。
少しというかかなり声の大きい子が、妙に印象に残った。

そして今から、その倍以上となる8人が来るらしいが……


('、`*川「お邪魔します」

( ゚∀゚)「あー、なんか来た事あるような無いような家だなー」

从 ゚∀从「なーんか腹減ってきたなぁ」

(´・ω・`)「感情なら、伊藤さんの傍に居れば大丈夫だと思うけど」

( 'A`)「いや、普通に腹が減ったんだと思います。
     呑気すぎますよ、人が殴り合いしてたってのに」

从 ゚∀从「減るもんは減るんだからしゃーねーだろ」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 00:53:34.96 ID:LAG1jzwOO

( ^ω^)「お邪魔しますお」

ξ゚听)ξ「なんだ、弟者君じゃない」

( ^ω^)ノ「お? おぉ、ひさぶー」

(´<_`;)「おう、久しぶり……」


本当に8人来た……しかも全員個性的。赤い眉の人とか。

最後に来たツンさんと内藤は、中学の時に一年だけ同じクラスだった、薄い仲。
驚いたのは、ほとんどがウチの学徒で、ほとんどが図々しかった事。


ξ゚听)ξ「弟者君も餌だったんだ……」

(´<_` )「あぁ、どうやら嫉妬とかなんとk「うおおおおおおおお!!!11 クー!! 会いたかったぞぅぅう!!」

(´<_`;)「……」

ξ;゚听)ξ「……まだ騒がしいのが居るんだ」


まだ、って……。
まだ居るのか……もうお腹いっぱいなんだが……



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 00:55:08.54 ID:LAG1jzwOO

――――




(´・ω・`)「さて、積もる話もあるかと思うけど……」


ショボンからこの言葉が出たのは、全員が揃ってから実に10分後。
すでに雑談は積もり積もっており、彼は一度に皆を集めた事を少し後悔した。


(´・ω・`)「えー……と、何から話せばいいのかな、っと」

从 ゚∀从「もーちょっと奥行けよ」

('、`*川「アンタは床に座ってなさいよ」

从#゚∀从「あぁ!? ぶっ飛ばすぞ!!」

(´<_`;)「あの……自分が退きますから……」

(´・ω・`)「……」


少し考えを巡らせてる間にまた賑わいを見せる数人。
それぞれの保護者役が、というかドクオが一発殴り、騒ぎは治まった。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 00:57:02.48 ID:LAG1jzwOO

フサギコが続きを話すよう目で言うと、ショボンは咳払いを一つし、ゆっくりと口を開く。


(´・ω・`)「えー、やっと14人が揃ったわけですが……」

( ゚∀゚)「前置きいいから用件言えよ。
      早く帰りてぇんだよこっちは」

(´・ω・`)「……今から、僕らの力を消します」

( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「それに関して……とりあえず、消したくない! って人、居るかな?」


丁度真ん中に立っていたショボン、周りをゆっくり見回し、全員の意志を確認する。
誰からも消したくない! という声は上がらなかったが、違う類の声がショボンを問うた。


ミ,,゚Д゚彡「お前は? 本当にいいのかよ」

(´・ω・`)「僕は君らの為に力を消す。そう決めたんだ」

川 ゚ -゚)「……自己犠牲、か?」

(´・ω・`)「違うね、自己満足だよ。それでいいんだ」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 00:58:33.28 ID:LAG1jzwOO

ナルシストか、厨二病か。
ショボンは少し、自分を格好いいと思った。
本当にただの自己満足で終わるそれを、しかしショボンは大事にしたいと考え始めていた。


(´・ω・`)「と、いう事で……これから力を消したいと思います」

(*゚ー゚)「……やっと、ね」

(´<_`;)(あっという間すぎるぜ……)


