( ^ω^)が退魔屋になったようです

114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:06:11.68 ID:2xRbCs6d0
  
「ブーン・・・・・」

暗闇から響いた声は俺の名前を呼んだ。
俺の体が今度はビクッと震える

ザッ・・・・・ザッ・・・と不規則な足取りで暗闇から一歩一歩出てくる。

月が降り注いでいる、この禍禍しい明かりが、割れた窓から倉庫の中へと降り注ぐ。
まるでスポットライトのように所々を照らしている。

丁度、そのスポットライトに入るような形で、目の前の吸血鬼は姿を表した。

見たくは無かった。信じたくは無かった。名前を呼ばれたときに
まさかとは思ったが




出てきたのは ツン  ・・・だった。

第11夜-2



115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:08:16.81 ID:2xRbCs6d0
  
目の前に出てきたツンの姿は普段着であろう、露出度が少なめの白いワンピースだと思われるものを着ていた。
すでに紅くそまりあがったソレは元の色が白色だと思わせるのさえ難しい。

後頭部で結ばれた髪が風も無いのにゆらゆら揺れている。
揺れているのはツンの体なのだろうか。
ξ゚听)ξ「ブーン・・・私・・・私・・・」
目の前の光景が理解できずにいる。なぜツンがここにいるんだろう。

なぜ、ツンから例の気配がするんだろう。なぜツンは真っ赤になってるんだろう
すべてが俺の思考をショートさせる。
ξ゚听)ξ「あ、熱いの、体が、喉が渇くの・・・いくらお水飲んでもこの渇きは満たされなくって・・・それで・・・ア・・・ァ・・」

苦しそうに胸に手をもってきて胸を押さえつけている。
( ^ω^)「ツン・・・」

俺が一歩近づこうとすると
ξ゚听)ξ「こないで!」

絶叫にも似た叫び声がこだまする。
俺は歩みを止めた。

ξ゚听)ξ「ねぇ・・ブーン、私どうなったんだろう・・・苦しいの。
      今も、頭の中で、声が響いてる。
      渇く 渇く 渇く 渇く ってずっと」

悲痛の表情で訴えかけてくるツン。まだ自分が吸血鬼になってるのを知らない様子だった。

ξ゚听)ξ「ね・・・助けて・・・ブーン・・・お願い・・・
      私どうすればいいの・・?」



116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:09:54.13 ID:2xRbCs6d0
  
まるで泣いてるように顔を俯け、手で覆ってるツン。
信じたくない、その気持だけでいっぱいだった。
心の中がミキサーでぐちゃぐちゃにかき回されたように思考がまとまらない。

しかし、なぜだろうか。目の前の ツンを見ていて、妙ニ高揚シテイルコノ気持ハ。

目の前がチカチカ点滅する。
ツンが苦しそうに胸を抑えてる姿がコマ送りのような感覚で映像として入ってくる。
その姿は泣いているようではなく、泣いている。
自分が何をしたか、理解したくないのに、この紅い空間がソレを事実だと肯定してる。そんな状況に耐えれないのだろう。
ツンは泣いている

ほら、彼女が泣いている。そっと抱きしめなきゃ
  【近クニ寄ッテ モットソバニ、手ガ届ク場所マデ】
苦しそうにしてる、ほら、助けなきゃ
  【苦シマナイヨウニ、ホラ、楽ニ】
いつのまにかツンは自分から俺に寄りかかるように、泣きついていた。
胸で泣きながら何か言ってる

ξ゚听)ξ「グスッ、ねぇ、ブーン、私どうなってるんだろう・・病気なのかな・・・だって、血が飲みたいって思ってる・・・」
掠れながら発するその声は、俺の耳に入ってくる。
だがそれは、時計の秒針の音や車の音、日常生活において、気にとめない音と一緒。雑音として俺の耳に入ってくるだけだった
理解なんてしていない

ほら、よりかかってきたんだから抱きしめないと
  【細イ、ソノ首ニ手ヲカケテ】
それで、そうだ頭を撫でてやろう。女性が喜ぶって書いてた
  【一瞬デ終ワルヨウニ、チカラヲコメテ】
そんな風に思っているのに、俺の体はまるで金縛りにあったように動かない。指さえも。



