( ^ω^)ブーンがあの事件に挑むようです


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 02:09:20.86 ID:5Xowqc2C0
インターネット巨大匿名掲示板、2チャンネル。
2006年現在、発足当時から比べその知名度は、もはや聞いたことのない者は居ないといっても過言ではないほどになっている。
膨大な過去ログや日々乱立する糞スレ。その中で稀に生まれる良スレ。
まるでこの世界の縮図のように、独自の世界を作り出している2チャンネルに惹かれる者は後を立たない。
2006年3月8日。
日本のある町で、一人の少女が2チャンネルに足を踏み入れた。



7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 02:12:11.32 ID:5Xowqc2C0
ξ゚听)ξ「ねぇ、内藤。私2チャンネルって馬鹿にしてたけど、結構面白いわね」
( ^ω^)「お、本当かお?嬉しいお。ツンも一緒に2chライフを送るおww」
ξ゚听)ξ「そこまではのめりこみたくないけどね・・・内藤ってどこの板見てるのよ?」
( ^ω^)「僕は基本的にVIPにいるお。ツンもどうだお?w」
ξ゚听)ξ「厨房隔離版じゃない。内藤にぴったりね」
(;^ω^)「ちょwwwテラヒドスwwwww」

2chに足を踏み入れた少女の名はツン。
彼女は幼馴染の内藤に誘われ、2chの扉を叩いた。
オカルトやミステリーが大好きなツンは言葉とは逆に、すぐに2chにのめりこんでいった。
801板や恋愛板などをめぐり巡って、やがてツンはオカルト板の住人に納まった。
2chは、とても居心地がよかった。
身近に少ないオカルト好きな人ばかりの板での論議は最高だった。
2週間もすると、ツンは立派な2chネラーとなった。

だが、世界にはかならず暗部というものがある。
世界の縮図ともいえる2chにも、当然のように暗部があった。
それは、あまりにも大きすぎる闇だった。

ξ゚听)ξ「ねぇ内藤、S事件って知ってる?」
(;^ω^)「・・・!?・・・なんだお、それは?」
ξ゚听)ξ「あ、知らないなら良いのよ、別に」



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 02:15:55.41 ID:5Xowqc2C0
そしてある日突然、少女は消えた。
学校にも家にも連絡をいれず、忽然と姿を消したのだ。いつも通りの下校途中に。
知人は皆必死で行方を探したが、とうとう行方はわからなかった。

(;^ω^)「ツン・・・どこにいってしまったお・・・」

内藤はまだツンを探していた。
ツンは何も問題を抱えてはいなかった。家出をするとは考えにくい。
誘拐、だろうか。
だがそれにしては身代金の要求もなく、変質者による誘拐だとしても、何もそれらしい事件は報道されなかった。
下校途中で寄り道をした形跡もなく、事故に遭遇した訳でもないようだ。
手がかりはなかった。
ただ一つの、ほんの小さな心当たり以外には。

(;^ω^)「・・・まさか・・・2chの・・・」

ツンが失踪する数日前、内藤はツンに聞かれたことを思い出す。
S事件。
それは、とても稀有な事件だった。
何故か人を惹きつける現実性をもった、壮大なネタスレ。
2chにそこそこ詳しい者なら、一度は聞いたことがあるだろう。
それはネタだった。何故そう断じられたか。それは、証拠がなかったからである。
証拠がない故に、ネタと判断され廃れていっても、その言葉は魔力じみた魅力をもっていた。
好奇心という名の魅力を。



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 02:25:36.92 ID:5Xowqc2C0
(;^ω^)「そんなはずがないお。あれはネタだお・・・きっとツンはもうすぐ見つかるお」

内藤はすぐにその考えを打ち消した。
ありえなかった。そんな理由で、ツンがいなくなってしまうなど。
きっと、他の理由があるはずだ。
誘拐でも事故でも家出でもない、もっと別の理由が。

