( ^ω^)ブーンが運命に喧嘩を売るようです

125: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:34:11.88 ID:U2ZBqMqJ0
  
第22話 「愛すべきモノ」


(# `ハ´)「どぉぉなってるアル!!全く動かせないアル!!!」

広い空間にシナーの怒声が響き渡り、反響する。
シナーは『アカシャ』の前まで来ておきながら、その操作が分からず、怒り狂っていた。

(# `ハ´)「ニダー!!!これはどうなっているアル!!どうやったら動くアル!!」
<;`A´>「も、申し訳ありませんニダ。ウリにもサッパリ…。」

『アカシャ』は静かに点滅し続けている。
タッチパネルがあり、それで何かをするのだろうとはシナーにも予想がついたが、
肝心の操作法が分からないのでは意味が無い。

(* ー )「ふふwうふふwwあははははwww」
(*゚ー゚)「あはwあははwあははははははwww」
(# `ハ´)「何を笑ってるアル!!お前も手伝えアル!!!」
(*゚ー゚)「ふふwwあはwいいわよw操作してあげるわwwうふwwあははww」

笑い止む事のないしぃ。どこかのネジが一本外れたのではないかと思うほどに笑い続ける。
異様な笑い。その場にいる全員がその笑いの意味が分からない。



126: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:34:52.23 ID:U2ZBqMqJ0
  
(# `ハ´)「いい加減黙れアル!!うるさいアル!!」
<# `A´>「そうニダ!!うるさいニダ!!」
(*゚ー゚)「ふふwwそれは失礼。ようやく“獣”と離れられると思って
     さっきから我慢してたんだけどねwwうふふwwやっぱり堪えきれなくなっちゃってねww」
(# `ハ´)「……何を言ってるアル?」

しぃはそのまま数歩歩き、シナー達全員を見渡せる位置まで来ると振り返り、大仰に手を広げて言い放つ。

(*゚ー゚)「“獣”にはもっと分かりやすく言ってあげなければダメかしら?ふふww」
<# `A´>「意味が分からんニダ!!さっさと言えニダ!!」

ワザと落胆したように肩を竦めるしぃ。その顔は先程から笑ったままだ。

(*゚ー゚)「うふふwwそれじゃ〜あ、分かりやすいように言ってあげるわね?」
(*゚ー゚)「私はぁ、あなた達をぉ、裏切りますぅ!きゃははww」



127: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:36:05.98 ID:U2ZBqMqJ0
  
しぃの発言に辺りがざわめく。シナーとの距離はかなり離れているにしても
ロビーのNO,2が公然と反逆の意思をあらわにしたのだ。
一般の兵が驚くのも無理はないだろう。

<# `A´>「き、貴様、今なんt
( `ハ´)「……本気、アルか?」

シナーが今までのように分かりやすい怒りではなく、
もっと冷たい殺気を出しながらしぃに問う。

(*゚ー゚)「ふふww本気も本気。超本気よwふふふww」
(*゚ー゚)「元々“人”が“獣”の中で暮らしていくのに無理があったのよねw」
(*゚ー゚)「やっと同じ空気を吸わないでいいかと思うとww
     うん!すごく気分がいいわwwこれが最高に“ハイ”ってやつかしらww」

そう言って、一度は収まりかけていた笑いを再会するしぃ。
周りの兵達はどうすればいいのか分からず皆戸惑っている。

( `ハ´)「……銃殺アル…。」
<;`A´>「えっ?」
( `ハ´)「銃殺アル。全員この反逆者を殺せアル。」
「し、しかし…」「しぃ様を殺して…」「…本当に良いのか?」



128: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:36:30.90 ID:U2ZBqMqJ0
  
兵達が先程とは別のざわめきをおこす。銃や戦車等の兵器はしぃが作ったものだ。
彼女を殺すという事はこれ以上の兵器の発展を放棄する事に他ならない。
しかし、シナーは冷たく言い放つ。

