( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです

11:すっとこどっこい(アラバマ州) :2007/04/13(金) 22:33:30.09 ID:ADzlCFqP0
  







( ^ω^)エアーがクオリティを育てたようです

  『 Bパート :(????)○○○○○は○○○○○のようです 』







12:すっとこどっこい(アラバマ州) :2007/04/13(金) 22:35:09.68 ID:ADzlCFqP0
  
プロローグ 「義手の『英雄』」


「……ふう、数が多いな」

男は小さく舌打ちをした。不快感から眉をひそめ、その呟きには溜息が混じっている。

『ググ……グ……』

一方では、声にならない声を発しながら何百という数の人間が――いや、人間と呼ぶにはその原型を留めていなかった。

彼らには一つの頭に二本の腕、二本の足がある。
しかし、その肌は酸を被ったように腐敗し、その目からは眼球が飛び出し、その腹の一部からは骨を覗かせている。

例えるならば、生きた屍の群。
それらが新鮮な肉を喰らい尽くさんと、男を取り囲んでいた。

「だが、団体さんで嬉しいぜ……丁度イライラしていたんだ」

絶望的な立場にも関わらず、男は口角を歪め、不敵に嘲う。
まるで、この状況を楽しんでいるようだった。

「……チッ、どうした? 俺を喰いたいんだろ? さっさと来いよ」

痺れを切らし、男は挑発の言葉を投げかける。
しかし、屍の群は男を警戒しているのか、周りを囲んだまま動こうとはしなかった。



16:すっとこどっこい(アラバマ州) :2007/04/13(金) 22:38:33.81 ID:ADzlCFqP0
  
「仕方ねえ。だったらコッチかr」

男が続きを言い掛けたその時だった。

「グガアアアアッツ!!」

甲高い声と共に、屍の一匹が男に襲い掛かる。
耳まで裂けた大口を開き、鋭利に尖った歯を剥き出しにして、一気に間合いを詰める。
見た目からは想像できないほどの俊敏さだった。

「……」

男は、無言のままでそれを見つめる。
避けようともせず、立ち止まったまま動かない。

「ガアッッツ!!」

そして、二者の距離は一メートルを切った。
屍は男の喉元に牙を突き立てようと飛びかかる。

「……ガ……グアッ?」

だが次の瞬間、硬いもの同士が衝突したような、そんな硬質な音が辺りを包み込む。
牙が何かを捉えた瞬間、屍は怪訝そうに声を上げた。



20:すっとこどっこい(アラバマ州) :2007/04/13(金) 22:45:07.56 ID:ADzlCFqP0
  
「どうした? 俺の腕を喰ってみろよ」

屍が喰らい付いたもの、それは男の左腕だった。
男は腕を前に出し、屍にそれを噛ませたのである。

「グ……グァ?」

屍の零れ落ちた目は、男の顔を不思議そうに見上げている。
対して、男は冷静に自分の腕に噛み付く屍を見下ろしながら言った。

「悪いが、俺の左腕は不味いぜ」

「ガ? グガッ? ギャッ――」

次の瞬間、屍の頭部は見る影も無く吹き飛んでいた。
頭蓋骨と脳は粉々に砕け、赤黒い鮮血と共に飛び散っていく。

「こんな腕で良ければ喰らわせてやるよ」

いつの間にか、男の左腕は大きく頭上に振り上げられていた。
男が左腕を振りぬく形で、屍の頭部を砕いたのである。



26:すっとこどっこい(アラバマ州) :2007/04/13(金) 22:54:56.46 ID:ADzlCFqP0
  
『ググ……グ……』

堂々と掲げられた男の左腕は、銀色に輝いていた。
肘から下は鎧の小手に似たような形状をしている。
銀よりも白い光沢を纏う、歪曲した金属プレート。
上腕部にはそれが筒状に幾重にも重ねられており、接合部の隙間からは無数の銅線が覗いている。

男の左腕は義手であった。

「待てよ。慌てなくても順番に喰らわせてやるさ」

その言葉を皮切りにして、屍達は獣のように叫吼を上げて一斉に男に牙を向ける。

『グギャアアアアアアッツ!!!!!』

「来いッ!! 『Type-Knuckle』!! 行くぜッ!!」

男が四方をちらりと一瞥し、高らかに叫ぶと同時に左腕は白く発光した。
重なったプレートが外側から順に拡がると、腕は二倍ほどに太くなり、肘部からは蒸気が激しく放出される。

「うおおおおおおおおおッツ!!!!」

そのまま男は放出の勢いに乗って前に出た。
そして、弾丸の如く屍の群の中を駆け抜ける。
銀色の義手を振り回しながら、屍を次々と薙ぎ倒していく。



28:すっとこどっこい(アラバマ州) :2007/04/13(金) 22:58:52.10 ID:ADzlCFqP0
  
戦いは一方的なものであった。

屍の頭に触れれば、粉々に弾け飛ぶ。
屍の腹に触れれば、大きな空洞が開く。
屍の四肢に触れれば、胴体から離れ、千切れ飛ぶ。

男の攻撃が当たれば、否応無くその部位は粉砕され粉々になるのだ。

『グギャアアアアアアッツ!!!!!』

それでも、屍たちは怯むことなく飛び掛かってくる。
男はそれを、軽々と左腕で薙ぎ払った。
大量のどす黒い液体の雨がその場に降り注ぐ。

「テメエ等の力はそんなもんかよッ!! せっかく出向いてやったんだ!! もっと俺を楽しませやがれッ!!」

男は戦いの最中にも関わらず、笑っていた。
亡者を狩ることを愉しむかのように、ひたすら殴り、突き、薙ぎ、屍体を破壊し続ける。

――それが現在の、かつて『英雄』と呼ばれた男の姿であった。



戻る第一話