( ^ω^)ブーンがあの事件に挑むようです


221:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 01:15:12.10 ID:pAtTFevg0
いきなりだけど

-視点と時間軸が変わります-



223:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 01:15:50.87 ID:pAtTFevg0
「ん・・・んん・・・?」

その部屋は暗かった。
締め切ったカーテンから差し込む光だけが部屋の様子を薄く知らせている。
そこは、教室のようだった。

( ^ω^)「・・・ここは・・・?」

頭が痛い。
目覚めたばかりの頭では状況を理解できず、内藤は体が痛いなぁ、とだけ思った。
起き上がり、周囲を見渡す。
どうやら、乱雑に散らかった机と椅子の中で寝ていたようだ。

( ^ω^)「・・・そうだお、僕は自販機の前で・・・ぁ痛っ・・・」

そうだ、ツンに呼ばれた夜に内藤は自転車でツンの家に向かった。
だがメールはツンからの呼び出しではなく、誰かわからない人間からのもので。
得体の知れない恐怖から人気を探して歩く途中、自販機の光を見つけた。
今思えばあの自販機の光は翳っていた。
ちょうど、人が立っていたように。
そして、頭を後ろから何かで殴られた。後ろから尾けていた誰かに。

( ^ω^)「やられたお・・・こういう時は素数を数えて落ち着くお・・・」



227:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 01:20:28.72 ID:pAtTFevg0
( ^ω^)「・・・とかいって素数って何だお?まぁ落ち着いたから結果オーライだお」

内藤は素数を知らなかったが、とりあえずこの状況に混乱するような事態は避けられたようだ。
落ち着いた頭で自分の持ち物を調べてみる。
服はあの時のまま、携帯や財布もそのままだった。何もとられてはいない。
携帯の電池もまだ残っている。
日付は3月27日。

( ^ω^)「27日・・・?随分長い間ここで眠っていたのかお?その間何もされずに・・・?」

それは極めて不自然だった。
およそ1週間ほど、内藤を襲った犯人は内藤に何も手を出さずにいたのだろうか。
たしかに体に痛みはあるが、それは襲われたときの打ち身と硬い床で眠っていたせいだろう。
他には危害は加えられていないとしか思えない。

( ^ω^)「・・・何のために犯人は僕を襲ったお?それに、何で僕は約1週間も眠りっぱなしだったんだお・・・」



233:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 01:31:40.66 ID:pAtTFevg0
内藤を襲い連れ去ったなら、当然目的は内藤を消すことのはずだ。
だが、内藤は何も危害を加えられてはいない。
監禁が目的だったとしても携帯という連絡手段を残しておくのはおかしい。
犯人の考えはいったい何なのか見当がつかない。

( ^ω^)「・・・そんなことは関係ないお。問題は、ここはどこで、どうやって帰るか、だお」

よくよく考えてみれば、犯人の思惑など知ったこっちゃないのだ。
たしかに相手の考えがわかれば裏もかけるだろうが、別にそうしないといけない訳ではない。
要は相手の思い通りにさせなければ良いのだから。
犯人の思惑はわからないが、内藤を連れてきタという事は逃げられると困るはずだ。
ならば脱出して無事に帰り着けば、内藤の勝ちだろう。

( ^ω^)「・・・見覚えのある教室だお。ここは・・・多分、鮫島特殊学級だお。つまり、僕がいるのは鮫島・・・」

教室から出るのは容易い。
たとえ鍵がかかっていても窓を破れば外に出られる。
問題はその後。
鮫島から脱出するには海を越えねばならない。

( ^ω^)「泳ぐかお・・・?いや、それはさすがにねーよwwww」

一瞬泳いで脱出することも考えたが、それはあまりに無謀すぎる。
船があれば良いが、人の住んでいないこの島には船など停まっているはずはない。
なんとかして船か、それに変わるものを調達、発見しなくてはならない。
それが第一目標だ。



239:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 01:45:20.14 ID:pAtTFevg0
案の定教室には鍵がかかっていた。
想定の範囲内だったので問題なく椅子で窓を破る。
ガラスの割れる音で犯人が来る可能性もあったが、一向にそんな気配はない。

( ^ω^)「とりあえず犯人は近くにいない、と・・・船がなくても島内で鬼ごっこすれば時間を稼げるかお?」

今までの鮫島事件を追った経験が、内藤に冷静な行動力を与えていた。
自分が襲われ捕まっている状況でも落ち着いて行動できる強さを。
もうあの夜のように恐怖に竦むのは御免だった。
カーテンが閉められた薄暗い教室から外に出る。
思いのほか外は明るかった。
携帯の表示時間はまだ正午くらい。活動するにはうってつけだ。
途中で拾った角材で武装し周囲を警戒しながら、内藤は海辺へ急いだ。



243:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 02:00:56.60 ID:pAtTFevg0
( ^ω^)「やっぱり船なんか無いかお。こんな島に来る物好きもいるとは思えないし・・・さて、どうするかお」

浜辺に出たが、当たり前のように打ち捨てられた舟の一つもない。
海に突き出た船着場は年に何回機能するのだろうか。
おそらくこの島には船などないだろう。
となればどうにか呼ぶしかないが・・・。

( ^ω^)「・・・犯人が携帯を残しているのが気になるお。使っても大丈夫なのかお・・・?」

内藤の持つ唯一の連絡手段は自分の携帯だけだ。
電池は残り2本。ドコモの携帯はすぐ2本目がなくなるめ、実質は残り1本と考えていいだろう。
あまり悩んでいる時間はない。

( ^ω^)「これは困ったちゃんだお・・・携帯に仕掛けでもあるのか、犯人が間抜けなのか・・・」

ただ単に犯人が間抜けなのだったら別にいいとして。
仕掛けがされているとしたら盗聴だろうか。
詳しい人間なら何をしてくるか分からないが、一般人に出来るのはその程度のはずだ。
つまりメールなら問題なく連絡できる可能性が高い。
だが、もし相手が携帯などの機器に精通していたら、内藤の思いつかないような仕掛けがある可能性もある。
それこそ外界に連絡をしようとして爆発、なんて展開にでもなったら大変だ。

( ^ω^)「携帯は最後の手段にしておくお・・・今はひとまず地理の把握をしとくお



252:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 02:25:03.87 ID:pAtTFevg0
内藤は島を歩き回った。
前回来た時にざっと見たが、深い森と山を除けば人が歩ける範囲はそう広くない。
さすがに特殊学級には近づかないとすると、もし犯人が出てきた場合の鬼ごっこの舞台は特殊学級への道と浜、それ以外の平地くらいだ。
浜には昔漁に使っていたのか、小屋がいくつかある。

( ^ω^)「遮蔽物がなくて見晴らしが良いお。浜周辺を拠点にするお。・・・にしてもこの辺は寒いお」

海からの風が歩きつかれた体に堪える。
もう日は傾き、一番星が見えていた。
夜になるとさらに冷え込むだろう。体力を温存しておくべきかも知れない。
幸い今は浜辺に戻ってきている。
いくつかある小屋のどれかに隠れて休めば、すぐには見つからないだろう。

( ^ω^)「犯人がいる様子もないし・・・ちょっと休憩するべきかお?」



332:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 23:09:11.16 ID:pAtTFevg0
内藤はいくつかある小屋の一つにはいった。
中には漁具のほかに古ぼけたマッサージチェアが置かれている。
壊れているが、少し眠るくらいならできそうだ。

( ^ω^)「・・・危険かもだけど歩き回って疲れたお。ちょっと失礼して・・・よっこらせっくす、げほんげほん!」

マッサージチェアに腰掛ける。
舞い上がった埃で咳き込むが、すわり心地は中々よかった。
予想外に眠い。
冷静に行動できたのは良いが、それでも緊張はしていたようだ。
こんな状況で眠くなるのは好ましくない。

