( ^ω^)ブーンがあの事件に挑むようです


83:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 02:32:22.52 ID:KFJLT+O70
鹿児島のある港。
そこに、鮫島から一隻の漁船が帰ってきた。
停泊した船から人の良さそうな漁師がでてくる。

漁師「いんやー鮫島は遠いやねぇ。肩こったー」

ツンを鮫島まで送った漁師だった。
この港から鮫島まで行くには片道2時間もかかる。
さっき送ってきた少女はあんな辺鄙な島に何の用があるのだろうか。

漁師「ま・・・別に関係ないやね。自然が好きかなんかやろ」

漁師は港のそばにあるいきつけの飲み屋で馴染みの店主と雑談を交わしたあと帰路についた。
いい具合に日が焼け、水平線が赤く染まっている。
夕焼け空を眺める漁師の背後に、三人組がたっていた。
一人は携帯を開いている。

('A`)「あー、すんません。ちょっと」
漁師「んあ?なんだぁね?」
(*゚∀゚)「いきなりで申し訳ないんですけど・・・鮫島まで連れて行ってくれませんか?」
漁師「・・・まーた鮫島かい。あの島でなんかあるのかねぇ・・・」



89:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 02:50:29.81 ID:KFJLT+O70
ξ゚听)ξ「メール、送ったわよ内藤」
( ^ω^)「把握したお。先生は何て・・・」
ξ゚听)ξ「もう港に来てるんですって。私が書き置いてきた日記見たって・・・乙女の日記を速攻読むなんて何考えてるのかしら」
( ^ω^)「覗き趣味でもあるんじゃないかお?」

ツンの日記はどうでも良いとして、すでに港まで来ているのなら僥倖だ。
すぐに来てくれるとすれば、あと数時間で鮫島につくだろう。
内藤は木の下を確認した。
足跡などの痕跡はない。この木の上で隠れ切れればショボンが来てくれる。
警察にも連絡してくれているはずだから、町田たちを取り押さえることが出来れば即引渡しもできるだろう。
そうすればこの一連の騒動も終わるはずだ。
そもそもツンの行方を捜すために首を突っ込んだのに、必要以上に町田事件に近づいてしまった。
その報いとして厄介なことになっているのだろうが、それも後少しで終わる。

( ^ω^)「・・・そういえばツンが鮫島事件に首突っ込まなかったら良かったんじゃ・・・」
ξ゚听)ξ「何かいった?」
( ^ω^)「いや・・・カロリーメイト食べたいなぁって・・・」
ξ゚听)ξ「だめ。私が食べるんだから。まぁ、どうしてもって言うなら考えなくもないけどね」
( ^ω^)「カロリーメイトにそこまでしなくても・・・」



92:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 03:04:12.75 ID:KFJLT+O70
ξ゚听)ξ「あんただってしつこい癖に・・・待って内藤、静かに」
( ^ω^)「・・・来たかお。ばれないと思うけど・・・」

ツンの視線の先、内藤たちがいる木の下に町田二人組みがいた。
スタンガン片手に内藤たちを探している。
体は濡れているが、スタンガンだけは拭いたようだ。
海に突き落としたときに感電するかとも思ったが、別になんともなかったようだ。

町田A「くそ、どこ行った・・・」
町田B「情けないわ、あんなにあっさり・・・」

かなり注意深く探しているようだが、上には注意を向けていない。
内藤とツンは息を殺して町田たちを観察する。
船着場での反応といい今の言動といい、あまり知能犯という印象は受けない。
ただ単に町田と名乗っているだけのようにすら思える。
結局町田たちは木の上に視線を向けすらせずに通り過ぎていった。

( ^ω^)「いったお・・・それにしてもあいつら、それほど頭が良いようには思えないお」
ξ゚听)ξ「町田は思想や概念の類って言ってたけど・・・なんなのかしら。町田の思想っていうのはあいつらの言ってたような考えなの?」



95:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 03:19:35.94 ID:KFJLT+O70
( ^ω^)「町田の思想・・・町田という概念。そんなに単純なものならとっくに捕まってなくなってるんじゃないかお?」
ξ゚听)ξ「ええ・・・どんな思想かは知らないけど、政府に仇をなすっていうのは確かみたいだし」
( ^ω^)「それがあんな陳腐なことを言うかお・・・?」

