( ^ω^)はパンクバンドのベーシストのようです

106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:54:01.78 ID:TA/xXrD20
  
 ある日のスタジオで練習後、ショボンがブーンたち3人に向かって言った。

(´・ω・`)「ちょっといいか」

 3人は、ショボンに顔を向けた。ショボンは、いつになく真面目な顔をしている。

(´・ω・`)「俺たちCD出して、そのおかげで2ちゃんでも活動できるようになったよな」

 ショボンが言った「2ちゃん」というのは、ライブハウス「2ちゃんねる」のことだ。
 トキオシティーでももっとも有名なライブハウスのひとつである。

(´・ω・`)「けど、次のCD出す予定もないし、新曲はたまるばっかしだよな」

 3人はうなずいた。そろそろ、なにか節目のようなものが欲しかった。

(´・ω・`)「2ちゃんでワンマンやろう」

 ショボンの言葉に、ブーンは驚いた。
 それは、ふだんよく考えないで行動しているブーンにも、無謀だと思えた。



107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:54:38.42 ID:TA/xXrD20
  
('A`)「それは無謀じゃねーのか」

 ドクオがそう言ったのも無理はない。

(´・ω・`)「無謀だってのはわかってる」

 ショボンは、何か決意しているようだった。

(´・ω・`)「けど、このまま続けてても、gdgdだと思うんだよ」

 たしかに、それはそうだった。しかし、一応ではあるが、2ちゃんねるが経営する2ちゃんねるレコードから2ndCDをリリースするという話も浮上してきていたところだ。
 もしワンマンライブがこければ、しばらく2ちゃんねるには出られなくなるし、リリースも完全に白紙に戻ってしまう。
 みんな黙っていたが、最初にドクオが口を開いた。



109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:55:19.84 ID:TA/xXrD20
  
('A`)「いいぜ」

 ドクオはいつもどおりの、皮肉めいた笑みを浮かべていた。

('A`)「俺は最初から、ショボンの夢にかけるって決めてたからな。俺はギャンブルには興味ねえけど、人生で大博打に出なきゃならねえときだってある。いまがそのときなのかも知れねえ」

 そう言って、ドクオは煙草の煙を吐き出した。

('A`)「このバンドをやるときに決めてたことだ。いまさらお前が決めたことに文句いうつもりはねえ」
(´・ω・`)「ドクオ・・・」

 ドクオの言葉に、ブーンとジョルジュもうなずいた。
 ショボンは、勝算もなくそんなことをする男ではない。
 無謀ではあっても、勝てる見込みはあるはずなのだ。
 あとは、自分たちがその勝利の可能性を信じるかどうか。それだけだ。



112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:56:24.51 ID:TA/xXrD20
  
('A`)「そんな顔するんじゃねえよ。ようは勝ちゃいいんだからよ」

 ドクオの言葉で、すべてが決まった。
 そのあとすぐにショボンは2ちゃんねるでワンマンライブについての交渉をして、ライブの予定はあっさり決まった。
 ショボンはそのまま、雑誌の編集部などを渡り歩き、VIPPERSを売り込んだ。
 目標は、観客200人は集めること。
「VIPPERSのファンだ!」なんていう人に出会ったことがなかったので、正直不安はあったが、
 絶対成功させようと思っていた。ブーンは練習にはげみ、当日まで過ごした。ツンとはあまり遊べなかったが、ライブ当日にはツンも来てくれることになり、ブーンはますます張り切った。
 そして、その日がきた・・・。



114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:57:53.64 ID:TA/xXrD20
  
 出番を控え、ブーンたちは緊張した面持ちで楽屋にいた。

(;^ω^)(さすがに緊張するお・・・もしステージに出て、ガラガラだったら・・・)

 そんなことを考え出すと、ブーンはガクガクブルブルだった。怖くて、表の様子を見にいくこともできない。
 ツンはもう来てるのだろうか・・・。ブーンは、ツンにもらったネックレスに触った。

「そろそろお願いします!」

 2ちゃんねるのスタッフがやってきて、声をかけてきた。いよいよ出番だ。

(´・ω・`)「さあ、逝こうか」

 ショボンの声で、3人は立ち上がった。出番を告げる音楽が、ライブハウスに響き渡っている。
 ショボンから順番に、ステージに飛び出した。ブーンもステージに出る。

( ^ω^)(!!!!)