喜びと安心。そして緊張。
様々な感情を彼彼女らは抱きながら、ショボンの言葉に耳を傾ける。


(´・ω・`)「僕ら側の数人には話した事だけど、この力を消す方法は二つある」

 そう言うとショボンは、人差し指をピンと伸ばし形を作った。

(´・ω・`)「まず一つ目は、誰かが死ぬ事」

从;'ー'从「ふぇえっ!?」

(´・ω・`)「まぁ当然、却下だね。ありえない話だ」

从;'ー'从「よ、よかった〜……」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:00:04.60 ID:LAG1jzwOO

 胸を撫で下ろす渡辺。その和やかさに、誰かが笑みをこぼした。
それを横目に、ショボンはピースを作り、話しを再開する。

(´・ω・`)「二つ目は、この力の本来の消し方。
      それは単純に、僕ら七人で一人の感情を喰う事」

( ゚∀゚)「んだよ、楽勝じゃねーか」

( 'A`)「でもそれをやると、喰われた人から感情が無くなるらしい」

(´・ω・`)「抱いてないような感情まで、無理矢理喰うからね。
      結果残るのは、感情を抱かず廃人のような人と、能力の無い14人の僕ら」

( ゚∀゚)「そうか……でもまぁ、頑張れよ。伊藤」

('、`;川「えっ!? 私!?」

ノパ听)「クー、お腹空いたぞ〜」

川 ゚ -゚)「もう終わるから我慢しろ、後で何か食べさせるから」


ξ゚听)ξ「それじゃあ、どうするんですか? 方法はあるんですよね?」

(´・ω・`)「うん、ある。それは今言った、二つ目の方法を使う。
      ぶっちゃけ賭けなんだけど、恐らくこれしかないんだ」

ミ;,゚Д゚彡「賭けかよ……」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:01:06.53 ID:LAG1jzwOO

(´・ω・`)「僕ら全員で喰う。すると、能力は消える。
      その消えるまでのタイムラグ、その間に餌の皆で感情を与えてもらいたい」

从 ゚∀从「……?」

ミ;,゚Д゚彡「一瞬も無いかもしれない間に賭けろってか?」

( 'A`)「タイムラグって……何秒くらいなんですか?」

(´・ω・`)「不明」

(;'A`)「え゙……」

川 ゚ -゚)「本当に賭けだな。
     失敗すれば、14人で廃人を囲んでいるという構図か」

( ,,゚Д゚)「犯罪集団じゃねぇか……」

( ^ω^)(タイムラグ?)

从'ー'从(タイムラグ?)

ノパ听)(タイムラグ?)


(´・ω・`)「残念ながら、僕はこの方法しか思い浮かばなかった。
      皆を引っ張っておきながら、申し訳ない」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:02:51.39 ID:LAG1jzwOO

(*゚ー゚)「それしかないならしょうがないわね。やりましょう」

(;,゚Д゚)「即決だな、おい」

(*゚ー゚)「考えても分からないなら行動しなくちゃ。
     問題は、誰で行うかね」

川 ゚ -゚)「……まだ全員がやるとは言ってないぞ」

(*゚ー゚)「なら他に案があるの?」

川 ゚ -゚)「無い。だが余りに早計だ。
     それに問題はそこじゃない。誰で行うか、で決めるようじゃ駄目だ」

ξ゚听)ξ「……他人に興味ないんじゃなかった?」

川 ゚ -゚)「私は、な」


从 ゚∀从「あー……つまりどういう事だ?」

( 'A`)「俺ら14人が、同じ賭けに乗るかどうか、って感じだな。
      成功すれば当然OKだが、失敗すれば他人を傷つける結果が残る」

ξ゚听)ξ「ショボンさんは、どれくらいの確立だと思ってるんですか?」

(´・ω・`)「……20%」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:04:31.88 ID:LAG1jzwOO

