( ^ω^)はパンクバンドのベーシストのようです

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 22:49:01.32 ID:00JpMOdC0


彼の名は内藤ホライゾン。
仲間からは、ブーンと呼ばれていた。

特にイケメンでもないし、
才能があふれているわけでもない。
ごくありふれた、どこにでもいる男。

ただひとつ、パンクロックが大好きだということを除いては・・・。



( ^ω^)はパンクバンドのベーシストのようです
〜ROCK’N’ROLL HIGH SCHOOL編〜



2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 22:51:36.91 ID:00JpMOdC0
パンクロックに出会ったのはいつのことだったか。
高校1年生のころだったか。
音楽は好きで、よく聴いていた。
洋楽のロックが好きで、なんでも聴いていた。
レッドツェッペリンが好きだった。
「天国への階段」を聴きながら、コンポの前に座ってしんみりしていたものだ。
しかし、ひたすらに長いイントロ、ギターソロ、
ただうまい演奏・・・
だんだんと食傷気味になってきて、
自分の好きな音楽がなんなのか、よくわからなくなってしまった



3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 22:52:04.63 ID:00JpMOdC0
そんなとき、友達のショボンの家に遊びに行った。
ショボンは学校では目立たなかったが、友達であるブーンは、
彼がとてもギターがうまいということを知っていた。
音楽が好きだったブーンは、そんなショボンのことを尊敬していた。


( ^ω^)(ショボンはすごいお。同じ歳なのに、ギターがうまくてイケメンだし)


ショボンは学校では音楽の話はほとんどしなかったが、
音楽に詳しいブーンと遊ぶときは、いつも音楽の話をしていた。
ブーンにとっても、それはとても刺激的なことだったのだ。



4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 22:52:52.36 ID:00JpMOdC0
(´・ω・`)「ブーン、パンクって知ってるか?」


唐突に、ショボンが訊いてきた。


( ^ω^)「パンク?名前くらいなら・・・」


そういうジャンルがあることは知っていた。
しかし、テクニックのあるロックばかり聴いていたブーンは、
粗野なイメージのあるパンクを敬遠していて、
聴いたことがなかった。


(´・ω・`)「聴いてみろよ!」


そういって、ショボンが爆音で流した曲、
セックスピストルズの「アナーキーインUK」。
これが、ブーンとパンクのファーストコンタクトだった。



5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 22:53:24.92 ID:00JpMOdC0
( ^ω^)(これはすごいお!!演奏は下手だし、歌もめちゃくちゃだけど、なんかアツイお!!)

ブーンの心臓はドキドキして、なんだかじっとしていられなくなってきた。
ふとショボンを見ると、彼はすでにノリノリで、
流れる曲に合わせて、自分のギターを弾いていた。
それを見たブーンも、エアギターではじけまくった。

ショボンの家から帰宅する途中も、ブーンは興奮したままだった。

( ^ω^)(いままで知らなかったけど、パンクロックが好きになったお。中古CDショップに行くお!!)

学校の近くにある中古CDショップにブーンして突撃し、
ブーンはさっそく、ショボンに聞かせてもらったセックスピストルズのCDを探した。

( ^ω^)「あったお!!!!」

運良くセックスピストルズのCDを発見したとき、思わず彼は叫んでしまった。
他の客たちがこっちを見たので、ブーンは急に恥ずかしくなり、
うつむきながらそそくさと、1000円でセックスピストルズの「勝手にしやがれ!」というCDを買った。
もちろん、スタンプカードにもちゃんとスタンプを押してもらうことも忘れなかった。

( ^ω^)(帰ってはやく聞きたいお)

ブーンはwktkしながら、家までブーンした。



6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 22:53:53.10 ID:00JpMOdC0
それからのブーンは、パンクロック大好き男になった。
セックスピストルズ以外にも、クラッシュやダムド、ラモーンズ、ジョニーサンダース、
イギーポップ・・・
いろんなパンクを聴いた。
けして音楽的に優れているわけでもないし、特別演奏がうまいわけでもない。
だけど、その迫力と圧倒的なリアリティが、ブーンを魅了した。

( ^ω^)みんなかっこいいお。ファッションも好きになってきたお)

知らなかったころは、汚らしい連中だし、ただのDQNかと思っていたが、
いまではひそかな憧れを抱きつつある。
しかし、普通の高校生だったブーンは、アルバイトもしていなかったし、
ファッションにまでお金を使うことはなかった。

( ^ω^)いつか革ジャンが欲しいお!!