町田事件という大掛かりな事件まで作り出し、名前すら冠するに至ったのだから先代の町田とやらは随分頭が良かったのだろう。
それが後継に選ぶからには、それなりの理由があったはずだ。
本当に理想の合致だろうか。
今内藤たちを探している町田二人組みの目的は、単純に言えば政府のイメージダウンを促し大陸側への影響力を弱める、といったもののようだ。
だがそれが町田という思想の目的なら、もっと表立って活動もできるはずだ。
存在を巧妙に隠しながら数十年も動く理由としては少し弱い気がする。

( ^ω^)「なんにせよあの二人組みが町田だっていうからには、今の町田の行動理由は奴らがいってた事なのかお」
ξ゚听)ξ「そうね・・・思想なんて磨耗するわ。結局は町田っていう隠れ蓑を使って自己満足してるだけなのかもね・・・」



152:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 15:52:21.55 ID:we/SY8Tt0
内藤とツンは小声で話を続けた。
先代の町田からの後継があの二人のみだとすれば、あの二人を捕まえる事が出来れば町田事件は終わる。
町田という存在も途絶え、2chで鮫島事件、町田事件に興味をもつ人間も減っていくだろう。
ツンの興味から巻き込まれた事件だが、内藤は今捕まって消されるか、捕まえて終わらせるかの重要な分岐にさしかかっていた。
捕まえると行っても、内藤たちが向かっていく必要はない。
ショボンが警察を連れてきてくれるとすれば、それまで見つからずにいれば良いのだ。
あと数時間、この木の上でじっとしていれば町田事件は終わる。
それを確認し、内藤とツンはカロリーメイトをわけあった。

ξ゚听)ξ「・・・暗くなってきたわね。どれくらいで先生来るかしら・・・」
( ^ω^)「港で船を探して警察もつれて・・・だと、時間が掛かるかもしれないお。それでも今日中には来てくれるはずだお」
ξ゚听)ξ「そうね。はやくき・・・あっ」

わずかに動かしたツンの足が、狭い枝の上に置かれたペットボトルに当たった。
中身が半分ほど残っている500mlのペットボトルが眼下のしげみに落下し、大きな音をたてる。
少しして、ペットボトルの落ちた茂みにライトの光があたった。



156:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 16:13:46.83 ID:we/SY8Tt0
( ^ω^)「ちょwwwねーよwww」

ライトに照らされたしげみの中に落としたペットボトルが見える。
内藤とツンは体を強張らせ息を殺したが、ライトの持ち主はどんどん近づいてくる。
ショボンが来るにはまだ早い。ツンの迎えの漁師でもないだろう。
間違いなく町田だ。
ライトの光は一つしかない。二人で1つのライトを使っているのだろうか。
近づいてきたライトが持ち主の体を照らす。体格、服装からして、町田の男のほうだった。

町田A「・・・イタチか何かか?ここら辺で・・・」

茂みを覗き込む町田Aの動きが止まる。
町田Aは茂みの中に手をいれ、ペットボトルを拾い上げた。
左右を見渡し、しばらくして上を向く。
木の上を見つめる町田Aは、とんでもなく嫌な目をしていた。
薄ら笑いを浮かべてじっくりと1本ずつ枝にライトをあてていく。

(;^ω^) (・・・これは・・・見つかるかも知れんお。ていうか多分見つかるお)
ξ゚听)ξ (相手は一人だしやっちゃいましょう。内藤がここから飛んでぶつかればいけるんじゃない?)
(;^ω^) (そんなに簡単に言うならツンがやれば良いと思うお・・・)

内藤たちの隠れている場所にライトが当たる。
下方からは葉で見えにくいはずだが、少しでも動けばばれるだろう。



163:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 16:28:54.40 ID:we/SY8Tt0
町田Aは葉の集まった枝にライトをあて、注意深く観察する。
その枝はちょうどペットボトルが落ちてあった茂みの真上だ。
内藤たちが上にいるとは限らない。もしかしたら遠くから放り投げただけで、とっくに別の場所に逃げた可能性もある。
だが、ペットボトルの落ちていた茂みの真上に、偶然葉の多い枝があるのが気になった。

町田A「怪しいな。こっから見えないのが怪しい・・・どれ」

町田Aは太めの石を拾い、葉の中心あたりに投げた。
狙ったのは、ちょうど枝の上。人がいればそこに座っていると思われるくらいの場所だ。
石は葉を突きぬけ、枝の上を通り過ぎていった。
だが、次に投げた石は様子が違う。
枝の上で何かにあたったように、石は勢いを失いそのまま真下に落ちてきた。
枝にあたったような音もしなければ、石が落ちたのはペットボトルが落ちていたすぐそば。

