俺は( ^ω^)のペットのようです

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 14:18:09.01 ID:dtE6Oyd50
  
( ^ω^)「おっおっおっおっwwww」

目を覚ますと、へらへらと軽薄な顔の男が小躍りしていた。
ピザな体型。だらしない口元。
かわいそうな生物だ。

俺「・・・・・」

なんだ、夢か。


( ^ω^)「やったおwwww念願のペットを手に入れたお!wwwwww」


・・・は?



2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 14:23:03.77 ID:dtE6Oyd50
  
(´・ω・`)「はい、これで願いは叶えられたね」

ふと気がつくと、ピザの他にもう一人いる。
八の字まゆでなんとなくしょぼくれた顔の男。

( ^ω^)「大満足だお!魔法使いさんありがとうだお!」

(´・ω・`)「それにしても君変わってるね。普通は何でも願いを叶えるって言えば
もっと大それた事を言うもんだけどね。よりによってペットが欲しいとはね」

( ^ω^)「ブーンはずっとペットが欲しかったんだおwwww」


俺は早く目覚めねえかなぁとか思いつつ
ぼんやりとそのやりとりを聴いていた。



3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 14:28:58.97 ID:dtE6Oyd50
  
(´・ω・`)「じゃあ、僕はこれで。願いをキャンセルしたい時にはまた呼んでね。
     ただしクーリングオフは一週間過ぎると出来なくなるから気をつけて」

( ^ω^)「はいですおー」

(´・ω・`)「ではご利用ありがとうございまっしたー」

八の字まゆはとぼけた声でそういうと、ぱっと一瞬にして掻き消えた。


俺「・・・さすがは夢だ。突拍子がないな」

思わずつぶやくと、ピザが「お?」と言ってとことこと俺に近付いてきた。

( ^ω^)「目が覚めたかお!?おなか空いてないかお?
      おっと、それより早く名前を決めてあげなきゃいけないお!何がいいかおー」

俺「・・・・」

俺はうるさくまくしたてているキモピザを斜めに見上げる。
どうやらここはこいつの部屋で、俺はその壁にへたりこんでいる、という状況らしかった。



4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 14:39:06.24 ID:dtE6Oyd50
  
( ^ω^)「あっ、そうか、一番初めはやっぱり自己紹介からしなきゃだお!」

ピザは勝手に一人で話をまとめ、にこにこしながら俺に右手を差し出してきた。

( ^ω^)「今から君のご主人さまになる内藤ホライゾンだお!
      みんなからはブーンって呼ばれてるお。君もブーンって呼んでいいお」

俺「はあ」

俺は条件反射的にそいつ――ブーンの手を握りそうになり、
途中で我に返って慌てて手を引っ込めた。

俺「いやいやいやいや、ちょっと待て。ペットってどういう事だよ」

( ^ω^)「さっきの魔法使いさんに、願いを叶えてもらったんだお!
     だから今日から君はブーンのペットだおwww」

俺「・・・はあ」


そういう事らしかった。



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 14:50:45.76 ID:dtE6Oyd50
  
( ^ω^)「さっ、それじゃこの首輪をつけるお」

ブーンとかいうピザはいそいそと俺の首に何かをつけようとした。
ちょ、冗談じゃねえバカやめろ。
さすがに俺はむっとしてそいつの手を振り払った。

俺「さわんなよ」

( ^ω^)「こら!ペットには首輪をつけなきゃいけないんだお!いう事聞かない子はおしおきだお!?」

俺「アホかさわんなっつってんだろうがこのキモピザがあああっ!」

しかし、精一杯の抵抗もむなしく俺は首輪をつけられてしまった。
こいつ意外と怪力だ、くそ。

( ^ω^)「ぜいぜい・・・ふう、全く、手間かけさせやがってだお」

俺「カッコつけてチンピラみたいな台詞を吐くな!」

ガチャガチャと首輪をはずそうとしながら叫んだのだが、何をやっても外れない。

俺「何だよこれ!魔法でもかかってんのか!?」



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 14:59:26.12 ID:dtE6Oyd50
  
( ^ω^)「かかってるお?」

俺「・・・は?」

( ^ω^)「だって魔法使いさんがくれた首輪だお。それさえつけてれば
    逃げられることもないから安心だって」

俺「・・・・・・・・そ・・・・・・」

混乱していたとはいえ、俺はその時すでに気付いているべきだった。
どたばたと暴れたおかげですっかり目が覚めて、
到底夢ではありえないリアルな感覚が戻ってきていることに。