ブーンは、卒業したらアルバイトでもして、憧れの革ジャンに袖を通すことを誓った。



7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 22:55:11.94 ID:00JpMOdC0
そんなパンク好きな普通の高校生ブーンに、転機が訪れることになる。
それは、高校2年の夏休み前のことだった。

(´・ω・`)「おうブーン、ちょっと話があるんだけど、いいか?」

いつものように退屈な授業を終え、荷物をまとめていたところだった。
ショボンが声をかけてきた。

( ^ω^)「ショボン、どうしたお?」

部活をやっているわけでもなかったブーンは、二つ返事で話に応じた。

(´・ω・`)「じつは俺、バンドやろうと思ってさ」
( ^ω^)「バンド!?すごいお!!」



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 22:56:28.88 ID:00JpMOdC0
ショボンはギターがうまいし、バンドをやったらうまくやるんじゃないかと思った。
そうしたら、ライブとか見にいきたい。

(´・ω・`)「だけどメンバーが足りなくてさ。ドラムとボーカルは見つかったんだけど・・・」
( ^ω^)「ベースがいないのかお?」
(´・ω・`)「そうなんだよ・・・」

楽器人口では、ギタリストが圧倒的に多い。
ベースやドラムはなかなか見つからないようだ。

(´・ω・`)「それでな、ブーン・・・」
( ^ω^)「うん」

つぎの言葉は、ブーンには予想だにしない言葉だった。

(´・ω・`)「や ら な い か ?」
(;^ω^)「ちょwwwwwww」



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 22:57:07.80 ID:00JpMOdC0
(´・ω・`)「いや、ベーシストをね」
( ^ω^)「僕がベーシストを・・・!?」

考えたこともなかった。
音楽は好きだったが、自分が音楽をやる側になるなど。
そのときふと、ピストルズのベーシスト、シドヴィシャスの姿が頭に浮かんだ。

( ^ω^)(僕もあんなふうになれるのかお・・・?)



10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 22:58:03.02 ID:00JpMOdC0
何の変哲もない普通の高校生活を送っていたブーンにとってそれは、このうえもなく魅力的だった。
毎日退屈な授業、彼女もいない、勉強はそこそこできるが、そこそこどまり。
スポーツができるわけでもない。
だけど、自分が好きな音楽ならば・・・。

( ^ω^)「もうすこし考えさせてもらってもいいかお?」

ブーンは落ち着こうと思い、そう切り出した。

(´・ω・`)「ああ。俺は、お前の音楽の知識が必要なんだ。いい返事待ってるよ」
( ^ω^)「夜にでも電話するお」

そういってブーンは、他に誰もいなくなった教室をあとにした。



11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 22:59:09.25 ID:00JpMOdC0
考えさせてくれなどといったが、ブーンの中ではすでに答えは出ていた。

( ^ω^)やってみたいお。僕もバンドを・・・。

自分がベーシストになって、ライブハウスのステージで演奏しているところを想像してみた。

( ^ω^)(ウフフ・・・かっこいいお・・・)

自然と顔がにやけてしまう。ブーンは、ラモーンズの「電撃バップ」を聴きながら、自分もディーディーラモーンやシドヴィシャスのようになりたいと思った。
普段あまり使わない携帯を手にとり、ショボンにかけてみる。

(´・ω・`)「おうブーン。やってくれるか?」
( ^ω^)「ショボン、うまくできるかどうかわからないけど、やってみたいお。僕、ベースやったことないけど、それでもよかったら・・・」
(´・ω・`)「そっか!!やった!ベースはいまから練習すりゃいいんだよ!」

