( ^ω^)ブーンが恐ろしい目にあったようです

39 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 05:38:59.12 ID:bsiFHg4l0
(;^ω^)(ああ、今日はこういうのはなしだお!)

ブーンは現状を省みようとするとすぐに眠くなってしまうことに自覚があった
とくにネガティブなことを考え込もうとすると、面倒くさくなって考える気すら失せてしまう

(;^ω^)(よく寝れたしなんか気分もいいお
     しぃが帰って来たら久しぶりにどっかいいったらいいかもしらないお)

あえて考えを避けたが、そんな些細なことでも、しぃや両親、そして本人すらも望む姿に近づくきっかけになればという考えもあった
ブーンは必死にネガティブになりそうな思考を振り払いながら着替えを持って浴室へ入った
熱いシャワーを浴びるうちに僅かに残っていた眠気も覚めていった
何ヶ月かぶりに頭の中の靄が晴れたようになり、その景色が観たくなった
風呂場の窓を開けようと指をかけた

( ^ω^)「あれ?」

ぐいぐいっ

( ^ω^)(開かないお
      むん! はあ! とお!)

がつっ!!

(;;^ω^)「ぐああああっ! め、めが、じゃなくて
      爪が折れたお゛〜〜」



46 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 05:58:15.67 ID:bsiFHg4l0
指を咥えたまま体を拭いて着替えを済ましたブーンは、折れた爪を爪きりで切って絆創膏を張った
体が温まったせいで血流がよくなっており、傷口が脈打つたびに痛んだ

(;^ω^)「痛いお、痛いお
      はあ、何かしようとするとこれだお
      本当に僕は運が悪すぎっうお! うう」

指を強く抑えて下をうつむいていると、また次第に眠気に襲われそうになった

(;^ω^)(だ、だめだお!
      KIAIだお! これくらいのケガ部活中はしょっちゅう・・・
      ・・・ロクなことがなかったお、ぶか・・・
      じゃなくて! じ、自転車お! 自転車用意しとくお!)

屈みこんでいた居間から立ち上がり、ブーンは玄関に飛びつくように向かった

(;^ω^)「ひっさしぶりにしぃを後ろに乗っけてやるお!
      だからチョットきれいにし、しぃいいいいいいい!!!
      なんだお! 開かないお!!?」



49 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 06:04:02.87 ID:bsiFHg4l0
引き戸を勢いよくひきすぎたせいか、戸の車輪がレールから外れて変な具合にとが嵌ってしまったようだった
腹を立てて戸を蹴倒したくなったが、深呼吸をして落ち着くいて冷静に戸を直しにかかった

(#^ω^)「平常心だお」

片側を持ち上げてみようとしてみたり外れたレールを戻そうと手前に引っ張っても、戸はそれこそびくともしなかった
いい加減に限界に達しかけたブーンの我慢は、しかし理性でまた何とか収めることができた

(#^ω^)(外側からも見てもらってからやったほうがいいかもしれないお
      仕方がないけど、しぃが帰って来たら一緒に見てもらうお
      …平常心だお)

腹を立てながらもいつもよりもすっきりとした気分がそれを抑える理性をブーンに与えた
指の痛みも気にならないわけではなかったが、昼過ぎに戻る妹のことを考えてチャーハンを作ってやることにした
久々の料理だったため多少不安だったが、頭よりも体が造り方を覚えていた
あまりにもあっさりとチャーハンは出来上がった

だがあたたかいチャーハンをしぃが口にすることはなかった



103 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 21:12:37.88 ID:bsiFHg4l0
( ^ω^)「ぐおーぐおー
      むにゃむにゃ もう食べられれないお」

チャーハンを食べ終わったブーンは妹が戻るまで居間で昼寝をしていた
残ったチャーハンを大皿に移してラップをしてちゃぶ台の上においたまま、その下に横になった
猫舌の妹が早く帰ってきてもすぐにスープを口にできるよう、茶色く汚れたなべのふたを少しだけずらしてある
なべの隣のレンジに置きっ放しになっているすわりの悪い空の薬缶が、隙間風にあおられてカタカタと揺れている
その日も相変わらず強い日差しが油をかぶった曇りガラスから入り込み、ステンレスが熱せられていた
昼も過ぎれば太陽の角度も変わってすぐに冷たくなるのだが、スープがすっかり冷めても変わらず白い光を浴びて高熱を保っていた

ブーンは寝汗をかきすぎてすっかり口の中が乾いて咳き込み、目を覚ました



106 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 21:23:22.48 ID:bsiFHg4l0
( ^ω^)「ゲホッゲホッ
      あ゛ー・・・喉がやられたお、ポショーン飲むお」

目が覚めた場所が自分の部屋でないことに一瞬だけ戸惑った

( ^ω^)(そういえばチャーハン作って寝てたんだお
      っていま何時だお? だいぶ寝てた気がするけど・・・)

シールをはがした後だらけの柱の上にかかった時計に目をやった
寝起きで焦点がうまく合わず、また寝ぼけた頭がうまく時間を読み取ってくれない
目をこすったり細めたりしているうちに視界が回復した

( ^ω^)(まだ昼過ぎかお・・・
      ってチャーハンが完全に冷めてるお!
      時計壊れてるお?)

