ガンパレードブーン


  
248:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/11/23(水) 15:47:58 ID:ReJ6ipAh0
  
( ´_ゝ`)「ちっ!きたかぜゾンビまで出てきやがった!」
('A`)「さすがにヘリは指揮車の機銃じゃおとせねぇぞ!」
男「次の交差点を左に曲がって」
( ´_ゝ`)「!?近距離通信?・・・なんか知らんが承知しやしたよ!」

減速せずに交差点に突っ込む。曲がる途中交差点にとめてあった車にぶつかったが、そんな事気にしていられない。
曲がった先には背中に大きなコンテナを担いだ士魂号複座型が居た。

女「ミサイルを発射する!衝撃に備えるが良い!」

言うや否や、士魂号複座型の背中のコンテナが展開、おびただしい数のマイクロミサイルが射出される。
全方位に放たれたそのミサイルは、指揮車を追っていた士魂ゾンビとその他の幻獣、範囲内の全てのものを破壊した。

('A`)「ヒュゥ♪デンドロビウムみてーだ」
( ´_ゝ`)「なんですかそりゃ?」
FOX「助かった。先行部隊だな?こちらはVIP小隊指令のFOXだ。貴君の援護に感謝する」
女「芝村に感謝は不要だ。急ぎ後退するが良い」
男「気をつけてください、まだ敵はいますから」

返事を返す間にも、その複座型は92mmライフルを撃つ。
狙いをつけているのか怪しい流れるような動作だったが、その弾は正確に敵に着弾した。

('A`):(・・・青と姫君、か。このループでは既にアルカナを受賞したんだったな・・・中々いい腕だ)



  
254:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/11/23(水) 16:13:06 ID:ReJ6ipAh0
  
(,,゚Д゚)「荒巻たちが着いたぞ!」
( ^ω^)「荒巻!無事だったかお!」
荒巻「うむ。それにしても内藤、ずいぶん久しぶりにお前を見た気がするぞ」
( ゜∀゜)「内藤!内藤!」

再会を喜ぶスカウトチーム。
内藤は早々に戦線を離脱したことを詫びた。

荒巻「何、気にするな。それで、内藤。ツンはどうだ・・・?」
(;^ω^)「応急処置は完了したお・・・先行部隊も到着したから病院に搬送する準備をしている所だお」
(;゜∀゜)「ツン!血の気が!」
(;^ω^)「失血が激しいお。整備車に積んである輸血パックもたりないお・・・もしかしたらもう目を・・・」
荒巻「内藤。大丈夫だ、きっとツンは目を覚ます。おまえが信じなくてどうする」
(;^ω^)「そ、そうだお。弱気になってたお。すまないお、荒巻」

( ・(エ)・)「指揮車から連絡。ドクオとショボンを救助したクマ。ドクオは無傷、ショボンは重体クマ。ショボンがかなり危ない状態らしいクマ、応急処置の準備頼むクマ!」



  
256:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/11/23(水) 16:27:46 ID:ReJ6ipAh0
  
(;^ω^)「ショボン!ひ、ひどい・・・お」
整備員A「ショボンさんっ!!??」
(;,,゚Д゚)「腕が・・・足もひでぇな。資材、たりるか?」
(*゚ー゚)「間に合わせるしかないでしょう。失血はそれほど多くないわ。それより火傷ね、処置急ぐわよ!ほら、そこ!さっさと動く!」
整備員A「ぇ?あ、は、はい!」

( ^ω^)「?・・・ドクオ?」

FOXは5121小隊の指令と通信をしている。フーンも一緒だ。
整備班はショボンの応急処置に総掛かりで、ツンの搬送車へ移す作業はスカウトチームが行った。
応急処置、搬送が終わり、次の作業にとりかかる。
残った資材を集め確認し、整備車にのせる。
次に、スカウトチームのウォードレスの装着解除。応急整備。
全ての作業が終わり、整備車前で集合し点呼を取る。

