( ^ω^)ブーンがK-1のリングで亀田興穀選手と闘うようです
- 723:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 02:26:15.10 ID:FhaQIGkX0
- 試合当日。
ブーンは試合がある日にいつもそうするように、朝の4時に目を覚ました。
隣ではツンはまだ眠っている。
ブーンは大きく背伸びをすると、ベッドから飛び起き、そのままの格好で家を出た。
まだセミも鳴いていない、朝方は空気が澄んでいて気持ちがいい。
ブーンは近くの公園へ行くと、体操を始めた。
その後、公園内を軽くジョギングする。
犬を連れた老人とすれ違い、新聞配達の少年を追い越した。
30分ほど汗を流すと、家へ戻り、シャワーを浴びた。
- 726:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 02:30:49.19 ID:FhaQIGkX0
- バスタオルを腰に巻きながら、バスルームを出ると、ツンが朝ごはんの仕度をしていた。
( ^ω^)「おはよう、ツン」
ξ゚听)ξ「おはよう、ブーン」
それだけ言葉を交わすとブーンは服を着、リビングで丹念にストレッチをする。
試合に向け、酷使する筋肉や関節を、ゆっくりといたわるようにほぐしていく。
30分をかけたストレッチを終えると、朝食がテーブルの上に並んでいた。
( ^ω^)「いただきますお」
ξ゚听)ξ「はいどうぞ」
- 728:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 02:35:57.05 ID:FhaQIGkX0
- ('A`)「ん・・・もう朝か。おいそろそろ起きるぞクー」
川*゚ -゚)「もう起きている」
('A`)「そうか・・・ふぁああ・・・」
川*゚ -゚)「こいつ、昨夜帰らなかったのか」
クーが指差した先には、ショボンが大の字になって寝ていた。
('A`) 「まあ、ショボンはショボンなりに緊張してんだろ。なんせジム創始以来の大一番だもんな」
(´・ω・`)「むにゃむにゃ・・・クーちゃんのお尻・・・もみしだいて・・・舐めまわして・・・うひひ・・・」
川*゚ -゚)「変な夢見てるぞ」
('A`)「まあ・・・夢の中ぐらい自由にさせてやろうや・・・」
- 732:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 02:42:29.30 ID:FhaQIGkX0
- ( ^ω^)「ごちそうさまだお。用意してくるお」
ξ゚听)ξ「あ、待って。その前にあれあるから」
( ^ω^)「わかったお」
そう言うとツンは寝室へ走って行き、小さなお守りを持ってきた。
ξ゚听)ξ「ブーン、目を閉じて」
( ^ω^)「はいだお」
ツンはお守りをブーンの額に当てると、さらにその上に自分の額を合わせた。
ふたりの額でお守りをはさむ格好になった。
そして静かに目を閉じた。
ξ゚听)ξ「ブーンがどうか無事に戻ってこれますように・・・」
ツンが静かな、それでいてはっきりとした声でつぶやく。
- 737:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 02:48:03.29 ID:FhaQIGkX0
- 窓からの風がふたりの間を吹きぬけた。
遠くのほうからセミの声にまじって、車のエンジンが聞こえてくる。
ふたりはしばらく黙ったまま、祈った後、同時に目を開けた。
( ^ω^)「いつもありがとだお」
ξ゚听)ξ「・・・これでブーンは無事に戻ってこれるわ。頑張ってね」
そう言うとツンはブーンの額に軽くキスをした。
ブーンは嬉しそうに頬を緩めると、ツンありがとうだお、とつぶやいた。
- 741:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 02:55:20.39 ID:FhaQIGkX0
- 会場は異常な熱気に包まれていた。
観客のほとんどが亀田選手の応援だった。
ブーンを応援する人たちはあまりにも少数だった。
それでもツンやドクオやクー、しいはそんな会場の雰囲気に負けじと、ブーンの応援旗をぶんぶん振り回した。
だが亀田選手応援団の中には、あらかさまなヤジや暴言を飛ばしてくる。
「死ね」
「きもい」
「帰れ」
普段なら耳をふさぎたくなる言葉ばかりを浴びせかけてくる。
だがこの中で戦うブーンは自分たちよりもっともっと辛いんだ、そう思えば多少のヤジは我慢できた。
- 744:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 03:00:24.01 ID:FhaQIGkX0
- 試合開始30分前。
ブーンは最後の調整を終え、ベンチに腰掛けていた。
( ^ω^)「調子は悪くないお。ただ試合前に1週間も休んで、本当に勝てるもんかお」
(´・ω・`)「珍しく弱気だな、ブーン。いつものお前を思い出せ。お前は強いんだよ。いつも通りの試合をするだけだ」
( ^ω^)「・・・はいですお」
(´・ω・`)(早くもこの会場の雰囲気に飲まれ始めているな・・・まずいぞ・・・)
- 745:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 03:05:17.52 ID:FhaQIGkX0
- (´・ω・`)「ちょっと席をはずす」
ショボンはそう言うと、素早い動きで観客席へ走った。
