内藤小説

47: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 14:17:01.05 ID:sjrkKl4IO
  

ツンはジュディと一緒にハマーという男の家のソファーに腰掛けていた。

ハマー「そうか…。あのカーターがな…。いいだろう、そういうことなら協力しよう」

ジュディ「助かるわ、ハマー」

二人はとりあえずの隠れ家として彼、ハマーの家を訪ねていた。


ハマー「余ってる部屋が二階にあるからそこを使うといい。あとこの家のものは何でも好きに使いな」

ハマーは190aはあろうかという身長に加えて全身に筋肉がこれでもかと言うほどついており、アメリカ人の中でも大柄な方だった。



48: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 14:19:28.83 ID:sjrkKl4IO
  
ジュディ「ありがとう。じゃあ早速部屋を使わせてもらうわ。さ、行きましょツン」

ξ゚听)ξ「え、えぇ。あ、あのハマーさんありがとうございます。何とお礼を言ったらいいか…」

ハマー「礼なんかいらないさ。ただ……あんた本気なんだな?」

ξ゚听)ξ「えぇ、もちろん」

ハマー「警察に言ってかくまってもらうっていう選択肢もあるんだぞ?」

ジュディ「警察は駄目よ」

ハマー「なぜだ?なんのために日頃税金をたっぷり納めてるんだい。こういう時に使うからだぞ」

ジュディ「ライブテンファンド社は警察ともパイプがあるみたいなの。それも極太のね」



49: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 14:22:00.05 ID:sjrkKl4IO
  

ハマー「…なるほど。噂には聞いてたが相当黒い企業だったんだな。俺が隠居暮しをしている間に随分でかくなったもんだ」

ξ゚听)ξ「え、あ、あのハマーさんって…」

ハマー「HAHAHA、見ての通り売れない作家だよ」

ジュディ「今はね。昔はカーターと一緒に各地の戦場を転々としていたのよ」

ξ゚听)ξ「そうなんですか…」

ハマー「随分昔の事だ。裏社会の事は今やジュディの方がずっと詳しいくらいだ」

ジュディ「さ、話も大概にして。ツン、一旦部屋に行きましょ。きっと掃除しなきゃ使えないはずだから。その後で今後の事を考えましょ」

ハマー「ついでに俺の部屋も掃除してくれると有り難いんだがな、HAHAHA」


ξ゚听)ξ(これがアメリカンジョークかしら…)

ツンはこの二人が居て心底心強く感じていた。



51: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 14:26:03.27 ID:sjrkKl4IO
  


ショボンは図書館に居た。この図書館は大きな建物で本の種類も数多くあった。その為、ここを訪れる人も多く図書館独特の静けさの割に人は多く居た。

もちろんショボンもこの図書館の本を読む為に――――来るわけはなかった。


(´・ω・`)「多分あるはずだけど…」


ショボンはあまり人気のない誰も借りないような本があるコーナーへ向かった。



52: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 14:29:29.68 ID:sjrkKl4IO
  
1、2、3、4…4人か。ショボンの後をおおよそ図書館に似つかわしくない格好の男がついてきている。

無論、本人たちはショボンに気付かれないようにしているつもりだろうが。

(´・ω・`)「えぇと、この辺だったかな…」

ショボンはある本を捜していた。いや正確には本の中にあるもの、を。

(´・ω・`)「…。あ、あったあった」

その本のタイトルは

『金正日の全て〜そして僕は豚になる〜』

どうやらエッセイらしいが誰も借りてないのは見ただけで分かった。



53: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 14:33:18.25 ID:sjrkKl4IO
  

もちろんショボンが読むわけもない。読むのはそこに挟まれてるメモだ。

(´・ω・`)「やはり動きがあったみたいだね」

ショボンは内藤が行方をくらました時も知り合いの情報屋に当たってみたが、成果はなかった。

それで、何か分かったらという条件で情報屋に情報収集を頼んでいた。

ショボンは尾行されることも考えて情報屋とは直接会わず、指定した場所、つまりこの本に挟めと指示していたのだ。

(´・ω・`)「またお金払わなきゃなぁ」

そう呟いて、本を持って後ろから覗かれる心配のないテーブルについた。

(´・ω・`)「………」

残念ながらそれには内藤の居場所は書いてなかった。しかし、読み終えるとこの事件の全貌のシルエットが見えてきた。

(´・ω・`)「…ライブテンファンド社……か…」

ショボンには聞き覚えがある言葉だった…



68: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:19:50.35 ID:sjrkKl4IO
  


「ん…………」

腰が痛い…腕も痛いな…。おかしいな…最近は喧嘩もしてないのに。

あぁ…そうか。飛行機の中でずっと同じ姿勢だったからだ。ショボンの野郎、安い席とりやがって…。

大体、なんで俺がこんな目に。

それもこれも内藤の馬鹿が連れ去られたりなんかするから。



70: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:21:24.11 ID:sjrkKl4IO
  
…………。

内藤は無事だろうか。

いや無事だろう。

あいつはいつだって周りに心配ばかりかけるくせに自分はケロっとしてやがるからな。

今も?

