( ^ω^)ブーンが運命に喧嘩を売るようです

297: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 21:15:22.65 ID:Z0HwJbSa0
  
第24話 「人」


(*゚ー゚)「うふwwうふふwようこそアダム!エデンの園へ!!」
( ^ω^)「………。」
(*゚ー゚)「あれw反応薄いなぁww折角考えておいたセリフなのにww」

長い長い道を超え、広い空間に出る。
その真ん中に鎮座する巨大な壺状の物の前に…元凶がいた。

( ^ω^)「…ドクオが死んだお…。カーチャンも死んだお…。他にもイッパイ…死んだお。」
(# ^ω^)「…何のために、何のためにこんな事をしたんだお!」
(*゚ー゚)「うふふwwそんな事どうでもいいじゃないww」
(# ^ω^)「答えるお!!」

声を荒げる僕に対し、あくまで笑い続けるしぃ。
…何がそんなに面白いんだよ?何がそんなに笑えるんだよ!?

(*゚ー゚)「ふふwうふふwwそうカッカしちゃダメよ?」
(*゚ー゚)「私はね?うふふwwこの地上に“人”を増やそうとしてるのよw」
(# ^ω^)「人?何言ってんだお!?人を殺してるのはアンタだお!!」
(*゚ー゚)「んwもしかして“獣”のことを今人っていったのかな?」
(# ^ω^)「…無能…かお?」
(*゚ー゚)「……wwいいわ。一から教えてあげる。
     考えてみれば知ってもらわないと理解してもらえないかもしれないわねww」
( ^ω^)「………。」
(*゚ー゚)「うふwいいかしら?それじゃあ…。」

そういって童話を読んで聞かせるような喋り方をし始める。
何かを読み上げるように朗々と。



298: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 21:16:29.53 ID:Z0HwJbSa0
  
(*゚ー゚)「昔々、こことは比べ物にならない位の文明を持った世界がありました。」
(*゚ー゚)「そこに住む人々はみな豊かに暮らし、安息を約束されていたはずでした。」
(*゚ー゚)「ですが、彼らには好奇心があり、それは発展と同時に滅亡も引き寄せました。」

クルッと後ろを向き芝居がかった口調で続けるしぃ。

(*゚ー゚)「彼らはあるプロジェクトを進行させていました。」
(*゚ー゚)「その計画の名は『プロジェクト2CH』!
     ある一つの世界を舞台に繰り広げる、神を目指す究極の実験!!」
( ^ω^)「…その舞台が…ここかお?」
(*゚ー゚)「そう!その通り!!プロジェクト名の由来となった、
     その名も『ワールド2CH』を舞台として、世界を管理する実験を繰り返していたの!!」
( ^ω^)「ワールド2CH…。」

初めて聞く名前…だけど、どこかで聞いた事があるような…。

(*゚ー゚)「彼らは何代にも渡りこの計画を進めてきました。そして…
     遂に『アカシャ』を完成させました!!」
( ^ω^)「物語を綴る作家…かお?」

この馬鹿でかい壺が作家とはどうしても思えないが…これはただの冷たい機械だ。



299: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 21:16:56.59 ID:Z0HwJbSa0
  
(*゚ー゚)「うふふww覚えててくれたのね?嬉しいわw」
(*゚ー゚)「その通り、『アカシャ』は運命を綴り、
     この世界の全ての事象をコントロールすることが出来ました。ですが…。」
(*゚ー゚)「遠く離れた私達の世界からはコントロールすることが出来なかったのです。」
(*゚ー゚)「彼らは考えました。わざわざこの地にまで赴かなくてはならない物が本当に役に立つのか?と…。
(*゚ー゚)「思案の末、彼らはテスト的に『アカシャ』をこの地に残していきました。」

しぃは『アカシャ』にまで近づき、撫でるように触れる。

(*゚ー゚)「『アカシャ』その物の出来は素晴らしい物がある。そう考え、
     大筋のストーリーを設定し、それをモニターして遠距離でも操作できる装置の開発に勤しみました。」
(*゚ー゚)「それから、気が遠くなるような長い時が過ぎても大した進展をもたらさないままに、
     彼らの研究は突然に終焉を迎える事になりました。」

笑顔のまま悲しそうな顔をするという高度な表情で彼女は続ける。

(*゚ー゚)「彼らの研究は時の権力者達の目に入り、醜い奪い合いが始まりました。」
(*゚ー゚)「馬鹿な権力者達はこの研究の成果を得るために私達の世界を使い、戦争を始めてしまいました。」
(*゚ー゚)「本当に…あいつらのせいで、私達が住む世界は破滅へと追いやられてしまいました。」
(*゚ー゚)「その時の研究者の内、三人の責任者的立場の人間が、
     自分達の子をこの『ワールド2CH』へと移住させました。」



