( ^ω^)ブーンが恐ろしい目にあったようです
- 1 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 02:32:17.72 ID:bsiFHg4l0
- ブーンは今年で23歳なろうとしている無職の青年
2年前、地元にあるコンピュータの専門学校を卒業したが、職に就かずに実家で毎日だらだら過ごしている
何度か就職やアルバイトへの応募を試みたが、いつもぎりぎりでやる気を欠いて面接にまでもいたらなかった
そんなことを繰り返すうちに家族もブーンに何も言わなくなった
いまや毎日自室のPCでひたすらに無為にインターネットをさまよっているだけだった
時々、何の前触れもなく胸に去来する焦燥感に身が焦がれそうになった
そんな時は頭をめちゃくちゃに掻き毟って布団に顔を埋めた
こんなことではいけないという考えは何千回もブーンの頭の中を往復した
それでもブーンはひたすらにその思いが頭の中から消え去るまで布団に突っ伏した
近頃ではそんな衝動もなくなった
あれだけビデオにためてみていたアニメも見なくなった
漫画も買わなくなった
ただ目的もなくインターネットに繋いで掲示板のログを見ては時々ほくそ笑んでいた
- 4 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 02:43:31.48 ID:bsiFHg4l0
- 朝も夜もない生活をするブーンは家族と顔を合わせることがほとんどない
その日もブーンは昼過ぎに自室の床で目を覚まして1階の居間へと降りた
冷蔵庫を開けても以前のように親切にラッピングされたおかずもない
( ^ω^)「・・・・・・」
何の感慨も沸かない
部屋にもどってブーンは調達してきた物を口にし始めた
妹が部活帰りに飲むつもりで冷やしてあった300mlのジュース
買い置きの茶菓子
お弁当のおかずになりかけた冷凍食品の残り
つけっ放しのディスプレイを無感動に眺めながらそれらをむさぼった
その足元には山と積まれた歌詞のから袋やペットボトル、カップ麺の容器
カビが生え、鼻をつく匂いを放つ物も中には混ざっていたがブーンが鼻炎だったためか気にしていなかった
ゴミは、ときどき、ブーンが目を覚ますとなくなっていることがあった
「ゴミはこの袋に入れておいてね」
外からは見えないが、ゴミ山の底には妹の字が書かれたメモが貼り付けられた真新しいゴミ袋があった
ゴミのほとんどは丸まったティッシュペーパーだった
- 6 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 02:54:46.65 ID:bsiFHg4l0
- ブーンの部屋は昼でも薄暗いほどに締め切ってある
加えて非常に古い上に前にここに住んでいた大家がおかしな建て増しをしたせいで、2階には熱がこもりやすくなっている
おととしの夏も去年の夏も決して広くないブーンの部屋はくらむほどに熱がこもった
それでもブーンは部屋にいる時は完全に締め切り、汗が出なくなるくらいまで自慰を繰り返した
今年の夏もブーンの部屋はゴミとブーンの老廃物と精液の悪臭が満ちていた
喉が渇けば1階から飲み物を奪うようにもって来ていた
それがほとんど決まって妹が自費で買ったジュースだった
ブーンの家は常にジュースを置いておく習慣がないため、妹が自分で買ってくるものだ
妹も取られることは分かっていつつも、あえてそれを冷蔵庫に取っていた
部活が終わって妹が玄関を開ける音が聞こえた
ブーンはそれだけで体が一瞬こわばり、ことを続けられなくなった
( ^ω^)「・・・・・・」
- 9 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 03:11:28.91 ID:bsiFHg4l0
- しぃは高校での部活が終わると友達の誘いを断って家の近くのコンビニに駆け込んだ
(;;*゚ー゚)「涼しー・・・」
(o○π○)「まいど、まいどー!!
またいつものかい?」
足しげくこのコンビニに通ううちに、しぃは店長のしうまいに顔を覚えられていた
しうまい店長はしぃが駆け込んでくる様子を見て、しぃがいつも買っていくジュースを手に持って待っていた
(*゚ー゚)「ありがとう、店長さん
でもおまけを見たいから見てから買います」
(o○π○)「わかっとるよ
あとシークレットと5番だろ?」
(*゚ー゚)「はい。でもこのおまけ今日まででしたよね
だから慎重に選ばないと・・・」
(o○π○)「こんなのあんまり形も変わらないんじゃないか?