俺「そんなふざけた話につきあってられるかあああっ!」

しかし、俺の精神はそこで折れた。
とにかくここから逃げ出せば夢の場面も変わるだろうと
ピザの隙をついて部屋から飛び出したのだ。

( ^ω^)「アッー!?ど、どこに行くんだおカトリーヌ!」

ふざけた名前であいつが呼んでいるがきっぱりと無視し、
俺はドアを片っ端から開け、全力で階段を駆け降りて玄関を探し出し、
そこから勢いよく外へ飛び出そうとして・・・・・・・・


そこで、俺の意識は再び途切れた。



11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 15:04:14.68 ID:dtE6Oyd50
  
結論から言えば、やはりその一連の出来事は夢ではなかった。

あれから二日、俺は未だにブーンとやらの家にいる。
つーか、飼われている。

( ^ω^)「フヒヒヒwwwwこのスレおもすれーwwwww」

今日もブーンは一日中家に引きこもり
ずっとパソコンの前に座って、けらけら笑いながら過ごしていた。
俺はというと・・・

俺「・・・・・」

おやつのプリン(生クリームとサクランボが乗っている)を目の前に
体育すわりをしているのだった。



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 15:13:06.93 ID:dtE6Oyd50
  
( ^ω^)「んー?まだ食べてないのかおキャロライン?
      早く食べないと空気にさらされてクリームの表面が固まってきてるお?」

俺「うるせえよ・・・」

( ^ω^)「あ、もしかして、まだ額のたんこぶが痛むのかお??
      だから逃げられないって言ったのに・・・・あの首輪には飼い主の許可がないと
      勝手に外にだられない魔法がかけられてるんだって言ってたお。
      それなのに思いっきり見えないカベに頭ぶつけて・・・フ、フヒッ・・・・・」

俺「うるせえっつってんだろ、わざとらしく笑いを堪えるな!
  あとそのセンスのない名前をどうにかしろ!せめて統一しろ!」

( ^ω^)「フヒヒヒwwwwwww」

プリンをちゃぶ台の様に豪快にひっくり返したくてしようがなかったが、
片付けさせられるのはどうせ自分なので我慢する。



16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 15:22:18.24 ID:dtE6Oyd50
  
俺「お前!俺がどうしてこうも気が立っているのか本当にわからんのか!?」

( ^ω^)「???全然わかんないお」

俺「・・・・ああ、もういい、もうお前とまともな話し合いをするのは諦めた。けどな、
  俺はせめて自分の意思くらいはハッキリさせておきたい」

( ^ω^)「なんだお?」

俺「俺を家に帰せ」

( ^ω^)「無理」


俺は豪快に目の前のプリンをブーンの顔面に投げつけた。




ほんの少しは気が晴れたが、罰としてその日の夕食もプリンだった。
ちょっと泣きそうになった。
でも、腹が減ったので食べた。



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 15:34:55.71 ID:dtE6Oyd50
  
――そして、俺がブーンのペットになって三日目の朝。


( ^ω^)「うーん、いい天気だお!今日はおでかけするお、ナターシャ!」

という、えらく能天気な声で俺は起こされた。
ちなみに俺はブーンの部屋の一角に囲いをし、そこに敷いた毛布の上で眠っている。

俺「あぁ・・・?」

前述から察しがつくと思うが俺は余り寝起きが良くない。
そこにいきなりテンションマックスのブーンに寝床からひっぺがされ、
パンとミルクを与えられたので、まだ寝ぼけ半分だった俺は何も考えずにそれを食べた。
食べているうちにだんだん目が覚めてきて、これじゃまるで本当にペットみたいだなと思って
ますますテンションが下がる。

( ^ω^)「今日のレイチェルはいい子だおwwww」

俺「・・・・だからせめてひとつに固定しろよ」

もういちいち怒鳴る気にもならない。慣れって怖い。
あと、こいつは一体いつになったらまともな名前を思いつくのだろう。



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 15:45:17.42 ID:dtE6Oyd50
  
俺「で?出かけるってどこにだ」

パンの最後のひとかけらを飲み込んで俺が訊くと、
ブーンはゴクゴクぷはーとミルクを飲み干して(鼻の下にヒゲが出来ている)、

( ^ω^)「友達と待ち合わせしてるんだお!」

俺「ふうん。お前にも友達がいたのか。てっきり孤独なばかりのヒッキーだと思ってたが」

( ^ω^)「ちょwwヒドスwwww今は学校が休みだから家にいるだけだお!
      今日は久しぶりにみんなと遊べるおww楽しみだおwww」

こいつ、一丁前に学生だったのか。
そういえばこの家もこいつ一人が住むには広い気がする。
きっと親は留守にしているんだろう。いたら俺を見て大騒ぎしてくれるかもしれないのに、残念なことだ。

