( ^ω^)ブーンがあの事件に挑むようです


284:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU: 2006/03/16(木) 04:32:42.79 ID:DMiQdEIB0
内藤たちは地元に戻ると、喫茶店バーボンハウスに町田を呼び出した。
ビデオを入手したから渡す、と。
町田には鮫島からのメッセージの事は話していない。
今、内藤たち3人の目の前にいる町田は、念願のビデオ、新薬の調合法が手に入るものと内心で小躍りしているだろう。

町田「さて・・・まず礼を言おう。助かったよ。さ、ビデオを渡してくれ」
(´・ω・`)「あんたが新薬とやらで荒稼ぎするために・・・か?」
町田「・・・!?」
(´・ω・`)「ん?冗談で言ってみただけだが・・・どうした?ほら、ビデオだ。受け取れ」

ショボンはテーブルにビデオを置いた。
半ば固まっていた町田がそれを見て、気を取り直す。
ビデオに手を伸ばしかけた町田は、喫茶店のドアが開く音で再び固まった。
喫茶店にはいってきたのは、凛としていて逞しい印象を受ける女性。
町田のほうにまっすぐ歩いてくる。

女「・・・やっと最後のビデオを持ち出してくれたな、町田。第三者ならマークされないとでも思ったか?」



285:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU: 2006/03/16(木) 04:33:37.24 ID:DMiQdEIB0
町田「なんだと・・・あと一歩というところで・・・!」

町田は自分にむかって歩いてくる女を睨み付ける。
そんなもの意に介さないように向かってくる女に、町田は精神的に追い詰められていた。
追い詰められ焦った町田は、スーツの懐から拳銃を取り出し女に向けようとした。
だが、拳銃が前を向く前に、町田は腕を捻られ女に取り押さえられる。

女「町田・・・いや、ダディクール。貴様を逮捕する。罪状は面倒臭いから自分で考えろ」

取り押さえられ屈んだまま、町田は黙って床をにらみつけていた。
女のあとから二人の男が入ってきた。
そのうちの1人、屈強な男が町田を連れて行く。
もう一人の眼帯をした男は、ビデオを回収していった。
町田が喫茶店の表にいつの間にか止まっていた竿竹屋のトラックに載せられたのを確認し、女は内藤たちに向き直る。

女「さて・・・今起きた事とビデオの内容については・・・ん?」
(´・ω・`)「おや・・・見覚えがあると思えば・・・草薙三佐じゃないですか」
女「野戦特科の問題児か。久しぶりだな・・・アメリカ帰りの機で部下が世話になったというのはお前か」
(´・ω・`)「その節は失礼を。まさか三佐が公安に下っているとは・・・」
女「今は少佐だ、問題児。存外に居心地が良くてな・・・お前がいるなら私が言うまでも無いな?目をつけられたくなければそこの二人にしっかり言い聞かせておけ、私は帰る」

ショボンと短く言葉を交わしたあと、少佐と名乗った女は町田をつれていった屈強な男になにやら指示を出して、竿竹屋のトラックで去っていった。
内藤とツンはあまりに急すぎる展開に訳がわからないという顔をしている。
カウンターでは、厄介ごとが起きませんように、とシャキンが呟いていた。

(´・ω・`)「内藤、ツン。それとついでに兄さん。今おきたことは忘れるんだ、ビデオの内容もな。口外すればおそらく逮捕される」
( ^ω^)「・・・先生、あの女の人は何だお?知り合いかお・・・?」
(´・ω・`)「あれはただのメスゴリラだ・・・あまり詮索するな」



290:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU: 2006/03/16(木) 04:51:07.61 ID:DMiQdEIB0
( ^ω^)「結局なんなんだお・・・わからずじまいだお」

喫茶店で起きた急すぎる終幕に、内藤はやや不満を感じていた。
自宅に戻ってからも、町田事件の事を考えている。
町田から洗いざらい聞き出したかったのに、町田はあっさりと捕まってしまった。
あの女は公安だというから、おそらく町田と接触したときからマークされていたのだろう。
ビデオの場所がわからなかったのか、内藤たちを尾行してビデオを手に入れるとともに、ついでに町田を逮捕する算段で動いていたか。

( ^ω^)「・・・けど、僕たちは何で逮捕も消されもしなかったお?公安に消されるって話じゃ・・・?」

しかし、国家の警察機構の延長であるはずの公安が国民を無闇に消すのもおかしい。
そう考えてみれば、公安に消されるという噂も間違いだったのだろうか。
だが実際に鮫島上陸事件で5人の2chは死亡しているし、自分たちが会ったタカラも殺された。
もしも、関係した人間を消したのが公安ではないとするなら。
なんのためにか知りすぎた人間を消し、その上神出鬼没、目撃者はいなくて、行動原理がわからない。
そもそも、存在するかどうかすらわからない。