FOX「・・・ドクオと内藤はどこにいった?」

ドクオと内藤は、そこにいなかった。



  
257:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/11/23(水) 16:36:49 ID:ReJ6ipAh0
  
ドクオは熊本城戦域のすぐ近くにある廃棄倉庫にいた。
鍵をあけ、中にはいる。
中には騎士がいた。西洋の甲冑に身を包み、剣鈴を携えた孤独な騎士が。

('A`)「アイツの代役か・・・めんどくせぇ・・・」

コクピットをあけ、騎士に乗り込む。
両手をソケットにいれ機体と神経を接続。だが、騎士は普通の士魂号とは違っていた。

('A`):(・・・意思がある、だと!?・・・聞こえるか重装型。お前は誰だ?)
(*‘ω‘ *):(私はちんぽっぽ。君は私の相棒ではないな。何用だ)
('A`):(俺はそいつの代役だ。今回のループは何か違う。熊本城で姫君を死なせる訳にはいかない、だとさ)
(*‘ω‘ *):(・・・そうか。キミがドクオか。わかった手を貸そう。私を使い幻獣を屠るが良い)

('A`)「あぁ・・・久々の舞踏だ。めんどくせぇがな。じゃ行くか」

( ^ω^)「どこに行くんだお?」



  
265:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/11/23(水) 16:58:37 ID:ReJ6ipAh0
  
('A` )「・・・内藤」
( ^ω^)「ドクオがこっそり抜け出すからつけてきたお。そのカッコイイ機体は何だお?それで何をする気だお?」
('A`)「・・・すまんが黙って行かせてくれねぇか。ただのヤボ用だからよ」
( ^ω^)「そんなものを使うヤボ用なら俺も行くお。秘密はなしだお」

(*‘ω‘ *)「・・・話してやれば良いじゃないか」

重装型の外部スピーカーから、ドクオのものではない合成音声が聞こえる。
誰だと問う内藤に、その声は目の前に立っているじゃないか、と答えた。

(;^ω^)「・・・?まさか・・・士魂号が喋ってるのかお!?」
('A`)「おいチンポッポ」
(*‘ω‘ *)「味方は大いにこしたことは無いだろう?巻き込みたくないのだろうが、どのみち彼は大人しく帰ってはくれんよ」
('A` )「・・・」
(;^ω^)「どういう事だお?なんで士魂号が、戦車が喋れるお?」
(*‘ω‘ *)「私は特別だという事さ。それより私の足元にウォードレスがある。着いてくるなら早く着けたほうが良い」
('A`)「ハァ・・・知らねぇぞ、俺は・・・」

内藤は急いでウォードレスを装着する。そのウォードレスは見たことのない物だった。
名はアーリィFOX。空を駆けるといわれた伝説のウォードレス。



  
351:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 23:09:12 ID:ReJ6ipAh0
  
VIP小隊が内藤、ドクオの捜索を打ち切り、帰還した頃。
すでに熊本城戦域には敵影はなく、全部隊が勝利を確信して帰還していた。

ドクオと内藤は、空にいた。
内藤はドクオについていった先の空港で軍用輸送機に乗せられ、そのまま熊本城上空で待機していた。

(;^ω^)「よくわからないお。特別な士魂号に乗って輸送機を手配して・・・ドクオは何者だお?」
('A`)「俺はただのヒキコモリさ・・・ちょっと戦車の操縦がうまいだけの、な」

(*‘ω‘ *)「そろそろ頃合だな。降下しよう」

頃合?内藤が質問する前に、ドクオの駆る重装型は輸送機から飛び降りる。
内藤も慌てて後に続いた。

(;^ω^):(うぇwwww降下なんてはじめてだおwwwwwテラコワスwwwwwww)

地上にむかって落ちていく。ある程度地上に近づいた時、内藤は見た。
熊本城に光る無数の赤い点を。それらはすべて幻獣だった。幻獣の赤く光る目だった。

(;^ω^):(何で幻獣がいるお?熊本城攻防戦は終わったはずだお?)
( ^ω^):(!誰か・・・戦ってるお!)



