( ^ω^)の全てが終わったようです

11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:39:10.92 ID:SWg0viw80
  
今あるソレは幻で
 今あるコレは幻想で
  今あるアレは理想だと
   ならば現実どこにある
    淡い光のように耀くソレは
        行くも戻るも儚い現実


【第1話 起】



12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:39:34.93 ID:SWg0viw80
  
始まりは何時だったかなんてことは忘れた。
思い出しても仕方が無いことだから。

僕はゆっくりと目の前の彼女にそう告げた

カランコロンと心地よい音を立てながら前を歩く彼女は
フフッと悪戯な笑みを浮かべながらなおも続ける

「全ての出来事には始まりと終りがあるのよ
 私にもそう、始まりがあって終りもある。
 今こうして向かってる先は、その終りかもしれない
 ほら、そう考えると気になるでしょ?お互いの事が」

まるでどこか遊びにでもいくように、彼女は笑みを浮かべながら話す



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:39:58.12 ID:SWg0viw80
  
「だから、気になるのよ、貴方の"始まり"が」

言いえて妙だと感じる。
だがソレは僕自身がおかしいだけなのかもしれない。
知り合った人のことを知れば知るほど情が生まれる。
ソレは時として判断を鈍らせ、破滅へと導く

それを身に染みて理解しているのに、何故にこうも目の前の女性には心奪われるのだろうか
理由は簡単だろう、きっとこの女性も"終わってる"からだ
僕より先に"終り”を見てる、だからこそそれに引かれる
自分自身でそう答えを導き出す



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:40:22.93 ID:SWg0viw80
  
いつの間にか、下駄の音は止み、目の前には彼女の顔が合った

「で?教えてくれないの?」
にっこりとはにかむような笑顔を向ける女性


「わかったお…"始まり"を話すお」

僕は観念したように、そう呟いた



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:41:05.70 ID:SWg0viw80
  
思い出したくも無い光景
脳裏に最初に浮かぶのは赤
床も赤 壁も赤 天井も赤 窓も赤
全てが赤
赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤
紅 紅 紅 紅 紅 紅 紅

全てはこの赤い世界から"始まった"


────1Day────
   望むものは手に入らなかった
     手に入れたのは絶望だけだった



16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:41:53.45 ID:SWg0viw80
  
毎日は変らない
同じビデオテープを繰り返し再生しているかのような
無機質な毎日、でもその時はそれが幸せだった

手に入らなくて悔しい思いもしたけども
それでも、毎日が耀いてた気がする。
そう、同じテープの再生だなんて考えつかないほどに


( ^ω^)「行って来るお!」
毎朝の光景、ドタドタと大きな足音を鳴らしながら階段を駆け下りる
そして、そのまま玄関に向かい靴を履きながら声を上げる



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:44:03.02 ID:SWg0viw80
  
J( 'ー`)し「あらあら、ブーンちょっと待って。お弁当忘れてるわよ」
パタパタと足音を鳴らしながら近づいてくるカーチャン
( ^ω^)「ありがとうだお!カーチャンの弁当忘れたら僕しんじゃうお!」
大げさな表現をしながら弁当を受け取る
J( 'ー`)し「まぁ・・・ブーンたら。気をつけていくのよー」
( ^ω^)「はーいだおー!」

そういいながらブーンは外へと走り出した


空が青い、雲が白い
( ^ω^)「うん!今日も平和だお」
一人、誰に告げることなく呟く自分
その時は全てが幸せだった

毎朝笑顔で弁当を作ってくれるカーチャン
塀の上で気だるそうに欠伸をする猫
チチッチと囀る小鳥の声
変らない毎日がブーンにとっては幸せだった



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:46:05.58 ID:SWg0viw80
  
( ^ω^)「おいすー!」
教室のドアを開くと同時にする掛け声
コレも毎日の事。
('A`)「お、やっときたなこのやろう」
その声に反応する人物が一人
親友ともいえるドクオだった
ドクオはこっちに来いと手招きをする
自分の机に鞄を置くと、そのままドクオの席へと向かう
そこにはショボもいた

ドクオとショボ、二人ともかけがえの無い親友だった
中学に入って以来のまだまだ短い付き合いだけども
不思議と僕等はウマが合い、意気投合している
長年連れ添っている友人のような関係だった



20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:47:26.25 ID:SWg0viw80
  
('A`)「よぉ、今日も元気そうだな」
( ^ω^)「おっおっおっwいつも僕は元気だお」
(´・ω・`)「まぁ、ソレしか取り得がないのかもしれないけどね」
( ^ω^)「おっ・・・傷つくお」
('A`)「それをいうならショボだって、勉強だけしか取り得がねーじゃないか」
(´・ω・`)「それをいうかい…学年1番の馬鹿な君が
 君こそ本当に何にも取り得がないじゃないか」
(#'A`)「んだとごるぁ!」
( ^ω^)「おっおっおっwやめるお!ドクオの取り得はあるお!
 友達を思いやる事のできる優しい気持ちだお!
 こればっかりはショボにもまねできないお!」
いつもながらの喧嘩に発展しそうな前に止める
実際ドクオは近寄りづらい雰囲気を醸し出しているが
友人のためになら何でもするいい奴だった