( `ハ´)「殺すアル。撃たなかった者は家族を殺すアル。
       自身は永遠に拷問し続け、人としての生涯を閉じさせてやるアル。」
「そんな…」「それじゃぁ…」
(*゚ー゚)「撃つなら早く撃ちなさい?どうせ“獣”に私は殺せないんだからww」
<# `A´>「貴様ら!さっさと撃つニダ!!」

ニダーが叫ぶと同時に兵達は一斉に銃を乱射した。撃つ、撃つ、撃つ、撃ち続ける。だが…
銃弾はまるで意思を持ち、しぃを嫌うかのように逸れ続け、一発もあたらない。



129: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:37:20.49 ID:U2ZBqMqJ0
  
(*゚ー゚)「あ〜あw勿体無いわねw限りある資源をもっと大切にしましょうよww」
(; ゚パ )「なっ!どうなってるアル!?ちゃんとあてるアル!!」

撃っても撃ってもあたらず、兵達は困惑し、銃を撃つのをやめる。
なぜ?どうしてあたらない?なにが?
そんな疑問符で空間が満たされていく。
そんな中を悠然と『アカシャ』の前まで歩くしぃ。
やがて歩くのを止め、『アカシャ』に触れ、そのまま頬をピタリと着ける。

(*゚ー゚)「あぁ…懐かしい故郷の香り…。」
(;`ハ´)「クソッ!よこせアル!!」

そう言って強引に一人の兵の銃を奪い、しぃに向かって発射する。
当然しぃにはあたらず、弾は逸れていった。

(*゚ー゚)「ふふwそれが最後の足掻きかしら?うふふw」
(;`ハ´)「くそっ!くそっ!!くそっ!!!」
<;`A´>「…どうなってるニダ…。」

しぃがようやく落ち着き払った様子でシナー達を見渡す。
しかし、今までとのギャップで逆に不気味な感覚を与える。



130: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:37:46.82 ID:U2ZBqMqJ0
  
(*゚ー゚)「…今までお世話になりました。あなたの役目はここまでです。さようなら、お元気で。」
(;`ハ´)「な、なn

消えた。しぃが『アカシャ』に手を触れ、何か操作をした途端、シナーは忽然とその姿を消した。
どこを見てもシナーの姿は無く、その痕跡を丸ごと消してしまったかのようだった。

<;`A´>「こ!皇王様!?どこニダ!?どこに行ったニダ!?」
(*゚ー゚)「あの人はね…運命からdat落ちしたのよ。もうその存在はどこにもないの。そして…。」
(*゚ー゚)「この聖域に入った浅ましくも卑しく、汚らわしい“獣”は皆駆除しないと…ね♪」
<;`A´>「な、な、なぁ!?」

しぃが何か操作する。するとニダーを筆頭に次々と消えていく兵達。
その中で一人だけ消えずに残っている兵がいた。
「ぅ、ぅぁ、ぅぁぁ…。」
(*゚ー゚)「ふふw逃げてもいいわよ?一人くらい逃がしてもどうってこと無いものw」
「ぁ、ぁ、ぅぁぁあああああ!!!!」

必死の形相で元来た道を戻ろうとする兵。しかし、その姿も途中で消える。

(*゚ー゚)「ごめんね?やっぱり気が変わっちゃったわw」

その場にはしぃのみが残り、他には誰もいなくなった。



131: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:39:04.56 ID:U2ZBqMqJ0
  
(;メ._凵j「ぐっ…!」
( ´∀`)「………。」

モナーの剣撃を受け、たじろぐ。やはり力はコイツの方が上、
直接やりあって勝てるとは思えない。
それよりも…先程からモナーは避けるという動作を全く行わず、
全ての攻撃をその体に受けながら反撃してくる。
あまりにも異常。まるで死ぬのが怖くないかのよう。まるで死なないかのよう…。