300: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 21:17:35.90 ID:Z0HwJbSa0
  
そしてまたあの時の、初恋を思い出す少女の顔へと変わる。

(*゚ー゚)「その三人の内の一人の子供、その女の子に父親はこう言ってくれました。」
(*゚ー゚)「お前が“人”の最後の希望だ。お前はあの世界では死ぬ事はない。
     人を絶やさないでくれ。我々の血を絶やさないでくれ。」
(*゚ー゚)「女の子は何を言っているのか分かりませんでしたが、父親の事が大好きだったので
     こう約束しました。」
(*゚ー゚)「父様、あたしが父様の願いを叶えてあげる。だから心配しないで?」

今度は別の所を歩きながら話し始める。ここからでは表情は見えない。

(*゚ー゚)「何か管のような物に入れられ、女の子は故郷から永遠に離れてしまったのです…。」
(*゚ー゚)「移住を果たした女の子は、この世界の文明の低さと自分達とは違う人の姿を目撃します。」
(*゚ー゚)「女の子は心配になりました。こんな世界で自分は生きていけるの?…ですが」

こちらを振り向く、その顔は…証明の関係か、狂気に彩られているようにしか見えなかった。

(*゚∀゚)「女の子は父親との約束を思い出します!大好きな父様!絶対に悲しませちゃいけない!!」
(*゚∀゚)「その一心で女の子は世界を動かし、こうして『アカシャ』の前に辿り着く事ができました!!」
(*゚ー゚)「ふふwwうふふww素敵なアダムも来てくれましたww」

そう言って、本を閉じる動作をするしぃ。だが、これじゃまだまだ分からない事だらけだ。

( ^ω^)「…もっと詳しく説明するお。こんなので終わりじゃ誰も納得しないお。」
(*゚ー゚)「うふふwwそれじゃあもう少し、もう分かってるわよね?
     物語の女の子は私。…そして他の二人は…。」
( ^ω^)「………。」
(*゚ー゚)「あなたと…そろそろ出てきてもいいんじゃない?ショボン。」
(´・ω・`)「………。」



301: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 21:18:27.90 ID:Z0HwJbSa0
  
( ^ω^)「…ショボン。」
(´・ω・`)「………。」

またイキナリ出現するショボン。どうやらさっきから近くにいたらしい。

(*゚ー゚)「本当、演出にはピッタリな道具よね?どれ位の距離を転移できるんだっけ?」
( ^ω^)「転移?」
(*゚ー゚)「うん、転移。ブーン君?これが私達の故郷の科学よ。短い距離を、そうね…分かりやすく言うと
     瞬間移動できるって言えばいいのかな?本当はもっと色々難しいんだけどね。」
(´・ω・`)「…最大距離は五メートルだよ。」
(*゚ー゚)「あら?説明ありがとうw」
( ^ω^)「それは、分かったお。いや、本当はよく分からないけど…ほかに知りたい事があるお!
     “人”ってなんだお!!“獣”ってどういう意味だお!!」

僕がそう叫ぶと彼女は何が面白いのか、くつくつと笑い出す。

(*゚ー゚)「ふふwうふふふwwあなたはもう気が付いてるんじゃない?うふwwうふふw」
( ^ω^)「…僕らが“人”で…この世界の人。
     『アカシャ』に名を連ねている人間は全て“獣”…そう言いたいのかお?」
(´・ω・`)「そうだけど…少し違う。」
( ^ω^)「お?」
(*゚ー゚)「私は父様との約束を守るために二つの方法を思いついたの。」
(*゚ー゚)「一つは私以外にこの世界に来た“人”と交わり、種を残す事。」

…だから初めて会った時、僕に迫ってきたのか。納得。



302: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 21:18:54.11 ID:Z0HwJbSa0
  
(*゚ー゚)「そしてもう一つは…人工的に“人”を作り出す事。“獣”を人に作り変える事よ。」
( ^ω^)「“獣”を“人”に…作り変える?」
(´・ω・`)「この世界の人間は基本的には僕達をモデルにしている。…確かに似てはいるんだよ。」
(*゚ー゚)「けど、それは結局似ているだけだった。
    “人”へと作り変えたあいつ等は思考する事をやめたわ。」
(´・ω・`)「君は既に二人程その人工的に作られた“人”に出会っているはずだ。」

そう言われて思いつく。…違う、戦っていたときから、斬られかけたその時から気付いていた。

( ^ω^)「…ドクオ…ワカンナイデス…。」
(*゚ー゚)「彼らは運命から外れた“人”になった。けれど所詮“獣”は“獣”。無能には違いがなかった。」
( ^ω^)「…ドクオは…最後に全てを思い出したお…。」
(*゚ー゚)「そう?それじゃやっぱり失敗だったわけね。」

事も無げにそう言うしぃ。失敗だった」?そんな言葉で…そんな言葉で!