( ^ω^)「ねみー。けどその前に脱出手段を考えるお・・・」

この島には船はない。おそらく訪れる船も。
映画のようにイカダを作るのは不可能だし、その間の食料もない。
やはり、誰かを呼ぶしかない。
不安は残るが携帯を使うしかないだろう。



337:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 23:20:28.72 ID:pAtTFevg0
( ^ω^)「誰に送るかお・・・先生、ツン・・・すぐ動きそうなのはツンだお」

電話帳からツンのアドレスを開き、メール作成画面を呼び出す。
どんな内容が良いだろう。
とりあえず今鮫島にいることは真っ先に伝えなければならない。
次になにを伝えれば良いか考える。
考えるが、頭に靄がかかっている。まぶたが重い。
マッサージチェアに座るべきではなかった。予想以上の疲労が睡魔となって内藤に襲い掛かる。

( ^ω^)「・・・これはやばす・・・あ゛ー・・・」

片手に携帯を持ったまま、内藤は眠りに落ちた。



338:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 23:20:50.30 ID:pAtTFevg0
( ^ω^)「・・・グヘ、グヘヘヘ・・・ムニャ・・・」

内藤は夢を見ていた。
バーボンハウスでツンと過ごした一夜の夢を。
だが、夢は良いところで雑音に邪魔をされた。
まるでドアを開け閉めするような音が、だんだんと大きくなっていく。

( ^ω^)「んむぅ。なんだお・・・?・・・って寝てる場合じゃなすwwww」

すっかり明るくなった中とびおきる。
片手にはまだ携帯が握られていた。
ツンへのメールを作成途中のまま呑気に夢を見ていたようだ。
時刻は28日の昼過ぎ、随分長い間眠ってしまった。

( ^ω^)「いい夢みてる場合じゃないお。あの音がなかったら・・・音が・・・?」

夢を邪魔した音は、ドアを開け閉めするような音だった。
ちょうど今聞こえているような。
その音は一定間隔を置いて近づいてくる。
風でおきる音ではない、明らかに人間が起こす音。
その音は内藤を探していた。



342:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 23:31:16.52 ID:pAtTFevg0
内藤の居る小屋は一列に並んだ小屋の一番端にある。
音の主は、今大体3個となりの小屋にはいったようだ。
もうすぐ内藤の小屋まで来るだろう。

( ^ω^)「・・・!メール送ってさっさと逃げるお・・・!」

書きかけのメールを急いで送信し、携帯を仕舞う。
音の主は当然、内藤をここまで連れてきた相手だろう。
相手は3つ隣の小屋から出て、2つ隣の小屋のドアをあけた。

( ^ω^)「はいったお・・・中に誰かいないか探して・・・出てきたお。出るまで、約40秒・・・」

内藤は壁に寄り添って音を聞いていた。
確か小屋の扉は開き戸だったはずだ。
運のいい事に、扉を引いた場合、扉が死角になる方向に内藤の居る小屋がある。
つまり、相手が隣の小屋の扉を開け、中を確認する約40秒の間にこの小屋から出れば見つからない。

( ^ω^)「隣の小屋のドアが開く音にあわせて、外にでるお・・・」

音の主はもう砂浜を歩く足音が聞こえるくらい近くにきている。
すぐ隣の小屋のドアノブが回る音が聞こえた。
それにあわせて、内藤はドアノブを回す。
内藤の小屋と隣の小屋、その扉が同時に開いた。



346:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 23:42:37.53 ID:pAtTFevg0
外に出た内藤は隣の小屋を見る。
予想通り小屋の扉が死角になり、相手はこちらに気付いていない。
顔を確認したいところだが、そうも言っていられない。
扉を閉め切らず、音がでない辺りでとめて、小屋の裏手を目指す。
抜き足で小屋の横側に回ったあたりで、扉を閉める音が聞こえた。