 そこには、たくさんの客がいる。そして、初めての黄色い声。

( ^ω^)(アッー!!!!)



115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:58:09.90 ID:TA/xXrD20
  
 ブーンの視線が、ツンをとらえた。ツンは端っこのほうで恥ずかしそうに立っていたが、ブーンを見ると、手を振ってくれた。
 ブーンは嬉しくて、思わずにやけてしまった。
 ライブがスタートする。客は盛り上がり、VIPPERSも気持ちよく演奏できた。
 アンコールも含めて40曲近くプレイして、ライブは成功のうちに終了。
 2ちゃんねるの店長もきてくれて、「よかったよ」と言ってくれた。
 4人とも、さすがにそのあとは疲労のため潰れた。
 しかし、心地よい疲労だった。大勝負に勝った満足感に支配され、ブーンは3日続けて、いい夢を見た。
 その後、ワンマンライブがなんとか格好ついたということで、正式に2ちゃんねるレコードから2ndアルバムをリリースすることにこぎつけた。
 ためてあった曲から13曲選び、レコーディングに精を出す。
 世間はクリスマスが近づいていたが、VIPPERSは活動に忙しかった。



116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:59:01.29 ID:TA/xXrD20
  
 冬は寒かったが、ブーンにとっては、夏よりもだいぶよかった。
 冬の枯れた木を見るのも好きだったし、夏よりは、空気がうまいような気がしていた。
 VIPPERSもうまくいっていて、もしかしたらメジャーレーベルから3rdアルバムをリリースするかもしれないと、ショボンが言っていた。
 こちらの条件をのむところが現れたのだ。万事うまくいっていた。
 ただひとつ、最近ツンがあまり連絡をくれなくなっていたのが気がかりだった。

( ^ω^)「そろそろ冬休みのはずだお。ツン、どうしちゃったのかお・・・」

 忙しいのもあったが、最近ツンとデートもしていない。
 そういえば、前のようになんでもないことで笑いあうことも少なくなってきたような気がする。
 急に気になって、ブーンはツンに電話してみた。

ξ゚听)ξ「もしもし」
( ^ω^)「あっ、ツン・・・」

 かけてから、特に話す内容もないことに気付き、ブーンは焦った。



117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 16:59:32.92 ID:TA/xXrD20
  
(;^ω^)「特に用事はないんだけど・・・何してるのかと思ってかけたお」
ξ゚听)ξ「大学のレポート書いてたところ」

 あまり会話が続かない。どうしたんだろう。前はあんなに笑っていたのに。

( ^ω^)「そうだお、もうすぐクリスマスだし、どこかに出かけないかお?」

 ブーンは、精一杯明るい声で、ツンを誘ってみた。

ξ゚听)ξ「そうだね。時間あったらそうしよっか」

 ブーンの期待に反して、ツンの反応は少なかった。

ξ゚听)ξ「ごめん、これから出かけなくちゃならないんだ」
(;^ω^)「そ、そうかお。気をつけてお」
ξ゚听)ξ「うん、またね」

 そう言ってツンは、電話を切った。
 急にブーンは不安になった。

( ^ω^)「そうだ!ジョルジュに相談してみるお」

 ブーンは、駅前のファミレスにジョルジュを呼び出した。




119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 17:00:04.47 ID:TA/xXrD20
  
