( ^ω^)はパンクバンドのベーシストのようです
- 74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:37:25.68 ID:TA/xXrD20
- 日曜日。
昼過ぎに、ブーンは起きた。昨日はライブのあと打ち上げに参加して、朝がたまで飲んでいた。
他のバンドのメンバーとも盛り上がり、吐くまで飲んで、スッキリとして帰ってきた。
そのままばったりとベッドに倒れこみ、たったいま目覚めたところだった。体中が痛い。
寝癖のついた頭をかきながら、ブーンは音楽をかけた。
ロバートジョンソンのブルースだった。二日酔いにはなってないようだったが、ひどく疲れている。
ふと、携帯が点滅しているのに気付いた。
( ´ω`)(なんだお・・・)
普段あまり使わない携帯だったので、ブーンは不信に思って、携帯を開いてみた。
どうやら、メールがきているようだ。
「おはよう!今日は何か予定あるの?」
メールの本文には、そう書かれていた。
( ´ω`)(いったい誰だお・・・)
少しだけ考えていると、次第に頭がはっきりしてくる。ブーンは気付いた。
(;^ω^)「ツン・・・!!」
- 78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:38:20.26 ID:TA/xXrD20
- 昨日アドレスを交換したので、メールを送ってくれたのだ。
受信したのは、朝の9時くらい。いまはすでに、午後1時だ。
ブーンは、あわててメールを返信した。
まずは返信が遅くなったことを謝り、今日は特に予定もなく、暇だということを書いた。
どうせ返事はすぐにはこないだろうと思い、ブーンはトイレで一息ついた。
昨日飲んだせいか、たくさんおしっこが出る。
突然、メールの受信を知らせる着信音がなった。
ブーンは動揺して、思わず勢いよくおしっこを放出し終えてしまった。
そそくさとジーパンのファスナーをあげると、トイレを出て携帯を手にとった。
「よかったら、どっかいかない?」
メールを見て、ブーンは心臓が高鳴るのを感じながら、じっとメールの文を見続けた。
(;^ω^)「もしかしてこれは、デートのお誘いかお・・・!?」
- 79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:40:15.41 ID:TA/xXrD20
生まれて初めての事態に、ブーンはどう対処していいのかわからず狼狽した。
とりあえずメールのやりとりには慣れていないので、電話してみる。
ξ゚听)ξ「もしもし」
( ^ω^)「もしもし、ブーンだお」
そういえば、女の子に自分から電話したことなどあっただろうか・・・。
ξ゚听)ξ「もしかして、今起きたの?」
(;^ω^)「昨日朝まで飲んでたんだお・・・」
ξ゚听)ξ「ええー!大丈夫なの?」
( ^ω^)「さっきまで寝てたから大丈夫だお!」
ξ゚听)ξ「ならいいけど・・・。メールでも送ったけど、もし予定ないんだったら、どっか出かけない?」
( ^ω^)「いいお!ちょうど暇してたところなんだお」
断るはずもなかった。ここ最近で、いちばんwktkしていた。
ライブ前の高揚感とはまた違ったドキドキが訪れる。駅前で待ち合わせすることになり、ブーンは電話を切った。
電話を切ってから、ブーンはなぜかあわてて準備をはじめた。
だいたい、こういうときは何を着ていけばいいのだろうか。
しかし、迷うまでもない。ブーンはせいぜい、ジーパンにTシャツくらいしか持っていなかった。
そのなかでもいちばん上等な奴を選び、コンバースの白いスニーカーを履いて、ブーンは待ち合わせ場所に向かってブーンした。
- 80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:40:46.43 ID:TA/xXrD20
- 駅前に到着すると、すでにツンが待っていた。
初めてスカート姿を見た。なんだか急に女の子らしく見えて、ブーンは初めてツンのことを意識した。
( ^ω^)「ごめんだお!待ったかお?」
ξ゚听)ξ「ううん。5分くらいだから」
そう言って、ツンは笑った。
( ^ω^)(やっぱり笑ったツンはかわいいお)
いままで単なるバイト仲間としてしか見ていなかったが、いまは違っている。
とりあえず、駅前をブラブラしながらウィンドウショッピングなどをすることになった。
- 81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:41:42.79 ID:TA/xXrD20
- 何もかもが初めての体験だった。女の子とふたりで街を歩くなど、まるで現実とは思えなかった。