町田A「見つけたぞっと・・・」

町田Aの頬が吊りあがる。
ライトをもつ手と反対の手にスタンガンを持つと、木の幹を蹴りだした。
木の幹を蹴りながら、どうやって引き摺り下ろそうかと町田Aが考えた時、枝の上から何かが飛び出した。



166:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 16:38:35.86 ID:we/SY8Tt0
町田A「ふひっ!バカめ!」

おそらく突然飛び降りて嘘をつこうとしたのだろう。
だが町田Aはひるまなかった。
飛び出した相手が着地する前にスタンガンを振るう。
思い切り降ったスタンガンは相手の腹に突き刺さり、電流で気絶する。

町田A「あ?」

そのはずだった。
だが、町田Aのスタンガンは空を切る。
そこに降り立ったはずの相手は居らず、茂みに何かが埋まっていた。
それが町田Aが探していた二人組の片割れの女が持っていたバッグだと気付いた時、町田Aの首に衝撃が走った。



176:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 16:49:27.72 ID:we/SY8Tt0
( ^ω^)「ひっかかったお!」

町田Aは、苦し紛れに内藤が落としたツンのバッグに反応した。
内藤は茂みを覗き込むような体勢の町田Aの延髄目掛けて、全体重をのせて降り立った。
降ってきた内藤に踏まれ、町田Aはカエルのように地面に突っ伏す。

( ^ω^)「スタンガンなんて微妙な武器もってんじゃねーおwww」

内藤は町田Aが立ち上がる前にスタンガンを拾い上げた。
使い方はわからないが、スイッチは既にはいっている。
スタンガンの先端に青い電光を確認した内藤は、躊躇なく呻いている町田Aに押し付けた。
洗濯バサミの外れたような音がして、町田Aの体が一度大きく跳ね上がる。
そのまま崩れ落ち、時折痙攣しながら町田Aは意識を失った。

ξ゚听)ξ「最近のスタンガンって凶悪ね・・・」

町田Aが気絶したのを見届けて、ツンがゆっくり木から下りてくる。
内藤は町田Aの持ち物を物色していた。

ξ゚听)ξ「・・・なにしてんの内藤?何か役に立ちそうなものでもある?」
( ^ω^)「たいしたものは持ってないお。食料くらい持ってて欲しかったお・・・」
ξ゚听)ξ「食べ物は後で食べられるから我慢しなさい・・・とりあえずこいつ縛っときましょう」



183:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 17:06:18.27 ID:we/SY8Tt0
( ^ω^)「縛るって・・・ロープなんかないお」
ξ゚听)ξ「そいつの服脱がして縛れば良いじゃない。私後ろ向いてるから早くね」
( ^ω^)「ツン・・・恐ろしい子・・・!」

内藤は町田Aの服を脱がし、それをロープ代わりにして木の幹に縛り付けた。
可哀想だからパンツは残しておく。というより、触るのが嫌だった。
スタンガンとライトを頂いた後、町田Aを放置して場所を変える。
町田Aが一人だったという事は、残る女町田のほうもどこかで内藤たちを探しているのだろう。

( ^ω^)「・・・ということは、特殊学級跡にもどれば食べ物くらいあるんじゃ・・・」
ξ゚听)ξ「あんたそんなにお腹減ってんの?」

おそらく町田たちは特殊学級跡を拠点としているはずだ。
となると、食料や水もあるだろう。
さらに言えば、あれは鮫島でもっとも建物らしい建物だ。
鍵も掛かるし、スタンガンしか持っていないはずの町田Bを相手になら十分立て篭もれる。
これは内藤が空腹のあまり思いついた理屈だったが、ツンもたしかにこの寒空の中で外を逃げ回るのは嫌だった。

ξ゚听)ξ「・・・そうね。灯台下暗しって言うし、あんがい見つからないかも・・・」



191:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 17:26:28.83 ID:we/SY8Tt0
内藤とツンは特殊学級跡のそばにある林から、特殊学級の教室を見つめていた。
電気など通っていないだろうから明かりの有無なんかでは中に人がいるかどうかわからない。
だがそれでも、中に人がいるならライトの光が見えるはずだ。