( ゚∀゚)「それは男だな!!」

 ジョルジュはいきなり言った。ブーンは、あやうくコーラを噴出しそうになり、ひどくむせた。

(;^ω^)「ジョルジュ!そういう冗談は笑えないお!」

 ブーンは言ったが、ジョルジュは吸っていた煙草を灰皿に押し付けて消しながら、手を振った。

( ゚∀゚)「冗談なんかじゃねーよ。俺の経験からして、それは破局フラグだ」

 ジョルジュの顔は本気だった。ブーンは押し黙る。

( ゚∀゚)「たぶん、お前よりも好きな男ができたんだよ。だからあまり連絡もよこさないし、会っても楽しくないんだよ」

 そう言われると、本当にそうなのかもしれないという気がしてきて、ブーンは泣きたくなってきた。

( ゚∀゚)「まあでも、ただ単に忙しくてストレスがたまってるだけかもしれねーし、もう少し様子を見てみたらどうだ?」
(;^ω^)「う、うん・・・そうするお」



120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 17:01:14.50 ID:TA/xXrD20
  
 帰り道の途中、コンビニで酒を買い、アパートに戻ってブーンは酒を飲み、その日はさっさと寝ることにした。
 そうでもしないと、よくない考えが次々と浮かんできそうで、嫌だった。
 酒のおかげか、その日は夢を見ることもなく眠れた。

 それから1週間、ツンからは連絡がなかった。
 ブーンは連絡したかったが、なぜかその気にはならなかった。
 そんなふうに寂しく過ごしていたとき、不意に携帯が鳴った。
 ツンからの電話だった。

( ^ω^)「もしもし」
ξ゚听)ξ「あ、ブーン君。いまから時間あるかな?話したいことがあるんだけど・・・」

 きた。ブーンはそう思った。なんだか、とても悪い予感がする。だが、断るわけにもいかない。

( ^ω^)「いいお。じゃあ、駅前の喫茶店で待ってるお」

 待ち合わせ場所を決めて、ブーンは電話を切った。とても不安だ。
 ジョルジュの言っていた言葉が蘇る。なにもなければいいが・・・。
 そんなことを思いながら、急いで着替えて、ブーンはアパートを出た。



122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 17:02:12.87 ID:TA/xXrD20
  
 この喫茶店は、初めてブーンとツンがふたりで入ったところだった。
 それ以来きたことがなかったが、特に変わったところはなかった。
 ブーンはコーラを注文して、煙草を吸いながらツンを待った。
 やがて入り口のドアが開く音がして、ツンがやってきた。
 ツンはブーンを見つけると、笑いながら椅子に腰掛けた。
 その笑顔が、何故だかとても悲しく見えた。ツンはあの時と同じくコーヒーを注文した。
 ツンは、窓の外を眺めていた。
 ブーンも、同じように外を見る。コートを着た人たちが歩いている。
 クリスマスツリーも見えた。

ξ゚听)ξ「もうすぐクリスマスだね」

 ツンの言葉に、ブーンは視線を動かした。ツンがこちらを見ている。
 ブーンは、ただウンとうなずいた。ツンがなかなか話そうとしないので、ブーンから切り出した。

( ^ω^)「ツン、話ってなんだお?」

 ブーンは、運ばれてきたコーラをストローで吸った。
 ツンは、まだコーヒーに口をつけていない。
 しばらく沈黙が続いたが、やがてツンが口を開いた。

ξ゚听)ξ「実はね、私・・・好きな人ができたの・・・」



123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 17:03:06.71 ID:TA/xXrD20
  
 そう言われたとき、ある程度予想していたとはいえ、ブーンは何かで胸を刺されたような感覚を味わった。

(;^ω^)「それは・・・誰なんだお?」

 とても痛かったが、ブーンはきいた。

ξ゚听)ξ「ブーン君にも話したことある、前の彼なの・・・」

 最近大学でよく顔をあわせるようになり、最初はやはり気まずくて、なんとなく避けていた。
 しかし友達が間に入ってやりとりをしているうちに、しだいにわだかまりが消えていき、普通に接することができるようになった。
 そうしているうちに楽しかったあのころのことが思い出されて、どうしても彼のことを考えるようになってしまったのだという。



