( ^ω^)が退魔屋になったようです

71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:13:56.80 ID:2xRbCs6d0
  
?「アァァァ・・・・・・ァァア・・」

渇く渇く渇く

喉が渇く、熱い、燃えるように、液体を飲みたい。
そう、真っ赤な紅の液体を、思う存分。力いっぱい飲みたい

すでに手足からのエネルギーだけでは我慢できなくなっていた。
満月の夜まで後2日。今晩は持っても、明日は・・・・・

ガリガリガリガリガリ

必死にこの渇きを紛らわせるため、爪でコンクリートを引掻く。
すでに人が一人入るほどの穴を掘っても、気分はまぎれなかった。

今出て行けば、確実に屠られるだろう。
まだ弱い。まだまだ。


ダケド ダケド ダケド



72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:14:46.50 ID:2xRbCs6d0
  
「アアアアアアァァァァ」

狂ったように声を上げる。擦れた喉からは、微かな音しか発せられないがそれでも、狂ったように上げる、狂声を。

どうすればいい!どうすれば飲める!今、出て行っても太刀打ちできない。手足のソレよりも少し強いこの力では、何にも出来ない。
もう一体、もう一体、この体があれば!屠られても何も抵抗の無い体があれば!


・・・・・冷静になれ 今なんていった 自分でなんと言った・・?

もう一体、体があれば・・・・

そうか、そうだ!

あはははっはあ!簡単なことだった。

もう一体作ればいいんだ。消されても抵抗の無い体を。
あは、あははは なんて簡単なことだったんだろう。
地面を引掻くのをやめると立ち上がり、高笑いを始める



73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:15:58.84 ID:2xRbCs6d0
  
?「あははは、飲める!思う存分飲める!

  ふふふ、アハハハハハハハハハハ」

満月に近い月が淡い光を照らしてる世界。

夜の世界。

これから、自分自身が恐怖の狂った世界へと誘ってやろう・・・





【第9夜】



74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:17:35.56 ID:2xRbCs6d0
  
夜の帳が落ちた頃。俺はいつものように繁華街の屋上にいた。

なんてことはない、手足の削除をするためだ。
敵が何人手足を作っているかは分からないが、数は減らしてきている。
ニュースや新聞で発表された行方不明者等から逆算すれば、もうほとんど居ないだろう。
明日か、明後日で事が終わる。

しかしながら、体調はほとんど回復していない。

爺の言いつけで魔武具を持たされた。長刀の獲物だ。
魔武具。通常の武具とは違い、魔に対する体性が強い武具のことを指す。
十字架とかがいい例だ。武具自体に、特別な力を付加し、魔に対しての威力を上げているもの。

しかしながら、俺は長刀なんて使ったことは無かった。
( ;^ω^)「まぁ・・何とかなるお」

布で覆われた獲物を握り締めると。夜の世界へと身を投じた。





75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:18:12.73 ID:2xRbCs6d0
  
今の体の力からいえば、吸血活動は簡単だった。
人通りの少ない場所を歩いているニンゲンの背後によって

コキッ

首を折る。それだけでニンゲンは静かになる
そのまま欲望のまま、首筋に歯を立てると思いっきり噛み付き。
滴り落ちる血を吸う。

コクン コクン コクン

ああ、なんて美味しいんだ
これだ、コレを求めていた。

コクンコクンコクン

血が掠れ、出てこなくなっても、最期の一滴まで吸い取ろうと努力する。
ああ、美味しい、コレ、コレ、コレ、コレ

ずるずるずると、血液をむさぼり尽くすと。もうコレには用は無い。
その場に、落とすと次の獲物を探しに行く。



76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:19:05.71 ID:2xRbCs6d0
  
まだ、まだまだ物足りない。

次、次の血を。血液を・・・





気配を察するのが一流の第1の仕事だ。幼少の頃。親にそういわれたのを思い出す。
今日は、なんだか変な気配がする。
ドサッと倒れた吸血鬼の始末をすると。俺はそらを見上げる
さっきまでは月の明かりが優しく降り注がれていた空からは
月の光は消え、黒い重い雲が覆っていた。

( ^ω^)「・・・本体かもな」

べっとりと肌にまとわりつくようないやな空気。
今までの気配とは違う大きな気配。

( ^ω^)「今晩中にカタがつきそうだお」

俺は一人ごちりながら、獲物を握り締め、その場から立ち去る。

そして気配のする方へと、そのまま駆け抜けていく・・・



77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:20:23.71 ID:2xRbCs6d0
  
町外れの小さな住宅地。

電灯の数は少なく。暗闇が支配しているこの場所。
盲点であった。人が集まるところばかりを狙うとおもっていたのだが・・
気配はここからしていた。近づくにつれ、それははっきりと感じ取れるようになり、今ではすぐ近くまで接近しているのが分かった。

( ^ω^)「さて、一応使うお…」

俺は布から獲物をを取り出すと、ソレを抜く。

銀色の鈍い光を放つ長刀。柄の部分には、何かしらの呪譜が巻かれている。
軽く握ると不思議とそれはしっくりと手に合う感じがする。

( ^ω^)「・・・今夜で終わりだお!」

そうすれば、そうだ、明日の夜には茜との約束がある。
ツンのためにも、ここで終わらせるっ!