(;メ._凵j「うあっ!」
( ´∀`)「………!」

力負けした私は剣を弾き飛ばされ、モナーの攻撃を体を捻ってかわし、
そのまま奴を蹴りながら後方へ跳ぶ。その勢いで奴も飛ばして距離を取る。
…今の内に息を整え、次の攻撃に備えなければ。
ふと気付く。こんなに派手にやりあっているのに、ロビーの兵がまるで駆けつけてこない。なぜだ?
それにコイツの先程からの行動、あまりに人間らしく無い。…人間らしさがまるで無い。
…敵はモナーをコントロールしきれていないのではないか?
被害を自分達に広げないためにここに出て来れないのでは?
しかし、私が考えている間に、奴は私の部下に攻撃を始める。



132: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:39:28.12 ID:U2ZBqMqJ0
  
(;メ._凵j「…っ!やめろっ!!」
( ´∀`)「………。」
「ぐっ!」

何とか防ぐ。そう、昔のモナーの剣術とはまるで違う“分かりやすい”剣撃を行うのだ。防げないわけではない。
しかし、剣速、剣の威力は昔と変わらず、なによりこちらの攻撃が効かない。
これでは何時までたっても終わらない。どうしたものか…。

(;メ._凵j「ふっ!」
( ´∀`)「………。」

鍔迫り合い状態の二人を引き剥がすようにモナーを斬りつける。
先程から感じる奇妙な感触。斬っているはずなのに、まるでダメージを与えられない。
…また何事も無かったかのように立ち上がる。



133: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:40:29.95 ID:U2ZBqMqJ0
  
(;メ._凵j「このままでは埒があかない…。」

私の…せいなのだろうか?私がロビーに送ったためにモナーはこうなってしまったのか…?
なおも攻撃を続けるモナー。人として大切な何かを失ってしまったモナー。
ただただ機械的に戦い続けるだけとなってしまったのか…。

(メ._,)「…こんなお前は…見たくなかったな…。」

これは…私の責任なのだろう…。ならば、私がこいつを止めねばならない。
…こいつを…人として殺してやらなくてはならない…。
どちらにしろ、こいつを倒さないと先には進めないだろう。

(メ._,)「…一度退却し、体勢を立て直す。」
「何を仰いますか!?今逃げ出しても敵の追撃の手が厳しくなるだけです!」
(メ._,)「安心しろ。そんなことにはさせん。私が……。」
(メ._,)「私がどこか一軒の家屋にモナーと共に入る、そうしたらそこに…火を放て。」
「…!?」
(メ._,)「燃えている機に乗じてこの場から退却し、体勢を整えてからうまく進入してくれ。」
「そんな…総司令官殿がわざわざ死ぬ事はありません!ただ何処かに火を放ち、その隙に逃げればよいだけでしょう!?」
(メ._,)「そうはいかないだろう。私が死ぬ事によってのみ、奴らは動揺するはずだ。それに…。」
(メ._,)「これは…私の責任だからな…。アイツを解放してやらなくてはならない…。」
「………。」



134: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:41:13.06 ID:U2ZBqMqJ0
  
(メ._,)「私が消えた後の指揮は貴公に任せるよ。頼んだぞ。」
「…そんな…私などでは…。」
(メ._,)「貴公には私の戦い全てを見てもらった。任せられるのは貴公しかいないのだよ。」
(メ._,)「…色々、口煩くしてすまなかったな。」
「しかし…しかし…。」
(メ._,)「もっと自身を持て!そんなことでは後を任せられん!貴公は男であろう!」
「…分かりました。作戦の成功を祈っております!」

モナーの下へ走る。死にに行くために。殺しに行くために。共に死ぬために…。
私が近づくとそれに反応したように向こうからもこちらに来る。

剣を交差させながら、遠い昔の事を思い出す。
子供の頃からずっと一緒だった。互いに互いを磨きあった。お互いに励ましあった。
生まれが悪くとも上に昇っていけると二人で頑張りあった。女であっても努力は実ると言ってくれた。
…ずっと好きだった…。

(メ._,)「だからこそ!今のお前を生かしておく訳にはいかない!!」
( ´∀`)「………。」

モナーの剣が私の腹部を突き破る。…冷たい感触の後に自分の熱い血が感じられる。
…そうだ、これでいい。これは…お前と私を繋ぐ楔だ!