(# ゚ω゚)「そんな言葉で全部許されると思ってんのかお!?ドクオが!カーチャンが!ワカンナイデスが!
     他にもいっぱい!いっぱい死んだんだお!?あんたのせいで死んだんだお!!」
(*゚ー゚)「“獣”がいくら死のうと私は気にしないわ。」



303: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 21:19:45.80 ID:Z0HwJbSa0
  
(*゚ー゚)「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。
     海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」
(;゚ω゚)「んな!?」
(´・ω・`)「旧約聖書、創世記か…。」
(*゚ー゚)「そう。私達には“獣”を自由に扱う権利と、管理する義務があるのよ。」
(# ゚ω゚)「フザケンナお!皆精一杯生きてんだお!!誰も管理なんてされなくても生きていけるお!!」
(´・ω・`)「本当にそう言いきれるかい?」
(*゚ー゚)「確かに、私はこの戦争を煽ってここまで来たわ。でもね?私が戦争を起こしたわけじゃないのよ?
     彼らが今までしてきた事は、何百年間も何千年間もただただ戦ってきただけだわ。」

違う!それは、それは…

(;゚ω゚)「それは…『アカシャ』によってそうさせられてきただけだお!」
(*゚ー゚)「そうね。『アカシャ』の設定によって彼らは戦い続けてきたわ。
     だからこそ私達が管理しなければならない。違うかしら?」
(# ゚ω゚)「そんな事ないお!管理なんかしなくても運命は変えられるはずだお!!」
(´・ω・`)「………。」
(*゚ー゚)「ふふww何か言いたそうね?ショボン?」
(´・ω・`)「……何でもないさ。」

ふと、気付く。そういえば何故?



304: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 21:20:14.13 ID:Z0HwJbSa0
  
( ^ω^)「…何で僕なんだお?ショボンでもいいはずだお?」
(*゚ー゚)「ふふwwそれを言わせるの?あなたの方が好みだからに決まってるじゃないww」
(;^ω^)「………。」
(*゚ー゚)「冗談よw血の繋がりのある者同士で子を産むのは危険だからね。ねっ?お兄ちゃん?」
(´・ω・`)「………。」

冗談かよ……はっ?今なんて?

(;^ω^)「えっ、ちょ、何?」
(´・ω・`)「実際には父親違いだよ。同じ母親の遺伝子を持っているけど同じ場所で生まれた訳じゃない。」
(*゚ー゚)「試験管ベビーって奴でね。」
(´・ω・`)「優秀な母親の卵子だけを頂き、そこから培養されて生まれたのが僕らだよ。」
(;^ω^)「試験管とか培養とか…意味わかんねぇお!」
(´・ω・`)「別に分からなくても支障はないさ…。僕達が君とは違う事だけ覚えていてくれればいい。」
(*゚ー゚)「ふふwwそんなことよりも!」

先程からハイテンションに更に拍車が掛かった状態のしぃが大勢の人に聞かせるように喋りだす。



306: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 21:20:58.08 ID:Z0HwJbSa0
  
(*゚ー゚)「折角最後の三人の“人”が一所に集まったのよ?
     これから皆でここで過ごしましょうよ?」
(´・ω・`)「……残念ながら、その誘いは断らせてもらうよ。」
(*゚ー゚)「…やっぱり考えを変えるつもりは無いの?」
(´・ω・`)「そういう事だね。」
(*゚ー゚)「そう…。それじゃあ仕方ないわね。私はブーン君とここにいるわ。」
(;゚ω゚)「勝手に決めてんじゃねぇお!」

僕はこんな所にずっといる為にここまで来たんじゃない!
そう言おうとした矢先、ショボンが先に喋りだす。

(´-ω-`)「いや、それもちょっと違うな。」
(*゚ー゚)「?何の事?」
(´・ω・`)「考えを変えるつもりはないが…ここから出て行くつもりはないよ。」
(*゚ー゚)「どういう…!?」

ショボンが何かを手に持ち、構える。
黒光りし、小型ながらもこの形は…。

(´・ω・`)「…本当に残念だ。妹を自分の手で殺害しなければいけないとはね。…でも。」
(´・ω・`)「言ったはずだよ?君の苦労は全て徒労に終わると…。」

銃が火を噴いた。



第24話 「人」  終



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