从'ー'从「……絶対、駄目だよ。そんなの」

ミ,,゚Д゚彡「確立以前の話しだな、こりゃあ」

( 'A`)「俺は確立で決めますよ。んで、乗ります。
     皆さんこのままじゃ駄目だって思ってるんでしょ?」

从#'ー'从「確立なんかで誰かを不幸にしていいわけないじゃん!!」

( ^ω^)「……自分よりも他人を優先する人間も、少なくても確かに居るんだお」


( ,,゚Д゚)「……こりゃあ、決まりそうにねーな」

ノパ听)「あー、よく分からんがッ!
     もめたら多数決で行くべきだと思うぞッ!?」

(´・ω・`)「……皆の意見を聞こうかな。
      多数決で決定をする気はないけど……」

(*゚ー゚)「私はやる側。確立でも、今はそれに賭けるしかないもの」

( 'A`)「自分もやるべきだと思います」

从 ゚∀从「よくわかんねーしドクオにさんせー」

( ゚∀゚)「俺も。つーか早く帰りてぇ」

从#'ー'从「―――ッ!!」



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:05:46.52 ID:LAG1jzwOO

(´<_`♯)「ふざけんなよさっきから! 真剣に考えろッ!!」

( ゚∀゚)「……はぁ?」

(;,゚Д゚)「おぅ、やべぇぞ……」

( ゚∀゚)「誰に口聞いてんだ?」

(;,゚Д゚)「おい、落ち着けよ……」

('、`;川「そうですよ……落ち着いてください……」

(´<_`♯)「力でなんでも押し通すのかよ!?
       俺達をお前と一緒にすんじゃねぇッ!!」
  _、
(♯゚∀゚) 「よし、殺す」

ξ;゚听)ξ「ちょ、しぃさん……!」

(;゚ー゚)「なんか大活躍ね、私の力」


(´・ω・`)「……」

ミ,,゚Д゚彡「駄目だな、こりゃあ。どうするよ?」

(´・ω・`)「今日、決めたい。
      じゃないと僕は……明日生きちゃいないかもしれないから」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:08:31.63 ID:LAG1jzwOO

ミ,,゚Д゚彡「やっぱ自己犠牲じゃねぇか。死んで満足だなんて思うなよ?」

(´・ω・`)「……」


ξ゚听)ξ「……ギコさん、でしたっけ?」

( ,,゚Д゚)「ん? なんだゴルァ」

ξ゚听)ξ「恐怖の餌ですよね? 皆に感情撒けますか?」

( ,,゚Д゚)「撒けるけど……撒けって?」

ξ゚听)ξ「はい。それで力が恐いと思わせて、皆に消すよう促します」

(;,゚Д゚)「策士だなゴルァ……」

川 ゚ -゚)「駄目だそんなの。私は認めん」

ξ゚听)ξ「アンタが恐怖に勝ったら言いなさい」

川#゚ -゚)「ツン……!!」

(;,゚Д゚)「いや、撒かないから喧嘩はすんな……」

( ^ω^)「……平行線のまま、かお?」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:10:50.28 ID:LAG1jzwOO

(´・ω・`)「……」


(´・ω・`)「……渡辺さん」

从'ー'从「……なんですか?」

(´・ω・`)「君たちを救う為に……僕を信じてほしい。頼む」

(´<_` )「……渡辺」

川 ゚ -゚)「渡辺……」

从;'ー'从(あれれ〜? いつの間にか一人になってるよ〜?)

ミ,,゚Д゚彡「自分を殺すのも、勇気だ。
      これからそういう道を歩む為にも……今は、コイツに賭けてくれ」

从'ー'从「……」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「……20%を信じろって?」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:12:08.92 ID:LAG1jzwOO
(´・ω・`)「一人20%さ。全員なら……」


(´・ω・`)「480%だッ!!」


('、`*川「……10回やったら48回成功の確立」

( 'A`)「まさに奇跡……」

ノパ听)「大丈夫だッ!! アタシは運がいいからなッ!!」

(;,゚Д゚)「……500%突破」


从'ー'从「……わかりました。
     不本意だし、失敗したらって思うと恐いけど……」

从'ー'从「絶対に、成功させます」

(´・ω・`)「ありがとう……」


(´<_` )「まぁ、渡辺がいいっていうのなら、俺もいい」

( ゚∀゚)「なんだそりゃ? 一番適当なのはお前(*゚ー゚)「人には色々あるの。静かにしましょーねー」
  _
( ゚∀゚) 「……はい」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:14:34.84 ID:LAG1jzwOO