(;メ._凵j「………ぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!」
( ´∀`)「………!」

手を奴の背に回し、渾身の力を籠めて押していき、近くの家に飛び込む。
いきなりの行動に反応できなかったのか、さほどの抵抗を受けずに入る事が出来た。
今、私が押し倒すような状態で上に覆いかぶさっているので、モナーは剣を抜く事が出来ないようでいる。



136: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:42:53.93 ID:U2ZBqMqJ0
  
(;メ._凵j「…覚えて…いるか?…初めて会った、時の、事を。」
( ´∀`)「………。」

目が…霞む。まだだ、まだもう少しだけ起きていなければ。
反応のないモナーを相手に勝手に話しかける。

(;メ._凵j「…私は、忘れて…いないぞ。…まだ私が、何も知ら…ない無垢な、少女だったころの…ことだ。」
( ´∀`)「………。」

外気が熱くなってきた…。火を放ったか。

(;メ._凵j「ふふ。ありふれたはな、しで…今、考えると、自分でも…おかしく思うよ。」
( ´∀`)「………。」
(;メ._凵j「近所…の、悪餓鬼、に、人形を取られ、泣いて…いた、私の…前に。」
(;メ._凵j「さっそう、と現れ…取り返し、て、くれた…少年が…お前が、眩し、かった。」
( ´∀`)「………。」

先程から私の下にいるモナーは意外な事に逃げようとしなかった。
ただ、私の話に聞き入ってくれているようだった…。

(;メ._凵j「お前、は…『騎士』を、目指して、いた…。」
(;メ._凵j「子供の、単純…さか、私は、もっと、お前と…一緒にいたい、と思い…自分も、そうだと…答えたっ、けな…。」
(;メ._凵j「軽蔑、しないで…くれよ?私が…『騎士』を、目指し、たのは、お前と一緒に…いた、かったから…。」
(;メ._凵j「大体…お前が、いけない…のだ。あんな、刷り込み紛い…の、事をされたら、惚れるに、決まっている…だろうが。」
( ´∀`)「………。」

火の手が私達を包むように広がってきている。…もう少しだけ、話が…したい。



137: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/04(火) 17:43:27.11 ID:U2ZBqMqJ0
  
(;メ._凵j「…お前が…軍を抜ける、と、言った、時は…本当に…悲し、かった…。」
( ´∀`)「………。」
(;メ._凵j「寂しか、った…どうした…ら、いいのか、分か、らなかった…。」
(;メ._凵j「私は…馬鹿だった、から、戦う事しか…できな、かったから、軍に…残った。」
(;メ._凵j「…本当、に…大馬鹿…者だな…。私は…。」
( ´∀`)「………。」

火の手が直接私達を焦がし始める。もうあまり時間が無さそうだ。
伝えたい事を…言葉に乗せてちゃんと伝えよう。
不器用な私の、生涯最初で最後の…。

(;メ._凵j「それでも…良かっ…たのかも、な?…最後に、お前の胸で…死ねる。」
( ´∀`)「………。」

大きく息を吸う。今までの人生で一番の緊張。
さぁ、思いを伝えよう。

(メ._,)「…初めて会った時から
             好き 
             でした………。」
( ´∀`)「………。」

モナーと視線が絡み合う。勝手な妄想だけど、
返事を貰えた気がした。
ふふw悪くない人生だった…かな?
火は私達を祝福するように激しく燃え盛っていた。



第22話 「愛すべきモノ」  終



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