( ^ω^) (これで奴が僕がさっきまでいた小屋を調べるのに約40秒・・・走って逃げても見つかるお・・・)

走って逃げても、40秒では途中で見つかり追いかけられるのは確実だった。
内藤の居た小屋の扉が開く音が聞こえてくる。
ここはひたすら隠れてやり過ごすのが得策だろう。
内藤は全神経を耳に集中させ、相手の足音に注意した。
小屋の扉を開けてから足音は聞こえない。
その場で中を確認しているのか、それとも忍び足でこっちに来ているのか。

(;^ω^) (・・・緊張するお。いつもこんな思いをしているスネークを尊敬するお・・・)



349:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/20(月) 23:52:48.61 ID:pAtTFevg0
しばらく何の音もしなかったが、突然足音がした。
気配を殺そうなどという思惑が感じられない大きな足音。
その足音は小屋の中央あたりで止まった。

(;^ω^) (小屋の中に・・・?何か残してしまったかお・・・?)

内藤は何も残していないはずだ。
残すも何も、携帯以外何も取り出していない。
相手は小屋の中でじっとしているようだ。
今のうちに逃げたほうが良いだろうか。
そう思ったとき、小屋の中から声が聞こえた。

男「頭かくして尻隠さず・・・って知ってるか?ん?中々注意深くて度胸もあるみたいだがよ・・・この小屋って板が割れてるのな」
(;^ω^)「!!」

そう、板が割れていた。
小屋の壁の板、ちょうど内藤が立っているあたりの、足元の板が。
その割れ目から内藤の足が見えている。

(;^ω^)「大佐!ミッションは失敗だお!!どうしたスネーク!スネェェーーーク!!」

もうやり過ごすとか言ってる段階ではない。
とりあえず意味不明な大声を出しながら内藤は駆け出した。



355:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/21(火) 00:10:43.66 ID:HlCnCQJX0
( ^ω^)「レッドアラート、レッドアラート・・・!」

背後から足音と、なにやら叫ぶ声が聞こえる。
待てと言っているのだろうが、そういわれて待つ馬鹿はいない。
撹乱のために林にはいる。
しばらく走って背後を確認すると、人影はなかった。

( ^ω^)「・・・?ま、撒いたのかお?やけにあっさりだお・・・」

必死に追いかけてくるかと思ったが、そんな気配はない。
軟禁の仕方といい追いかけてこない事といい、内藤に関心はないのだろうか。
だが、逃げ出した内藤を探していたという事は、少なくともこの島から逃げてほしくはないのだろう。

( ^ω^)「・・・油断大敵だお・・・寝ちゃって危なかったからもう寝れないお。とりあえずこの木の上に・・・」

林の入り口近く、何とか浜辺が見える木によじ登る。
葉も多くしっかりしている枝は、隠れるには中々良い。
出来るだけ見付かり難そうな枝に陣取り、内藤は周辺を監視した。



356:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/21(火) 00:20:34.04 ID:HlCnCQJX0
葉の陰から見える浜辺には人影はない。
内藤を探していたのは声からして男だった。
あの男はどこに行ったのだろうか。
もし相手が一人ならどうにかして取り押さえるのも有りだと思うが、自販機前で内藤を襲ったのは二人組みのはずだ。
この鮫島にも、さっきの男以外にもう一人いると考えたほうが良い。

( ^ω^)「・・・そういえば携帯、メール出したんだお・・・」

浜辺の小屋でメールを送信したことを思い出す。
急いでいたため途中メールしか送れなかった。鮫島にいることしか伝えられていないため、もう一度メールを出したほうが良いだろう。
携帯を取り出しメール作成画面を立ち上げようとするが、携帯の電源ははいっていなかった。
何度試しても電源は入らない。