ξ゚听)ξ「クーは?」

川 ゚ -゚)「私は味方をするだけだ。どちらでも構わんよ」

( ^ω^)「……僕もいいお。でも失敗は、許されない事ですお」

(´・ω・`)「あぁ、みんなありがとう」

( ,,゚Д゚)「別にアンタの為にやるんじゃねぇ。
      それぞれ、思う所があるんだよ」

ノハ*゚听)「おぉ、仲直りだな! いい事ジャマイカッ!!」

ノハ*゚听)「それでアタシ達は何をするんだ?」

(´・ω・`)「……クーちゃん」

川 ゚ -゚)「……やれば出来る子だ……多分」




――――



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:16:18.24 ID:LAG1jzwOO

ノパ听)「うむ、把握したぞッ! 要はキュッとやってバッーだなッ!?」

川 ゚ -゚)b「完璧だ」

(´・ω・`)(不安杉る……)


一連のやりとり、これでヒートっていう子の性格は把握できる。
クーと双子って言ってたけど、絶対血は繋がっていないでしょ、アレは。


(*゚ー゚)「それで? 誰の感情を喰えばいいのかしら」

ミ,,゚Д゚彡「まさか俺らの中からじゃねぇだろ?
      自分の感情は喰えねぇし」

( ^ω^)「お……この中からだと思ってたお……」


アンタ……それで了承したの?
私とか選ばれたらどうするつもりだったのよ……。

そう思うと何処か悔しくて、何処か悲しくて、何故だかブーンを殴っていた。


(;^ω^)「いたっ! ……お? なんで殴ったんだお?」

ξ゚听)ξ「……知らないわよ」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:18:09.35 ID:LAG1jzwOO

(´・ω・`)「僕らは駄目。となると、他人の協力が必要になるね」

( ゚∀゚)「んなもん、そこらのおっさん殴って、引っ張って来りゃいいじゃねぇか」

(*゚ー゚)「あのね? ジョルジュくん。
     今は皆が一致団結しないといけないの。わかる?」
  _
( ゚∀゚) 「……わかった」

('、`#川「……」

从 ゚∀从「つーかアレは? 猫とか犬とか虫とか」

( 'A`)「動物か……そういえば試しちゃいないが……」

川 ゚ -゚)「家に猫が居るが、霧は見た覚えはないな」

ノハ*゚听)「金タマの事だなッ!? アイツはすこぶる可愛いぞッ!!」

(;,゚Д゚)「か、かねたま……?」

ξ゚听)ξ「なんて名前付けてんのよ……」

(´・ω・`)「……どうやら、動物では駄目みたいだね。
      人間を基準に考えた力だから、それも当然と言えば当然かな」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:19:37.66 ID:LAG1jzwOO

从'ー'从「それじゃあ、やっぱり……」


誰かを巻き込まなければ、いけないのだろう。
自分達の為だけに、誰かを危険に晒さなければいけなくなった。

……正直私は、その事に関しては特に何も思っちゃいない。
今やらないと、今やらないとブーンの決心が鈍る気がしたから。


――――結局私、何も変わっちゃいないや……


( ,,゚Д゚)「承諾してくれる、心優しい奴を探すしかないか……」

ミ,,゚Д゚彡「俺らの為に廃人になってもいいぜ、って人間か」

(*゚ー゚)「……誰か、心当りある?」


皆が押し黙る。

恐らく今、ここにいる誰かがその人にとって大切な、信頼のおける人なのだろう。
少なくとも、私はそうだ。

だから何も言えず、思考を巡らせ該当人を探す事もしなかった。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:21:17.62 ID:LAG1jzwOO