袋の上から撫で回してわかるのかい?」
(*゚ー゚)「インターネットで形を見てきたから、わかるとおもいます」
しぃの高校が夏休みに入ると同時にこの「ポショーン」というジュースにボトルキャップのおまけがつき始めた
あるゲームのキャラクターが全13種類の小さい人形を、しぃはいつもよりも多くポショーンを買って集めていた
一度にたくさん買えば簡単に集まるかもしれないが、部活が忙しくてバイトもできないしぃには余りお金がなかった
なのでいつもどおり1日1本ずつだけ買っていた
- 11 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 03:32:08.47 ID:bsiFHg4l0
- (o○π○)「・・・ぜんぜんわからん
わかるかい?」
(*゚ー゚)「うーん
やっぱり難しいですね。ぜんぜん・・・」
それでも懸命に袋を触って回っているうちに、店内の冷房のおかげで引っ込んだ汗が再びにじんでいた
結局それらしいものの手触りに思い当たらず、目を瞑って引っ張り出した一本をレジに持っていった
(*゚ー゚)「ここであけていいです?」
(o○π○)「ああ、いいけど家であけないのかい」
(*゚ー゚)「もう一本くらいなら買えそうだから、ここであけちゃおうと思って」
(o○π○)「ああ、構わないよ
どうせ出すならシークレットだしなよ」
しぃとしうまい以外に誰もいない店内は冷房の音が低くなっている
これにシークレットか5番が出て、もう一本にもう片方が出たら
あるわけないとも分かりつつ、しぃはそれに期待して封を開けた
真っ黒なビニールが溶けるように伸びて細長い穴が拡がった
- 14 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 04:06:47.28 ID:bsiFHg4l0
- (*゚ー゚)「よいっ、しょと」
店から出てきたしぃはコンビニのロゴの入った大きな袋を手にしていた
大きさからしてみれば軽い物だが、自転車で家へ向かうしぃには少々もてあます大きさだった
しばらくどうやって袋を持ったまま自転車を漕ごうか考えたが、車の通りが多い道を行くことを考え、
いったん自転車をコンビニに止めさせてもらうことにした
コンビニからすぐの交差点で信号待ちをしていると、またしぃの額に大粒の汗が生まれた
空は遥かに高く、これ以上ないほどに青一色だ
その青を貫通して指す日差しがしぃの脳天を焼いた
(;*゚ー゚)「ほんとに今日は暑いなー、もう!」
口だけの文句を言いながら貰った紙袋の中身を思って顔がにやけた
同時にきっと兄がまだいるであろうあの部屋を思うと、兄が干からびてやいないかと一瞬心配になった
兄は変わったかもしれない
専門学校を卒業しても働かずに自分の部屋ばかりにいて、ほとんど外出もしない兄
それはある先生が受験生を脅すためにわざとよく口にする『ニート』そのままの姿だった
兄は絵が上手で、漫画家を志した幼いしぃを指南してくれた
かつてバドミントン部の部長を勤めた兄の名前は、しぃがさっきまでいた体育館の端にかかる賞状にも書かれている
時々酒を飲んだ父にポツリと『情けない』と呟かれる今の兄
ご近所との会話で母が聞かれるたびに言いよどむ兄の存在
しぃが時々顔を合わせるたびにインターネットで得た面白話をしてくれる兄
気がつくとしぃは家の前に立っていた
引き戸に手を架けたしぃの視界の端に、壁にもたれかかって埃にまみれた兄の自転車が見えた
がらがらがら
- 17 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 04:24:13.45 ID:bsiFHg4l0
- (;*゚ー゚)「あ、お兄ちゃん、おはよう!」
( ^ω^)「・・・しぃかお。おかえりだお」
冷蔵庫に手を架けたまま、汗びっしょりになった妹と目が合った
玄関から差し込んでくる白い光に逆行になったしぃの服が透けて綺麗な体のラインがはっきりと見えた
真夏の陽気の中でも律儀に履いている靴下のずれを直す間も、すっかり成熟した女性の体の影が躍った
( ^ω^)「・・・その袋はどうしたんだお」
(;*゚ー゚)「それがね! これ全部ポショーンのボトルキャップなんだよ!」
( ^ω^)「おお! ほんとだお! こんなにたくさんどうしたんだお?」
(;゚ー゚)「これ今日までしか付いてこないからって、あまった分をくれたの!」
( ^ω^)「これでなかったら逆にうけるおww」
(;゚ー゚)「だよね!