( ^ω^)「いってみるお、ツン」
ξ゚听)ξ「・・・そうね。カーテンを閉めてるのが気になるけど、それでも全然気配はないし・・・近付くくらいなら大丈夫だと思うわ」

内藤とツンは林から出て、特殊学級の壁に寄り添う形で進んでいった。
カーテンの隙間から教室の中を覗いてみるが、どの部屋にも町田の姿はない。
二人は特殊学級の中にはいり、入り口に鍵をしめた。
内藤が捕まっていた教室には何もない。もう一つの教室も似たようなものだった。
町田たちが使っていたのは職員室のようだ。

( ^ω^)「お・・・リュックがあるお。やっぱりここに陣取ってたんだお」
ξ゚听)ξ「内藤、こっちのリュック食べ物はいってるわよ。コンビニ弁当とか」
( ^ω^)「そこkwsk」

職員室の机の上には2つのリュックがあった。
ツンが開けたリュックの中にはおにぎりやパン、弁当などが入っている。
内藤はそれを見るやすさまじい速さで封を切り、次々に平らげて行った。
ツンはしっかり自分の分をキープしつつ、残りのリュックを開ける。

ξ゚听)ξ「・・・!これ、ピストル・・・?」

リュックの中からは雑用品に混じって拳銃が出てきた。
それも、一丁だけ。一丁しか持っていなかったのか、それとも。

ξ゚听)ξ「あの女のほう、ピストル持ってるんじゃないでしょうね・・・」



208:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 18:18:09.44 ID:we/SY8Tt0
ξ゚听)ξ「・・・内藤、やっぱりどこかに隠れましょう。女のほうの町田、ピストルもってるかも・・・」
( ^ω^)「ぶふぉっ!ピストルって拳銃かお?マジデ?」

盛大に噴出されたコンビニ弁当を避け、ツンは頷いた。
リュックから出てきた拳銃を見せると、内藤もツンの言わんとしている事を理解したようだ。
残った食料を全部リュックにつめ、肩にかるって立ち上がる。

( ^ω^)「二人組みだから拳銃が1つしかないのはおかしい・・・ってことかお」
ξ゚听)ξ「ええ・・・スタンガンくらいなら何とかなるとしても、撃たれるとどうしようもないわ・・・見つかってもここに篭城すれば良いって訳にはいかないわね」
( ^ω^)「・・・じゃあ移動するかお・・・戻ってこられた面倒だお」

内藤は職員室のドアをあけ、廊下の様子を窺う。
内藤が食料をむさぼっていた時間はそう長くない。さすがにまだ町田Bが戻ってきていない。
ツンも拳銃が出てきたリュックに出てきたものを詰めなおし後に続いた。
先ほど鍵を閉めた入り口に向かい、鍵を外す。
ツンは外に出る前にドアを開けっぱなしの職員室を振り向いた。
拳銃が出てきたリュックは、最初よりすこし小さくなっているように見える。
ちょうど何かを取り出したように。



224:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 18:32:52.78 ID:we/SY8Tt0
入り口の扉をあけ、内藤が顔をだした。まず左を向いて安全を確認する。
次に右を向く。
内藤の顔のすぐ右手に、何か黒い塊があった。
暗くてよく見えないが、何か穴が開いていて、こっちを向いているような・・・。

(;^ω^)「あ゛・・・」
町田B「お久しぶり・・・」

入り口から顔を覗かせたまま内藤が固まる。
町田Bは拳銃を突きつけたまま、内藤に中にはいるように促した。
ツンが後ずさりスペースを開けると、内藤も後退する。
町田Bは勝ち誇ったように笑っていた。

町田B「手間をかけさせて・・・おとなしく私たちの後を継げば良かったのに」
ξ゚听)ξ「・・・じゃあもし継ぐって言ってたらどうなったの?あなたたちと仲良く犯罪者?」

圧倒的不利なこの状況で、ツンは町田Bを睨み付けた。
内藤の横に歩み出て町田Bに張り合ったツンを見て、内藤は困惑した。

(;^ω^) (ちょ、なに挑発してんだお。撃たれちゃうお)



231:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 18:53:25.15 ID:we/SY8Tt0
引き金はすぐにはひかれなかった。
反抗してきたツンが面白いのか、町田Bの笑みは崩れない。