だが、頭に芽生えた小さな疑念は晴れず、内藤の心を蝕んだ。
そしてその疑念は、一斉に芽生えることとなる。



16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 02:37:58.16 ID:5Xowqc2C0
ツンが失踪してから1ヶ月がたった。
まだ捜索は続いている。
続いてはいるが、一向に成果はなかった。
警察の懸命な捜索はやがて申し訳程度のものになり、クラスメイトや親戚、知人など、捜索に協力する者も一人、また一人と減っていった。
髪の毛一本すら見つからないツン。下校途中で遠くに行く資金もないのに、いったいどこに行ったというのだろう。

(;^ω^)「・・・もう1ヶ月かお・・・なんで、手がかり一つも見つからないお・・・」

内藤は自宅で椅子に腰掛け、パソコンを立ち上げていた。
想い人が居なくなっても、いつもの習慣は変わらず、今日も2chを放浪する。
一縷の望みをかけたオカルト板への書き込みも、ツンの行方を尋ねるコピペも、なんの効果もなかった。

いや、あったのだろうか。
こんな時でも変わらない習慣が、内藤に思わぬ収穫をもたらした。
内藤はツンが行きそうな板を巡ったあと、つい癖でVIPに立ち寄った。
いつもと変わらない妹スレ、今話題のポーションスレ。
その中に、内藤の目の色を変えるスレタイがあった。


327.内藤、このスレ見てる?(4)



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 02:48:01.18 ID:5Xowqc2C0
(;^ω^)「・・・!!??」

内藤はすぐにそのスレを開く。
心臓の鼓動が高鳴り、マウスを持つ手に力が篭る。
内藤は自分を落ち着けるように、ゆっくりとスレタイをクリックした。

――――――――――――――――――――――――――――

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 01:54:22.97 ID:okdao5w0
内藤、このスレ見てる?

2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 01:54:38.54 ID:mmiep4w
2ゲト

3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 01:54:38.54 ID:YhKkho8
見てない

4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 01:54:38.54 ID:okdao5w0
内藤、見てたら返事して

――――――――――――――――――――――――――――

(;^ω^)「・・・本物かお?・・・それともコピペを見た偽者かお・・・?」

偽者であれば、なぜVIPにスレを立てたのだろう。
自分がVIPの住人だとは知らないはずだ。自分とは違う内藤という人物あてへの誰かからのメッセージだろうか。
それも可能性は低いだろう。
これが本物のツンであって欲しいという内藤の願いと、単純に可能性の問題から、内藤はこのスレの1はツンだと判断した。



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 02:57:16.93 ID:5Xowqc2C0
( ^ω^)「これは・・・ツンだお・・・!」

確信した内藤は、すぐにレスを返す。
逸る指先がタイプミスを連発したが、かまわない。
今すぐレスを返さないと、ツンの手がかりが永久に消えてしまう気がした。


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 02:06:38.54 ID:adrhho9
診てrおツン!今どおkだお1!!!


(;^ω^)「・・・まだかお、ツン・・・はやくレスするお・・・!」

たった数分のうちに、何度その台詞を繰り返しただろう。
1分たっても、レスはこない。
2分たっても、レスはこない。
3分たっても、まだこない。

内藤の鼓動は収まらず、速度をあげていく。
心臓が窄まる思いだった。まさかこのVIP板でこんな思いをするとは。
内藤の顔が歪み始めた頃、やっとレスが返ってきた。
あの単語を孕んで。


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 02:10:42.54 ID:okdao5w0
私いま、鮫島にいるの



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 03:06:41.88 ID:5Xowqc2C0
(;^ω^)「・・・」

聞きたくない単語だった。
内藤が脳裏に押し込んだ嫌な考えが首をもたげる。
2ch最大のネタスレにして、最大の暗部といわれるS事件。
誰もが直に口に出したくないためS事件と呼ばれるその事件の正式名称を、鮫島事件といった。

(;^ω^)「鮫島・・・事件・・・」

それ以降、ツンからのレスは返ってこなかった。
内藤がパソコンの前で固まっているうちに、すぐにそのスレはdatの海に沈んだ。

鮫島事件の名は知っているが、内藤はそれに触れたことはなかった。
初めて2chにきたいつかの夏休みに、それは2chの暗部だ、触れるな。と言われ、大人しく従った。
そのうちに内藤は鮫島事件をネタとして煽る立場になっていた。
それも昔のこと、今ではそのネタも廃れかけ、過去のものとなっていた。