あとこれポショーンあげるー」
( ^ω^)「おお、妹よ、いつもすまないお・・・」
(;゚ー゚)「おとっつぁん、それはいわないやくそくだよ」
ひとしきりふざけあってから、ブーンはしぃから袋ごとボトルキャップを受け取った
自転車をコンビニにとりに行くというしぃはまた外に飛び出していった
携帯を耳に当て、靴を履きつつ反対の手をブーンにむかって振っていった
( ^ω^)「・・・・・・」
- 25 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 04:43:05.05 ID:bsiFHg4l0
- フィギュアの入った袋とポショーンを両手に、ブーンは階段を上がってまた部屋に戻ってきた
開けっ放しの襖をくぐって袋をベッドの上に放り投げて、丁寧に襖を閉めた
どこから来るか分からないため息をつきながら、一日の大半をその上で過ごすイスに腰を下ろした
放り投げた袋を見ながら、なぜか嘲笑が漏れる
我ながら原因は、よく、分からなかった
手にしたままのポショーンの口を切ろうとするが、飲みたい気持ちがすでにないことに気がついてゴミ山の上に置いた
結露したポショーンの表面に、使いたてのティッシュが張り付くが特に気にしなかった
ディスプレイにはかわいらしい少女が少年に犯されている真っ最中の画像が一面に広がっている
手近にある漫画を適当にめくったり、三十分前に回りつくした巡回サイトを見た
そのうちに部屋の気温はこもった熱でその日最高に達しようとしていた
汗をだらだらかきつつもポショーンには手をつけず、先ほど放った袋をどけてベッドに突っ伏した
ブーンの頭は1年前からずっと眠気がまとわりついており、退屈になればベッドにもぐるだけですぐに眠ることができた
すぐに意識が飛びかけるが、その直前に枕元に置きっ放しの携帯がなった
「このまま友達の家に行ってきます♪
帰るのごはんのチョット前かも
お母さんに伝えてください、おねがい><
そういえばシークレットと5番あった?
揃ったら写メに撮ってチョーダイ!!」
ブーンはよけたフィギュア袋をゴミ山のそばまで蹴り飛ばした
フィギュアの入ったビニールが袋からこぼれだした
ブーンはそのまま眠ってしまった
- 30 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 05:03:06.10 ID:bsiFHg4l0
- ぎしりと廊下のきしむ音がしてブーンは目を覚ました
全身はやはり汗でびっしょりになっていて不快だったが、ブーンは体をこわばらせて目を瞑り続けた
廊下のきしみは階段からブーンの部屋の前まで静かにゆっくりと進んできた
う゛、ううん! あー ごほっごほっ!
部屋のすぐ前で激しく咳き込むのが聞こえた
襖の前の気配はしばらくせきをし続け、すぐ隣にある両親の寝室へと向かおうとしてその動きを止めた
すうっと、僅かに襖が開く
ブーンは襖に背を向けて寝ているため、その様子は見えないが視線を背中に感じた
襖を開けた者の視線を受ける間、ブーンは全力で寝ている振りをした
やがて襖は閉まり、両親の寝室へと消えた
少ししてからブーンは体を起こして、蹴飛ばした袋からこぼれたフィギュアを拾ってビニールを剥いて行った
- 33 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 05:16:01.41 ID:bsiFHg4l0
- 父親が寝室に入ってから三十分ほどして、すべてのフィギュアを出し終えた
全部で50個ほどあった中から、シークレットは5つ、5番は10個以上も出てきた
そのうちからそれぞれ1つずつ持ち、携帯をポケットに入れて1階へと降りた
途中、妹の部屋の前にはふわふわのスリッパが二つ並んでいた
今のテレビの上に11個並ぶフィギュアに先の二つを加えて携帯で何枚も写真を撮った
テレビの前に突っ立ったまま移りの良さそうな写真を携帯の機能で編集して、妹の携帯へとメールを送った
がた
J( 'ー`)し「・・・・・・」
( ^ω^)「!・・・カーチャンかお」
J( 'ー`)し「早く寝なさいよ」
母はブーンの横を通ってトイレへ行くと、無言で寝室へ戻った
昼間よりも買い足されてた菓子とポショーンを数本持ち、自らも用を足すとまた部屋へ戻って眠りに付いた
- 36 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 05:29:44.60 ID:bsiFHg4l0
- 数時間後、またブーンはテレビの前にいた
正午までまだ数十分はある
ブーンにしては早い起床だった
1階まで降りてきたブーンがそれに気がついたのはたまたまだった
昨日の夜の返信がなかったため、たまたまテレビの上に目が行っただけだったのだ
( ^ω^)「シークレットと5番がないお・・・」
もしかしたら眠気のあまり並べるのを忘れたのかもしれないとも疑ったが、二つあった場所には列の隙間ができていた
間違って落としたにしては他に置いた物の場所は変わっていないし、埃も被ったままだった
父や母が動かす意味もない以上、しぃがどうしてか持ち去ったとしか考えられない
( ^ω^)(しぃは僕がこれを欲しがったからかってくれてただけで、
あいつが欲しかったわけじゃないお・・・
またちょっとふざけているのかお?)
その理由といえば、おそらく自分にどんな理由でもいいからもっと話して動いて貰おうと言う事だろう
最初こそ明るく換わらず接してくれた両親でさえブーンの有様に疲労を隠せず、接し方にも諦めしか感じられない
しぃはそれでも今までと変わらず、いや、それ以上に接してくれている
ブーンはそれをうれしくも思いながら、心のどこかで疎ましく感じでいた
それを否定できなかった
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