内藤小説
- 50: ◆P.U/.TojTc :2006/10/07(土) 20:46:56.16 ID:lmUy2yHtO
( ^ω^)「おっおー!!!!!」
その声が消えた後にはやはり静寂が待っていた。空は既に闇に変わろうとしている。
監禁されてから何日が過ぎただろうか。内藤にはもはや分からなくなっていた。必要もない。
叫んだせいで喉が痛む。
流し台に行き水を飲む。そして腹もすいてきたので流し台の下の棚をあけて缶詰を取り出す。
( ^ω^)「どんだけコンビーフ食ってんだお…」
- 52: ◆P.U/.TojTc :2006/10/07(土) 20:50:35.87 ID:lmUy2yHtO
水と食料をとりあえず確保出来たのは良かったが、相変わらず監禁した奴らは姿を見せなかった。
脱出する機会は全くないのだ。叫んでも反応がない。おそらくこの建物には人が住んでいないんだろう。
さらに外からも人工的な音は一切聞こえてこない。
( ^ω^)「ここはいったいどこなんだお…」
独り言も増える。
- 53: ◆P.U/.TojTc :2006/10/07(土) 20:56:42.08 ID:lmUy2yHtO
今まで内藤はずっと人目を忍んで一人暮しをしていた。実際その生活とあまり状況は変わらないのだが、自らの意思ではない為、精神状態はやはり違う。
( ^ω^)「お?」
ジャリ…
ドアの外からかすかに音が聞こえた。
( ^ω^)「だ、誰だお?」
もちろん返事はない。そもそもドアを隔てて内藤の声など届いてもいないだろう。
そして鍵を開ける音。
ガチャリ…
ドアが開く。
そして新鮮な空気が流れ込んでくる。
久しぶりに空気の味を知る。だが空気の味を楽しむ余裕はさすがの内藤にもなかった。
- 54: ◆P.U/.TojTc :2006/10/07(土) 21:00:35.87 ID:lmUy2yHtO
(´・ω・`)「いったい何がどうなっているんだ…」
ショボンは一人途方に暮れていた。
数時間前から尾行されている気配がなくなった。そのお陰で自由に動けるようになったが、またそれで頭を悩ませる事になった。
それでも今やるべき事はやらなければならない。
デニー・レインズ。ショボンとライブテンファンド社の唯一の接点。ショボンはそこから調べていくことにした。
- 55: ◆P.U/.TojTc :2006/10/07(土) 21:04:10.52 ID:lmUy2yHtO
ショボンがアメリカで働いていた店「ヘヴン」のオーナーのモイヤーに連絡をとってみた。
時間が時間だったので、店に電話してみた。「ヘヴン」は相変わらず営業していた。
そして電話に出たボーイにモイヤーの事を尋ねた。
その答えにショボンは愕然とした。
- 56: ◆P.U/.TojTc :2006/10/07(土) 21:08:41.27 ID:lmUy2yHtO
モイヤーは先月に他界していたのだ。
どうやら自宅でドラッグを大量に摂取したために起こったショックで死んだらしい。
ショボンは信じられなかった。アメリカではドラッグなんて日常茶飯事だがモイヤーは頑としてドラッグには手を出さなかったはずだ。
少なくともショボンの知っているモイヤーはそういう男だった。
(´・ω・`)「偶然……じゃないのか…」
- 57: ◆P.U/.TojTc :2006/10/07(土) 21:10:36.61 ID:lmUy2yHtO
偶然じゃないとしたら、モイヤーの死が偶然でなく、ライブテンファンド社による仕組まれた死だとしたら。
「ヘヴン」、そして…
(´・ω・`)「…僕が関係しているのかもしれない…」
しかし心当たりはない。デニー・レインズにしても話した事などないのだから。
モイヤーとはよく話していた。レインズとモイヤーの間で何か関係があったとしてもそう不思議ではない。
レインズは今どうしているだろう。確か本社でエリートだったはずだ。
自分で調べるより武田に聞いた方が早い。
(´・ω・`)「今月、通話料金いくらだろう…」
そんなくだらない事を口にしてみたもののショボンの中の不安は大きくなっていった。
- 127: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 12:04:44.74 ID:q9FUnra4O
('A`)「とにかく…無事で良かった」
武田の家のリビングでまずドクオがそう口を開いた。多少の狭さを感じるが人数が人数だ。仕方ないだろう。
ξ゚听)ξ「ドクオも。本当に良かった…」
ドクオ、ツン、武田、ハマー、ジュディ。この五人がテーブルを挟んでソファーに座っていた。
ライブテンファンド本社からここに来るまでの間に話して、双方の事情はそれぞれ大方掴めた。