(*゚ー゚)「……いないみたいね、私もだけど」

( ,,゚Д゚)「居るには居るが、廃人のリスクを負わせたくはねぇな……」

从'ー'从「……」


なら他人ならいいんですか?
そんな表情を、彼女はしていた。

でも何も言わない。少し悔しそうに、俯くだけだ。

確かに彼女の言いたい事は分かる。
そしてそれが偽善じゃないと言うのも、潤んだ瞳から測り知れる。

誰が正しいのかなんて分からないけど、一番格好いいのは、間違いなく彼女だ。
そして一番可哀相なのも、彼女だ。


(´<_` )「……」

( ゚∀゚)「やっぱその辺のおっさんを(*゚ー゚)「はいはい、黙ってなさい」

(♯゚∀゚)「いやぜってぇ俺が正しいね!
      このままじゃ決まんねぇじゃねぇか!」

ミ;,゚Д゚彡「それ以前に、殴って連れ去ったら犯罪だ」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:22:56.57 ID:LAG1jzwOO

川 ゚ -゚)「……一難去ってなんとやらだな」

ノパ听)「おいおいクー、なんとやらで誤魔化すなッ!
     一難去って二難去る、だろッ!!」

( ,,゚Д゚)「なんだそのポジティブ諺……」


結局、今日は決まりそうになかった。
総意が一番大事だとクーは言ってるし、こうなるのも仕方ない事だと思う。

少し解散ムードが流れ始める。みんなだって疲れてるのだ。
誰が「とりあえず今日は解散」を言いだすか、みたいな雰囲気にもなりつつあった時、『それ』は来た。





「弟者ー? 誰か来てるのかー?」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:24:10.93 ID:LAG1jzwOO

(´<_`;)「……」

( ゚∀゚)「……ん? 今の声、どっかで……」

(´<_`;)「……あ、あの、そろそろ解散しませんかッ!?
       親も帰ってくると思うんでッ!」

( ,,゚Д゚)「なんだ慌てて。どうしたよ」

(´<_`;)「いや……」


弟者くんが、明らかに落ち着きをなくしながら言った。
さっき間の抜けたような声が聞こえたけど、兄弟かな?

まぁこんな大人数だし、見られたくはないかな……説明とか面倒だし。

でも弟者くんが心配していたのは、そんな事じゃなかった。
その理由は、なんとなくではあるが理解できた。


「おーい、弟者ー?」

(´<_`;)「き、来ちゃ駄目だー!! 兄者ー!!」

( ゚∀゚)「兄者……?」

( ゚∀゚)「あ、思い出した」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:25:59.91 ID:LAG1jzwOO

「なんだ弟者、いるんじゃないか」


トントントンと階段を降りてくる足音。
ヤンキーさんは、伊藤さんに弟者くんを押さえとけと命令すると、静かに階段下へと移動する。

まるで、待ち受けるかのように。


(;´_ゝ`)「うぉっ、なんだこの団体さんh

( ゚∀゚)「そ〜いえばお前の名字、流石だったなぁ」


(  _ゝ ) ゚ ゚


リビングへとやって来た、弟者くんと顔つきが似てる男性。
ヤンキーさんは彼の肩に手を回し、一言呟いた。

その光景はまさに不良が絡むという絵だったが、どうやら彼はヤンキーさんの知り合いのようだった。


(;´_ゝ`)「ジョジョjジョジョjジョジョジョjjqぁwせdr」

从 ゚∀从「誰だぁ? アレ」

从'ー'从「弟者くんのお兄さんの兄者さんだよ〜」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:27:15.31 ID:LAG1jzwOO

( ,,゚Д゚)「あ、兄者だ」

(*゚ー゚)「兄者くんだ」

(´<_`;)「し、知ってるんですか……」

( ,,゚Д゚)「そりゃあ有名人だ。
      女子更衣室に忍び込み捕まった事件は記憶に新しい」

(*゚ー゚)「しかも1年生の」

ξ゚听)ξ「うっわ」

从'ー'从「……」

川 ゚ -゚)「引くわ」

(;´_ゝ`)「ち、違うッ! あれはコイツにやらされたんだ!!」

( ゚∀゚)「お前ノリノリだったじゃねぇか」

(;´_ゝ`)「俺だけ残して逃げやがって……忘れてないからな!」

( ゚∀゚)「お前がトロイのがいけねぇんだろ」

( ,,゚Д゚)「新入生にトラウマを植え付ける事には定評のある兄者」

(´<_`;)「兄者……死んでくれ……」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:29:15.52 ID:LAG1jzwOO