( ^ω^)「・・・電池切れ・・・」

内藤はツンに事情を伝えた後、ショボンを呼ぶ気だった。
ツンだけでは危険だし、心もとない。
ショボンも呼んだほうが心強いのだが、これではもう誰にも連絡できない。

( ^ω^)「・・・警察でも呼んだら良かったお・・・ツンは、来るかお・・・?」



359:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/21(火) 00:39:16.29 ID:HlCnCQJX0
内藤は木の上で夜を明かした。
体を休めるにもこんな木の上では休めず、さすがに堪える。
木から降りようかと思ったとき、船など寄り付かないと思っていた船着場に向けて、船が向かっているのが見えた。

( ^ω^)「・・・!誰か来たのかお!?」

ツンにメールを送ってから1日しかたっていない。
さすがにこんなに早く来るはずはないと思うが、飛行機にでも乗って急いでくれば無理な時間ではない。
内藤が見守る中、船が船着場に着く。
どうやら漁船のようだ。
漁師のおじさんが船をとめ、中から誰か出てくる。
内藤の都合のよすぎる期待が珍しく実った。
中からでてきたのは、昨日メールを受け取ったばかりのはずのツン。


漁師「いんやー、こんな所に何の用か知らんが気をつけてなぁ」
ξ゚听)ξ「はい、どうもありがとうございます」
漁師「気にせんで良いよ。んで、明日迎えに来れば良いんかい?」
ξ゚听)ξ「はい、明日の正午で・・・必ずお礼はしますから」
漁師「まぁ暇だからねぇ。危ないことはするんじゃないよ」

ツンをおろした漁船は悠々と帰っていく。
帰っていく船に手を振り、ツンは歩き出した。

ξ゚听)ξ「あの馬鹿、どこにいるのかしら・・・」



366:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/21(火) 00:54:06.68 ID:HlCnCQJX0
内藤は木から飛び降りた。
着地の衝撃で痺れる足を引きずって走る。

( ^ω^)「こんなに早く来てくれるなんて思わなかったお・・・!」

もしかしたら今すぐツンと合流すれば、あの漁船を呼び戻せるかも知れない。
犯人と思われるあの男も気付いているかもしれないが、島から出てしまえば内藤の勝ちだ。
一応周囲を警戒するば、人影はない。
もし誰か来ても内藤が船着場にたどり着くほうが早いだろう。
それに、ツンも馬鹿ではない。護身用具くらい持ってきているかもしれないし、合流すれば有利になるはずだ。
一気に形成有利になる可能性が出てきて、内藤は拳を握り締めた。
疲れなど忘れ、砂を踏みしめ走る。
浜辺を突っ切り船着場までたどり着いた内藤を、唖然とした表情のツンが出迎えた。



370:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/21(火) 01:01:57.49 ID:HlCnCQJX0
ξ゚听)ξ「・・・は?」
( ^ω^)「ツン!来てくれてサンキュー愛してるだお!あの船呼び戻せないかお!?」
ξ゚听)ξ「ぇ、ちょ、愛・・・!?って違う!何なのよ内藤、あんたなに普通に出てきてんのよ!?」
( ^ω^)「そんな事より船だお!呼び戻せればさっさと脱出できるお!」
ξ゚听)ξ「はぁ?呼び戻すってどうやんのよ!大声だしても聞こえないし!!」
( ^ω^)「ええぃ使えな・・・なら何か武器になりそうな物とかないかお!?」
ξ゚听)ξ「ちょ、今使えないって言おうとしたでしょ!せっかく来てあげたのに!ええ武器になる物なんかありませんよ、私は使えない女ですからねーだ!!」
( ^ω^)「ちょ、逆ギレっておま、プギャーwwww」
ξ゚听)ξ「くぅぅ・・・!心配した私の時間を返せバカ内藤ーっ!!」