ツンはいろんなことを発見しては、いちいちブーンに教えてくれて、ブーンもそれを見て笑った。
ブーンが笑うと、ツンも笑ってくれた。それが嬉しくて、ブーンはとても楽しかった。
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、レストランでご飯を食べて、夜の9時くらいに、帰ることになった。
( ^ω^)「送っていくお」
ξ゚听)ξ「ありがと」
夜の道を、ふたりは歩いていた。
きれいな月が出ている。街灯の下を歩きながら、ふたりは無言だった。
その沈黙すらいとおしく感じる。初めての気持ち。ブーンは戸惑っていたが、いまはこの時間を楽しもうと思った。
ふとツンを見ると、ツンもこちらを向いた。そして口を開く。
ξ゚听)ξ「今日は付き合ってくれてありがとね」
( ^ω^)「こっちこそ楽しかったお!」
気のきいたセリフをいえない自分がもどかしかった。
こんなことなら、ジョルジュにでもアドバイスを求めておくんだった。
ブーンは女の子の相手のしかたがよくわからない。
- 82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:42:03.18 ID:TA/xXrD20
- ξ゚听)ξ「じゃあ、ここだから」
アパートの前で、ツンが立ち止まって言った。
( ^ω^)「うん。今日はほんとに楽しかったお」
さっきから、同じことしか言えていない。
ξ゚听)ξ「よかったら、また遊ぼうね」
( ^ω^)「もちろんいいお!また誘ってほしいお」
ブーンは笑顔で言った。
ξ゚听)ξ「じゃあ、おやすみ」
( ^ω^)「うん、おやすみ。またね」
そう言って、ふたりは別れた。
- 83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:42:44.14 ID:TA/xXrD20
- 次の日から、よくメールをやりとりするようになった。
バイトでも顔を合わせたが、ブーンはツンと一緒にバイトに入るのが楽しくなった。
毎日受信するなんでもないメールが楽しくて、ブーンはせっせと携帯をいじっていた。
ツンの返信が遅いとやきもきし、携帯の着信音が鳴れば、すぐにチェックした。
なんだかとても充実しているような気がした。
( ^ω^)(僕はきっと、ツンのことが好きなんだお)
毎日届くメールを見ながら、ブーンはそんなことを思っていた。
まだ誰にも言っていないが、ブーンは生まれてはじめて、本当の恋というものを知った気がしていた。
(´・ω・`)「最近ブーンの奴、なんか楽しそうだな」
練習スタジオで、時々ニヤけながら携帯をいじっているブーンを見て、ショボンがつぶやく。
( ゚∀゚)「女だな!!」
ジョルジュは、許せないとでも言いたげに舌打ちした。
そんなことには目もくれず、ブーンは毎日wktkしていた。
何度目かのデートをしたあと、ブーンはツンの家に遊びに行くことになった。
コンビニで酒やつまみを買い、家でゆっくり飲むことにした。
- 89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:45:22.20 ID:TA/xXrD20
- ブーンは初めて女の子の部屋にひとりで入った。
そんなに緊張はしなかった。
部屋はきれいに片付けられていて、自分の部屋とは対照的だった。
女の子らしい可愛い小物などが置いてあって、ブーンはそのことに感心した。
( ^ω^)「いい部屋だお!僕んちとは大違い」
ξ゚听)ξ「別に普通の部屋だよ〜。適当に座って」
ブーンは、床に置いてあったクッションの上に座った。
テーブルをはさんで向かい側に、ツンも座る。
コンビニで買ってきたつまみをテーブルの上に広げて、ブーンは缶ビール、ツンは缶チューハイを手に取り、乾杯した。
飲みながら、なんてこともない会話で盛り上がった。
ブーンは、まったく幸せだった。ずっとこんな時間が続けばいいのに。
いままで自分の心を動かすものは音楽しかないと思っていたがそんな考えがとてもちっぽけに思えるくらい、いま体験していることは圧倒的な印象をブーンに与えていた。
自分には会話の引き出しはあまりないが、ツンの話をきいて相槌を打ったり、つっこみを入れたりして、ツンが笑って・・・それだけで十分だった。
- 91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:46:39.42 ID:TA/xXrD20
やがて、ツンが酔っぱらってきているのがわかった。
顔が紅潮していて、眠そうになってきている。
それに気付いてブーンは、ツンの後ろにあるベッドを急に意識した。
(;^ω^)(こ、これがジョルジュの言っていた、フラグってやつかお・・・?)