今?

………そうか。そういえばあの頃から随分たってるんだな…。

昔のようにはいかないか。

第一、何も俺らが助けなくたって警察にでも言えば助けてくれるだろう。

そうすればいい。

俺だってもう二度と面倒なことに関わりたくないんだ。



72: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:26:17.49 ID:sjrkKl4IO
  
………俺は内藤の事が面倒なのか?事件が面倒なのか?……違うな。

会いたくないんだろうな。だからこんなこと考えてるんだろう。警察に頼るなんて馬鹿馬鹿しいことを。

癒着、取引、金儲け、裏金、賄賂………。もし敵が力のある奴らだったら、今の警察なんて屁の役にも立たない。

俺は会いたくないだけだな。彼女に。

好きだった彼女に。

彼女が好きだったのは内藤だ。

そのくらいは毒でも分かる。今の情けない俺じゃ振り向いてもくれない事も。

だったら。

だったら…



('A`)「…せめて今回だけはカッコよくいかないとな」


好きな彼女が好きな内藤を助けるためにドクオはベッドから起き上がった。


武田「きんもー☆」


('A`)「………」



73: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:28:16.07 ID:sjrkKl4IO
  
――――――――――――

武田「ホアァァァア!!」

('A`)「うるせぇな!静かにできねぇのかよ!!」

武田「ブヒィィィィヤァァァァ!!!」

('A`)「………」

二人は大乱闘スマッシュブラザーズ………をしているわけではない。武田は奇天烈な掛け声と供に凄まじい早さでタイピングをしていた。

('A`)「出来そうか?」

武田「僕を誰だと思ってるんだい?ご存知、スーパーハッカーTAKEDAだぜ?」

('A`)「初耳ですが」

とはいいつつも、武田は凄かった。次々にセキュリティを突破していったのだ。



76: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:31:05.74 ID:sjrkKl4IO
  
武田「それにしてもここからのセキュリティは尋常じゃないね。さっきまでのとは比べものにならないよ」

('A`)「お喋りはいいから早くしてくれ」

ドクオがそう嘆くのも無理はない。場所が場所である。

武田「ホアァァァア!…ハァハァ、ピ、ピザが食べたい…」

('A`)「叫ぶから腹減るんだよ…。大体こんなところにピザなんかねぇよピザが」

もちろん、ピザどころか食べ物は何もない。

あるのは大量の書類とパソコンとそのデスク。

そう。つまりこんなところ、とは

ライブテンファンド社のアメリカにある本社なのである。



77: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:32:34.03 ID:sjrkKl4IO
  
―――数時間前―――

トゥルルルルルル


トゥルルルルルル


武田「はい、武田鉄也ですが」

('A`)(鉄也なのか…っていうかフルネームかよ)

