( ^ω^)が退魔屋になったようです

106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:54:46.40 ID:2xRbCs6d0
  
駅前は人通りが多かった。

休日だからだろうか。私服の人々が楽しそうに行き来している。
カップルの数も目立つ。
幸せそうな土曜の夕方。

そんな人々が行き来する中俺もその場所にいた。

時刻は六時半。思っていた以上に早く待ち合わせ場所に着いてしまった。

おかしいなと自分でも苦笑しつつも、自分の格好を見るとさらに苦笑いが溢れる。

普段着の中でも見繕い、それなりにおしゃれをしたつもりの格好。

普段の俺からは考えられない行動だ。
( ;^ω^)「どうしたんだお、一体・・」

薄暗くなり始めた空には、丸い丸いきれいな月が浮かんでいた。



【第11夜-1 】



107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:56:24.67 ID:2xRbCs6d0
  
時計は8時を指していた。
俺は駅の入り口にある階段に腰をおろしていた。
( ;^ω^)「ったく、遅いお・・」
駅に設置されていた自動販売機で購入した缶コーヒーを片手に
ツンが来るのを待っていた。
普段は人を待つ機会なんてない。あったとしても1時間は待たないだろう。
何で俺は待っているのだろうか・・・
自分に問い掛けてみるが、彼女の言った
ξ゚听)ξ「お稽古があるの・・」
( ;^ω^)「きっと、長引いてるんだろお」
そう一人で納得し、彼女が来るのを待つ。
似た後姿を見れば、ツンか・・!と勘違いをする程。
俺は、待ち焦がれていた。
( ;^ω^)「ったく、なんなんだお。本当に」
一人苦笑する。

そんな調子で、一時間ほど待ったが
ツンは来る気配を見せなかった。
午後9時。
学生やカップルの数が少なくなっていき、駅が吐き出す人の数もまばらになってくる。
俺は二本目の缶コーヒーを手に、いまだツンを待ちつづけていた。
しかしながら、心のどこかで不安が募っていく。
もしかして、馬鹿にされてるんだろうか。
ツンならありえる。あの恥じらいの態度も、俺をだますためだったのだろうか・・
しかし、どうしても心の奥でそんなことは無いと思ってしまう自分がいた。
もしかして忘れてる・・・
そんな考えも浮かんだが、昨日のあの電話からすれば、俺が忘れることはあっても、ツンは忘れないだろう。
( ;^ω^)「ふーむ。どうしたものだお」
俺はすっかり闇に染まった空を見ながらそうつぶやいた。




108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:57:27.14 ID:2xRbCs6d0
  


さらにもう1時間待った。
時刻は10時。すでに人もまばらだった。
先ほどまで、人で賑わっていた駅前の広場も、今では数人のタクシーの運転手がたむろしているぐらいで、一般人はほとんど見受けられない。

( ;^ω^)「ったく、なんだったんだろうお」

空になった缶を持ち、備え付けてあるゴミ箱に放り込む。
( ;^ω^)「さて、帰るお・・・」

長い時間一人であれこれ思考するうちに、俺の結論は

ツンにだまされた

これに至った。
(#^ω^)「月曜が楽しみだお」
この夜空の下3時間近く待たせたことを後悔させてやる。
そんな復讐心を抱いているときだった。



109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 01:58:29.09 ID:2xRbCs6d0
  
その違和感は急に襲ってきた。
先ほどまで淡い優しい光を放っていた満月の光が禍禍しく感じる。空気全体が泥沼のように、ドロドロとしている気がする。
( ;^ω^)「なんだお・・これ」

すぐさまその原因を探すが、近くには居ない
(#^ω^)「ったく、次から次へと・・・」
感じたことの無い雰囲気。
それは、無視できるほどの雰囲気ではなく、何か悪いことが起きる。
そんなことを連想させる雰囲気だった。
(#^ω^)「くそが!ツンにだまされた分の鬱憤を晴らしてやるおっ!」

俺はそういうと、そのままその原因を探すため、走り出した。






とりあえず、いつもの場所、ビルの屋上に上ってみたがコレといって変化は見受けられない。
人々も変わりなく生活を続けている。
狂った世界。それが見下ろしている繁華街には蔓延している。



