( ^ω^)ブーンが運命に喧嘩を売るようです

187: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/02(日) 06:14:44.80 ID:3re0l7Zm0
  
第20話 「再会」


カシィ!

「あっ…あっ…。」

僕が引き金を引いても弾は発射される事はなく、男は死ななかった。
勿論、こうなる事は分かってた。
僕は自分じゃ誰も殺せない。
なのに、動けば皆死ぬ。
…不条理だ。

(  ω )「速く…行けお。」
「うあ、ぅあああぁぁぁ!!」

男は一目散に駆け出す。
あぁ、速いなぁ、なんてあまりにも場違いな感想を覚える。

ξ゚听)ξ「ブーン!!大丈夫なの!!どこも平気なの!?」
( ^ω^)「…大丈夫だお。何も問題ないお。何も…ないお…。」



188: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/02(日) 06:15:01.94 ID:3re0l7Zm0
  
どこまでも優しいツン。僕の体が心配なのか近くによって来る。
…問題なら、山積みだ。
カーチャンが死んだ。チビ達が消えた。この町は滅びた。この国は壊滅した。
これから何をすればいいのか?これからどうなるのか?
問題じゃないことが無い位に問題だらけ。
…向かわなければ、行けないのだろう。

ξ゚听)ξ「本当に、本当に大丈夫?」
( ^ω^)「大丈夫だお。それより…。」

ガサリと音が聞こえ、そちらに目を向ける。
問題を一つ解決。
瓦礫の山となった孤児院から一つの顔が出てきた。



189: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/02(日) 06:16:37.92 ID:3re0l7Zm0
  
「ブーン?」「ブーンだ!」「ツンちゃんもいる!」
ξ゚听)ξ「えっえっ?」

ワラワラと現れるチビ達。
…良かった皆いる。皆無事みたいだ。

「ブーン!カーチャンがね、カーチャンがね!」「隠れてなさいって!そしたらドッカーンって!」
「そしたら、人がいっぱい来て。」「僕達…怖かったよぉ。」
( ^ω^)「みんな…よく我慢したお。もう大丈夫だお。」

“お兄ちゃん”の顔をしてそう言う僕。カーチャンがいない今、僕がその代わり。
大丈夫と言う言葉は、嘘だけど、嘘じゃなかった。
絶対に大丈夫という保障はないけど、すくなくとも市街にはもう苛烈な攻撃はしないはずだ。
なにもあてずっぽで言っているわけではなく、一応の根拠もある。
すでに進攻は終わり、決着はついてしまったのだから、
もうこれ以上イタズラに兵力を裂くような行動はしないだろう。
…希望的観測に基づく所が大きいが…きっと大丈夫。



190: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/02(日) 06:17:19.26 ID:3re0l7Zm0
  
( ^ω^)「みんな…もうちょっとだけここに隠れてて欲しいお。」
「うん。」「わかった。」
「ブーンは?」
( ^ω^)「僕は少し、やらなきゃいけないことがあるんだお。」

みんなが疑問そうに僕を見る。それはツンも例外じゃない。
僕は『アカシャ』へと進まなければいけない。
僕は何故殺されないのか。
僕は何故殺せないのか。
その答えが…きっとそこにある。

「…あれ?」「ねぇ、あれって。」「そうだよ!」

チビ達が騒ぎ出す。何だ?
後ろを向く、そこには…陽炎のように揺らめく人影二つ。
死んだはずの男が立っていた。

ξ゚听)ξ「………ド!」
(;゚ω゚)「ドクオォ!」



191: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/02(日) 06:18:16.98 ID:3re0l7Zm0
  
( 'A`)「………。」
( ><)「………。」

ドクオ…本当にドクオだ。ワカンナイデスもいる?
僕の頭は矢継ぎ早に起こる出来事のせいで、処理能力の限界を振り切った。
ドクオだドクオだドクオだドクオだドクオだドクオだ。
どうして?死んだんじゃなかったのか?生きていてくれたのか?
だけど…
…違和感。二人の空気が以前と違う気がする…。
生気が感じられず、まるで表情が無い…。
そう…これはまるで…これではまるで…。

