( ^ω^)が退魔屋になったようです
- 121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:15:31.60 ID:2xRbCs6d0
- なくしたものは大きなものかもしれないけど
あなたはまだ生きている。
探すことも出来るし、償えることもできる。
これから大切なのはこのあとの行動
光の無い世界でこのままふさがっておく?
音の無い世界で眠りつづけておく?
何も無い世界ですべてを忘れる?
いいえ、あなたはもう判ってる。
だって、もう歩みだし始めたのだから。
【第12夜】
- 122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:16:28.61 ID:2xRbCs6d0
- 意識が再び俺に戻ってきたときに最初に目に入ったのは
ツンの笑顔だった。
馬乗りの形でツンにまたがり、その腕はツンの細い首へと続いてる。
意識がまだ朦朧としてる。
しかし、急激に覚醒していく意識は今の俺の状態を嫌でも認識させることとなる。
まるで何か電気ショックが走ったかのように ビクッと体を震わせ
ツンの上から飛び去る。
ツンが横たわってるその場所は、真っ赤な水溜りが出来ていた。
腹にはえぐるような酷い傷。顔からは生気を感じられず、血の気も引いてるようだ。
「あ・・?え・・・?俺なに・・を」
考え込むように腕を上げ顔を抑える。
ニュチャという粘着質の音が鳴る。
- 123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:16:46.41 ID:2xRbCs6d0
- なんだと思い手を離すと、右腕はきれいに真っ赤に染まりあがっていた。
それだけで理解する。むしろ光景がフラッシュバックする。
見たくも無い映像。それでも、それは俺の記憶として残り、それが現実だと俺につきつけてくる。
「あ、あ、ああ、あ」
声にならない声。ドサッと俺は両膝を地面につくと
そのまま泣き叫ぶように地面にと頭をつけて泣いた。
「ああああああああああああああああああああああああああ」
叫び声のような泣き声、後悔の声。それはダレに届くわけもなく、倉庫内に響き渡り、そして自らの耳へと戻ってくる。
まるで、一人で歌う歌のように・・・・
◆
- 124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:17:08.07 ID:2xRbCs6d0
- 数時間前から訪れたこの妙な違和感。
すべてが泥沼にはまったかのようなべっとりとまとわりつくこの空気。
これと同じ雰囲気を体験をしたことがある。
そう、あの夜と同じ雰囲気。
ズシリとしばらく握っていなかった獲物は重みを感じさせる。
もし、アレが再びコノ街にきているのなら
今度こそ決着をつけようじゃないか。
仇でもある、あの少女と。
◆
- 125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:17:32.83 ID:2xRbCs6d0
- 気分は最悪だった。
コノ腕には、つい先ほどまで生きていたクラスメート。
予想以上に軽かったその体からはすでに熱は失われていた。
放心してるように、一歩一歩 歩いていく。
殺した、俺が、殺した、
最期の最期にツンは笑った。自分を殺そうとしてる相手に向かって
ニッコリと、最高の笑顔で・・
俺は腕の力を緩めなかった。それでも、狂ったように昂ぶって、
首をしめ・・つづ・・・
再び目からは涙があふれ出る。
十分に流したはずのソレがまだ出ることに自分でも驚いた。
このまま大通りに出るのはまずいか・・・
そんなことを考えながら、俺はツンだったものを抱きながら夜の町を翔けていった。
- 126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:18:10.39 ID:2xRbCs6d0
- 自宅につくと、この時間なのに爺がいなかった。
せめてもの救いだったかもしれない。何があったのか
そんなこと爺は聞かないだろうが、聞いてきた時俺はなんて答えればいいんだろう。
自宅の今にあるソファーにツンの体を横たえる。
血はすでに出なくなっており、それはどこからどうみてもすでに死体だった。
ツンの体から流れ出た血はすべて俺の服へとまとわり着いている。
見るだけで吐き気がしてきた。
俺は、いつもの衣装に着替える。
まだ、終わってない。そう、まだ。