  
369:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 23:36:37 ID:ReJ6ipAh0
  
戦っているのは、数時間前、指揮車を救った複座型。
その複座型はたった一機だった。

舞「…正直に言えば、そなたがついて来ないのではないかと、少々恐れていた。そなたの勇気と、馬鹿さ加減を疑った、私を許すが良い。そなたは本当に馬鹿だという事を忘れていた。…済まなかった…」
速水「舞…」
舞「速水…この大馬鹿者が!馬鹿め、馬鹿めっ!…終わったら、殴るなり、何をするなり、好きにせよ。そなたにはその権利がある。」
速水「好きにするって、ああいうのも良いのかな?」
舞「…ちょっと待て…なんだ、その笑いは。馬鹿者!よりにもよって戦闘中に変な事を考えるな!馬鹿! 私を想像に出すなら、私に許可を求めろと言っているだろう!敵が来たぞ! 続きは後だ!」
速水「ハハ、了解!」

複座型はたった一機で、数え切れない幻獣と対峙する。
アサルトライフルでナーガを蜂の巣にし、超硬度大太刀でミノタウルスを真っ二つにする。
煙幕をたきレーザーを無効化し、ミサイルを放つ。

速水『私は今一人じゃない…』
舞『…いつどこにあろうと 共に歌う仲間が居る』
速水『死すらも越えるマーチを歌おう』
舞『時をも越えるマーチを歌おう』
二人『ガンパレード・マーチ ガンパレード・マーチ…』

歌い踊る複座型は、ただ強かった。



  
374:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 23:54:01 ID:ReJ6ipAh0
  
( ^ω^)「うはwwwwあの士魂号強いおwwwww」

('A`):(・・・たしかに、あれなら生き残る。なぜ俺をよこした?瀬戸口・・・俺に何をさせる気だ?)
(*‘ω‘ *):(当然幻獣の相手だ。アレの相手を出来るものはそうはいない)
('A`):(アレ・・・?なんだ、何が出るんだ?まさかヘカトンケイルとかじゃないよな?)
(*‘ω‘ *):(すぐにわかる。我が相棒は、稀にアレの相手をしていた。敗北したこともある)
('A`):(・・・おい、瀬戸口は俺より強いだろうが。それが負けるってことは今から俺は死ぬってことか?)
(*‘ω‘ *):(だからキミの友人をつれてきた。少しは役に立つのだろう?)
('A`):(規格が違うだろうが、役に立つかよ!ていうか瀬戸口はどうした瀬戸口は!簡単な仕事tか言いやがって!)
(*‘ω‘ *):(我が相棒は腹痛だ。安心しろ、後で援軍がくる)
('A`):(マジかよ・・・援軍が瀬戸口だったら幻獣より瀬戸口を殺るぞ、俺?)

( ^ω^)「ドクオ、そろそろパラシュート開くお」
('A`)「ん、あぁ、そうだな・・・ハァ・・・」
( ^ω^)「?どうしたお?」
('A`)「なんでもねぇ・・・」



  
391:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 00:32:07 ID:MmATjjN60
  
戦場に響く二人の歌声。そして、その声をうけて躍動する士魂号。
その背中から無数のミサイルが飛び出し、周囲を覆う。

舞「・・・背後にミノタウルス、2!近いぞ、速水!」
速水「・・・くっ!?」

腕を振りかぶるミノタウルス。被撃を覚悟し防御体制をとった複座型に、衝撃は訪れなかった。

('A`)「んー、後ろがお留守だぜ?」

ミノタウルスは轟音と共に現れた影に両断される。
土煙がはれた先に居たのは、士魂号重装甲西洋型。
甲冑を身に着け剣鈴を携えたその姿は、御伽噺にでてくる騎士のようだった。