- 128: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 12:20:12.97 ID:q9FUnra4O
ξ゚听)ξ「内藤が心配だわ。いったいどこに…」
('A`)「まだ分からんが、今ショボンが探ってくれてるはずだ」
ξ゚听)ξ「そうね。でもまさかこんな形で再会するとはね」
ツンはそう言って笑顔を作ってみたが、やはりどこかぎこちなかった。
気まずい沈黙が圧倒的に場を支配する。お互い聞きたいことは山ほどあるはずだが、なぜか口に出すのは躊躇われた。
- 130: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 12:24:47.43 ID:q9FUnra4O
そんな空気を察してハマーが切り出す。
ハマー「それにしてもあのパンチは効いたな。たいしたもんだ」
('A`)「あんたの膝蹴りには敵わないよ。是非ご教授願いたいもんだね」
ハマー「HAHAHA!コツがあるんだ。今度教えてやろう」
ドクオはハマーの過去も聞いていたがそんな黒い部分など微塵も感じなかった。戦っている場合を除けば、だ。
ジュディ「で、これからどうするつもりかしら?」
('A`)「そうだな…」
- 131: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 12:30:55.79 ID:q9FUnra4O
チリリリリリーン
電話の音が鳴る。
顔に氷をあてがったまま武田が受話器をとるために立ち上がる。
('A`)「とりあえず…寝るか。起きてからこれからの事を考えよう」
ハマー「そうだな。これからは睡眠だってオチオチとれないかもしれないからな」
ξ゚听)ξ「そうね。寝ましょう」
電話で話している武田を尻目に四人はソファーから立ち上がった。
ジュディ「………どこで?」
もうひとつの部屋はパソコンとフィギュアでいっぱいだった事をドクオはたった今思い出した…
- 132: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 12:36:12.17 ID:q9FUnra4O
それぞれが一応の寝床についてからドクオはツンに言った。
('A`)「ツン、寝る前にちょっと散歩いかないか?」
あいのり風にドクオは誘ってみた。
ξ゚听)ξ「えぇ。私も話したい事があるの」
二人は家を出て、前の道路を歩き出した。
('A`)「体調は大丈夫か?」
ξ゚听)ξ「大丈夫よ。心配しないで、もう子供じゃないんだしね」
そう言って微笑むツン。
- 133: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 12:43:31.07 ID:q9FUnra4O
ξ゚听)ξ「まったくもう。こんな事を話したいわけじゃないんでしょ?」
('A`)「聞きたい事は山ほどあるが……まず隠していることを話してもらおうか」
ξ゚听)ξ「やっぱり気付いてたのね」
('A`)「そりゃあな」
ライブテンファンド本社から武田の家までの2時間の車中で気付いた事があった。
昔の癖というか名残というか。ツンが何かを隠しているのをドクオは感じ取った。
だからドクオはあいのり風にツンを誘い出したのだ。
ξ゚听)ξ「実は…」
ツンはハマーとの会話を思い出しながら話し出した。
- 134: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 12:51:48.44 ID:q9FUnra4O
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ハマー「実はカーターの殺され方というか死に方が変だったんだ」
ξ゚听)ξ「どういうこと?」
ハマー「何の抵抗もなくやられているんだ。殺害現場は特定されてないが、カーターの身体には死因以外の外傷は見当たらなかった」
ξ゚听)ξ「相当の腕をもった人間がやったんじゃ?」
ハマー「カーターも相当な腕前だ」
ハマーは強く断言した。
- 135: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 12:56:33.61 ID:q9FUnra4O
ξ゚听)ξ「そうだったわね…」
ハマー「後頭部を銃で一発だ」
ξ゚听)ξ「えぇ」
ハマー「これは刑事から聞き出したんだが、どうもカーターの皮膚に火傷らしき跡があったらしい」
ツンもその意味がわかった。犯人はカーターの後頭部に銃を近付けて引き金を引いたのだ。思わず想像してしまう。
- 140: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 13:28:34.08 ID:q9FUnra4O