町田B「気丈な娘ね。そうよ、私たちと協力して一緒にこの日本を・・・」
ξ゚听)ξ「嘘ね。公安に嗅ぎ付けられかけてるって言っといて一緒に、なんて・・・私たちを囮にして公安をやり過ごすつもりなんでしょう?」
町田B「・・・ふん」

図星なのだろう、町田Bの表情が固まる。
内藤をここまで連れてきた理由が跡継ぎとして使うためなら、わざわざ鮫島に来た理由も分かる気がした。
ただ単に町田という思想を受け継いで欲しいだけなら、鮫島まで連れてくる必要はない。
だが公安への囮、ダミーとして使うのならば。おそらくこの鮫島で町田たちの知っている情報を与え、一足先に町田たちが帰った後で公安が内藤を捕まえる。
そんな感じの算段だったのではないか。
町田Bは表情を固めたままため息をついた。

町田B「・・・否定はしないわ。たしかに、身代わりはほしかった・・・」
( ^ω^)「・・・ツン、さがるお。危ないお・・・」
ξ゚听)ξ「大丈夫よ内藤・・・さっき持ってきたから」

ツンは隠していた拳銃を町田Bにむけて勢いよく取り出した。
わずかに震える手でしっかりと拳銃を握る。

ξ゚听)ξ「これで条件は同じ・・・いえ、こっちは2人だからあなたが不利よ」



238:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 19:27:54.53 ID:we/SY8Tt0
町田B「あなた・・・使い方知ってるの?」

町田Bは驚きもせずに冷ややかに言い放った。
固まっていたその表情はわずかに変化し、呆れたようにさえ見える表情を浮かべている。
ツンは無言で拳銃を向けている。
手の震えが増したように見えるのは、動揺しているのだろう。
内藤は拳銃を見た。

( ^ω^)「・・・大丈夫だお、ツン。ロックの類はかかってないお。あとは引き金を引けば弾が出るお」
ξ゚听)ξ「・・・なんでわかんのよ」
( ^ω^)「僕はガンオタだお。ちなみにそれはベレッタM93Rだお。特徴は3点バー・・・」
ξ゚听)ξ「わかったわ。・・・どうするの町田さん、弾撃てるらしいわよ・・・」

ちなみに内藤のいっていたのはハッタリだ。
拳銃の名前はあっているが、内藤は安全装置やら何やらのことは知らない。
それでも詳しいふりをすれば町田Bへの牽制になるはずだ。
拳銃が撃てる状態だと思わせても、ツンが実際撃てるかどうかを町田Bは考えるだろう。
内藤もツンに人を撃ってほしくはなかった。
ツンの手に自分の手を重ね、拳銃を受け取る。

ξ゚听)ξ「内藤・・・」
( ^ω^)「ツンはやらなくて良いお。いざという時は僕が・・・」

内藤がツンに変わり拳銃を構える。
その手は震えていなかった。火事場の馬鹿力というか、内藤はピンチになると胆が据わるようだ。
だが、本当に撃ちそうな雰囲気の内藤を前にしても、町田Bは表情を変えない。

町田B「あなたたちね・・・なんでそれ置いていったかわかる?」



244:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 19:36:15.28 ID:we/SY8Tt0
町田B「私より好戦的なはずの私の相棒がなんでそれを置いていったか・・・」
( ^ω^)「・・・!くっ・・・!」

町田Bの言わんとしている事を理解し、内藤は引き金を引いた。
引き金には抵抗がなく、弾丸を発射する変わりに虚しい手ごたえを内藤に伝える。
町田Bは適当に狙いをつけているようだ。というより、専門的な知識はないのだろう。
おおまかに狙いをつけたその銃口は、ツンに向いていた。
内藤はとっさにツンを抱きこみ身を捻る。

町田B「それね、壊れてるのよ」

ツンが声にならない悲鳴を上げる。
内藤に抱きかかえられ、庇われながら、ツンは生まれて初めての本物の銃声を聞いた。
ツンがその銃声に目を瞑る前に少しだけ内藤と目があった。
内藤は、ツンにむけて笑いかける。



250:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 19:49:47.69 ID:we/SY8Tt0
ξ゚听)ξ「・・・っ!」

はじめて聞く銃声は、想像と違ってあまり迫力がなかった。
体はなんともない。
それでも、瞑った眼を開きたくなかった。
目を開けば抱かかえられている自分の体ごと、内藤が倒れてしまうような気がして。
だが、内藤は倒れなかった。
かわりに何かが地面に落ちる音がする。