俺はそのまま気配のするほうへと駆けていった



78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:21:42.18 ID:2xRbCs6d0
  


次の獲物を見つけたら、同じように首を折る。
少し力を入れすぎたためか、首がちぎれてしまった。
しかし、血が出るのは一緒。
そのまま首があった場所に口を近づけ、噛み付きすする。
ズルズルズルとすっていたときだった。

( ^ω^)「そこまでだお」

後ろから声が響く。若い男の声だった。血を吸うのを止めると私は振り向く。

予想どおり若い男。高校生ぐらいだろうか。手には似つかわしくない長い刀を持っている。
しかし、幼い。頼りないといったほうがいいのだろうか、外見のソレからは手足を屠っていた人物とは思えないほどだ

( ^ω^)「今回の吸血鬼騒動の発端はお前だお?」

チャキリ と刀を鳴らしながら構える男
しかしながら、こんな男に恐れていたなんて、なんて失態であろう。
というか、手足が弱すぎるのも問題だ。



79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:22:52.57 ID:2xRbCs6d0
  
川 ゚ -゚) 「ふふ、あはははっははは こんばんわ、退治屋さん」

完璧に優性だ。こんなのに私が負けるわけが無い。

川 ゚ -゚) 「数々の手足への行い、本当にありがとう。とーっても苦しかったよ」

そういいながら、獲物を手放す
川 ゚ -゚) 「ふふ、そのお返し直接してあげる」
それと同時に翔けた

体は分割したというのに、不思議と体が軽い。
やはり血液を直接採取したからであろうか。
先ほどまでの渇いた体からは想像できないぐらい体の性能が上がっていた。

一歩だけで男の懐までもぐりこむ。
男は戦闘態勢を取ってはいたが、予想外の速さについてこれないようだった。
長刀を使う相手、懐にもぐりこめば長刀は役に立たない。

案の定、男はゲッと驚いた顔をしたが、もう遅い。
そのまま、力いっぱい殴りつける。ボゴッという鈍い感触と共に、男は吹き飛んでいった。

本来なら、一撃で終わり。私もそう思っていた。

だけど、男は死ななかった。苦しそうに腹を抱えながらゆっくりと立ち上がった。
認識を改める必要があるようだ。



80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:24:19.97 ID:2xRbCs6d0
  
川 ゚ -゚)「あはは、そうでなくっちゃ退治屋さん。私の恨みはあんなものじゃない。」

その言葉はうそではなかった。手足が消されるたびに走る苦痛。通常のニンゲンでは考えられないほどの痛み。
それが毎晩のように襲ってくる。それはこいつのせいで。

あの一撃で終わっていたら、あの痛みに耐えていた自分はなんなんだろうと自暴自棄になるところだ!

( ;^ω^)「ゲホッ・・ゲホッ・・・」

男が咳き込みながら近づいてくる。

( ;^ω^)「ここまでやるとはおもってなかったお・・・計算外だ・・」

そういいながら長刀を捨てた。
川 ゚ -゚)「あはは、いいの?武器がなくなってどうやって私と戦うつもり?」
馬鹿にするように、言い放つ
しかし、男はさも当然のように
( ;^ω^)「ん・・・?コレで殺るよ」