ハマー「遠距離射撃ならともかくカーターが後ろをとられたということだ。そして抵抗もせず撃たれた」
ξ゚听)ξ「…」
ハマー「漫画じゃあるまいし、後ろしかも銃を突き付けられたらカーターはじっとなんかしてないさ」
ξ゚听)ξ「迂闊に動けない状況だったとか」
ハマー「可能性はなくはない。だが、それよりも可能性の高いことがある」
ξ゚听)ξ「…顔見知り…?」
ハマー「そうだ。それで俺は昔のコネを使って色々洗ってみた」
ξ゚听)ξ「…」
嫌な予感がする。
- 141: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 13:34:36.62 ID:q9FUnra4O
ハマー「俺も半信半疑だが…どうもな……ジュディが……怪しい」
ξ゚听)ξ「!!!」
言葉を失った。
ハマー「確証はないがジュディはCIAの人間かもしれん。」
ξ゚听)ξ「!CIA…?」
つかの間、気まずい沈黙が流れる。
ξ゚听)ξ「ハマー、馬鹿な事言っちゃいけないわ。なんだってジュディがCIA…」
ハマー「分かってるさ。ジュディとは君よりもずっと長い付き合いだ」
ハマー「さっきも言ったように確証はないんだ。だが、疑惑は残る」
- 142: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 13:39:15.87 ID:q9FUnra4O
ξ゚听)ξ「じゃあジュディがCIAだったとしてなんだって言うの!?」
ハマー「落ち着くんだ、ツン。君だって分かるだろう。ライブテンファンド社とCIAが繋がっていたって不思議じゃない」
ξ゚听)ξ「………」
頭が混乱してきた。今まで信じてきたものが崩れ落ちていくとはこういうことなのか。
- 143: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 13:43:36.47 ID:q9FUnra4O
ハマー「私は君を助けたいだけだ。信じるか信じないかは君の自由だがね」
自由…。違う。人を信じる信じないに自由などありはしない。自由と呼ぶにはあまりにしがらみが多すぎる。
ジュディを信じたい。ジュディがCIAでましてやカーターを殺した可能性があるなんて…
しかしハマーが自分に嘘をついて何のメリットがあるのか。
第一ハマーだっていい人だ。
- 144: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 13:48:15.34 ID:q9FUnra4O
ハマー「とりあえず今日はこれくらいにしとこうか。ただ…ツン、人を信用しても人間を信用しすぎるな」
ξ゚听)ξ「………」
ハマー「人間は利己的な生き物だ。だからこそ食物連鎖の頂点に居続ける事が出来るんだ」
ハマー「私たちが生きていく為に牛肉を食べる時、牛を哀れまないように、生きていく上で平気で人を利用したり殺したりするのが人間でもあるんだ」
ξ゚听)ξ「………」
ハマー「それでも君は生きていかなければならない。帰れる場所があるならなおさらだ。その為に必要なものはなんだか分かるかい?」
ξ゚听)ξ「…いいえ」
ハマー「したたかになる事だ。そして相手を見抜く力」
ξ゚听)ξ「………」
その言葉はツンの心の深くに重くそして広く広がっていった…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
- 145: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 13:52:39.33 ID:q9FUnra4O
('A`)「そうだったのか」
ξ゚听)ξ「えぇ」
('A`)「だがまだあの人、ジュディがCIAだって確証はないんだな?」
ξ゚听)ξ「流石に頭の回転が早いわね。そうよ。私はまだジュディを信じたいしね」
('A`)「疑ってもいるんだな。平山という偽名を使い回りくどいやり方で俺と内藤を引き合わせたを考えると」
ξ゚听)ξ「…そうね。ハマーの力を借りてああしたのよ。ジュディには内緒で」
('A`)「助かったよ。何も知らずに寝込みを襲われてたら今頃どうなってるか」
- 146: ◆P.U/.TojTc :2006/10/08(日) 13:57:34.36 ID:q9FUnra4O
ξ゚听)ξ「でも内藤は…」
('A`)「きっと大丈夫だ。俺らもあいつも今まで何度命懸けの事件を切り抜けてきたか覚えるか?」
ξ゚听)ξ「うん…。そうね。内藤ならきっと」
('A`)「あぁ。ましてやショボンも居るんだ。心配ないさ」
二人は踵を返して武田亭に戻った。
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