('A`)が海へいくようです

796:◆L2jfNrixB. :2006/08/08(火) 13:14:51.95 ID:qB2wzOH60
  
黒鯛の油が滴り、炎にあたりジュウジュウと音を立て香ばしい香りがただよう。

皮をめくるとうまそうな白身が顔を出す。その白身を口へ運ぶ。ちょうどいい塩気。マジうまい。

(´・ω・`)「うん、なかなか。」

ξ゚听)ξ「ブーンあんた刺身なんて作れたのね・・・」

( ^ω^)「おっおっ。釣り好きのトーチャンに仕込まれたんだお。」

刺身もうまい。ブーンこっちの道でやっていけるんじゃないか?

けっこう魚はいたはずだが、見事に骨だけとなった。

ξ゚听)ξ「ねえ、花火持ってきてるんだけどやらない?」

(*^ω^)「やるおやるおー!」


ツンが花火を持ってきた。かなりの量だ。

ブーンが手持ちの花火を両手に持ち、その両手を開きながら走り回った。

( *^ω^)「気持ちいいお!ドクオもやるお!」

('A`)「おk。」

( ;^ω^)「そ、それはドラゴn・・・うわぁぁこっちくんなお!」

ドラゴンなど噴出系の花火は地面に置いて楽しみましょう。



807:◆L2jfNrixB. :2006/08/08(火) 13:36:32.82 ID:qB2wzOH60
  
(´・ω・`)「ドラゴンはそう使うんじゃぁないっ!こうだっ!」

ショボンはドラゴンの箱から火薬の筒を取り出してそこに火をつけ導火線が火薬に着火する直前に真上に投げた。

シュルルルと回転しながら色とりどりの火花が空中で円を描く。すごい綺麗だった。

ツンは正攻法で楽しんでいるようだったが、俺たちの遊ぶさまを見て時折声を上げ笑った。

( #^ω^)「ドクオ・・・覚悟するといいお」

(;'A`)「バッ・・・おま、それロケtt」

シュー  パン

(;'A`)「あぶねえ、後数秒遅れていたら・・・・考えたくもねえ。」

( ^ω^)「気を抜くなお!弾はまだまだあるっ!」

(´・ω・`)「ドクオ、援護する。」

俺たちはロケット花火を使い切るまで激しく遊んだ。ロケット花火で遊ぶときは回りに人がいないのを確認して、土台に刺して遊びましょう。


花火をほぼ遊び尽くしたので最後に残ったのは線香花火。ほかの花火のような激しさや華やかさはないが、俺はこれが一番好きだ。

ぱちぱちと線香花火が火花を上げる。そして、   落ちる。

(`・ω・´)「元気玉っ!」

・・・・・線香花火は一本づつ楽しみましょう。



820:◆L2jfNrixB. :2006/08/08(火) 14:13:30.05 ID:qB2wzOH60
  
ショボンが一回元気玉とかいって10本位使った以外は俺たちは一本づつ線香花火を楽しんだ。

ξ゚听)ξ「やっぱ、夏といったら線香花火ね。」

( ^ω^)「だおだお。ドクオ、ショボン覚えてるかお?高3のときにもクラスの男子で花火やったお」

(´・ω・`)「終業式のときだったね。覚えてるよ。受験生とは思えない馬鹿さだったよね、あのとき。」

ショボンとブーンが懐かしそうに笑った。もちろん俺も覚えている。みんなで線香花火をやって、初恋の人を暴露しあったんだっけか。懐かしいな。

結局、帰るのが11時過ぎになって、カーチャンにこっぴどく怒られた。今はそれもいい思い出だな。


青春を分け合った友人達。初めて心から友人といえるものができたのは高校に入ってからだ。

中学のとき、俺は孤独だった。いや、むしろ自分で孤独を作り上げた。

小学校のころは俺はまだ明るかったので友人に困ることはなかったのだが、小学校5年春。親父が死んだ。

交通事故で。信号無視したトラックと正面衝突して親父は即死。ほとんど人間の原型を留めていなかったという。

親父が死んでから俺はほとんど誰とも口を利かなくなった。カーチャンは働きに出ることになって、ほとんど家にいなかった。

そのまま中学にあがる。俺は無口で暗いやつ、というレッテルを貼られいじめられこそしなかったが、空気のような扱いを受けた。

つらくはなかった。誰もかまってくれないほうがむしろ楽だった。休日、他のみんなが遊んでいるようなときも俺は親父の車の手入れをしていた。

親父が死んだとき、車は車検に出されていて無事だったのだが、処分されそうになった。

「どうせ捨てるなら俺がもらう。」といい、半ば強引に引き取ったものだ。