(´・ω・`)「童貞だけどね」
(#'A`)「んだとぉ!」
( ^ω^)「おっwおっwおっwショボもブーンも同じだお」

ソレと同時に響く笑い声

ブーンは思った こんな日が何時までも続けばいいのにと

だけど終りは急に訪れたのだった…



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:47:53.02 ID:SWg0viw80
  
自分で昔のことを語りながら、可笑しなことに気づく
"始まり"があるなら"終り"がある。
ならばあの時"終り"と感じたのならば幸せの"始まり"は何時だったのだろう?
生まれたとき?物心付いたとき?
"始まり"という明確な境が無い場合、始まりはどうやって定義するのだろう。
しかしすぐに答えはでた
つまりアレは"終り"ではなく"始まり"だったのだと


全てが終わっていく "始まり"



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:51:09.16 ID:SWg0viw80
  
('A`)「んじゃなー」
(´・ω・`)「遅刻しないようにね」

校門での別れ際、いつもの挨拶を交わす
( ^ω^)「わかってるお!また明日ー」
ブンブンと手を振りながら走る自分
一刻も早く家に帰りたかった
理由は簡単

J( 'ー`)し『今日はおやつにケーキ作るからね』

微笑みながら言ったカーチャンの一言
それだけが楽しみだった

( ^ω^)「ケーキ楽しみだお!早くかえるお!」
ドクオたちが見えなくなったのを確認すると方向転換をし
本格的に走り出す

空は蒼い 雲も白い
( ^ω^)「うん、今日もいい日だお!」
外に出るたびに、確認する
まるで自分に言い聞かせるように
それがブーンの日課だった



23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:52:24.19 ID:SWg0viw80
  
( ^ω^)「ただいまだおー!」
玄関を開けると同時に靴を脱ぎ散らかしながら家の中へ
そのままキッチンに向かうが、そこにカーチャンの姿は無かった

( ^ω^)「・・・この時間におかしいお?」
時刻は3時を少し過ぎたところ
いつもなら家にいるはずのカーチャンがいない
たったそれだけのことだったのに
心の中になんともいえない不安が広がった

( ^ω^)「きっと買い物だお!」
自分に言い聞かせるようにそう言うと
( ^ω^)「先に宿題するお〜」
そういいながら自室へ足を運んだのだった



24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:53:34.73 ID:SWg0viw80
  
しかしそれから3時間経過をしてもカーチャンは帰ってこなかった
( ;^ω^)「おかしいおー。おなかへったお…カーチャンまだかお・・・」
時計を見ながら今か今かとカーチャンの帰りを待つブーン
すでに宿題は終り、居間で一人TVを見ながら母の帰りを待っていた
( ;^ω^)「そうだお・・・あと1時間すればトーチャンが帰ってくるお」
時刻は6時過ぎ、大体トーチャンは7時ごろに帰ってくる

テレビから流れるお笑い番組の笑い声
その明るい声が、少しでもブーンの不安の気持ちを紛らわせていた
( ^ω^)「おっおっおっwおもすれーw」



26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:55:16.86 ID:SWg0viw80
  
不幸は突然訪れる
幸せは頑張った結果訪れる
反対の言葉なのにこの工程はどうかと思う。

その日ブーンは、その事を深く痛感したのだった
RRRRRRR
   RRRRRRR
      RRRRRRR
突如鳴り響く電話
時刻はすでに8時を回ったところ。
当然、トーチャンもカーチャンも帰ってきていなかった

( ;^ω^)「うぅ。おなか空いたお…だれだお…」
よろよろと立ち上がりながらブーンは電話を取る

そしてソコから狂い始めたブーンの全てが


「こちら…○○警察ですが…ブーン君?」
( ;^ω^)「そうですお?警察さんがなんのようですお?(ケケケケ、ケイサツからでんわ!?)」
「落ち着いて聞いて欲しいんだが…いいかな?」
( ;^ω^)「なんですお?(なんにもわるいことは・・・・してませんお。たぶん)」
「君のお父さんが……




         交通事故に合われて・・・死亡されました」



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/25(火) 19:56:36.72 ID:SWg0viw80
  
( ;゜ω゜)「・・・は?」
何を言ってるんだろう。警察の人は
トーちゃんが死んだ?
何でどうして?どうしてどうしてどうして
「大丈夫かい?ブーン君。それで君のお母さんがココに居るんだけど余りのショックで
 放心してしまってるんだ。学生の君にこんな事を言うのはアレだけど
 今からそちらに迎えを行かせるから、ブーン君も直ぐここにきて欲しいんだ」


その後の記憶は余りない
電話で言った通り10分もしないうちに警察の人がきた
そのまま車にのり、警察署につく
そしてそこで真っ先に見たのはトーちゃんの死体じゃなく

何処か壊れたような カーちゃんの姿だった
【1話 起 終】



戻る次のページ