右腕を出した。

川 ゚ -゚)「あは、あはは・・・」
何かのギャグだと想い。笑いだそうとしたとき、出された右腕が音を立てながら変化を始める。

ビキビキビキビキ

まるで私の、この指のように鋭い爪を持ち。
皮膚と想えるものは、硬い鱗のようなものに覆われる。
所々は尖り、禍々しい



81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:25:13.32 ID:2xRbCs6d0
  
川 ゚ -゚)「ふふ、なにそれ」

直感で感じ取る。これが、手足を屠ってきた力なのだと。

( #^ω^)「さて、お返ししないとな・・・」

そういいながら一歩一歩歩み寄ってくる男
あれは、極力私の力に似たもの。あれはヤバイ
触ることすら危ないような気がする。

しかし、一見しても右腕だけ。
右腕にさえ気をつければ、私に勝機がある。

しかも、人とは違うもの、血液を吸えば、強大な力が蓄えれるだろう
川 ゚ -゚)「あはは、ふふふふふ、いいね、それ。あなた私と同属だったんだ・・・」

ビキビキと手に力を込める。色は変わらないが、コンクリートでさえ引き裂けるナイフのようなものになる。
お互いが一定の距離を保ち戦闘態勢を取る。



82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:26:06.58 ID:2xRbCs6d0
  

動きは男からあった。

通常よりは早い動きで懐に入り込もうとする。
しかし、今の私には止まっているようにしか見えない。

男が右腕を振るまえに、自分の腕を振る。
それは、男に当ることなく、空を切る。

寸前のところで止まり、それを交わした男は、私が腕を振り切った直後のスキをねらい、右腕を再度繰り出す。

体勢が崩れているが関係ない。私はそれを跳ぶことにより回避する。
後ろに大きく跳び、一回転し、着地する。
それと同時に、男にむかって飛ぶ。
力は分からないが、今のやりとりでスピードだけは私の方が勝っている。
男の寸前まで飛ぶと、そのまま空中で方向を転換する。
それを予測してなかった男は、そのまま誰も居ない空間に右腕を振るう。
ブンッと鈍い音が響いた後。私は好きだらけの右の腹に蹴りを食らわせる。


ドンッ と鈍い音が響きながら、男が飛んでいく。
立ち直るスキなぞは与えない。

一瞬にして再び、男に詰め寄る。
体勢を崩し吹き飛んでる男はナスすべも無く。
私が振り下ろした腕により、起動を横から下へと変えられる

ドゴッ と鈍い音と共に、男はコンクリートの地面へと激突をした。



83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:26:57.25 ID:2xRbCs6d0
  
タンッ、起き上がりに攻撃されないことも無い。
私は用心のために、少し間合いを取る。

どうやらそれは正解のようだった。

ムクッと男は立ち上がったのだ。

私の全力の攻撃を受けても、平然のように。

川 ゚ -゚)「ふふ、体だけはタフみたいね」
本当は、ボロボロなのを知っている。口からは衝撃により内臓が傷ついたのだろう、血をたらしている。
体のあっちこっちにも擦り傷などの傷を負っている。

皮肉めいた私の声に男は反応をする
( ;^ω^)「っち、予想以上に血を吸ってるお・・・」

パンパンと服についたほこりを払いながら男がそういう。
川 ゚ -゚)「ふふ、残念ね、退治屋さん。あなたのその力は私が貰い受けるわ」
そういいながら再びにじりよろうとする。

しかし、なぜか体は動かなかった。



84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:28:09.32 ID:2xRbCs6d0
  
蛇ににらまれた蛙とでもいうのだろうか。
先ほどの一戦で、力の差は証明したはず。
なのに、なぜ私が、弱者に回っているのだろう。
男からは、言い知れぬ強大な何かが発せられている。
それにあてられたのだろうか
体のどこを見回しても、動く個所は見つかろうとはしない。

(#^ω^)「さて、そろそろ終わりだ。一瞬にしてカタをつけようか」

そういうと、男の両足、左腕が右腕と同じように変化を始める。
小さい靴は破られ、ズボンも裂ける

両手、両足。たったそれだけが変わっただけなのに、私は感じてしまった。
力の差を。
勝てない。

そう考えていた、たった数秒のそれだけの時間

私の視界は、グルンと180度回転したかとおもうと宙をさまよっていた。

クルンクルンクルン

宙を回っている私の視界。

あれ、あそこに見えるのは・・・私の体・・・
首がない・・・

(#^ω^)「これで終わりだ」

その一言で私の思考は止まった。



85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:29:22.13 ID:2xRbCs6d0
  


グシャッ。

頭をつぶれる音がする。

それと同時に、胴体が重力に従い、倒れる。

( ;^ω^)「ちっくしょ・・・」

力の解放を止めると共に、激痛が体中に走る。
アバラが何本か逝ってるようだ。

予想外の強さ。極力力の解放を防げたのは幸運だった。
反動もこれなら少なそうだ。

ボロボロになった服を見ながら、姿を見られるのはまずいなーと考えていた矢先。雨が降り出した。

すべてが終わった。犠牲になった人々の感謝の涙のように
その雨は一瞬にして土砂降りになった。

これで血も流れる。
後は体だけを処分すれば・・・
そう想い、倒れた女を見たとき、すでにその体は塵と化していた。

( ;^ω^)「ふん、吸血鬼にふさわしい結末だお・・・」

形を残さない。伝説の生き物は死してなおその事実を隠すということか・・

俺は痛む腕と腹をかばいながら、その雨の中。現場を後にするのだった・・・



86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:29:51.04 ID:2xRbCs6d0
  
第9夜 終



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