寂しい静寂が支配するはずの鮫島船着場が一気に騒がしくなる。
内藤は期待と焦りのためにテンションが上がり、ツンは意味もわからない急展開にとりあえず内藤に張り合っていた。
内藤とツンは小1時間ほど怒鳴りあい、少しずつ落ち着いていく。
よく考えればこんな所で口論している場合ではない。

( ^ω^)「はぁ・・・はぁ・・・いや、来てくれてありがとうだおツン・・・サンクスギビング!」
ξ゚听)ξ「ちょっと・・・爽やかに収集つけようとしてんじゃないわよ・・・ふぅ・・・疲れた・・・」



376:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/21(火) 01:24:24.51 ID:HlCnCQJX0
しばらくわめき散らした割りに、船着場にはまだ誰も近づいていないようだ。
とりあえず合流は無事成功したといって良いだろう。
内藤はツンの持ち物を確認した。
携帯と電池式の充電器に、化粧品一式、ペットボトルの飲料水。
他にはフリスクと痴漢撃退用スプレーにカロリーメイトが1箱。

( ^ω^)「・・・なんで化粧品なんか持ってきてるんだお?」
ξ゚听)ξ「いつも使ってるバッグもって急いできたからよ・・・それより説明しなさいよ。なんであんたピンピンしてんのよ」
( ^ω^)「それは・・・」

内藤は目覚めてからの経緯を説明した。
最初は軽く機嫌が悪かったツンだが、しだいに何か思案するような表情になる。
おそらく内藤と同じ疑問を感じているのだろう。

ξ゚听)ξ「わざわざ内藤を襲って連れてきたわりには待遇が変ね・・・邪魔ならさっさと殺せば良いし、利用するにしても無関心すぎる」
( ^ω^)「そのとおりだお。僕をここに連れてくることに意味があったのかお・・・?」
ξ゚听)ξ「内藤に用でもあったって?けど確かにそうでもない限り生かしておく理由は・・・」



381:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/21(火) 01:44:36.50 ID:HlCnCQJX0
( ^ω^)「けどそれにしては・・・!?・・・ストップだお、ツン。ちょっと話しすぎたお・・・」
ξ゚听)ξ「え?」

誰も近づいていなかったはずの船着場の入り口に、二人組みがたっていた。
内藤を探していた男と、見知らぬ女が。
浜辺にあるいくつかの小屋の一つ、その扉が開いている。
まさかあの小屋に潜んでいたのだろうか。

男「本当に話しすぎだ。逃げ場ないぞ、そこ」
女「だからちょっと話聞いてもらおうかしら?」



382:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/21(火) 01:46:35.05 ID:HlCnCQJX0
( ^ω^)「話・・・?」
男「ああ、まず君をボコって連れてきたのは謝るよ」
女「これは伝統でね。どうしてもこの鮫島で話を聞いてもらいたかった」

相手の二人組みからは敵意は感じられない。
船着場の入り口にたっているため内藤とツンに逃げ場はないのだが、襲ってくる気はないようだ。
内藤はさりげなくツンを後ろに下がらせ、相手の出方を伺った。

( ^ω^)「どういうことだお。あんたらは町田事件に近づいた僕たちを消すのが目的じゃないのかお?」
男「それは違うな・・・消すのは目的じゃない」
女「町田事件に近づいたあなたを引き入れるため・・・一人増えたみたいだけど、そのために携帯を残しておいたんだし別に良いわ」
ξ゚听)ξ「増えたって私のことね・・・引き入れる・・・?」

男「そう。引き入れ、勧誘、後継・・・。ちなみに俺の名前は町田」
女「そして、私も町田・・・」



388:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/21(火) 02:02:44.31 ID:HlCnCQJX0
( ^ω^)「町田・・・!?二人とも・・・?」
ξ゚听)ξ「なにを・・・」