ブーンはそういう経験がなかったので、どうすればいいのかわからない。
だが、ブーンも男である以上、ツンを抱きたいという思いはあった。
ブーンは、ひとりで葛藤していた。
(;^ω^)「ト、トイレにいって、外で煙草吸ってくるお・・・」
ブーンは湧きあがる感情を振り払うかのように立ち上がり、トイレに入って用を済ませた。
洗面所で顔を洗う。煙草を吸うために玄関から外に出て、ラッキーストライクに火をつけた。
気持ちを落ち着かせるかのように、深く煙を吸い込む。
吐き出した煙が、風に流されていった。
- 92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:47:26.33 ID:TA/xXrD20
- 部屋に戻ってみると、ツンはテーブルに突っ伏していた。
( ^ω^)「あ〜あ、ツン寝ちゃったのかお」
そうつぶやきながら、ブーンは苦笑した。何故だか少しほっとした。
( ^ω^)「ツン、ツン」
声をかけ、肩を叩く。ツンをベッドで寝かせて、今日は帰ろうと思っていた。
すると、ツンがこちらを向く。
ξ;凵G)ξ「ブーン・・・」
- 93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:47:58.66 ID:TA/xXrD20
- 初めて名前だけで呼ばれたが、ブーンはそのことに気付かなかった。
ツンは目に涙をためている。
(;^ω^)「ど、どうしたお!?おなか痛いのかお?」
ブーンはわけがわからず、バカなことをきいた。もちろん、そんなわけはない。
ツンは弱弱しく首を横に振った。
(;^ω^)「なんか悩み事でもあるのかお?僕でよければ、話聞くお!」
ブーンがそう言うと、ツンは声をあげて泣き出した。
さっきまで楽しく飲んでいたのに、突然のツンの涙に、ブーンは狼狽していた。
どうしたらいいのかわからず、とりあえずツンの肩に手を当てて、大丈夫だおと言うしかなかった。
まったく、自分が情けなくなってきた。
- 94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:48:25.00 ID:TA/xXrD20
- ξ;凵G)ξ「ヒック・・・ヒック・・・」
やがて、ツンも落ち着いてきたようだった。ブーンは買ってきておいたお茶をグラスに注いで、ツンに差し出す。
ξ゚听)ξ「ありがとう。ごめんね・・・」
ツンはそういいながら受け取る。
( ^ω^)「謝らなくていいお!」
ブーンは、真剣なまなざしをツンに向けた。
( ^ω^)「何か悩みとかあるんだったら、よかったら話してほしいお。力になれるかもしれないし・・・」
ブーンがそう言うと、ツンはしばらく黙っていたが、やがて口を開いて話し始めた。
ξ゚听)ξ「私ね、こないだまで彼氏がいたんだ・・・」
- 97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:49:21.77 ID:TA/xXrD20
- ブーンは、黙って聞いていた。
ツンの話によると、その彼とは同じ大学に通っていて、入学したときに知り合い、2年くらい付き合っていていた。
かっこよくて成績もよくて、学内でも目立つ存在だった。
いろんなところにドライブしたりして、とても楽しかったようだ。
彼はツンのことを「愛している」と言ってくれて、ツンはとてもうれしかったという。
そのうち半同棲のような状態になり、彼とツンはよく、この部屋から大学に通っていたらしい。
ブーンは聞いているとなぜだか胸が苦しくなるような気がしたが、黙っていた。
ξ゚听)ξ「それがね・・・」
ツンは続けた。些細なことでケンカになり、それがきっかけで、彼が出て行ってしまったという。
数日間距離をおいてみて、改めて会って話したとき、彼から別れを告げられた。
もう単なる思い出でしかないと思っていたが、飲んで酔ったら急に楽しかったころのことが思い出されて寂しくなり、泣いてしまった。
ξ゚听)ξ「ごめんね・・・ブーン君にこんな話して・・・」
- 99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:50:02.14 ID:TA/xXrD20