秒針をじっと見つめる
1秒がやけに長い
やっぱり壊れたのか、時間でも止まってるのかと考えてしまう
もしそうならいいかも知れないと、自分が知らないうちに死んでしまっていたら楽だ
無意識のうちにめぐった考えが刹那のうちに消えうせる
1秒が音を立てて過ぎた

( ^ω^)(んなわけないお
      もう眠くないし、暇お。でもPCつけたら下にもどれなさそうだお
      どうするお)

かちり
ブーンが目をはなすのを待っていたかのように秒針が元の場所へ戻った



108 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 21:44:08.60 ID:bsiFHg4l0
クーラーもない家の中で有数の涼みポイントは廊下だった
大家が妙な建て増しをしたせいで居間と階段がくっつき、居間とキッチン、居間と物置部屋は続きになっている
廊下は玄関から始まりキッチンと物置部屋の前を通ってトイレ、浴室へと続くため、風の通りが非常にいいのだ

ブーンはトイレの壁にもたれて座り、シャツの前をはだけて涼むことにした

玄関から日が差すも薄暗い廊下の床板に、逆さまになった玄関と過去の景色が浮かんだ

ブーンが友達を連れて自分の部屋に入れるときはいつも物置部屋を横切っていた
だが物置部屋は余り友達に見せてはいけないと父親からいわれていたが、そこかキッチンを通るしか2階の自室へ上がる方法がない
だが家のプライベートでり、かつ事実上母の私室であるキッチンを通すことなどできるはずもなかった
そのためブーンは常に矛盾と若干の羞恥を覚えながら、友達に物置部屋をくぐらせていた

( ^ω^)(親父は気分と自分の都合だけでモノをいうからイヤだというんだお)

物置部屋の向かいには父の書斎がある



109 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 21:58:41.72 ID:bsiFHg4l0
珍しく閉じたままの障子戸を開き、ブーンは書斎へ侵入した
勝手に入れば赫怒のごとく怒り狂う父の部屋は、それでも昔からブーンと妹の気を引く神秘の場所だった
妹は父の仕事道具やパソコンが物珍しく、かつ入ってはいけないという意識が魅力的だったらしい
だがブーンは中学にもなって父に反目しだすと、書斎が父の弱点の用に見えたのだった

常に散らかり放題のブーンの部屋を見るたびに父は片付けろと叱り倒した
だがブーンは自分の部屋なのだから勝手にさせて欲しいという気持ちと

(#^ω^)(そもそも自分の部屋に入るなというくせに、人の部屋に勝手に入るんじゃないお
      おまけにお前のトコだって365日洩らさず散らかってるっつーお!)

机の上には仕事の書類と用途不明の仕事道具が散乱し、床のすみには真新しいベニヤ板が数枚折り重なっている
小さな本棚からあふれたファイルがいくつもの塔を作り上げ、趣味で集めているというモデルガンが武器屋のように壁に飾られている
そのほとんどは埃をかぶっており、ブーンからみたら無用の長物で部屋を汚している人間が自分を注意することが腹立たしかった

そして勉強をしろという父
完璧を求めているわけではないといいつつ、あらゆることに完璧を求める父
だが机の上には半分も読んでいないパソコンの指南書があり、布をかぶったままのディスプレイがある
今の時代パソコンくらいできなければと焦っていたことは知っていた
新しい物好きの父がインターネットに手を出さないわけがないとも知っていた
そしてそれが完全に父には不向きだったということも、すぐに分かった
ブーンが最初にこの光景を見たときには、声を大にして笑ったものだった

父の書斎には、父の矛盾と弱点が満載されているようにブーンには見えたのだ
入って見渡すたびに父を貶めては愉悦に浸った



112 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 22:10:25.48 ID:bsiFHg4l0

       馬   鹿   が  !  !


( ^ω^)「・・・・・・」

だが、そこから先を考えてはいけないと、ブーンは思考をとめる
誰もがわかる愚かさを背負いながらも、父は家族のために ている
昨×も一××もそして今×もずっと×みもせずに×ている
母と妹と   を  って る
な ば自分は んなとこ でな   て  ?

(||^ω^)「くだらないお
      それより、これはなんだお?」

散らかった机の上になにかプラスチック片のようなものが落ちていた
拾い上げてかおに血被けてみるが暗い部屋の中ではよく見えない
だが目を凝らせば肌色のようにも見えた

( ^ω^)(! これって5番の足かお!?)