こちらを混乱させるのが目的、という感じではない。
町田と名乗った二人組みは大真面目な顔をしている。
男は、後継といった。
後を継ぐとは何を継ぐというのか。

町田A「町田というのは個人じゃないんだ。もとは個人だったんだろうけど、今は違う」
町田B「あなた達のように、町田事件に近づける人。それが町田になる条件」

二人組が言うには、町田というのは一種の思想や概念のようなものらしい。
数十年前にいたとされる町田という人物の考えを受け継ぐ人間が、町田という名を名乗る。
神出鬼没であり、時に行動理念が理解できなかったりする理由がそれだった。
複数いるから、神出鬼没で、且つ理念に違いがでる場合がある。
そして、複数だからこそ町田は捕まらない。

( ^ω^)「・・・嘘こけだお。大体なんのためにそんな事をするお?」
ξ゚听)ξ「ビデオ販売や柏台事件の犯人もあんた達なの・・・?」
町田A「違う。それは先代の町田だ」
町田B「先代は偉大だったわ。今の町田事件、鮫島事件のほとんどは先代の仕業なのよ



392:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/21(火) 02:30:52.23 ID:HlCnCQJX0
内藤たちの前にいる2人組みは、先代とやらの偉業を語りだす。
その先代の町田は一人だったそうだ。
基本的に町田の思想というのは反国家的なものであるため、政府へのイメージダウンなどを、政府を蝕むことを目的としているらしい。
町田事件を分割し隠す5つの鍵のうちの一つ。
今まで詳細がわからなかった死刑執行の都市伝説は、この先代の事のようだ。
先代町田は政府に都合の悪いネタを偶然掴み、捕まった。
そのころの町田は1人だった上に、捕まえた公安も町田という名前は知らなかったため、普通の事件として処理しただろう。
だが、本当に偶然、先代町田は死刑執行後も死ななかった。
執行後に逃れた町田は自分の恨みも重なり、政府ですら覚えていないような実験ビデオを販売、町田の存在を偶然嗅ぎつけた鮫島捜査官を消し、数々の隠蔽工作を行った。

町田A「その辺の詳しいことは君達も知っているだろう」
町田B「政府を蝕む、という点では地味に思うかもしれないけど、その活動は町田事件という日本最大級の都市伝説を形成するに至ったわ」

そして、その当時町田事件を追いかけていた男女に町田の名を譲り、姿を消した。
今その先代がどこで何をしているのかはわからない。

町田A「俺たちも最近公安に目をつけられ始めたらしくてな」
町田B「まだ捕まらないと思うけど、町田という存在は掴み難ければ掴み難いほど良い」
( ^ω^)「・・・だから素質がありそうな僕たちを後継者にしようってのかお?そんな事にメリットがあるとは思えないお」
ξ゚听)ξ「メリット・・・そうよ、なんの利があってそんな危ない橋を・・・あなたたちだって捕まる危険を冒してまで・・・」



402:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/21(火) 03:07:56.37 ID:HlCnCQJX0
町田A「メリットといわれてもな・・・それは人それぞれじゃないかな」
町田B「お金、復讐、愉快犯、理想・・・とかね」
( ^ω^)「金や愉快犯なんて論外だお。復讐だって別に褒められたことじゃないお・・・」
ξ゚听)ξ「理想って何よ、犯罪にかわりはないでしょうに」
町田A「理想か・・・お前たちは今の日本はダメだと思わないか?」
町田B「私達は日本を憂いて町田として活動しているの。真に憂国の士としてね」

町田二人組みは、日本を正しい方向に軌道修正するために活動しているという。
欧米に傾きすぎ、特定亜細亜との待遇にある差や、戦時中の賠償責任。
日本は隣国との連携を強くすべきである。等等。
その活動の裏には某政党や宗教団体がついているとも。

( ^ω^)「・・・バカじゃないのかお。あんたらは日本を売り渡すために、わざわざひーこら言ってるっていうのかお」
ξ゚听)ξ「あんたら本当に日本人なの?たしかに日本はダメかもしれないけど、あんたらの言ってることはもっとダメだわ」