別の吸血鬼だろうか。
一瞬、あの路地裏の少女が脳裏によぎる。
そんなことはしないだろうと、不思議と思っていたが
もし、アレがツンをあんなふうにしのなら
ギュッ と目いっぱい拳を握る。
塵すら残さず消してやる。
- 127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:20:39.48 ID:2xRbCs6d0
- そうして、街に出ようとしたときだった。
携帯が鳴る。
モナーからだ。
( ´∀`)「もう・・・いいのか?」
電話を取ると第一声はそれだった。
恐らくモナーは何があったかしらない。故にこのいいのか?は吸血鬼を退治したのか?ってことだ。
ズキリと頭が痛む。
( ^ω^)「ああ、もういいお…」
( ´∀`)「そうか・・で、それでも収まらないのは原因ではなかったのか・・」
( ^ω^)「あぁ・・・・・・・獲物は死徒の死徒だったお」
自分で発した言葉、獲物。それはツンのことをさす。
やるせない気持が体中を支配する。
- 128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:21:18.12 ID:2xRbCs6d0
- そんな俺の胸中を察してか否か、モナーは話を続ける
( ´∀`)「それで、一つ、吸血鬼について調べていたんだが、新しいことが判明したんだ」
( ^ω^)「新しいこと・・・?」
( ´∀`)「ああ、吸血鬼には特殊な力が携わる場合が多いらしい。
真祖はすべての始まりの吸血鬼だから、初めからいくつもの特殊な力を持っているそうだが、
死徒でもその特殊な力を身につける例があるらしい」
( ^ω^)「・・・ということはだお?」
( ´∀`)「ん、恐らくとしかいえないが、もし仮に、オマエが叩いたという吸血鬼の本体、あれが偽者だったとしたら・・?」
( ^ω^)「本物はまだ生きてるってことだお・・・」
( ´∀`)「そういうことになる。どうもこの満月が嫌な予感を掻き立ててたまらない・・」
(#^ω^)「・・・大丈夫だお、必ず蹴りはつける。コノ手でお!」
それだけ言うと俺は電話を切る。
おかしな感情かもしれない、自分が殺しておいたツンを、吸血鬼にした奴が今、
本当に憎い。自分で殺しておいたのに、もし、吸血鬼にさえなってなかったら、そんな考えが浮かぶ。
(#^ω^)「・・・・・・・覚悟しるお、くそ吸血鬼が」
そう、ごちると夜の街へと走るのであった。
◆
- 129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:22:28.74 ID:2xRbCs6d0
/ ,' 3 「セイィィァァ!」
グルグルと手に持つ獲物が回る。
遠心力がついたその獲物は吸い込まれるように、敵のあごへと入る。
ドシャッ
いくら相手の体が幼いとはいえ、浮かび上がるほどの威力。
空中へと浮かび上がったその獲物の後を続き自分も飛ぶ。
体勢がろくに整ってない相手には次の攻撃はよけれない。
カシンッと、柄の位置で獲物を固定すると。そのまま突き出すように叩きつける。
トンファー。棒状の武器。
連激にはむかないが、一つ一つの攻撃力なら、そう劣ってない武器。
それが容赦なく、小さい体へと叩き込まれる。
ドサッッッ
めり込むように、コンクリートへと沈んだ少女の体は勢いのまま
コンクリートをえぐるように滑っていった。
- 130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:23:35.66 ID:2xRbCs6d0
- 普通なら即死の攻撃。
しかし、その少女は何も無かったように立ち上がると楽しそうに笑うのであった。
(*゚ー゚) 「あはは、お爺さんお強いのね。」
パンパンと服についた埃を叩きながらそういう。
お爺さんと呼ばれた男はギリッと歯をかみ締める。
/ ,' 3 「ショボとつーさんの仇、取らせてもらおう」
再び構える。トンファーは肉弾戦専用の武器。格闘を得意とする自分にとってはうってつけの武器だ。
(*゚ー゚)「あはは、いいよ、わかった。そこまで言うなら少し遊んであげるよ」
そういう少女の影がズヌリと大きくなる錯覚に陥る。
/ ,' 3 「気で負けたら、負け・・」
常日頃から、言い聞かせてる言葉。
ギリッと眼光を鋭くにらみつけると再び地を蹴り、少女へと突撃していくのであった。
第12夜 終
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