ξ゚听)ξ「・・・?」

目を開くと内藤の顔が見える。
内藤は呆けた顔で町田Bのほうを見ていた。
ツンもそれに習い町田Bの方を見る。
町田Bの手に握られた拳銃から硝煙が昇っている。月明かりに照らされ、その硝煙はとても綺麗に見えた。
拳銃を握る町田Bの手は明後日の方向に向けられている。
町田Bの手首を、誰かの手が掴んでいた。

いつのまに近付いていたのか、その手は町田のたっている入り口の横から伸びている。
内藤とツンのいる場所からはその手が誰の手かわからない。
だが、手首にある腕時計には見覚えがある。それは毎日教室で見ていた時計だった。

( ^ω^)「まさか・・・こんなに早く・・・?」

町田Bの手を掴んだまま、手の持ち主が視界にはいってくる。
入り口から町田Bを引き摺るように校舎内にはいってきた男は、見慣れた垂れ眉をしていた。

( ^ω^)「ショボン先生!」
(´・ω・`)「Yes I am.....チッ、チッ、チッ」



273:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU : 2006/03/22(水) 20:46:39.72 ID:we/SY8Tt0
ショボンは町田Bから拳銃を取り上げた。
町田Bの腕を後ろでに極め、取り押さえる。
身動きのとれない町田Bの上に座り、ショボンは取り合げた拳銃を放り投げた。

( ^ω^)「さすがショボン先生だお。僕たちに出来ないことを平然とやってのけるお!そこにしびれる憧れるお!ところで今ついたのかお?」
(´・ω・`)「いや、実は結構前から見てたんだ。どこで出て行けばキマるかなーと思ってな」
ξ゚听)ξ「・・・」

唖然としているツンを意に介さず、ショボンは携帯をとりだし電話をかけた。
どうやら相手はドクオのようだ。
会話内容からすると、船着場にショボンたちが乗ってきた漁船と警察がのってきた漁船が停まっているらしい。

(´・ω・`)「さて・・・途中の林にいた裸の男はドクオが連れて行ってる。あとはこの女を連れてけば終わりだ」
( ^ω^)「無駄に手際がいいお・・・警察ってそんなに早く動くもんかお?」
(´・ω・`)「とりあえず誘拐事件って言ったからな・・・」

ショボンは町田Bを立ち上がらせ、さっさと船着場にむけて歩き出した。
内藤とツンもそれに続く。
船着場につくまでも、警察に引き渡されても町田Bは無言だった。
警察のおっさんに質問されても何も答えずに、黙ったまま船の中に連れて行かれる。
船に入る前に、内藤とツンを見てから町田Bは漁船の中に消えた。



629 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/25(土) 23:25:52.30 ID:07h4Haub0
内藤たちも警官に促され漁船に乗り込む。
ツンを連れてきたあの漁船だった。運転席にいる漁師がツンを見て笑いかける。
船の後ろには既にドクオとつーが座っていた。

('A`)「よう内藤、災難だったな」
( ^ω^)「まったくだお・・・で、なんでドクオも来てるんだお?しかもつーさんまで連れて・・・」 
(*゚∀゚)「鮫島事件絡みって聞いちゃうとねー・・・」

つーはここまでついて来た理由を説明する。
たまたま内藤がいなくなった理由をショボンに尋ね、たまたまショボンが正直に理由を教えた。
その理由が鮫島事件、町田事件絡みで、しかもよくよく話を聞くと、ショボンと内藤はアメリカで失踪したつーの兄、タカラによって多大な情報を得たという。
つまり、自分の兄のせいで真相に大きく近付き、その結果内藤は連れ去られた訳だ。
そのことに責任を感じたつーと、つーを気遣うドクオはショボンへ同行を願い出た。

('A`)「んでまぁ先生と話したり何だりしながら・・・ここまで来たわけよ」
(*゚∀゚)「内藤君たちも無事だったし、これで終りかな、町田事件も・・・」

そうだ、たしかに二人の町田は今逮捕された。
取り調べで何かしら口を割れば今まで町田を名乗った者を捕まえる事さえ出来るかもしれない。
複数存在するとはいえ、秘匿性という点でも同じ時代に存在する町田の人数はそう多くないはずだ。
おそらく今捕まった二人の町田を最後に、町田という存在は真に都市伝説となるだろう