( ゚∀゚)「そんな事より兄者、今俺ら困ってんだよ」

(;´_ゝ`)「なにがだ……金なら無いぞ」

( ゚∀゚)「いやいや、ちょっと協力して貰いたいんだよ」

(´<_`;)「いやいや、待ってくれ! 確かに兄者は駄目人間だ!
       だけど昔は、若干いい兄さんではあった! 俺は兄者を巻き込むのは反対だッ!!」

( ゚∀゚)「だから協力だよ。兄者に頼むだけだ」

(;´_ゝ`)「は、話が見えん……とりあえず産業で」

( ゚∀゚)「いいから
      協力
      しろ」

(´<_`;)「頼んでNEEEEEEEE!!」


捲し立てる弟者くんと、静かに威圧するヤンキーさん。
兄者さんは状況が全く掴めずオロオロとしている。
誰も必要な事を言わないので当然か。

そんな様子を見てか、ギコさんが兄者さんの元へと歩き、その顔へと手の平を向けた。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:30:25.82 ID:LAG1jzwOO
( ,,゚Д゚)「兄者、俺が恐いか?」

(;´_ゝ`)「すごく……」

( ,,゚Д゚)「それは俺がお前の感情を操ってるからだ。
      俺は心優しい好青年、恐いわけがねぇ」


いかつい顔つきにガッシリな躯。
普通の人はギコさんを見たら軽くビビると思うが、とりあえず黙っておいた。


(;´_ゝ`)「感情……?」

( ,,゚Д゚)「あぁ、ここにいる俺達、全員がそうだ」


少し弟者くんが、バツの悪そうな顔をする。
どこか隠し事をしていた事を悪く思っているのだろうか。

ギコさんはそんな事を気にせず、皆を代表し続ける。


( ,,゚Д゚)「だけど俺達は、そんな力を消したいと思ってる。
      兄者、その為に、力を消す為にお前の協力が欲しいんだ」

( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「兄者……」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:31:58.87 ID:LAG1jzwOO

( ´_ゝ`)「……水臭いじゃないか、弟者」


(♯;_ゝ;)「なんでそんな不思議能力を俺に内緒にしてたッ!?
       自分だけ楽しもうとしてたのか!! ずるいやずるいやッ!!」

(´<_`;)「いや俺だって今日、どころかさっき知ったんだよ。
       あとそんな事で泣くな、恥ずかしいから……」


……さっき弟者くんが嫌そうな顔をしたのは、こうなるのを予期したからだろう。
どうみても、皆は引いていた。

ハインなんか

从 ゚д从

こんな顔してたし。


(;,゚Д゚)「それで兄者、協力は……」

( ;_ゝ;)「ん? あぁ、別に構わんよ」

(´<_`;)「あ、待て兄者。もし失敗したら、兄者は廃人に……」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:34:03.11 ID:LAG1jzwOO

( ´_ゝ`)「廃人? 知るか。弟の為に体を張れず、何が兄だ」

从 ゚∀从「ほぅ……」

( ´_ゝ`)「それに弟者にだけ能力とかズルい。消してやる」

从 ゚д从「……」

(´<_` )「……最後のは聞かなかった事にする。ありがとう、兄者」

( ゚∀゚)「いよっしゃ、んじゃとっとと始めようぜ」

( ,,゚Д゚)「あとで何か奢ってやるよ」

( ´_ゝ`)「廃人じゃなかったらな」


川 ゚ -゚)「ほらヒート、出番だから起きろ」

ξ;゚听)ξ「寝てたの……?」

川 ゚ -゚)「起きてると煩いからな。それにヒートは3秒で寝れる特技を持っている」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「……ブーン? さっきからちょっと変よ?」