舞「・・・何者だ?そなた」
('A`)「なに、ただの通りすがりさ」
速水「味方なの?」
舞「ならば問題はない。助かった。感謝を」

わずかな会話をかわし、両機ははじかれるように左右に疾駆する。
複座型は戦士だった。今為すべき事をわきまえている。

('A`)「へっ。めんどくさくなくて良いな、こいつらはよ」



  
398:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 00:47:34 ID:MmATjjN60
  
騎士と複座は、呼吸するかの如く幻獣を狩る。
鈴の音と共に剣閃が奔る。
無骨な銃撃音が鳴り響く。
その2つの不協和音はやがて協和となり、ひとつの音楽を聴いているようだった。
それはまるで、オーケストラのように壮大で、美しかった。


(;^ω^)「ちょwwwwパラシュートがはずれないおwwww」



  
402:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 01:03:47 ID:MmATjjN60
  
絢爛舞踏は棄てられる。
世界の意志に抗えず。
世界よりも弱いから。

今までのドクオなら、たかが10や100の幻獣が束になってかかってもたやすく生き残ったろう。
だが、今回のループはやはり何かが違った。
ドクオは自分でも気がつかないほど自然に、絢爛たる舞踏に戻っていた。
きっかけは友を守るため、黒い悪魔と戦ったとき。そして紫の瞳の鬼に代役を頼まれ、引き受けた時。
二度目の舞踏、それは決定的な廃棄対象。それは絶望の中で再び希望を抱いた者への報い。
世界は、排除対象としてドクオを認識した。



  
406:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 01:19:27 ID:MmATjjN60
  
( ^ω^)「ふう。やっとパラシュートはずせたお。俺も活躍するお!」
('A` )「避けろ内藤!!」
( ^ω^)「んぁ?」

間抜けな声を上げた瞬間、内藤に圧倒的な予感が走る。
自分は今、死んだ。そう認識させるほどの、死の予感。
だが、内藤を狙った一撃は、ドクオの剣鈴によって防がれる。

('A`)「おまえは雑魚の相手をしてろ、内藤!こいつの相手は俺がする!」

呆然と見上げた先には、士魂号西洋型。
それが放った一撃を受け止め、内藤を救ったのも、士魂号西洋型。
事態の認識は出来なかったが、内藤は理解した。自分は足手まといで、自分を攻撃した西洋型は敵だと。

(;^ω^)「う、ぁ?・・・うわぁぁぁぁ!!」

逃げる。恐怖から。自分など相手にならない、圧倒的な存在から。
それは豪華絢爛たる死を呼ぶ舞踏。人であって人をやめた、規格外の決戦存在。
その存在を理解し、恐怖のままに逃げる内藤は、ある意味で戦士として正しかった。
ドクオは逃げる内藤を意識の外に押し出し、自分と同じ姿の敵と対峙する。

('A`)「ドッペルゲンガー・・・!そりゃ瀬戸口も負ける訳だ・・・自分が相手だったらな・・・!!」



  
408:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 01:35:26 ID:MmATjjN60
  
('A`)「まったく、一日の内にえらい奴らとやり合う事になっちまったな、めんどくせぇ。厄日だ・・・ぜっ!」

先手は敵がとった。自分と同じ構え、同じ剣速の一撃を、かろうじて防ぐ。
ドクオは軽口を叩くのを止めた。真剣に自分と同じ力を持つ敵に向き合う。
構えは右陽炎から正眼に。
油断せず、最高の一撃を叩き込む。

('A`)「――――っ!!!!!」

声にさえならない程の裂帛の咆哮。
踏み込んだ足は地面を穿ち、打ち込んだ一刀は大気すら断つ。
だがその入神の域にさえ達した斬撃は、ドッペルゲンガーの装甲を切り飛ばすに止まった。

('A`)「っ!!(さすがに厄介だな、自分が相手ってのは・・・!)」

ドッペルゲンガーは咄嗟に反応し、片足をあげ半身をひねってドクオの剣鈴をかわしていた。
その体勢のまま反撃してくる。

('A`)「ちっ!」
('A`):(ちんぽっぽ!!)
(*‘ω‘ *):(ぼいんっ!!)