634 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/25(土) 23:44:00.79 ID:07h4Haub0
内藤たちを乗せた船が船着場をはなれる。
町田二人と警官を乗せた船はまだ出港しないようだ。
少しずつ遠ざかる鮫島を眺めながら、内藤は口を開いた。

( ^ω^)「皆、ありがとうだお。おかげで助かったお」
(´・ω・`)「ん・・・まぁ気にするな、無事ならそれでいいさ」
(*゚∀゚)「町田も逮捕されたし、めでたしめでたし、ね」
('A`)「にしても町田ってのが特定個人じゃなかったとはなぁ・・・どうりで捕まらん訳だ」
ξ゚听)ξ「それもあの二人の逮捕で終わるわね・・・結局、本当の真実なんてものはわからなかったけど」

町田二人は取り調べの後、おそらくは刑務所行きになるだろう。
それはつまり、本当の真相の手掛かりがなくなることを意味する。
もともと鮫島事件の真相に興味を持ち鮫島まで赴いたツンからすれば、どうもすっきりしない。
ここ数年にかけて広まった鮫島事件。そして、それに覆い隠された町田事件。
真相は事件を起こした張本人である町田を名乗る人物と、その事件に深く関係した僅かな者しか知りえない筈だ。
それらの人物から話を聞くのももはや叶わず、間接的に真相を知っているかも知れない今代の町田二人も今頃は取り調べの真っ最中。

ξ゚听)ξ「あーぁ・・・結局私に出来る事なんて推理することくらいかぁ・・・」



637 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/26(日) 00:00:43.66 ID:qZI+UZay0
( ^ω^)「ツン、まだそんなこと言ってるのかお?」
(´・ω・`)「こりない奴だな」
ξ゚听)ξ「だぁってぇ・・・気になるじゃない」
('A`)「けど推理つってもなぁ・・・内藤たちの話からすると町田ってのはものの考え方なんだろ?」
(*゚∀゚)「それに基づいて行動を起こすのが町田、っていう・・・一種の役職というか肩書き?なんだよね」
( ^ω^)「そんな感じだと思うお」
('A`)「そんならやっぱその考え方、思想か?それがわかんねぇとなー」
(´・ω・`)「結局は机上の空論ということになるな」

内藤もツンも無事戻ってきたし、もう関わらなくても良いだろう。
そんな雰囲気が場を支配していた。
ショボンの言う通り、事実であるという確認が取れない上に、誰かを助けるとかそういった何かしらの目的がない以上、推理することも端的に言えば無意味だ。

(´・ω・`)「それよりも・・・帰ったら内藤は卒業証書とりに来い。それと俺の家に泊まった時の事を詳しく話してもらおうかな」



638 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/26(日) 00:03:41.04 ID:qZI+UZay0
( ^ω^)・ξ゚听)ξ「・・・!?」
('A`)「先生の家に泊まったぁ?そん時なんかあったのか?」

ショボンの一言で場の流れが変わり、一気に雰囲気が明るくなる。
明るいというより下世話な空気だったが、それでも町田事件絡みの雰囲気は消えうせ、まだ未練のあるツンもその喧騒の中で町田事件が頭から離れていく。
鹿児島の港に戻るまで、船は内藤とツンは部屋で何をしていたか、という話題で賑わいを見せた。
ニュー速市に帰るショボンの車では、疲労の上にさらに質問攻めによる疲労を重ねた内藤とツンが肩に頭を預けあうように眠っている。
ツンが失踪してからというもの、あまりに急な展開で厄介事が起きてきたが、それもようやく終わり。
そんな気にさせてくれるような寝顔だった。

(´・ω・`)「しんどかったが・・・後はあのメスゴリラあたりが上手い事やるだろう。はやく帰ってバーボンでも・・・」

内藤たちが町田二人組みに聞いた話によると、先代の町田というのが公安が主にマークしていた人物のようだ。
捕まった町田二人はその町田から後継として選ばれたのだから、素性を知っているという可能性も大いに在り得る。
おそらく今頃は逮捕を聞きつけた公安9課が鹿児島の港に向かっていることだろう。

(´・ω・`)「公安の尋問で真相が割れ、うまく行けば芋づる式に町田が逮捕されていき、町田思想は消滅。俺ら一般人には知らないところで真相は雲の上、都市伝説はあるべき形へ戻る・・・か」



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