( ^ω^)「お? いや、なんでもないお!」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:35:22.90 ID:LAG1jzwOO

明らかな空元気なそれは、しかしブーンの事をよく知らぬ人達には気合いの入った声に聞こえたろう。
でもやっぱり、私には無理矢理元気を出しているようにしか聞こえなかった。


(´・ω・`)「それじゃあ兄者くんには……気絶してもらおうかな」

(;´_ゝ`)「へ? なにゆえ気絶?」

(´・ω・`)「変に感情を抱かれても困るんだ。
      悪いけど、しばらく眠っててもらえるかい?」

( ´_ゝ`)「まぁ、しょうがないな……」

(´<_` )「そういえば、後遺症とかは……」

(´・ω・`)「廃人か、元通りか。……多分これ以外の結果もある筈だ」

ミ,,゚Д゚彡「餌による感情が、多かったり少なかったりで変わったりするのか?」

(´・ω・`)「するだろうね。逆に一つを尖らせられるし、それが目的でもある。
      兄者くんは感情が豊かだし、少し違和感も残るかもしれない……」

( ´_ゝ`)「ふむ……まぁ、信じてるよ」

( ゚∀゚)「お前は黙ってた方がいいけどなー」

(;´_ゝ`)「おま……シャレにならん事を言うんじゃない……」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:36:59.92 ID:LAG1jzwOO

(´・ω・`)「……本当にいいかい?」

( ´_ゝ`)b「バッチk」


ドズッ、と鈍い音が響いた。
ヤンキーさんが兄者さんの腹を殴った音、随分大きく聞こえたが、気絶はしたようだ。

ていうか本当に腹を殴ると気絶するんだ……すごいなヤンキー。


( ゚∀゚)「うし、準備OK」

( ,,゚Д゚)「綺麗な顔してるだろ……気絶してるんだぜ、コレ」

川 ゚ -゚)「綺麗ではないな。むしろ不細工だ」

(*゚ー゚)「キツイわね、クーちゃん……」

兄者さんはソファへと寝かせられ、皆で囲むような形となった。
その状態からクーが腕組みしながら切り捨てた通り、
まぁ兄者さんはアレな顔ではある。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:38:38.56 ID:LAG1jzwOO

ミ,,゚Д゚彡「んで、どうすればいいんだ?」

(´・ω・`)「まずは僕らが全員で喰う、合図をしたら直ぐに餌の皆は感情を与えて欲しい」

( ,,゚Д゚)「直ぐに、か……簡単に言うぜ……」

(´・ω・`)「出来ないかい?」

( ,,゚Д゚)「俺やジョルジュは大丈夫だとは思うが、
      コイツらなんかは今日知ったんだぞ?」

从'ー'从「私は、大丈夫です」

(´<_` )「俺もだ。兄者を廃人なんかにはしない」

ノパ听)「やる気になれば何でもできる! 頑張れッ!!」

川 ゚ -゚)「お前もな」

('、`*川「個人に与えるってのが……イメージ付かないというか……」

( ゚∀゚)「イメージ? んなもんは手からグワァーと出す感じだ」

('、`;川「グワァーですか……」

(*゚ー゚)「私達は大丈夫ね。そう難しい事じゃないわ」



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:40:15.75 ID:LAG1jzwOO

( 'A`)「ただ……無い感情喰えってのがどうも……」

ξ゚听)ξ「喰っても実感とか無いんじゃないかしら……」

(´・ω・`)「タイミングが分からないと、どうにもならない。
       感覚を磨ぎ醒ますしかないね」

从 ゚∀从「つーかマジ不細工wwwうぇwwwww」


从♯)∀从「冗談じゃんかよ……」

ミ,,゚Д゚彡「少し落ち着いて行くか。時間はあるし、焦ってもしょうがない」


確かに、フサギコさんの言う通り。
焦って喰い損ねたり、餌の人達が失敗したら最悪だ。


(;^ω^)「……ツ、ツン」

ξ゚听)ξ「ん? なに?」


ブーンが額に汗を浮かべ、私に話かけてきた。
まだ迷ってるのかと思いアイツの方を見る。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:41:21.12 ID:LAG1jzwOO