横なぎの剣閃を跳躍し避ける。空中でバク転し、重心を後ろに引っこ抜く。
跳躍中に重心を強引に移動させ後方に退避、着地する。敵は動いていなかった。



  
411:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 02:01:23 ID:MmATjjN60
  
('A` ):(?なぜ来ない?何か企んでやがるのか?)
(*‘ω‘ *):(学習している。君の動きを。あれは君を写し取った瞬間の君であって、本気を出している今の君ではないからだ)
('A`):(なるほどな・・・学習しきる前に倒せ、って事だな)
(*‘ω‘ *):(そうだ。だが気をつけろ、奴の学習速度はとてつもなく速い)

敵が駆ける。先程よりも、速い。
敵が剣鈴を振るう。先程よりも、速い。

('A`):(これが学習とやらの成果か・・・!)
(*‘ω‘ *):(長引けば不利だぞ)
('A`):(・・・ちんぽっぽ、俺と完全同調しろ)
(*‘ω‘ *):(・・・!!)

完全同調。
大抵の人間は知らされていないが、人型戦車は駆動制御に感情を排除した人間の脳を使っている。
戦車兵は通常、人型戦車を操縦する際にこの脳に自分の神経を接続し、戦車をほぼ思い通りに操作する。
だが、それはあくまで「ほぼ」なのだ。完全同調とは、神経どころか自分の全てを戦車に接続し、戦車を自分の体とする方法。
感情排除をされておらず、自分の意識を保つちんぽっぽに対してそれを命じるという事は、体をよこせと言っているのと同じだった。



  
415:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 02:10:51 ID:MmATjjN60
  
(*‘ω‘ *):(・・・よかろう。今は君が私の相棒だ。命を託すに値する)
('A`):(・・・)
(*‘ω‘ *):(だが良いのか。私の体を使うという事は、ダメージも全て君が請け負うのだぞ)
('A`):(承知の上よ。今やられちまう訳にはいかねぇ)
(*‘ω‘ *):(ならば託そう、私の全てを。確実な返却を期待する)

その言葉を最後に、ちんぽっぽは意識を手放した。
ドクオの意識が広がっていく。
モニター越しではない、自分の目の前に、ドッペルゲンガーの巨躯があった。



  
416:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 02:11:26 ID:MmATjjN60
  
(;^ω^)「ハァ・・・ハァ・・・」

内藤はずいぶん遠くまで来ていた。
逃げる自分を襲うゴブリン供を蹴散らし、安全圏まで逃げてきた。
無様だった。そしてそれより、怖かった。内藤は震えた。

(;^ω^)「あんなの・・・勝てっこないお・・・ドクオ・・・」

なんのためについてきたのか。なんのためのアーリィFOXか。
自問し、だがすべてが恐怖に塗り替えられていく。

「無様なものだな。それでも戦士か?」
(;^ω^)「!!!!」

身構える。だが、声がした方向には誰もいなかった。
あたりを見回す内藤。

「どこを見ている?ここだ」

声は自分の足元から聞こえた。
視線をさげるとそこには、赤い服をきた大きな猫がいた。



  
470:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 13:09:25 ID:MmATjjN60
  
(;^ω^)「猫が・・・喋ってるお?俺はおかしくなったのかお?」

猫は一声ニャアと鳴き、再び言葉を紡ぐ。

「私はブータ。ブータニアス・ヌマ・ブフリコラ」

(;^ω^)「!!(やっぱり喋ってるお!)」
ブータ「人間よ、貴様のその戦装束は何のためにある?その戦装束の力を使おうとは思わないのか?」
(#^ω^)「なっ・・・!偉そうな事を言うなお!俺なんかが役に立つ次元の話ではないお!」
ブータ「ふん。ならば自分の出来る事をすればよかろうが。貴様はまだ生きているのだからな」
(#^ω^)「・・・」
ブータ「その戦装束は大した物だ。そして、貴様の着ているソレはさらに特別な力を秘めている。・・・だがそれも、使い手が貴様のような腑抜けではな・・・」
( ^ω^)「・・・」
ブータ「とるに足らぬ人間よ、貴様には戦う理由はないのか?誰かを守るためには戦っているのではないのか?」
( ^ω^)「・・・!!」
ブータ「そうでなければ貴様はここで傍観する権利すらない。尻尾を丸めて帰るのだな」