(;^ω^)「ツンのいたずらかお・・・?」



24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 03:11:03.63 ID:5Xowqc2C0
いたずらで1ヶ月もの間失踪するだろうか。
ツンはそんな意地の悪い性格はしていない。
いたずらでないとしたら、それは―――

(;^ω^)「鮫島事件は・・・実在する・・・?」

―――身近な人が巻き込まれると言う、決定的な実在の証拠。



25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 03:19:50.95 ID:5Xowqc2C0
とても信じられないことだった。
自分の身に起こるとは思わなかった、都市伝説。
鮫島事件が本当に実在して、それにツンが巻きこまれたと言うのなら。

(;^ω^)「僕は、鮫島事件を調べなければいけないお・・・ツンのために」

内藤は自分の知識を掘り返す。
内藤が鮫島事件のことについて知っていることと言えば、それがネタであるという事くらいだった。
自分の知識では、鮫島事件は追えない。
すぐに内藤はオカルト板にスレを立て、グーグルで鮫島事件を検索した。
検索した情報は膨大だったが、どれも似たようなものばかりだった。

鮫島事件はやばい、公安に消される、結局はネタ、もう飽きた。
どれも、有益な情報ではなかった。
オカルト板に立てたスレも似たようなレスが返され、役に立たない。

それも当然だろう。
自分も信じていなかったのだ。いや、今も半ば信じられない。
それでもツンが言うのなら、内藤は鮫島事件のことを知らなければならなかった。
それも速やかに、詳しく。



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 03:28:18.01 ID:5Xowqc2C0
今すぐ、詳しい情報を得る方法が、内藤には1つだけあった。
内藤たちのクラスの担任。
その担任は鮫島事件に強い興味をもち、今でも推理を繰り返していた。
内藤は携帯をとりだし、担任に電話をかけた。

( ^ω^)「先生、夜分遅くにすいませんお」
(´・ω・`)「何時だと思ってるんだ、ぶち殺すぞ」
( ^ω^)「ごめんだお。けど、どうしても聞きたいことがあるお」
(´・ω・`)「テストの問題とかだったらすぐに切るぞ」
( ^ω^)「いえ・・・鮫島事件についてだお」
(´・ω・`)「詳しく聞こうか。なにがどうした?」

内藤たちのクラスの担任、ショボンはすぐに食いついた。
水を得た魚のような生き生きとした声で、先を促す。

( ^ω^)「できれば今から会って話したいお」
(´・ω・`)「お前こんな時間に生徒を・・・と言いたいところだが鮫島事件についてなら話は別だ。今すぐ迎えに行こう」



34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 03:37:25.75 ID:5Xowqc2C0
深夜三時をすぎた寂しい国道を、ショボンのRX-8が走っていた。
内藤を乗せたRX-8はやがて、バーボンハウスという喫茶店の前に止まった。
ここまで無言だった内藤と、妙に生き生きとしたショボンが車から降りる。
深夜だというのに、その喫茶店は開いていた。

(`・ω・´)「はいいらっしゃい!バーボンハウスへようこそ!!」
(´・ω・`)「ああ、兄さん。悪いけど客じゃないんだ」
(`・ω・´)「ぶち殺すぞ」
(´・ω・`)「なんだと?ぶち殺すぞ」
( ^ω^)「・・・先生、はやく」
(´・ω・`)「ん、ああすまん。そこの隅のテーブルで話そうか」

ショボンは内藤に促され、兄を無視してテーブルに座った。
車の中で無言だった内藤が、やっと口を開く。

( ^ω^)「まず・・・ツンから連絡があったお」
(´・ω・`)「・・・なんだと?」
( ^ω^)「ツンは言ったお。私はいま、鮫島にいる・・・と」
(´・ω・`)「・・・鮫島にいる、だと・・・!その台詞は・・・」