110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:00:38.35 ID:2xRbCs6d0
  
しかし、確実に月の光は鈍くなっている。
安心できる光だったそれは見るだけで不安を掻き立てる。
( ;^ω^)「なんなんだお・・・いったい…」

俺はこの場所には原因が無いと悟ると続けて次の場所の散策へと翔ける。
その途中、携帯が鳴り響いた。
一瞬ツンからか!と思ったのだが電話の相手はモナーだった。

(#^ω^)「なんだお・・」

ぶっきらぼうに電話に出る。しかしモナーはそれにかまっている暇はないのか早々に

( ´∀`)「おい、ブーン!この気配はなんだ!」

こう、切り出してきた。

(#^ω^)「わかんないお。今俺も原因を探してるお。俺だけじゃないってことは、これは勘違いじゃないんだお?」

( ´∀`)「あたりまえだ、こんな胸糞悪くなる気配感じない方がおかしい。
      それで、そういえば吸血鬼はどうなったんだ?」

(#^ω^)「ああ、それは本体をたたいたお。だから別のものだと思うお・・」

( ´∀`)「そうか、しかし・・・確実に本体をたたいたと言えるか?」

(#^ω^)「どういう・・・」

俺がモナーの言葉の意味を聞こうとしたとき、一つの気配を感じた。



111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:01:33.80 ID:2xRbCs6d0
  
それは人の気配ではなく、今までよく感じていた 吸血鬼の気配。

(#^ω^)「モナー、連絡はまただお、吸血鬼を見つけた。これが原因かもしれんお!」
( ´∀`)「おい、ブーン!いいか!・・・・」

モナーがなにやら言おうとしてるが俺としては、この狂った世界の原因を探す方が先だった。
ブチッ。一方的に電話を切ると、携帯から響いてたモナーの声は途絶えた。

(#^ω^)「殺りのこした奴かお…?」

俺は一人そうつぶやくと、気配の後を追っていった。





112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:02:28.77 ID:2xRbCs6d0
  
気配の元は一つの倉庫へと続いていた。
すでに廃棄されているのか、所々朽ち果てている倉庫。
(#^ω^)「奴らにとっては絶好の隠れ蓑ってわけだお・・」
俺はその倉庫に一歩一歩近づくにつれ
ある匂いを感じていた。

そう、ここ最近かぎすぎている。血の匂い。
倉庫が建ってる敷地内に足を踏み入れた瞬間それは一気に濃くなった。

気分が悪くなる・・・
ゆっくりと足音を立てずに。倉庫へと入っていく。

倉庫の中は、破棄されたと思われる重機が置かれていた。
俺にとってはいい隠れ蓑だ。
気配を消し、慎重に慎重に一歩一歩 倉庫の中央へとよっていく。

鼓動は高まり、すでに体は戦闘体勢を保っている。
ああ、俺はそれほど苛ついていたんだな
そう、冷静な部分の俺が理解をしてしまうほど。何時の俺からは考えられないぐらいの高まりようだった。
あせる気持を抑えつつ。俺は重機に隠れながら倉庫の中央部分までくることができた。



113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/21(水) 02:03:56.15 ID:2xRbCs6d0
  
ゆっくりと顔を出し。姿を確認しようとする。
しかし、倉庫には割れた窓から降り注ぐ月明かりしか明かりが無い。
確実に、人が立っているのは見える。
気のせいであってほしいが、そこは真っ赤に塗りたくられている。

まだ、距離は遠い。どうしようか・・・俺は悩んだ。

しかし結論はすぐにでた。気配から感じられる敵の力は弱々しい。
真正面から挑んでいってもまける事は無いだろう。

そう答えを出した俺は、隠れるのを止め。
ザッ と足音を鳴らしながら 姿を出した。

一歩一歩、人影に近づいていく。
その吸血鬼は、本当に一番明かりが届かない場所に立っているらしく。ちょっと近づいただけではその姿を確認することができない。
すでにもう、俺の足音に気づいているだろう。
それでも吸血鬼は動こうとはしなかった。

信じられないが放心している。そんな風に思えた。
そして、一瞬にして踏み込める位置まで来ると俺は足を止め、吸血鬼に声をかけた。
(#^ω^)「・・・おい、姿を見せるお!」

異様な雰囲気に包まれているこの静寂の世界に、俺の声は鈍く響きわたる。

目の前のソレは俺の声にビクッと身を震わせた。
足音では反応すらなかったのに。

そして、俺はその吸血鬼を最悪の形で目撃することとなる。
第11夜-1 終



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