それだけ言うと、大きな猫はのそのそと去っていった。
内藤は考える。何のためにここに来たのか。否、なんのために今まで戦ってきたのか。



  
471:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 13:12:24 ID:MmATjjN60
  
( ^ω^)「そうだお・・・ツンを守りたかったんだお・・・」

素直じゃないツン。昔からずっと一緒だったツン。大好きなツン。
自分たちの住んでいる街が戦火に包まれる事になり、ツンは軍に入隊した。
ツンを守るために、自分はツンと同じ部隊に入ったのではなかったか。
今ツンは病院にいる。そして目の前では、たった二機の戦車が幻獣と戦っているのだ。

( ^ω^)「今・・・何とかしないと、ツンが危ないかも知れないんだお。僕はツンを守らないといけないんだお・・・!」

気がつくと内藤は駆け出していた。
速度は上がり、内藤は空を飛んでいるような錯覚に陥る。
アーリィFOX。空を駆けるウォードレス。
その真価が発揮される時がきた。



  
495:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 15:57:34 ID:MmATjjN60
  
( ^ω^)「何故かは・・・わからないけど」
( ^ω^)「今ならわかるお。なんで俺がこのウォードレスを着たのか」
( ^ω^)「今ならわかるお。なんでドクオについてきたか」

アーリィFOXの一つしかないメインカメラが収縮する。
2つはいらない。なぜなら、未来しか見る必要はないからだ。
ウォードレス、アーリィFOXに接続された内藤の感覚。
内藤の脳裏に、文字がタイプされていく。

( ^ω^)「僕は大事な人を守るためにここに居るんだお。大事な人を守るためだけに、世界すら守る者に味方するんだお」

燃えるような黄金色の文字で、内藤の脳裏に一つの言葉が浮かび上がる。

−OVERS−SYSTEM Ver1.00.boon−

…………boot


OK


“その答えは、YESである。”



  
497:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 16:18:55 ID:MmATjjN60
  
とある世界にある、巨大な某インターネット掲示板。
そこでは日々クソスレ、良スレが立てられ続けていた。

その中のとるにたらない一つのスレで、役目を終えた者がいる。
それは一人のようでいて、複数の存在であり、複数の存在でありながら、願うことはただ一つであった。

ID:bOlWHOga0「・・・送信完了、プログラム起動確認」
ID:MmATjjN60「・・・これで、きっとループは終わるだろう。後は彼らが何とかしてくれる」
ID:wkXk483QO「大丈夫だったかな。アイツで」
ID:wkXk483QO「世界はいつもとるに足らない人間が守っているものさ」

一人のようであり、複数の存在であるその者の介入は完了した。
その者が少しばかりの力添えをした男は、きっと役目を果たすだろう。



  
500:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 16:31:13 ID:MmATjjN60
  
背中に装備したリテルゴルロケットに着火する。瞬間的に闇夜を切り裂く、青白い炎。
長く伸びる青い炎をあげて、内藤は飛んだ。

目指すは、熊本城外の小さい丘。

低空を這うように飛び、内藤はその肩に持ってきた40mm機関砲を持った。背面飛行。
スキュラの腹の下をかいくぐり、真下から連続して40mm機関砲弾を打ち上げる。
的確に装甲の隙間を射抜かれ、スキュラが血の詰まった風船のごとく爆発して崩れ落ちる。
血の雨の中を、内藤は飛ぶ。