そのあとは、いつもどおり音楽の話をして、バンドで「あの曲やりたい」とか、そういう話ばかりした。
ブーンはベースができるのか正直不安だったが、ショボンと話しているとそんな不安も吹っ飛び、はやくかっこよく演奏したいという気持ちのほうが大きくなっていった。



12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 23:00:05.30 ID:00JpMOdC0
しかし、ブーンは大事なことを見落としていた。

( ^ω^)「しまった!僕ベースモッテナス・・・!!」

ブーンはカーチャンに頼み込んだ。いままで使わずにとっておいたお年玉を少しだけ使いたいと。
カーチャンとトーチャンと話し合い、ベースという楽器が欲しいということを説明した。
ブーンは自分の気持ちを人に説明するのが苦手だったが、このときは必死に自分の情熱を説明した。両親はそんな息子に少し驚いていたが、そんなにいうならと、許してくれた。

J( 'ー`)し「あんたがそんなにやりたいことなら、やってみなさい!途中で投げ出したりしちゃダメだからね!!」

ブーンはカーチャンに感謝した。
そしてそれから、ベースマガジンを読んだりして、どういうベースを買おうか悩んだ。
結局、実際に見てみたいと思い、ショボンとふたりで放課後、駅前の楽器屋に偵察に行った。

いろんな楽器が並んでいたが、それらはブーンの目には入らなかった。目指すのはただひとつ、ベースのコーナーだけ。

( ^ω^)(いろんなベースがあるお・・・。どれにしたらいいんだお・・・)

まったく素人のブーンには、違いがよくわからなかった。
そのとき・・・



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 23:01:21.57 ID:00JpMOdC0
( ^ω^)(これはかっこいいお!!)

白いボディに黒いピックガードがついたベースが、ブーンの目にとまった。

( ^ω^)(たしか、シドヴィシャスもこんなの使ってたお)

ブーンはそのベースが気になり、ショボンに意見を求めようとした。しかし、ショボンはひとりでギターコーナーにおり、ためし弾きをしようとしていた。
ブーンはそのベースに触ろうと手をのばしたが、とつぜん動きが固まってしまった。そのベースについている値札が目に入ったからだ。

( ^ω^)(ちょwwww20万・・・テラタカス!!!!)

とてもじゃないが、無理だった。どうやら、ブランド物のようだ。いくらかっこよくても、予算オーバーしっては買えない。

( ´ω`)「残念だお・・・」

失意のブーンに、いつのまにかベースコーナーにきていたショボンが声をかけた。

(´・ω・`)「ブーン、これなんかいいんじゃないか?」

ショボンが指したのは、さきほどブーンがイイ!と思ったベースと同じ形だった。しかし、値段は4万円だった。

( ^ω^)「見た目は同じなのに、値段が安いお!!どうしてだお?」
(´・ω・`)「これは子会社がつくったコピーモデルだな。けど、十分いい音出るんじゃないか?弾かせてもらってみろよ!!」
(;^ω^)「ちょwwww」

ブーンの静止も聞かず、ショボンは店員を連れてきた。



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 23:02:28.80 ID:00JpMOdC0
ショボンが勝手に話をすすめ、店員がベースを取って、なにやらセッティングしはじめた。

( ^ω^)「ショボン!僕何も弾けないお!!」
(´・ω・`)「音出すだけだよ。そんなに緊張すんなって!!」

そう言われても、ブーンは緊張してしまっていた。店内には、他の客もいるし、店員だっている。もし自分が素人だとバrてしまったらどうしようか。素人のクセに、ブーンはそんなことを考えていた。
やがてセッティングが終わったらしく、店員がベースを渡してくれた。
初めて触るベース。ズッシリと重たかった。椅子に腰掛け、見よう見まねで構えてみる。

(´・ω・`)「なかなか似合ってるじゃん!はやく音出してみろよ!!」
(;^ω^)「う、うん・・・」

緊張した面持ちで、ブーンは弦に指をかけた。そして、はじいてみる。

ボーン!