その台詞は、鮫島事件の概要の一節に出てくる台詞だった。



41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 03:53:35.42 ID:5Xowqc2C0
鮫島事件には色々な形態がある。
柏台駅で起こったリンチ事件を鮫島事件だとする物もあれば、鮫島代議士絡みの事件であるとする物もある。

「いま、鮫島にいる」

それは、鮫島事件のひとつに出てくる、重要なファクターを担う台詞だった。
ある日5人の2chネラーが、鹿児島県沖にある鮫島に訪れた。
だが、その5人は帰ってこず、しばらくして5人のうちの4人の遺体がそれぞれに縁のある地に届けられた。
だが、残る一人の遺体は届けられなかった。
ある日、その残った一人から、2chに書き込みがなされる。
鮫島にいる、と。

(;^ω^)「・・・本当かお?」
(´・ω・`)「ああ、本当だ。そのあと鮫島に向かった捜査隊が、残った一人の遺体を見つけた。その遺体は獣に食い荒らされていたが、首を絞められたような跡があったそうだ」

その話はネタのはずなのに、ツンの件と合致する点が多かった。
残った一人が鮫島で死んでいたというのなら、ツンも危ないかもしれない。

(´・ω・`)「もし鮫島事件が真実だとするなら・・・行くべきかも知れんな、鮫島に」



45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 04:09:46.80 ID:5Xowqc2C0
鮫島事件に登場する鮫島という島は実在する。
その島は鹿児島県沖に静かに浮かんでいた。
幸運にも春休みにはいっていた内藤とショボンは、ツンを探すため鹿児島に向かう。


(´・ω・`)「公安に消されるとよく聞くが・・・」
( ^ω^)「そんな雰囲気はないお」
(´・ω・`)「ああ。公安が絡んでいるというのは嘘なのかも知れんな・・・」

内藤とショボンは鮫島に到着していた。
そう大きくない島に、豊かな自然をもって鮫島は二人を出迎えた。
噂に聞くのとは大違いだ。それほど人の手がはいっていないこの島には、噂で聞くような不気味な雰囲気はなく、凪いだ海のような穏やかさがある。
内藤とショボンは、この島で唯一の舗装道路を歩いていた。

(´・ω・`)「人は住んでいないようだが・・・なぜこの道だけ舗装されているんだ?」
( ^ω^)「昔は住んでいたんじゃないかお?」
(´・ω・`)「そうだとすると、なぜいまは誰もいないんだ?」
(;^ω^)「それは・・・」

それは、住めない理由でも出てきたのでは・・・。
そう、噂で聞く鮫島事件のような、不気味な何かが起こったせいではないだろうか。
そう考えると、この島を包む静けさが途端に恐ろしいもののような気がした。



50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 04:20:13.31 ID:5Xowqc2C0
舗装道路を歩いていった先、島の中央部に、そう大きくない廃墟があった。
プレハブで作られた1階建て、3部屋の小さな建物の廃墟。

(;^ω^)「建物だお・・・」
(´・ω・`)「はいるぞ、内藤。ツンがいるかもしれん」

その建物は廃墟ではあったが、中は綺麗なものだった。
窓も割れていなければ、どこかが壊れているわけでもない。
この島から人が去ったために打ち捨てられたのだろう。
部屋には学校にあるような木製の机が乱雑に並び、割れた花瓶などが転がっている。
学校として使われていたのだろうか。

( ^ω^)「こっちの部屋は職員室かお?」
(´・ω・`)「そうみたいだな。あとは普通の教室か・・・」
( ^ω^)「うわ、この部屋だけ汚いお。コーヒーでもこぼしたお?」

3つの部屋の一つ、一番散らかっている教室には、ところどころに茶色い染みがついていた。
泥水かコーヒーか、何かは知らないが盛大にぶちまけたようだ。
ただ、その染みは何故か、見ていると気分が悪くなった。



56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 04:30:39.85 ID:5Xowqc2C0
手がかりを得られないまま、内藤とショボンは外に出た、
この島にあるのはこの建物と、周辺の険しい森。それ以外はツンがはいっていけないような山ばかりだ。
ツンがいるとすれば、この建物以外には考えにくい。