880:◆L2jfNrixB. :2006/08/08(火) 19:20:37.41 ID:qB2wzOH60
  
俺は美術の時間が好きだった。自分の世界に没頭できるからだ。

テーマは「思い出」。

他の生徒は、遊園地で遊んでいたり、花火を見たり、楽しそうな「自分」の絵を描いていた。

が、俺はラウンジの海岸線の道を描いた。親父と遊べるという楽しみでいっぱいなきもちで見つめた道。

紛れも無く鮮明に記憶された俺の「思い出」。それを画用紙いっぱいに描き上げた。先生に無言で提出する。

/ ,' 3 「これは・・・ラウンジの海だね?」

はい、とそっけなく答える。

/ ,' 3 「私はここにいたことがあってね。・・・なかなか見事な絵だ。楽しそうな君の姿は無いが、
     何かわくわくとした気持ちが伝わってくる。」

俺は無意識に後ろ髪を掻き揚げた。絵をほめられるのは初めてで、照れくさかった。

/ ,' 3 「ドクオ君、といったね。君は、絵が好きかい?」

・・・俺は絵を描くのはすきなのだろうか。あまり描いたことは無い。でも、絵を描いているとき、いつも気持ちは満たされていた。

('A`)「・・・まぁ」

/ ,' 3 「美術部に入らないか?君にもっと絵のことを教えてあげたい。返事はすぐでなくていいから、決まったら教えてくれ。」

('A`)「・・・はぁ。考えておきます。」



886:◆L2jfNrixB. :2006/08/08(火) 19:59:59.42 ID:qB2wzOH60
  
家に帰ると珍しくカーチャンが帰ってきていた。明るいうちに帰っているのはもう何ヶ月ぶりか。

('A`)「・・・ただいま。今日は早いね」
J('ー`)し「あら、お帰り。今日は社長さんがいつもがんばってるからって」

('A`)「・・・そっか。」

久しぶりにチンしないでも暖かい料理を食べた。久しぶりに一人出でない食事だった。久しぶりの親子の会話だった。


J('ー`)し「学校はどう?楽しい?」

食卓で不意に話しかけられる。

('A`)「・・・面白くはない。」

そう、といいカーチャンは少しさびしげな顔をした。

('A`)「・・・あのさ、もし俺が美術部だったらどう思う?」

俺から話しかけたことに少し驚きながらカーチャンは答えた。

J('ー`)し「そうねぇ・・・あなたトーチャン似で絵がうまいからね。いいんじゃないかい?でも、どうして?」

('A`)「いや・・なんでもない。」

カーチャンはまた「そう」といったが、今度は微笑んでいた。

J('ー`)し「やりたいことがあったらいいなさいね。力になるから。」
俺は「わかった。ありがとう」といい、自分の部屋に戻った。後ろ髪を掻き揚げながら。



897:◆L2jfNrixB. :2006/08/08(火) 20:33:45.17 ID:qB2wzOH60
  
その翌日、俺は朝一で荒巻先生のところへ行った。

/ ,' 3 「おや、思ったよりずいぶん早く来てくれたね。時間的にも時期的にも。返事をくれるのかい?」

('A`)「・・・俺を美術部に入れてくれますか?」

先生は「もちろん、歓迎するよ。」と微笑み、戸棚からプリントを持ってきた。

/ ,' 3 「今日、このときをもって君を美術部員として迎えよう。
    
     と、いいたいところだが、面倒なことに入部にはいろいろ事務作業がある。君の担任のはんこと、君の親御さんの了承が必要なんだ。」

と説明し、俺に「入部届」を渡した。

('A`)「わかりました。」

/ ,' 3 「その二つをもらって、また来てくれ。」

俺は「はい」とだけ答え、美術研究室を後にした。


俺はその日の昼休みに早速担任のはんこをもらいに行った。

担任は「へぇ、美術部ねぇ。ま、がんばれよ。」と興味なさげにぽん、と入部届にはんこを押した。

其の後の授業も適当にこなし、さっさと家に帰った俺は帰りの遅いカーチャンの帰りを待った。

描きたい。絵が描きたい。こんな風に何かの衝動に駆られるのはは初めてのことだった。

俺は強い衝動が胸を押し上げているような不思議な感覚を味わった。



902:◆L2jfNrixB. :2006/08/08(火) 20:56:56.67 ID:qB2wzOH60
  
チチチチ・・・チチチ・・・