向かう先では、複座型が片膝をついていた。
片膝をつき、上段から振り下ろされたらしい超硬度大太刀を、超硬度大太刀で受け止めていた。
複座型もまた、自らと同じ姿の敵と戦っていた。
自分と同じ力のドッペルゲンガーと、多数の幻獣。複座型は満身相違だった。

速水「後ろに敵っ!」
舞「くっ・・・!」

背後に現れたキメラの生体レーザーで、肩をつらぬかれる。
複座型の太刀を受ける力が弱まり、ドッペル複座の太刀が押し進められる。
キメラが再びレーザーを放とうとした時、キメラの主眼に着弾した機関砲弾が、キメラの頭を粉々に吹き飛ばした。



  
502:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 16:33:31 ID:MmATjjN60
  
内藤は弾のきれた機関銃をすて、リテルゴルロケットを切り離さずにドッペル複座に突っ込む。

⊂二二二( ^ω^)二⊃「ブーーーーーーーーーーーーン!!!!」

青白い炎をあげ高速でドッペル複座の頭部に突撃。
ドッペル複座の巨躯は、5分の1にも満たないサイズの内藤の体当たりで大きく揺らめく。
複座型にかかっていた剣圧が弱まった。

( ^ω^)「今だお!」
速水「えっ!?」
舞「!立て、速水!!」

剣圧の弱まったドッペル複座の太刀を押しのけ、地面に落としていたアサルトライフルを拾い上げる。
狙いなどつけずに全力射撃。前面装甲を派手に削り取られ、ドッペル複座は仰向けに倒れる。

( ^ω^)「まわりの雑魚は任せるお。すぐ片付けて加勢するお、それまで頑張ってくれお」
速水「ありがとう、助かった。君は・・・」
舞「何者かは知らぬが、感謝を。武運を祈る。我らはヤツをやるぞ、速水!」
速水「そうだね、了解!」



  
503:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 16:38:06 ID:MmATjjN60
  
内藤は音も声もなく、その脚と拳で敵を打ち倒す。
人工筋肉が、内藤本来の筋肉と共にたわみ、ふくらみ、そして一気に伸ばされる。
指先で音速を越える拳が、幻獣の大きな瞳をぐちゃぐちゃにかきまわした。
無表情に拳を抜き、次の目標にむかって歩き出す。その動きは無造作でいて、それでいて敵の死角という死角を、縫うように歩き、決して攻撃をさせなかった。
見上げれば小山のような巨大なミノタウロスに、ただ一人堂々と向かっている。

ミノタウロスの拳を、やすやすと避けて見せる。
内藤は、脚の人工筋肉を一気に膨れ上がらせた。自分の骨がきしむ音がする。
そして、三歩助走をすると跳躍をした。
振り下ろされたミノタウロスの拳に乗り、さらに飛び、ミノタウロスの顔を回し蹴りで叩き潰す。
倒れ伏せるミノタウルス。その上に、青い単眼をもつ戦士が着地する。
アーリィFOXの機動性と内藤の相性は、まるで内藤のために用意されていたかのように最高だった。



  
583:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 23:22:01 ID:MmATjjN60
  
舞「強いな・・・あやつ」
速水「うん。さっきの騎士みたいな士魂号といい、熊本には強い人がたくさんいるんだね」
舞「そして、我らも強い。我ら二人ならやれる。我らならこの偽者を倒すのに1分もかかるまい!」
速水「うん、YES!」

立ち上がってきたドッペル複座に向かって、ヤクザキックを見舞う。
顔面に蹴りを食らいよろめくドッペル複座。間隙なく太刀を振るい、ドッペル複座の腕を切り落とす。
返す刃でドッペル複座の頭部を狙う。が、その一撃はドッペル複座の太刀で防がれる。
始まる鍔迫り合い。複座型は両腕で太刀を握っている。
片手をはなし、振りかぶる。防ぐ手立てのないドッペル複座は、為すすべもなく頭部を倒壊させた。