一番に目に入ったのはその表情ではなく、ブーンが纏うような、紫の霧。
一瞬で、ブーンが何を思ってるかが分かった。


ξ゚听)ξ「……ブーン」

(;^ω^)「ツン……僕の感情を、喰ってくれお」

ξ゚听)ξ「……」

川 ゚ -゚)「何を言ってる、そんなのは駄目だ」

(;^ω^)「僕は……恐いんだお」

川 ゚ -゚)「それならそれでいい。私は君の味方になる。
      だけど、喰って貰ってやる、なんてのは駄目だ」

ξ゚听)ξ「……そういう事じゃないわ」


私はもう、ブーンが決断した事を知っている。
信じている。ブーンは消す為に、自分の意志でここに来たと。


ξ゚听)ξ「兄者さんに何かあったら……って事でしょ?」

(;^ω^)「……そうだお」



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:43:45.92 ID:LAG1jzwOO

川 ゚ -゚)「そんなの……皆そうだ。君だけじゃない」

ξ゚听)ξ「いいわ。アンタの感情、喰ってあげる」


もう消す事になるだろう、この力。
私は最後に、恐怖を喰う力で良かったと思った。

私は不器用だから、分かっていても出来ないような人間だから。

ブーンの手助けになる事が出来る力で……良かった。


ξ゚听)ξ「全くしょうがないわね……ビビってんじゃないわよ」

(;^ω^)「すまんお……」


本当に、いつも通りだ。

ブーンは優柔不断。だから私は、ブーンの背中を押す。
どれだけ言葉で隠しても、私達は多分一生このままだろう。

それでいい。


そんな事を一人想いながら、私はブーンの顔を見つめ、
口を開き、どこか安心すら感じながら、感情を、喰らった。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:45:08.70 ID:LAG1jzwOO





――――




从 ゚∀从「あー……なんか緊張すんなぁ……」

川 ゚ -゚)「ハインも緊張するんだな」

从 ゚∀从「このふいんきがどうもな……もっと気楽に行こうぜ」


(´・ω・`)「それじゃあしつこいようだけど、最終確認といこうか。
      僕が合図を出したら、僕らは餌の皆に位置を譲る。
      そして、直ぐに感情を与えてもらう」


14人ともなると、囲むには人数が多すぎる。
それに餌と喰う人間は作用もあり、近くに居られては力がフルに発揮できない。

その為、少し面倒ではあるがそのような計画となった。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:46:31.15 ID:LAG1jzwOO

言い終えるとショボンは皆を見回し、行くよ、と呟いた。
誰も何かを言う事は無かったが、軽く頷く者も居るし、聞こえていないという事はなさそうだ。



「それでは……いただきます」


丁寧に手を合わせ、しぃはペコリと小さく頭を下げた。

これも彼女なりの流儀なのだろうか。
一番感情を喰ってるであろう彼女は、その中でスタイルを見つけたのだろう。


それを合図に、7人が兄者へと近づく。

遂にと思うか、もうと思うか。
感じ方は違えど、今の目的は同じだ。

ただ感情を喰うのみ。そして明日から、普通の生活へと。

肺の息を吐き出し、兄者の感情を全て底まで喰らうべく、準備を整える。

ショボンが目配りをし、一斉に彼彼女らは、感情を喰った。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/18(火) 01:47:44.82 ID:LAG1jzwOO







暫くか、長くかは分からなかった。
もしかしたら時が止まっていたのかもしれない。




息を吐く音が耳に大きく聞こえ、誰ともなしに、ポツリと呟いた。






ごちそうさまでした―――――








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