(´・ω・`)「ここにはいないな・・・ほかに建物はないようだが」
( ^ω^)「もうどこか別の場所に行ったかもしれないお。もしかしたら帰ってきて・・・おっと」
(´・ω・`)「どうした?」
(;^ω^)「何かにつまづいたお・・・」

内藤が躓いたのは、表札のような大理石の板だった。
おそらく、校門だろう。痛んだ2本のコンクリートの柱がたっている。

(´・ω・`)「どれ・・・なんだこれは?」
( ^ω^)「文字が擦れてて読みにくいお。えーと・・・さ・・・め・・・鮫島?鮫島・・・特殊学級・・・」
(´・ω・`)「・・・鮫島特殊学級だと・・・!?」

その名もまた、鮫島事件に縁のある言葉だった。
鮫島事件のうちの1つの説、鮫島特殊学級リンチ事件。
たしか、そういう話があったはずだ。

(´・ω・`)「・・・実在したというのか・・・しかも、この鮫島に・・・」



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 04:41:38.54 ID:5Xowqc2C0
鮫島特殊学級リンチ事件。
その話の概要は、以下のとおりだ。

鮫島特殊学級と呼ばれる学級に着任した教師が、生徒たちを次々にリンチしていった。
その教師はリンチの様子をビデオにとり、2chで販売した。
やがて購入した者が逮捕されていき、教師は購入者名簿をもったまま逃亡。
生き残った購入者が逮捕されるのを恐れ、鮫島事件と呼ばれる架空の事件を捏造し事実を隠蔽した。

いくつかある鮫島事件の形態のうちの一つだ。
鮫島という島で、5人が行方不明になったという鮫島事件。
特殊学級でのリンチ事件を隠蔽するために作られた話という鮫島事件。
同じ鮫島事件というカテゴリーでありながらまったく別物であるはずの2つの事件が、いま繋がった。

(´・ω・`)「・・・信憑性がでてきたな」
( ^ω^)「けど、この島に訪れた2chネラーはいないのかお?一人くらいいるはずだお」
(´・ω・`)「ああ。たしかに誰か来たはずだ。なぜそれが報告されていないのか・・・」
( ^ω^)「・・・鮫島事件が起こったのはたしか・・・」
(´・ω・`)「2000年5月以前・・・か。削除された過去ログに何かあるかもしれんな」



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 04:53:21.25 ID:5Xowqc2C0
内藤とショボンはツンを見つけられないまま、地元に戻ってきた。
ツンは見つけられなかったが、奇妙な謎は手に入れた。
ネタであるはずの二つの鮫島事件が繋がった今、再び過去ログを洗う必要がある。
今内藤とショボンの二人は、2000年5月以前の膨大な過去ログを1つずつ漁っていた。

(´・ω・`)「とはいえ・・・2000年5月以前の鮫島事件に関するログはすべて削除されているな」
( ^ω^)「そのあたりのスレも役に立つような情報はないお?」
(´・ω・`)「いま見ているとおりだ。なんの役にもたたん」

数十個めのスレを見終わる。
取るに足らない書き込みばかりだった。
次のスレも、似たようなレスが並ぶ。
ショボンがスクロールしていく画面の中に、内藤は引っかかる点を見つけた。

( ^ω^)「先生、ちょっともどってほしいお」
(´・ω・`)「なにかあったか?」
( ^ω^)「ちょっとだけ気になることがあるお」

ショボンがスクロールをとめ、内藤が指示したレスまでさかのぼる。
それは、他と同様意味のない書き込みのようだった。


247 :名無しさん :2000/02/09(木) 11:47:27.49 ID:11k9It
やっぱネタじゃないかな。
縦、横、斜めだよ。


(´・ω・`)「・・・これがどうかしたのか?」
( ^ω^)「縦、横、斜め・・・」



65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 05:02:44.00 ID:5Xowqc2C0
( ^ω^)「・・・先生、このIDの人の発言を探してほしいお」
(´・ω・`)「面倒臭いな・・・」