- うつむいているツンに、ブーンはかけるべき言葉がわからないでいた。
ただなんとなく、自然に口が開いた。
( ^ω^)「僕は気にしてないお。僕はツンの笑った顔が好きなんだお。だから、話して気が楽になるんだったら、いくらでも話聞くお!」
うつむいていたツンが、こちらを見た。
ξ///)ξ「ありがとう。ブーン君て、優しいね・・・」
(;^ω^)「そ、そんなに誉めてもなんにも出ないお!」
ブーンが思い切り照れながらいうと、ツンはやっと笑ったので、ブーンは安心した。
ξ///)ξ「ブーン君・・・」
そのとき、ツンがブーンにもたれかかってきた。
ブーンは驚いて、どうすることもできなかった。初めて女の子と密着した。
- 101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:51:03.67 ID:TA/xXrD20
(;^ω^)(や、やわらかいお・・・それにいいニオイ・・・)
高鳴る心臓の鼓動がツンにばれないか一瞬心配したが、そんなことはどうでもよかった。
ブーンは、恐る恐るツンの背中に手を回した。
意外にも、抵抗はなかった。そして、自然な流れでブーンはツンと唇を重ね合わせた。
その日は、そのまま帰った。
ツンも落ち着いたようだったし、明日は月曜日だ。
欲望もあったが、なぜだかそんな気にはならなかった。
いつもなら憂鬱な日曜日の夜。しかし、今日は最高の気分だった。
ツンとすごく近づけたような気がして、足取りも軽く、ブーンは自分のアパートへと戻っていった。
- 104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:52:31.60 ID:TA/xXrD20
- 最近になって、ブーンは50年代のロックンロールをよく聴くようになった。
チャックベリーやリトルリチャード、ジェリーリールイス、バディホリー・・・そんな初期のロックンロールのレコードを買ってきては、部屋で聴いている。
( ^ω^)(ジョニーBグッド、名曲だお!)
いままでどおりパンクも好きだが、同じようにロックンロールも好きだった。
今ではなんだか、同じような感じがしている。
曲作りもするようになっていたが、ブーンの作る曲は、純粋なパンクというよりは、オールディーズやロックンロールの要素が濃かった。
ただ、そんな曲でも、VIPPERSで演奏すると、パンクになった。
アレンジなど特にしていないのにそうなるということは、VIPPERSがパンクバンドであるということだろう。
「〜風のアレンジ」などという言葉とは、無縁だった。
ドクオに言わせれば、そんなものは「FUCK OUT!!」といったところか。
ライブには客がだいぶ集まるようになってきていた。
VIPPERSはレコーディングを行い、自主制作で500枚ほどCDを作った。
5曲入りのミニアルバム。ツンにも渡した。このとき初めて、ブーンは自分がバンドをやっていることを打ち明けた。
CDは飛ぶようにとはいかなかったが、少しずつ売れていき、在庫はだいぶ減っていた。
さまざまなイベントに参加したりして、トキオシティーのパンクシーンで、VIPPERSの名は知れ渡るようになってきていた。
- 105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:53:18.79 ID:TA/xXrD20
- レコード会社から2,3件、誘われたが、ショボンがすべて断った。
(´・ω・`)「金の話には興味がない」
と、ショボンはいつも言っていた。ブーンも、レコード会社の金づるになるようなことは嫌だった。
(´・ω・`)「俺たちは俺たちだ。誰の言いなりにもならない」
それがショボンの口癖だった。
うまい話にのせられてデビューするのは簡単だが、悪い噂もよく耳にしていたので、ブーンはまったく異論なかった。
スタジオで練習し、ライブをこなし、曲を作る毎日。たしかに充実はしている。
ブーンにはツンという恋人もいる。
しかしそれでも、4人はなんとなく悶々としていた。
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