( ^ω^)「みんなに自慢のペットをお披露目するおwwwwww」

がっしゃん。

俺は手にしていたパン皿を取り落とした。



25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 15:55:06.32 ID:dtE6Oyd50
  
(;^ω^)「うわあ!大丈夫かお、チェルシー!?」

俺「お、お前いま何つった?」

床に散らばる陶器の欠片をものともせずに、俺はブーンにつめよった。

( ^ω^)「? だから、みんなにブーンのペットである君を見せようと」

俺「俺はこの家から出られないんじゃなかったのか!?」

( ^ω^)「違う違う、そうじゃないお。君が一人で勝手に外に出られないだけだお。
      ブーンと一緒なら出られるんだお」

俺「そ、そうなの?」


俺は思わず瞳を輝かせた。
もしかして一生外に出られないんじゃないかと思っていたのだ。
それにもしかしたらこいつの目を盗んで逃走、あわよくば警察に駆け込めるかもしれない。
これはチャンスだ。



29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 16:04:25.82 ID:dtE6Oyd50
  
しかし、うきうきと支度を整えた数分後、いざ家を出ようとなった段階で
俺は断固外出を拒否する事になる。


俺「絶対に外になんか出るかーーーっ!!」

( ^ω^)「なんでだお!さっきまであんなにお散歩楽しみにしてたのに!」

俺「お散歩って言うな!!さっきまではそんなものつけるなんて言わなかったじゃねえかっ!」

青筋を立てながら俺は「そんなもの」を指さした。
すなわち、ブーンが手に持っているヒモ。
犬の散歩とかの時に使う、あの、首輪につなぐリードだった。

( ^ω^)「だって聞かれなかったから」

俺「黙れ変態!そんなもんつけて歩けるか!?あっという間に通報されるわ!
  むしろ俺が変態に思われるだろうが!!」



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 16:15:19.73 ID:dtE6Oyd50
  
( ^ω^)「・・・・・」

ブーンはしばらく何かを考えて、

( ^ω^)「そんなに嫌なのかお・・・?」

俺の顔色を伺うようにぽつりと訊いて来た。
やっとこいつにも俺の理屈が通じる時が来たかと、俺は必死にうんうんうなずく。

( ^ω^)「じゃあ、しょうがないお・・・・」

ブーン!!

( ^ω^)「実力行使」

俺「期待させやがってこの野郎ぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおお」



結局、俺はまたしても力任せにリードにつながれた。



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 16:26:10.26 ID:dtE6Oyd50
  
そうして御機嫌なブーンにひっぱられて
俺はひさしぶりに外に出ることになった。

俺「うう・・・ちくしょう・・・・俺の人生・・・・太陽なんてキライだ・・・」

自分でもなんだか良く判らないことをつぶやきながら
首輪とリードをした俺は町を歩いた。

ブーンの住む町は、やっぱりというか俺には見覚えのない場所だった。
日本のごく普通の町並みで、それなのに妙にリアリティだけがない。
映画とか漫画の中に入り込んでしまったような気がした。

もしかしたらここは俺の住んでいたあの世界とは
少しだけずれた世界なのかもしれない。
最初に見た魔法使いを思い出して、俺は少しだけ本気でそんな事を思った。



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 16:45:17.43 ID:dtE6Oyd50
  
( ^ω^)「さあ、ついたおー!」

はたと気がつくと、俺は公園の入り口に立っていた。

俺「あ・・・あれ?」

ここへ来る途中にも人とすれ違っていたはずなのだが、その記憶がない。
どうやらとりとめのない思考で頭をいっぱいにすることにより
町の皆さんの存在を抹消することに成功したようだ。
ナイス俺。ナイス無意識。
首輪をして町を歩いたという事実が消えた訳ではないのだが、そこにはあえて触れずにおく。

( ^ω^)「もうみんな来てるかおー?www」

はしゃいでリードをひっぱり駆け出すブーン。
「ぐえっ」となりながら必然的に俺も引きずられていく。
すると公園内のベンチに人影があった。



43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 16:55:57.49 ID:dtE6Oyd50
  
('A`)「うぃーす、ブーン」

( ^ω^)「おいすーwwwww」

ベンチに座っていた幸の薄そうな奴が手を上げ、ブーンがそれに応える。
こいつが友達か。けだるそうな顔で、ピザのブーンと比べると小柄な男だった。

( ^ω^)「ドクオ、ひさしぶりだお。休みの間何してたお?」

('A`)「ネトゲかなー。お前は?」

( ^ω^)「さもしい青春だおwwwwwブーンはとっても充実した毎日を送っていたおwwwww」

('A`)何だとこの野郎」

全くだ。一日中ネット三昧だったくせに。
俺が心の中でそう思っているとブーンは嬉しそうにこっちを手で示して、

( ^ω^)「じゃーん!ブーンはなんとペットを飼い始めたんだお!」

ああ、ペットか。
・・・・あ、ペットって俺か。



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