舞「・・・この通りだ」

太刀に込めた力を抜く。その時、ドッペル複座がわずかに動く。

速水「・・・!?まだだ、舞!まだ動く!」
舞「なにっ!?」
速水「回避っ!間に合え・・・!」



  
590:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 23:38:10 ID:MmATjjN60
  
頭を失ったドッペル複座は、それまでと何ら変わりない動きをした。
鍔迫り合いの状態のまま固まっていた腕に力をこめ、逆袈裟に切り上げてくる。

速水・舞「っ!!!!」

避けきれない。
鋭敏化された知覚のせいか、今まさに自分の命を奪おうとするドッペル複座の太刀はひどく遅く見えた。



  
591:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/24(木) 23:53:00 ID:MmATjjN60
  
速水が身を固め、舞が眼を瞑ったその瞬間。
漆黒の影が横切った。
漆黒の装甲に、青い単眼。空を駆ける伝説の狐。
アーリィFOXに身を包んだ内藤は、信じられないほどの速度で、ドッペル複座の振るう太刀を正確に叩き折った。

舞「!?」
速水「!!いまだ、舞!」
舞「―っ!!」

太刀を振り切った形のドッペル複座に、太刀を振りかぶる。
次の瞬間真っ向に両断されたドッペル複座は、ようやく活動を停止した。

舞「はぁ・・・はぁ・・・」
速水「ふぅ・・・姿は士魂号でも、中身は幻獣・・・か。頭をつぶしたくらいじゃ死なないんだね」
( ^ω^)「危なかったお。大丈夫かお?」
速水「あ、うん。また助けられたね。ありがとう」
舞「他の幻獣は?」
( ^ω^)「全部片付いたお。今のヤツで最後だお」



  
599:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/25(金) 00:11:24 ID:Cjj3V90V0
  
速水「それにしても・・・敵の剣を折るなんて・・・」
舞「大したものだ。賞賛に値する」
( ^ω^)「このウォードレスのおかげだお。それに・・・やらなくてはならなかったからやっただけだお」
舞「・・・そうか。そなたも、芝村なのか?」
( ^ω^)「芝村?俺はただの人間だお。なんの変哲もない一般人だお。・・・それじゃ、俺はもう行くお」
舞「どこへ?」
( ^ω^)「友達を助けにいくお。君達はこないほうが良いお、その士魂号はもうそろそろ限界だお」

内藤のいう通り、複座型は小破状態、肩はレーザーで貫かれ、機体全体に軽微な損傷がある。
それに、人工筋肉も悲鳴をあげていた。
返事を待たずに、内藤は熊本城にむかって歩いていく。

速水「ねぇ!名前を、教えてくれないかな?」
( ^ω^)「・・・ただの通りすがりだお」

そう言って、内藤は跳んだ。
あっという間に夜の闇に消えていく。

速水「通りすがりさん、か・・・。またどこかで会えるかな?」
舞「さぁな。だが、青い一つ目の戦士の伝説は聞いた事がある。あるいはアレは伝説だったのかも知れぬな」
速水「・・・?良くわからないけど、とってもすごい人って事?」
舞「そうは見えなかったが、な。・・・喋り方もおかしかったし」



  
600:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/25(金) 00:25:54 ID:Cjj3V90V0
  
( ^ω^)「ドクオは・・・無事かお?」

内藤は無人の荒野をかける。ドクオと別れた時、ドクオは熊本城外で戦っていた。
だが何故か内藤はドクオが熊本城内にいると感じていた。
熊本城までの道のりに、降下時にみた赤い光点はもう見えなかった。
いや、見えた。
熊本城への直線状、一本の木の上に、その光点はあった。
みがまえる内藤。

( ^ω^)「・・・ドクオ。助けはもうちょっと待ってくれお」

木の上。
漆黒の装甲に、赤い単眼。腕を組み超然とたつその姿は。
自分と同じ、伝説の狐。アーリィFOX。



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