( ^ω^)「そんな・・・幽霊みたいな奴・・・」

だが、その条件を唯一クリアーする人物像がある。
何のためにかビデオを販売した人間。それを騙ったダディクールの存在で忘れられそうだが、本物のビデオを販売した人間。
誰が残したかわからない町田事件のヒントも、存在する理由がわからないという点では、ビデオ販売と良く似ていた。

( ^ω^)「・・・理由のわからないヒントと行動・・・行動は販売、販売したのは・・・本物の、町田?」



298:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU: 2006/03/16(木) 05:16:56.55 ID:DMiQdEIB0
( ^ω^)「・・・わからないお。町田とはいったい何なんだお・・・?」

内藤たちが今回関わった事件は、結局はアメリカから着た2人が町田事件を調べていく中で辿った道をなぞったに過ぎない。
誰かが用意したレールを歩いた鮫島と、偽町田・ダディクール。
それを追うことになった内藤たち3人と、公安。
謎は残る。
結局、死刑執行のときに生き延びた町田という男が実在したのか、それとも噂でしかなかったのか。
町田事件の全容とは実験ビデオのことなのか。
そもそも、本当の真実を知っている人間がいないために、嘘か真かもわからない。

( ^ω^)「結局はネタなのかお・・・?けど、ビデオは実在した・・・それでも、真実は見えない・・・」

鮫島事件、ひいては町田事件は、ネタか真実か判断がつかないために都市伝説として定着した。
何人もの人間がどれだけ調べようと、その答えは覆らなかった。
内藤たち3人も例外なく、最初の答えである真贋は判断できないという結果に帰着するのだろうか。

( ^ω^)「ん・・・メールかお。こんな時間に誰だお?」



353 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU:2006/03/16(木) 14:53:06.87 ID:DMiQdEIB0
件名:パソコンからごめん
本文:ツンだけど、今から会えない?私の家今日誰もいないからなんか心細くて・・・

( ^ω^)「・・・こ、これは・・・うほっwww」

時刻は深夜2時。
こんな時間に心細いなんて言われて黙っていては男じゃない、と言わんばかりに内藤は瞬時に着替え、出かける準備をする。
身にこたえる深夜の寒空も忘れて、内藤は自転車をこいだ。
ツンの家まであと半分という所で、ふと携帯を取り出す。

( ^ω^)「一応電話しとくお」

呼ばれたとはいえ、連絡もなしではダメだろう。
思えばメールに返信すればよかったのに手際が悪いことだ。
そんなことを考えながら、ツンが電話にでるのを待った。
何度目かのコールのあとで、ツンが眠そうな声が電話にでた。



375 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/16(木) 15:19:44.06 ID:DMiQdEIB0
ξ゚听)ξ「何よ内藤〜・・・こんな時間にぃ・・・」
( ^ω^)「あ、ツン寝てたのかお?さっきツンに呼ばれたから今・・・」
ξ゚听)ξ「はぁ?呼ばれたって誰によ・・・眠いんだから勘弁してよねぇ・・・ふぁぁ・・・」
( ^ω^)「へ?あ、ツン!・・・ちょ、切れたお・・・なんなんだお」

ここまで急いできたのが馬鹿みたいだ。
内藤のテンションが180度反転し、肩がうなだれる。
メールを送ってきておいてあのリアクションはないだろう。
待っている間に眠くなったのだろうか。

( ^ω^)「・・・そういえば、ツンのパソコンのアドレスも登録してるはずだけど・・・表示されてなかったお・・・?」



376 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/16(木) 15:20:00.51 ID:DMiQdEIB0
妙に寒気がするのは冬だからだろうか。
携帯を取り出してメールを確認すると、たしかに見たことのないアドレスでメールが届いている。
ツンの携帯もパソコンも登録しているのに。
内藤の背筋に、何か良くないものが走った。予感が確信にかわっていく。

( ^ω^)「ツンじゃない・・・誰が・・・」

内藤は恐怖や不安を打ち消そうと人気を求めて歩き出した。
自転車をつきながら、暗い細道を進む。コンビニでも近くにあれば良いが、この付近には何もない。
内藤の前方に自販機の光が見えた。