117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:10:49.65 ID:2xRbCs6d0
  
ξ゚听)ξ「それで、、私、気がついたらここにいたの。それで、それで・・・・目の前には血まみれの人がいて・・私・・・血を吸ってた!飲んでたの!」
悲痛な叫び声。誰かに懺悔するわけでもなく、ただ自分が行った行動を肯定するように、それを認めるように。
それでもそれは雑音としてしか耳にはいってはこなかった。

チカチカチカチカ

映像がコマ送りのように流れる。
視界が赤い。真っ赤だ。
頭には何か悪いものが入り込んだようにズキンズキンんと痛みを響かせている。
もう、考えることすら出来なくなっている。
ああ、何でこんなにも高揚してるんだ。
ああ、何でこんなにも興奮してるんだ。
ああ、俺はいったいどうしたんだ。

ドクンドクンと鼓動が高まる。
自分の体であり、それは自分のではないように。意思とは関係なく体が反応を続ける。
なにが、なんだかわからない
  【コレガ、オマエノ仕事ダロ】
一体おれはどうすればいいんだ・・・
  【モウ、否定スルナ、仕事ヲスルダケダ】



118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:11:40.49 ID:2xRbCs6d0
  

ξ゚听)ξ「私、いまだって、、飲みたい、、って思ってる、ブーンの、血を、飲みたいって・・・」
語尾がだんだんと弱くなる。
まるで一昨日のはにかんだ表情を浮かべていた時のように。
【サァ、ヤル事ハヒトツダケ】
   うるさい、うるさい、うるさい
【モウ、判ッテイルダロウ?一度吸血鬼化シタラ・・】
   黙れ、黙れ、黙れ

一度、グスッと大きく鼻を鳴らすとツンは俺の胸から顔を離した。
そして、グッと潤んだ瞳で俺を見つめる。

もう限界だった。思考がうまく回らない。
チカチカと点滅していた光は チカッ・・・・・チカッと脳に映像を映し出す機会の方が少なくなっている。何も見えない何もわからない。
ただ、あるのは欲望 それだけだった



119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:12:29.76 ID:2xRbCs6d0
  
ξ゚听)ξ「私ね、ブーンのことが・・・・す・・・」

ドスッ

何度もきいた効果音が耳に入る

ツンはソノ後の言葉を言うことは無かった。
力が抜けたように俺に体を預ける。しかし俺はそれを受け止める事はしない。
ズルッという音とともに腕を引き抜く。
それだけが支えになっていたツンの体は糸の切れた操り人形のように地面へと落ちていった。

ドサッ

俺を見上げている瞳からは、大粒の涙があふれ出ている。
ξ゚听)ξ「カッ・・・・アァ・・・・ァ・・・なん・・・で」
批難にもにた言葉。

ドロリと、穴があいた腹からは血の雫が絶え間なく流れ出る。
さすが吸血鬼化してるだけはある。腹をえぐったというのに、まだ生き延びれるようだ。



120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:13:19.50 ID:2xRbCs6d0
  
俺は馬乗りになる形でツンにまたがる
虚ろになりゆくソノ瞳からは恐怖の色が淡く発せられている。
細いその首に手をかけるとゆっくりと力を込めていく。
ツーッとツンの口から紅い液体がこぼれる。

ξ゚听)ξ「ガッ・・・ァ・・・・」

息を止められ、体が無意識のうちに空気を求めるように呼吸をしようとする。しかしそれは俺の手によって阻止されている。
俺の手には抵抗しようとしているのか、ツンの両手が添えられていた。
虚ろになった瞳から、その灯りが消えようとした最期の瞬間。

ツンは 笑った。

屋上で見せた、あの最高の笑顔で。


パタン

と事切れた体は重力に反することなく、腕を地面へと投げ出した。
もう動かない。ソノ体は、さも幸せそうに笑顔を保ったままだった。

【第11夜-2 終】



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