武田「あぁショボン君か。あ、うん。ドクオ君なら来てるよ。変わろうか?…はい」

('A`)「あぁ、俺だ」

(´・ω・`)『やぁ、君か。アメリカはどうだい?』

('A`)「アメリカも糞もあるか。実感なんか湧かねぇよ。観光させてくれるっていうんなら話しは別だが」

(´・ω・`)『アメリカ名物、武田くんはどうだい?』

('A`)「珍獣としては価値があるかもな」



78: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:33:58.23 ID:sjrkKl4IO
  
(´・ω・`)『大丈夫かな、そんなこと言って』

('A`)「聞いてりゃしないよ」

(´・ω・`)『いや彼は怒らすと……』

('A`)「そんなことはいいから本題に入れ」

(´・ω・`)『その調子だとまだ彼女には会えてないみたいだね』

('A`)「これから捜すつもりだよ。ただ手掛かりは少ないが…。それより何か新しい情報でも入ったか?」

(´・ω・`)『鋭いね、どうも。確かに情報が入ったよ』

('A`)「内藤の居場所は?」

(´・ω・`)『それはまだ分からない。ただ敵の正体が分かったよ』



80: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:35:42.93 ID:sjrkKl4IO
  
('A`)「本当か!?」

(´・ω・`)『うん。どうもライブテンファンド社が怪しいらしい』

('A`)「企業なのか…。ライブテンファンド社…聞いたことない名だな」

(´・ω・`)『一応名目上はファンド会社になってるけど、ね』

('A`)「kwsk」

(´・ω・`)『実際は裏稼業が本業らしい。おそらく、武器密輸、軍事・政治情報も扱ってるらしい。他にも色んな闇商売してるみたいだね』

('A`)「おいおい…。本当かよ…」

(´・ω・`)『どうやらね。ちょっと舐めてたみたいだよ』

('A`)「……そうなると本格的に警察は頼れないな」



81: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:37:20.63 ID:sjrkKl4IO
  
(´・ω・`)『うん。軍事、政治、そして国の奥深くまで根をはってそうな企業だよ』

('A`)「だが目的はなんだ?そんな奴らが内藤や俺達に何の用があるというんだ?」

(´・ω・`)『それは分からない。ただ僕らを生き捕らえにしようとしていることと、彼らの稼業を考えると…』

('A`)「…情報…?」

(´・ω・`)『……』

('A`)「そんな大層な情報なんぞ持ってないぞ!?」

(´・ω・`)『早合点は危険だよ、ドクオ。やっぱり決め付けるのはまだ時期早計だね』

('A`)「しかしそれが分からないことには…」



84: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:44:12.94 ID:sjrkKl4IO
  
(´・ω・`)『うん。だから行ってらっしゃい』

('A`)「は?」

(´・ω・`)『ライブテンファンド社本社に行ってらっしゃい』

('A`)「へ?」

(´・ω・`)『多分そこから車で2時間くらいのところにあるから』

('A`)「ちょ…」

(´・ω・`)『武田君に協力してもらって、ちょっとメインコンピューターに侵入してほしい』

('A`)「まて…」



85: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:45:37.32 ID:sjrkKl4IO
  
(´・ω・`)『何か分かるかもしれない。気をつけるんだよ』

('A`)「だから…」

(´・ω・`)『僕も尾行されてるし長電話は出来ないんだ。じゃあね頼んだよ』

('A`)「おい…」

(´・ω・`)『そうそう。あそこのことなら武田君が詳しいはずだよ。じゃあね』

プチッ


ツーツーツーツー


('A`)「…………」


ドクオは受話器を置いてからペンと紙を捜した。


武田「……君、自殺でもするの?」


もちろん遺書を書くために…。



86: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:48:08.86 ID:sjrkKl4IO
  
時は戻り、場所はライブテンファンド本社の中。

時刻は真夜中。誰もいない社内。部長室と呼ばれる部屋に二人は居た。スーパーハッカー武田がセキュリティを難無く華麗に突破していった。

武田「フホゥゥゥゥイヤァァァ!!!」

('A`)「だから!うるせぇよ!人が来たらどうすんだ!?」

武田は相変わらず順調にセキュリティを突破していった。



88: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:51:55.75 ID:sjrkKl4IO
  
ドクオはここまで驚きの連続だった。ショボンは武田がここに詳しいと言った。ドクオは当然、地理的なものと解釈したが武田は内部にも詳しかった。

警備員の一人や二人を倒すことは覚悟していたがその必要もなかった。

ここに着いた時、社内には社員、警備員がまだたくさんいた。

しかしドクオと武田はスムーズに侵入した。いや侵入というよりは訪問だ。

この案を出したのは武田だ。

二人は作業衣に着替え、そして訪問する。

もちろんこれだけの大企業、それも後ろめたい事をやっている企業なのだから当然チェックは厳しい。

だがすんなり入れた。

なぜなら武田は以前この会社のセキュリティ顧問として雇われていたからだ。今でも時々出入りしているらしい。



90: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:55:15.95 ID:sjrkKl4IO
  
なんて偶然なんだ、とドクオは言った。しかし武田の方は

「アメリカじゃよくあること」

だそうだ。

しかしだからと言ってセキュリティをすぐ突破できるわけじゃない。

ライブテンファンド社では何人ものプログラマー、ハッカーを雇い構成したからだ。実質、作った人間ですら突破出来ないモノを作るのだ。

話しを戻そう。ドクオと武田は社内に入った後、トイレの個室に二人して篭り社員が帰るまでやり過ごした。

そうして今現在、難攻不落のセキュリティと格闘しているというわけだ。



91: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:56:54.82 ID:sjrkKl4IO
  
もちろん監視カメラの映像も差し替え済みだ。どうやら武田という男はこれがはじめてじゃないらしい。

('A`)「お前…実は凄い奴なんじゃないか?」

武田「スーパーハッカーだからね」

('A`)「もしかしてそれも本当なのか?」

武田「うん。昔はCIAのシステムにも侵入したりしてたから」

普通に喋りながらもタイピングするスピードは落とさない。

('A`)「それはいくらなんでもないわww嘘つきピザがwww」

武田「そう思いたいならそう思えばいいさ」

('A`)「え?…mjdk?」



93: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 16:59:03.22 ID:sjrkKl4IO
  
武田「……よし。とりあえず突破した」

('A`)「あ、出来たのか?」

武田「うん。一応メインと繋がったよ。それらしいとこを調べてみる」

('A`)「頼む」

認めたくはなかったが、画面と向き合ってるこのピザは相当役に立つ男のようだ。

ドクオはこの大きな背中がより一層大きく見えるような気がした。



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