( ^ω^)「と、とりあえず明るいところへ行って、飲み物でも・・・」

自販機にむかって歩みを速める。
内藤が冷静なら、気付いただろう。
自販機の光が陰っていることに。それは、人がいるという事だ。
良く注意していれば気付いただろう。
背後から、ほんの小さな足音がついてきていたことに。

内藤は、気付けなかった。



424 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/16(木) 16:04:52.62 ID:DMiQdEIB0
ここで時間はさかのぼる。
喫茶店で町田が捕まってから少ししたころ。
そのトラックは、高速道路を走っていた。

ダディ「・・・ふう。そろそろ自由にしてくれ」
眼帯の男「まぁ・・・もういいか。ほらよ」
ダディ「あいたたた・・・きつく縛りやがって。少佐、もう少し優しく取り押さえてくださいよ」
女「そういうな、ビデオは手にはいった」

ダディは拘束をとかれ、偽装されたトラックの荷台で身をくつろげた。
喫茶店で彼、ダディクールを捕まえたのは、公安9課。
それは本来存在しないはずの9つめの公安課。日本のCIAと呼ばれる公安にあって尚秘匿性を持った首相直属の独立権力だ。
9課の捜査員、それがダディの肩書きだった。
彼らも、町田事件の全容は掴めない。
おとり捜査や地道な聞き込み、ネット調査のためのダミーであるアメリカのネラー社での活動も効果をあげなかった。

ダディ「しかし町田ってのは何者なんだろうな。町田の姿はつかめないが鮫島は奴に消されたはずだ・・・」
眼帯の男「わざわざ一般人を使ってビデオを回収すれば町田が食いつくかと思ったが・・・やはり尻尾は出さなかったな」
女「奴は巧妙だ。喫茶店にいた三人も危険だろうな。念のためバトーを置いてきたしあの問題児もいるが・・・彼らのうち誰かが一人で外出でもすればどうなるか」



440 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/16(木) 16:29:18.16 ID:DMiQdEIB0
店などもなく、深夜では人気のまったくない路地。
そこにポツンとたっている自販機の近くで、争いの後があった。
割れた自販機のガラスに、散乱した空き缶。
そして、地面には血痕。
まだ固まっていない血痕を調べるように屈んでいた男が立ち上がる。
髪を後ろで束ねた屈強そうな男は、周囲を調べた後で首を振って携帯を取り出した。

男「・・・ダメだ、少佐。死んではいないと思うが、いなくなりやがった」

短い報告を終え、男は振り返る。
振り返った先に、静かに喫茶店にいた3人のうちの一人が立っていた。

(´・ω・`)「・・・あんたら公安でも事件の全容はつかめず、町田の存在も把握できない。それでも、関わった人間は消えていく・・・か」
男「うすら寒いヤマだ。いつもこうして後手に回っちまう。・・・あんた、どうする?」
(´・ω・`)「内藤の行方を捜すさ・・・卒業式には出したいからな」
男「・・・教師ってのも大変だな」



441 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/16(木) 16:31:36.79 ID:DMiQdEIB0
VIP高校の卒業式は春休みの最中にある。
卒業生たちの中で、一人だけ出席しなかった者がいた。
彼の友人がどれだけ探そうと行方は知れなかった。
彼の想い人が泣き崩れようと彼は戻ってこなかった。
彼は、行方不明になった。

日本の巨大掲示板、2ch。
その2chに、タブーとされる事件がある。
曰く、その事件には近づくなと。
それは鮫島事件と呼ばれた。その裏に何があろうとも、鮫島事件という門を通った人間はやがて消える。
何年たってもそれは連綿と続いてきた。
まるで誰かが仕掛けたように。まるで消えた者が仲間を欲するように。

ξ゚听)ξ「内藤・・・!ない、と・・・ぅ・・・!」

そう、消えた者は、新しく誰かを連れて行く。
卒業式の日、家で涙を流す少女の携帯が懐かしい音を鳴らす。
いなくなった少年からのメールを知らす着メロ。
そのメールには、たった一言だけ書かれていた。
全ての始まりである、あの一言が。
終わりを告げるために。


いま、鮫島にいるお



452 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/16(木) 16:35:49.22 ID:DMiQdEIB0
-鮫島事件、町田事件についての日記-

今日、連絡がきた。
私は行ってみようと思う。
きっと、私は帰ってこない・・・だから、誰にも言わずに行こうと思う。
両親にも友達にも心配をかけると思うけど、あの馬鹿を放っとくのはいやだから。

それじゃ、行ってきます。
もし誰かがこの日記を見て、私がいなくなっているとしたら。
その時は、探さないでください。

きっと、あなたも居なくなってしまうから。

                        2006年3月28日 (火)



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