「ドクオ!」
(;^ω^)「ま、待つお!?」
( 'A`)「………。」

危険を感じ、飛び出した子を掴まえる。
一閃。何かが煌いた。
ドクオが…近づこうとした子に向かって
剣を振り落とした。
僕が止めなければ…確実に死んでた。

( 'A`)「………。」
( ><)「………。」



192: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/02(日) 06:18:48.56 ID:3re0l7Zm0
  
おかしい。おかしい。絶対におかしい。
ドクオがチビ達を攻撃…殺そうとするなんて。
二人がこちらに向かって駆けて来る。

(;゚ω゚)「!皆逃げるお!!」

チビ達を逃がし、二人の攻撃に備える。
攻撃?なんでドクオとワカンナイデスが僕に攻撃するんだ?
意味分からない。
死んで生き返って殺す。全く分からない。

(;゚ω゚)「…!」

一直線に突いてきた。そのおかげで動きの軌跡が見え、僕はなんなく回避する。
やっぱりおかしい。動きがあまりに単調すぎる。人らしさが感じられない。

ξ゚听)ξ「…何で…視えない…二人が“視えない”!」

まるで喋らない。まるで躊躇わない。まるで笑わない。まるで…
亡霊のようだ。…僕のようだ。



193: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/02(日) 06:20:02.32 ID:3re0l7Zm0
  

長い長い洞穴。ゆっくりと下降して行くのが分かる。
先に進むにつれ、人工的に作られたと一目で分かる通路へと切り替わる。
鋼鉄で出来ている通路をシナー達は歩いていた。

( `ハ´)「もうすぐアル!もうすぐでワタシが世界の王になれるアル!」

鼻息荒く、上機嫌に歩くシナー。

<丶`∀´>「すばらしいですニダ!もうすぐですニダ!」

シナーのご機嫌を伺いながら歩くニダー。

(*゚ー゚)「………。」

何も喋らず、ただ黙って歩くしぃ。
その後を追従してくる何人かのロビーの兵達。
一種異様な雰囲気を醸しながら、一行は歩いていた。

( `ハ´)「ニダーがコッチミルナに『アカシャ』の場所を教え、
       掘り起こさせたおかげで随分と早くワタシの目的は達成できるアル!」
<丶`∀´>「ウリの喜びは皇王様の喜びニダ!」
( `ハ´)「コッチミルナが馬鹿で助かったアル!全く笑いが止まらないアル!
       ファファファファファww」
<丶`∀´>「ホルホルホルホルホルww」
(*゚ー゚)「………。」

長い通路の中を二人の笑いが反響する。他に声を出す者はいない。
無言の進行の中で二人だけが笑う。



194: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/02(日) 06:20:39.48 ID:3re0l7Zm0
  
( `ハ´)「それにしても、あの“死なない兵”達はすばらしいアル!」
( `ハ´)「アサピーに送ったサンプルのように異常な力は出せないアルが、奴らは無敵アル!しぃ、褒めてやるアル!」
(*゚ー゚)「………。」
( `ハ´)「どうしたアル?緊張でもしているアルか?」
(*゚ー゚)「……いえ、なんでもないわ。…それより、そろそろみたいよ?」

ただ長いだけだった通路が終わり、ひらけた場所に出る。
VIPの主要都市がすっぽり収まる程の広大な空洞。
その中心に巨大な壺状の物体が鎮座していた。
所々が不規則に点滅を繰り返し、暗い空間にそこだけが映る。

( `ハ´)「遂に…遂に見つけたアル!遂に手にしたアル!!世界は…『アカシャ』はワタシの物アル!!!」

『アカシャ』はその点滅を続けていた。
運命を綴り続けていた…。



第20話 「再会」  終



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