('A`)「お・・・あれショボンじゃんか」
川*゚ -゚)「なにかあったのか」
ξ゚听)ξ「・・・・」
ショボンは3人の前に着くなり、ツンの腕を引っ張り、控え室へ戻ろうとした。
ξ゚听)ξ「ちょっと! どうしたの!」
(´・ω・`)「いいから来てくれ!!」
('A`)「なんか知らんが、俺たちも行くぜ、クー」
川*゚ -゚)「オッケイ」
- 754:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 03:14:35.41 ID:FhaQIGkX0
- ( ^ω^)「はあ・・・なんか今までと違って気分が重いお・・・」
ブーンは背中を丸め、ぼんやりと床を眺めていた。
( ^ω^)「不安だお・・・ツンに会いたいお・・・ツン」
その時、控え室のドアが開き、ツンとショボン、続いてドクオとクーが入ってきた。
( ^ω^)「ツン! ドクオ! クーちゃん!!」
そう言いながら、飛びつかんばかり走り寄っていったブーンにツンがいきなり平手を打った。
( ^ω^)「お・・・?」
ξ゚听)ξ「あんたね!何しょぼくれてんのよ!そんなんで勝てると思ってるの!いい? あたし達はね、亀田の応援団の連中からひどいこと言われながら、
それでもあんたを応援するのよ!それなのに、それなのに肝心のあんたが、そんなんじゃどうしようもないじゃない!!甘ったれるのもいいかげんんしな!!!」
( ^ω^)「そうだったお・・・応援席でツン達も戦ってくれるんだお・・・僕がんばるお・・・絶対倒すお」
(´・ω・`)「さすがツンだ。一瞬で状況を理解してくれた」
- 760:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 03:17:56.12 ID:FhaQIGkX0
- 'A`)「さて・・・そろそろ試合が始まるみたいだぜ・・・」
川*゚ -゚)「うむ、私達は戻るぞ」
ξ゚听)ξ「ほんっとがんばんなさいよ!!!」
( ^ω^)「皆ありがとだお。試合が終わったらまた会おうお」
(´・ω・`)「さあ、ブーン、入場だ」
- 767:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 03:22:53.13 ID:FhaQIGkX0
- I wanna be a VIP STAR・・・・
大音量でブーンの入場曲が流れる。
ブーンは紅に染めたガウンを羽織り、ゆっくりとリングに向かって歩いていった。
聞こえるのはドラムのリズムとベースの重低音、そして歓声。
- 770:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 03:26:28.08 ID:FhaQIGkX0
- 試合を怖いと思ったことはない。
どんな相手だろうと、ブーンはこれまで平常心で戦ってこれた。
それゆえの自信もあった。
だが一歩リングに踏み込んだとき、会場を支配している空気が、
自分に対して敵意を抱いているものだとブーンは直感的に悟った。
これまで積み上げてきた自信が少し揺らいだ気がした。
- 774:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 03:33:27.76 ID:FhaQIGkX0
- ブーンの入場に続き、亀田選手の入場を告げるアナウンスが鳴り響く。
それと同時に沸き上がる観客。
会場のボルテージは亀田選手の姿が見えた瞬間、最高潮に達した。
あまりの歓声に会場が一瞬振動した気がした。
亀田史郎トレーナーの肩に手をかけ、亀田興穀選手が徐々に近づいてくる。
興穀選手に続くのは次男、そして三男。
ブーンは口内にたまったツバをごくりと飲み干した。
ノドが急にカラカラになった。
- 782:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 03:42:37.40 ID:FhaQIGkX0
- (´・ω・`)「いいか、ブーン。足を絶対に止めるな。周っていけ。昨日やったとおりに動くんだ。いいな?」
沸き返る歓声に、負けじとショボンが大声で最後のアドバイスを送る。
(´・ω・`)「気持ちで負けるな!!絶対だぞ!!!」
( ^ω^)「大丈夫だお。負けないお」
(´・ω・`)「よし!!一発かましてこい!!」
ショボンがブーンの背中を叩いた。
レフリーが両者を中央に呼び寄せ、ルールの確認をする。
3分3ラウンド延長3分1ラウンド・・・ヒジ打ち、金的、バッティング、サミング、掴んでの膝攻撃禁止・・・
レフリーの説明を聞いている間、亀田選手は額をぶつけんばかりに身を乗り出し、ブーンを威嚇する。
亀田選手の燃えるような瞳に吸い込まれそうだった。
ブーンは必死に顔を振り、これ以上亀田選手の顔を見ないように、天井を見上げる。
- 785:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 03:48:16.48 ID:FhaQIGkX0
- 今朝見たツンの顔が天井にぽっかり浮かんだ。
そして額に残る、やわらかな唇の感触を思い出した。
ブーンは思った。
自分はツンがいるからこそ、今まで戦ってこれたんだと。
ツンが支えてくれていたからこそ、勝ってこれたんだと。
ブーンは目を閉じる。
もう亀田選手の威圧を感じることはなかった。
ギリギリのところで、ブーンは自由になれた。