町田二人組の主張はおかしかった。
明らかに某宗教団体に洗脳されているとしか思えない。
そんな奴らが偶然町田事件を調べ、先代町田とやらに見初められたというのなら、世も末としか言いようが無い。
おそらく周囲の人間にもそう言われて町田を継いだのだろう。
その反論に、二人の顔色が変わった。

町田A「・・・この日ノ本原理主義者め」
町田B「期待はずれだわ・・・」



66:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 02:00:26.47 ID:KFJLT+O70
( ^ω^)「期待はずれなんてよく言うお。結局あんたらは町田の思想じゃなくて自分の主張を押し付けてるだけじゃないかお」

町田二人組みは無言だった。懐に手をいれ、スタンガンを取り出す。
内藤たちに逃げ場はない。
ツンの前に立ち、内藤は身構えた。
町田二人組はゆっくりと歩いてくる。
啖呵を切ったは良いが、内藤たちに逃げ場がない以上取っ組み合わなければならない。

町田A「残念だよ」

内藤たちの目の前まで迫った町田Aがスタンガンを構える。
飛び道具でない分マシだが、当たれば終わりではある。

( ^ω^) (・・・謝っちゃおうかお・・・とりあえずこの男は何とかして・・・)

内藤がどう出るか思案する間もなく、町田Aは腕に力を入れる。
内藤の体が強張った瞬間、内藤の背後からツンが飛び出した。



71:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 02:05:42.29 ID:KFJLT+O70
ξ゚听)ξ「えい」
町田A「!?おぅっ・・・!」

ツンが手を突き出す。
突き出したツンの手には痴漢撃退用スプレーが握られていた。
突然飛び出てきたツンにスプレーを吹きかけられ、町田Aが怯む。

( ^ω^)「あ、隙ありだお!」

内藤はその隙を見逃さなかった。
横合いから思いっきり体当たり、船着場から一気に町田Aを突き落とす。
水飛沫を上げて派手に海に落ちた町田Aを見て、少し離れていた町田Bが駆け出してくる。

ξ゚听)ξ「よっ・・と」
町田B「くっ!」

だが、町田Bもツンのスプレーをあっさり食らい立ち止まった。
町田Aと同様に町田Bを海に突き落とし、内藤はツンの手を引いて走りだす。

( ^ω^)「ナイスだお、ツン・・・ていうか手馴れすぎだお」
ξ゚听)ξ「痴漢に会うなんて茶飯事だから慣れちゃってね・・・これからどうするの?」



78:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 02:14:11.96 ID:KFJLT+O70
ξ゚听)ξ「先生に連絡しましょう。それと、警察にも」

ツンは走りながら携帯を取り出した。
内藤は後ろを警戒しながら林のほうへツンを誘導する。
小屋のときと違って、今度は町田たちもすぐ追いかけてくるだろう。
追いつかれる前にどこかに隠れたほうが良い。

( ^ω^)「ツン、この木に登るお。隠れるには最適だお」
ξ゚听)ξ「は?木の上・・・?」

内藤は昨日隠れていた木に隠れるつもりだった。
しぶるツンを説得し、なんとか無事に木の上に登る。
まだ町田たちは追いついていないようだ。海に突き落としたのは良い判断だったようだ。
近くにこられてもばれないように葉の多い枝に陣取り、息を殺す。

ξ゚听)ξ「・・・電話はまずいわね。メールで先生に・・・警察にも連絡してくれるように言っておくわ」
( ^ω^)「頼んだお。それとツン、カロリーメイト食べてもいいかお?」
ξ゚听)ξ「だめ」
( ^ω^)「・・・お願いだお」
ξ゚听)ξ「だめ。静かにしてないと見つかるわよ」
( ^ω^)「・・・カロリーメイト・・・」



TOPに戻る