117 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 22:34:47.98 ID:bsiFHg4l0
そう思った瞬間、ブーンは顔の温度が一気に上がるのを感じた
目の前が白黒する
机の上の書類を床に引きずり落とし、ファイルの塔を殴り倒した
そしてモデルガンを叩き落そうとしたところで、父と一緒に買った同じ型のハンドガンが目に入り、そこまでにした
鼻息を荒くし、障子戸を乱暴に開いて廊下へ戻った

落ちた灰皿から飛び散った灰が絨毯の上を舞う
朱印がいくつか押してある紙が破けた
まだ薄いビニールを被ったままだった計器が半開きだった引き出しの端に当たって壊れた
落ちて開いたファイルのページが破け落ちていた

(#^ω^)(ぐぉおおお腹立つお!
      なにかんがえてるんだお、あいつは!
      ほんとうにそのうち殺してやるお!)

ブーンはそのまま部屋に戻り、パソコンを立ち上げてインターネットを始めた
あまりにも緩慢な時間に腹をたて、いつの間にかそのまま没頭してしまっていた
また眠気があまたの中に戻り始めたころ、机の上の携帯が着信を知らせたがブーンが応じることはなかった

がたん


ファイルと一緒に床にこぼれたプラスチック片は真っ白な細長いチューブだった
それは向いた導線の端をつなぐ消耗品のひとつだった



122 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 22:54:34.33 ID:bsiFHg4l0
居間の時計が6時を指していた

J( 'ー`)し「あらら? 見なれない顔の人ね こんばんわ」

( ^ω^)「あんたの息子だお」

J( 'ー`)し「こんな時間に起きてるなんて珍しい・・・て、お父さんが今晩いないの知ってた?」

( ^ω^)「あたりまえだお! 話はすべて聞かせてもらったお」

冗談を言い合いながらブーンは夕食の支度をキッチンで手伝っていた
とはいつつもインスタントラーメンと簡単な付け合せを用意するだけ
父がいないと若干以上に楽な料理になるのが家の習慣だ
なにより父がいないという事実だけで何杯もいけるというブーンには、それだけで十分だった

給湯器の横にかかったラジオからは暖かい家族ドラマが流れている

「いやね、親父さん その気持ちよおく分かりますよ」

( ^ω^)「あの親父の頭は誰も理解できんお」

J( 'ー`)し「歳だしね。いまさらのことだよ」

( ^ω^)「人の気持ちが分からんくせにえらそうなことをいいすぎだお」

( ^ω^)「もうチョットひとの気持ちの機微が分からんとだめだお
      よくあれで仕事できるお」

J( 'ー`)し「そうね・・・」



125 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 22:56:25.38 ID:bsiFHg4l0

( ^ω^)「そういえばしぃはもう帰ってきてるるのかお? 今日はやけに遅いお」

J( 'ー`)し「は? 聞いたんじゃないの?
      しぃは今日から合宿でK県じゃんー」

(;^ω^)「な、なんだってー!?
      一言も聞いてなかったお」

J( 'ー`)し「あーそっか。だからチャーハンがこんなにあまってるわけね
      合点がいったわ! ぷふふー」

(;^ω^)「これが上意下達かお・・・ 宮仕えはつらいお」

J( 'ー`)し「思い知ったか平民め
      それにあんたどこにもつかえてな」

はっとして母は口を噤み、ブーンは気づかない振りをして、すこしだけ沈黙が続いた



130 : ◆9qfbyrNes. :2006/03/09(木) 23:20:55.76 ID:bsiFHg4l0
チャーハンとラーメンを食べながら、ブーンは母に玄関の事を聞いた
しかし母が帰宅するときには全く問題なく玄関は開いたらしい
ブーンが不思議に思っていると、今度は指の怪我とパジャマ以外の格好をしていることを突っ込まれ、からかわれた

J( 'ー`)し「じゃあね。たまには早く寝るのよ」

風呂から戻った母は9時にもなると早々と寝てしまった
途端にまたいつもの眠気が思い出したように頭を漂いだした

2階へ上がる街談の途中で書斎のことが頭をよぎったが、無理に考えないようにした

( ^ω^)(悪いのは向こうだお。言われるまで無視するお
      ・・・あ、そういえばまだシークレットも5番もいくつかあったお)

再びシークレットと5番を持ってテレビの前に立ち、慎重に再配置をした

( ^ω^)(これでいいお
      それにしてもしぃはシークレットあんまり好きじゃなかったっけお
      目が隠れてるのがいやだとか言ったけど、あいつはわかってないお)

キッチンで手を洗い、今の電気を消して部屋に戻った
ネットにつなげて何度目かの自慰の途中で母の顔がよぎってしまった
ため息をつきながらまた手を洗って床に着いた

( ^ω^)(・・・あれ、さっきはどうして手を洗ったんだっけお?)

シークレットの斜め後ろには6番が立っている
およそ人気のない『彼』に目を留めなかったブーンはそれに手が触れたのにも気がつかなかった
だから手についたべたべたした何かのこともよく記憶にとどめずに、ただ手を洗ったのだった
そのことも忘れてブーンは次第に眠りへと落ちていった



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