自分をしばる周りの重圧から、解き放たれた。
さあ、やるぞ。
絶対に、勝ってやる。
ブーンがかっと瞳を開けた瞬間、ゴングが鳴った。
長い長い戦いが、今始まった。
- 793:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 03:58:33.94 ID:FhaQIGkX0
- 両者の間合いは十分すぎるほど空いた。
ブーンはガードを高く保ちながら、亀田選手の周りをゆっくりと旋回する。
亀田選手はグローブ全体で顔を覆い、アゴをぐっと引いた独特のフォームでじわりじわりとプレッシャーをかけてくる。
なかなか詰まることのない間合いが、一気に縮まったのは、試合開始から30秒。
仕掛けたのはブーン。
ブーンは後ろ足でリングを蹴り、一気に亀田選手の間合いに入った。
亀田選手は反射的に右のジャブを打つ。
ブーンはそのジャブをキレイに交わすと、間髪いれず右のフックを打ち込んだ。
- 797:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 04:04:52.26 ID:FhaQIGkX0
- ガッと鈍い音が響き、亀田選手の体が一瞬揺らぐ。
ファーストコンタクトはブーンに軍配が上がった。
その隙を逃さず、ブーンは左の膝蹴りを打ち込み、さらにたまらず後ろにさがった亀田選手の鼻っ柱めがけて、渾身の右ストレートを放った。
ブーンのグローブが亀田選手の鼻にめり込み、鮮血がリングに散う。
さらに追撃しようとするブーンをレフリーが押しとどめ、止血のためのタイムアウトがとられた。
- 804:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 04:08:50.92 ID:FhaQIGkX0
- 驚いたのは観客だけではない。
亀田選手自信もそうだったであろうし、さらにはセコンドのショボン、
応援のツンらも口をあんぐりと空けて、試合の行方を見守っていた。
まさか、あの亀田選手にパンチで勝負するなんて・・・。
誰が考えたであろう。
対ボクサーの定石どおり、距離を置きながらローッキックを打っていく。
亀田陣営もそれを見越した上での練習をしてきたはずだ。
- 808:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 04:13:33.93 ID:FhaQIGkX0
- (´・ω・`)「ブーン・・・」
ショボンがドクターチェックを受けている亀田選手を注意深く見ながら、ブーンに声をかける。
( ^ω^)「なんだお?」
グローブや胸に飛び散った血を、タオルでぬぐいながらブーンが答える。
(´・ω・`)「・・・いや、なんでもない。すべてお前にまかせる。今はお前がすごく頼もしく見えるぞ、ブーン」
( ^ω^)「そうかお? 照れくさいお」
ドクターチェックが終わり、亀田選手の試合続行が認めらた。
試合再開だ。
- 810:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 04:19:26.27 ID:FhaQIGkX0
- 亀田選手の瞳は以前にもまして、燃えさかっていた。
さすがは一流のボクサー、1、2発入れただけでは、折れてはくれない。
ブーンはぐっと気を引き締め、リズムを取りながら相手の周りを周っていく。
だがブーンにパンチもあることが身にしみてわかったのか、亀田選手はなかなか攻めてこない。
このチャンスを逃すブーンではなかった。
練習通り、何度も頭に思い描いた通り、素早いローキックを亀田選手の太ももに打ち込んでいく。
- 814:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 04:25:23.08 ID:FhaQIGkX0
- パチンと肉と肉が弾けあう音が響き、ブーンは素早く足を戻して体制を整えると、再び同じ場所にローを打っていった。
ローを入れるたびに、ぴくっと亀田選手の眉が動いた。
通常、相手に自分の受けたダメージを分からせないため、実際効いていても、効いたそぶりは決して見せないものだ。
だがいかんせん体は正直。
意思とは別に体が反応する。
亀田選手の場合それは眉だった。
ブーンは経験上それを一瞬で理解し、相手に当てたダメージを瞬時に計算していく。
- 820:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 04:29:54.67 ID:FhaQIGkX0
- ( ^ω^)(もっとしつこく足を狙うお・・・!)
時々詰めてくる亀田選手を、前蹴りやサイドステップで上手にさばきながら、徹底してローを打ち、足を潰していく。
( ^ω^)(足を潰して、あの強烈なパンチの威力を少しでも削るお)
何発目かのローが亀田選手の足を捕らえたとき、1ラウンド終了を告げるゴングが鳴った。
- 822:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/09(水) 04:35:52.84 ID:FhaQIGkX0
- 1ラウンドはブーンがほぼ完璧な試合運びをした。
初撃の右フックで出鼻をくじき、右ストレートで相手に流血を見舞った。
さらに1ラウンド後半は徹底したローキックで相手の足を潰し、2ラウンド以降の素早い動きを封じた。
会場の誰もがブーンの圧倒的才能に息を呑み、ニューヒーローの誕生を予感した。
戻る/次のページ