その書き込みをしたIDのレスを探す。
それは1000までいったスレの中で、先程の書き込みを含めても4つしかなかった。
一見ただの凡レスのように見えるが、内藤の直感はそこに隠されたキーワードを見つけ出す。

( ^ω^)「縦読み・・・そして・・・右からの横読み・・・最後に、斜め・・・」
(´・ω・`)「・・・これは・・・」

最初のうちは意味がないと思っていたショボンだったが、2つめのレスを右から読むうちにその考えが変わる。
1つめのレスをたて読みした結果が、“あめりかにゆ”
2つめのレスを右から読んだ結果が、”うようくのねら”
最後に、3つめのスレを斜め読みした結果が、“あしやにかころぐがある”

それを全てつなげると、一つの意味をもった言葉が浮かび上がる。

(´・ω・`)「まさか・・・」
( ^ω^)「・・・アメリカ、ニューヨークのネラー社に、過去ログがある」

それは、今まで残った、数少ない真実を知る者のメッセージだった。



68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 05:11:59.66 ID:5Xowqc2C0
(´・ω・`)「アメリカに過去ログがあるだと・・・まさか」
( ^ω^)「先生、何か心当たりがあるのかお?」
(´・ω・`)「ああ・・・鮫島事件には何の関係もない都市伝説だ。アメリカの民間か公共かはわからないが、世界中のネットの情報がすべて保存されている会社がある、と」

それは、関係ないとかつまらないとか言われて、流行もせずに消えていった都市伝説だった。
だが、もし本当にそんな会社が存在するとしたら。
日本の2chの過去ログも、全て保存されているかもしれない。
そう。なぜか削除されている、2000年5月以前の過去ログも。

(´・ω・`)「・・・ニューヨークか。面倒だが・・・行ってみるしかないか?」
( ^ω^)「少なくとも、僕は行くお・・・」
(´・ω・`)「そうか。それなら、引率者がいるな」

内藤とショボンの次の行き先が決まった。
遠くニューヨークへの旅にかかる金額を考え、ショボンは今月の給料を諦めた。



73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 05:25:38.01 ID:5Xowqc2C0
内藤の両親に研修だと告げて、ショボンは内藤を連れてニューヨーク行きの飛行機にのっていた。
ショボンは眼下に広がる太平洋を眺めながら、内藤に話しかける。

(´・ω・`)「・・・内藤、町田事件というものを知っているか?」
( ^ω^)「いや・・・?知らないお?なんだおそれは?」
(´・ω・`)「鮫島事件の大元になる・・・といわれている事件だ」

誰が言ったのかはわからない。
だがその話は、たしかに伝えられてきた。
昔、町田事件という事件があった。
国の中枢に関係するようなその事件に大物政治家が動き、その同時期に自衛隊機のスクランブル、警察による警戒強化などが密かに行われたらしい。
やがてその事件を隠蔽するために、町田事件という事件は5つの都市伝説にわけられた。
2ch最大の暗部であり、謎とされる鮫島事件も、町田事件を隠すために分割された都市伝説の1つにしか過ぎないという意見もある。
町田事件の真相に至るには、その5つにわけられた都市伝説。
つまり、5つの鍵が必要だ。

(´・ω・`)「その5つの都市伝説が何なのかはわからない。だが、もしも繋がった2つの鮫島事件と、アメリカにネット情報を保存している会社があるという都市伝説・・・それが5つのうちの3つだとしたら・・・」
( ^ω^)「ツンが巻き込まれたのは・・・鮫島事件であり、町田事件・・・?」
(´・ω・`)「・・・かもしれん。いや、ただの思いつきなんだが」
( ^ω^)「けど、もしそうだとしたら・・・」

もし、そうだとしたら。
今向かっていくアメリカの会社を含め、内藤たちはまだ3つの手がかりしか得ていない。
アメリカで何も手がかりがなければ手持ちの鍵は2つ。
さらに、その2つももしかしたら関係ないかもしれない。
もしかしたらツンは、途方もない闇の底にいるのだろうか。