125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 17:03:47.30 ID:TA/xXrD20
  
ξ゚听)ξ「ブーン君のことはほんとに好きだよ。だけど・・・」

 違う。
 ブーンは心の中でツンの言葉を否定した。
 ツンは、自分のことが好きだったわけではなかったのだ。
 あの寂しかったころに優しくしてくれたから、その優しい男が好きだったのだ。
 それはブーンでなくてもよかった。
 今やっとわかった気がした。
 でも、ツンのことを責める気にはなれなかった。
 すべては、ただ優しいだけの男でしかなかった自分に問題があったのだ。
 自分自身を好きになってもらう努力をしなかった。
 ただ楽しくて、嬉しくて・・・それだけだった。



128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 17:04:19.17 ID:TA/xXrD20
  
ξ゚听)ξ「ごめんね・・・」

 ツンはうつむいていた。

( ^ω^)「あやまることなんかないお。ツンは、自分の気持ちに正直になればいいお」

 ブーンは、できる限り明るい口調で言った。
 そのつもりだったが、声が震えるのはどうしようもなかった。
 これ以上、この場にいることはできそうもなかった。

( ^ω^)「幸せになってくれお」

 そう言うと、ブーンは立ち上がり、伝票を手にした。

( ^ω^)「さよなら・・・」

 それが最後の言葉だった。ツンは最後までうつむいたままだった。
 ブーンは会計を済ませると、喫茶店から冬の街へと出て行った。



130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 17:05:37.82 ID:TA/xXrD20
  
 街ではクリスマスソングが流れ、なぜか楽しそうな人たちの顔が目につく。
 ふと、雪が降っていることに気が付いた。
 空を見上げると、灰色の空から、白い雪が落ちてきている。
 その視界が少しだけぼやけたが、ブーンは強く首を振って、歩き出した。
 歩きながら、この数ヶ月間の思い出が次々と蘇ってきて、ブーンは走り出していた。
 いまは、いまだけは、誰にも顔を見られたくなかった。
 一度くらい、クリスマスを楽しく過ごしたかった。

 ひとしきり走った後、ブーンは気持ちを落ち着けて、公園のベンチに座っていた。
 煙草に火をつける。
 そうしてから、火をつけたZIPPOのライターが、ツンからプレゼントされたものであることに気が付いた。
 もう涙は出なかった。

( ^ω^)「さよなら・・・」

 もう一度そうつぶやくと、ブーンはそのライターを、公園の池に向かって投げる。
 ライターは、池の真ん中あたりに沈んでいった。
 煙草の煙が立ち昇るのを見ながら、ブーンはしばらくボーっとしていたが、やがて立ち上がり、アパートへの道を歩き始めた。
 自分には、もうバンドでベースを弾くことしかできない。
 もう、それしか残されていない。そんな気がした。



131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/08(月) 17:06:05.21 ID:TA/xXrD20
  
It doesn't pay to try All smart boys know why
It doesn't mean I didn't try I just never know why
Feel so cold and all alone 'Cause baby,you're not at home
And when I'm gone Big deal,I'm still alone
Feel so restless,I am Beat my head against a pole
Try to knock some sense Down in my bone
And even know they don't show The scars are so old
And when they go They let you know
You can't put your arms around a memory
You can't put your arms around a memory
You can't put your arms around a memory
Don't try,don't try
You're just a bastard kid And you got no name
'Cause you're livin' with me We're the one and the same
Don't try,don't try




 ( ^ω^)はパンクバンドのベーシストのようです part2
〜TOKIO city is burning!〜

 完。

 パート3〜IN COLD BLOOD編〜つづく・・・



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