生まれて初めて、自分でエレキベースの音を出した。そのことに、ブーンは興奮した。



16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 23:03:22.81 ID:00JpMOdC0
なんだか急に恥ずかしくなり、ブーンは苦笑いした。そしてそれ以上弾くことなく、ベースを店員に返してしまった。

(´・ω・`)「もういいのかよ?」
(;^ω^)「うん・・・」

ブーンはそそくさと立ち上がり、ベースコーナーから移動した。気持ちを落ち着け、ショボンに向かって口を開く。

( ^ω^)「ショボン、僕あのベースにするお!」
(´・ω・`)「そうか!」

お金は家にあるので、ブーンは後日買いに来ることにして、ベースを売約済みにしてもらった。このベースが自分のものになるということにまだ実感はわかなかったが、とてもうれしかった。


次の日、ブーンは4万円を握り締めて、ベースを買いに走った。売約済みにしたけど、もし売れてたらどうしようなどと、ありえない不安を抱えながら。
当然のことだが、ベースはちゃんとあり、ブーンは代金を支払った。エレキベースとベースケース、教則本などがセットでついてきて、ブーンは大きな荷物を抱えたまま、家へとブーンした。



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 23:05:24.75 ID:00JpMOdC0

早く家に帰って、ベースを弾いてみたかった。押さえられぬ興奮とケースに入ったベースを抱え、ブーンはブーンする。

( ^ω^)(僕はついにベースを手に入れたお!たくさん練習するお!!)

家について、さっそくベースを取り出してみる。いまだに信じられないような気持ちだったが、たしかにこれは、ブーンのベースなのだ。
セットでついてきたダサいストラップを装着し、ブーンは鏡の前でベースを抱えてみた。

( ^ω^)(かっこいいお・・・!!)

鏡の前でかっこつけてみる。まるでヒーローになったかのような気分だった。
ブーンはショボンに電話した。

(´・ω・`)「もしもし」
( ^ω^)「ショボン!ついに買ったお!!」
(´・ω・`)「おお!!そうか!これでお前もベーシストだな!」

ベーシストという言葉は、ブーンにとって魅惑的な響きを持っていた。まだ弾けもしないくせに、ブーンはなんだか無敵になったような気がした。

(´・ω・`)「これでバンドメンバーがそろったわけだな。さっそくなんだけど、メンバーと顔合わせしないか?」
( ^ω^)「いいお!」
(´・ω・`)「明日は土曜で休みだから、昼頃待ち合わせな」
( ^ω^)「わかったお!また明日電話するお!」

ブーンは、新しい未来がひらけたような気がして、wktkしていた。



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/07(日) 23:06:30.14 ID:00JpMOdC0
その日の夜は、教則本を見ながらベースを弾いたりしていた。指先がボロボロになって痛かったけど、ブーンにとっては些細なことだった。
とにかくベースを弾けることが嬉しくて、夜遅くまで弾いていた。

次の日、ブーンが待ち合わせ場所に行くと、すでにショボンが待っていた。

(´・ω・`)「ようブーン!まだほかのメンバーきてないんだよ」
( ^ω^)「どんな人なのか気になるお・・・」

ショボンの話では、ボーカルとドラムは違う学校に通う高校生で、歳は自分たちと同じらしい。ショボンと中学が一緒で、おもしろい奴らだと言っていた。

「おー待たせたな!」

ショボンとしゃべっていると、うしろから声をかけられた。

(´・ω・`)「ドクオにジョルジュ!5分遅刻だぞ!」

そこに、ふたりの男が立っていた。
ひとりは痩せていて、髪を逆立てた眼光鋭い男だった。
もうひとりはがっしりした、スポーツマンのような男である。

('A`)「わりいわりい。コイツがナンパはじめやがってよ〜」
( ゚∀゚)「おまえがいなけりゃゲットしてたんだよっ」

これが、この4人の最初の出会いであった。



戻る次のページ