77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 05:41:54.67 ID:5Xowqc2C0
(´・ω・`)「やれやれ・・・外国ってのは勝手が違うから困る」
( ^ω^)「おまけに何いってるかわからないお・・・」
(´・ω・`)「とりあえずサイトシーンっていっとけ」

初めての外国に戸惑いながら、なんとか内藤は入国審査を終えた。
先に審査を済ませたショボンは空港の職員に何か訪ねているようだ。

( ^ω^)「先生、英語喋れるのかお?すごいお」
(´・ω・`)「まぁな。ホテルの場所を聞いてきた。寝床は確保したとして、問題は例の会社だな」

世界中のネットの情報が保存されているという会社の名前はわからない。
世界中の情報を保存しているような会社だ、おそらく表世界の会社ではないだろう。
政府関係か地下世界関係か、それはわからないが、探し出すのは困難を極めるということは容易に想像できた。

(´・ω・`)「とりあえずホテルに行こう。ネット環境がないと調べ物もできん」



86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 05:55:55.57 ID:5Xowqc2C0
ホテルに着いた内藤たちは、早速ノートパソコンを立ち上げる。
遠くアメリカの地から2chに接続し、再び過去ログを丁寧に洗い上げた。
だが、都市伝説にあるアメリカの会社の情報など皆無に等しかった。
住所などわかるはずもなく、名前はおろかニューヨークのどこら辺にあるかすらわからない。

(´・ω・`)「マイナーな都市伝説だからな。情報はないか」
( ^ω^)「となれば・・・聞き込みかお?」
(´・ω・`)「それしかないだろうな」

内藤とショボンは連れ立って外にでた。
もし本当に都市伝説の通りの会社があるのなら、ネットなどに詳しい人物が何か知っているかもしれない。
二人はネット関連の会社を訪ねたり、見るからにオタク臭い通りすがりに話を聞いたが、会社のことを知っている物はついぞ現れなかった。

(;^ω^)「・・・誰も知らないお。探すのは無理なのかお・・・?」
(´・ω・`)「あるいは無駄足だった、か・・・」

内藤とショボンは歩き疲れ、ベンチに腰を下ろした。
アメリカのまずいジュースを一口のみ、キャップを閉めて傍らに置く。
それを見たホームレスらしい男が近づいてくる。ジュースが欲しいのだろうか。
男は、東洋系の顔立ちをしていた。



89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 06:10:53.59 ID:5Xowqc2C0
( ^Д^)「あんたら、そのジュース飲まないならくれないかな」
(;^ω^)「おお!?え、英語がわかるお。僕はいつの間にか英語をマスターして!?」
(´・ω・`)「阿呆、日本語だ。・・・ジュースならあげるよ、まずいからね」
( ^Д^)「どうもどうも。ありがたい。あんたら日本人だろ?何しにアメリカに?観光?」
( ^ω^)「ある会社を探してきたんだお」
( ^Д^)「へー・・・珍しい理由だね。なんて会社?」
(´・ω・`)「名前すらわからん。何でも世界中のネットの情報を保存しているらしいが・・・」

ショボンの台詞を来て、にこやかに笑っていたその男はペットボトルを取り落とした。
信じられない物を見たような顔で、内藤とショボンを見つめる。
その顔に浮かんでいたのは、恐怖だった。

(;^Д^)「・・・あんたら・・・もしかして、鮫島事件って知ってるか・・・?」
( ^ω^)「・・・なんでその名を知ってるお」
(´・ω・`)「ここに来てやっと当たりがでたか・・・どれ、知ってることを話してもらおうか」
(;^Д^)「い、いやだ。俺はもうあの事件には・・・」

立ち去ろうとする男の肩を内藤が掴む。
ショボンはまだ蓋を開けていないコーヒー缶をもって立ち上がると、男の前に掲げる。ショボンが顔色一つ変えずに手に力を込めると、蓋の開いていない缶がコーヒーを噴出しながら握りつぶされていく。

(´・ω・`)「痛い目にあいたくなかったら話したほうがいいぞ」



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