('A`)「・・・ん・・・あれ?朝・・・。」

俺はカーチャンの帰りを待ってリビングにいたのだが知らぬ間に寝てしまっていた。

7時12分。カーチャンはとっくに仕事に行ってしまっていた。

('A`)「・・・あー。クソッ」

俺は軽く壁を殴った。

朝食をとりに食卓へ向かう。

('A`)「・・・!」

テーブルの上には朝食にラップがかけてありその脇に入部届と書置きがあった。

「部活、がんばってね。カーチャンは応援してます。」

入部届にはカーチャンのサインと印が押してあった。


('A`)「カーチャン・・・」

その日、俺は晴れて美術部員となった。



933:◆L2jfNrixB. :2006/08/08(火) 21:53:13.06 ID:qB2wzOH60
  
それから俺はたくさんの絵を描いた。

先生には本格的な色の使い方を教えてもらったし、他の部員とも少しづつだが会話をするようになった。

そのほかの学校生活は以前と変わりないが、

一つだけ変わったのはカーチャンがいなくても出かけるとき「行ってきます」、「ただいま」というようになった。

誰に言うわけでもないが、「家」というものに対していうようになったのだと思う。

ここは俺が帰ってくる場所。そう思えるようになったから。



ポトリ。 俺の線香花火が落ちた。

(´・ω・`)「・・?どうしたんだいドクオ、ボーっとして。」

('A`)「ん、ちょっとな。」

ξ゚听)ξ「ドクオ、また考え事?」

俺は「まぁな」とこたえ、微笑んだ。ツンは「なにかんがえてるんだか」といって俺にまた線香花火を渡した。

ξ゚听)ξ「まだ線香花火いっぱいあるからちゃんと消費してよね。」

俺は自分のライターで火をつけた。火花をぱちぱち上げしばらく輝き、やがて落ちた。



68:◆L2jfNrixB. :2006/08/09(水) 00:10:24.68 ID:pePzhUkB0
  
ξ゚听)ξ「さてそろそろ全部終わったかしら?」

(´・ω・`)「そのようだね。」

ツンが「頃合ね」と満足そうに微笑み、なにやら大きな筒を持ってきた。

('A`)「なんだそら」

ξ゚听)ξ「取って置きよ」

ツンは『超打ち上げ花火  60連発』と書かれたそれを15mくらい先にどさっと置き戻ってきた。


ξ゚听)ξ「ブーン、火つけてきて。」

( ^ω^)「おっしゃ、いってくるお。ドクオ、ライター貸してお」

俺はブーンにライターを投げた。ブーンはキャッチし花火へと向かった。

カチッ カチッ  ブーンの手元が一瞬明るくなる。そして勢いよく走ってこっちに戻ってきた。

( ;^ω^)「なかなかスリリングだったお。」

とブーンが言い終わるや否や

ボシュボシュボシュ・・・

たくさんの火花たちが空へ旅立ち、空ではじけた。海面にその光が反射しきらきらと色とりどりに輝く。

まるで小さなスターマインだ。夜空に広がる花火を俺たちは見上げた。



170:◆L2jfNrixB. :2006/08/09(水) 13:34:10.37 ID:pePzhUkB0
  
(´・ω・`)「うん、ここらでいいよ。」

花火を終え、後片付けを終えたのはもう日付変更間際だった。

俺は今日ショボンと会った細い道あたりまで送った。

(´・ω・`)「よく道覚えてたね、すごいな。」

('A`)「道覚えるのは得意だからな。」

俺は後ろ髪を掻き上げる。だからあんま褒めるなって。

(´・ω・`)「みんな、今日は楽しかったよ。誘ってくれてありがとうね」

「どういたしまして」と後部座席の二人が言った。

少し離れたところでショボンが手を振っていたのでそれに答えて俺はクラクションを鳴らした。


ホテルにつくころにはもう日付は変わっていた。

部屋に帰り、さっとシャワーを浴びブーンは疲れていたらしくすぐに寝てしまった。

ξ゚听)ξ「ま、あれだけはしゃげば疲れもするわね・・」

('∀`)「だな」

俺とツンで少し酒を飲んでから寝た。あと一日、楽しむためにゆっくり寝よう。

線香花火のように俺の意識はすぐに落ちた。



171:◆L2jfNrixB. :2006/08/09(水) 13:36:12.83 ID:pePzhUkB0
  
やっと二日目終了><



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