川 ゚ -゚)クーが恋愛するようです

  
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/02(水) 18:54:18.57 ID:N14RPfK0O
  
第1話 ネットゲーム

川;゚ ー゚)「え…」

クーはいつものようにネットゲームをしていた。
しかし目の前のPC画面が映すものは、クーにとっては「いつも」の世界とは違うもの。
くぅの名で動いていたキャラは地面と一体化している。

川;゚ ー゚)「…………」

しばし画面を見つめ考えるが、その異質な世界は変わらない。

『ありえねーあんなとこで死んでるw』
『くぅさんでも死ぬんだな…』

などと通り掛ったギルドメンツにチャットで言わる。
ギルドとは、簡単に言えば気のあう奴等で組まれた一つの集団だ。
クーは口角をひくひくさせながら、打ち込む。

くぅ 『たまにはな…』



  
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/02(水) 18:57:37.14 ID:N14RPfK0O
  
くぅが死ぬなんてことは中々ないのだ。本当に、稀である。
操作しているクー自身、動揺を隠しきれない。
通りがかりのギルドメンツに蘇生してもらい、とりあえず街に戻った。
はぁ…と溜息をつき、飲み物をとりに台所へ行った。


クーは自他共に認めるネトゲ廃人である。
とは言っても決してニートではなく、女子高に通う成績優秀な少女だ。
胸元まで伸ばした艶やかな黒髪と、憂いを帯びた瞳の、まるで人形のようなクー。
誰もが憧れる。そして人気者。でも、誰にも言えない秘密がある。


趣味、ネットゲーム。



  
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/02(水) 19:01:08.21 ID:N14RPfK0O
  
PC自体は中学に入ってから触り、ネットゲームは中学2年の頃から始めた。
そして現在、高校3年の受験生。
こうしてPCを触っていられるのは中学受験をしたお陰か。
一流大学の付属校に通っているため、このままエスカレーターという道を歩んでいる。

川 ゚ ー゚)「どうするかな…」

チャット画面に、くぅを死なせた原因がある。
唐突に、本当に何の前触れもなく画面に表示されたその言葉。



  
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/02(水) 19:05:37.25 ID:N14RPfK0O
  

ドクオ『俺が一番気になる人は、くぅです』

囁きと呼ばれる1対1で行われ、他の人には見られないチャットがクーを悩ませた。
この囁きを読んだ瞬間に、クーの思考・行動は停止。低Lv狩場での死亡へと誘った。
同じギルドに所属するドクオという人物からの突然の告白。
何かの冗談か、はたまた罰ゲームか…。クーはこの返事に困っていた。

川 ゚ ー゚)「何が言いたい。付き合えと言うことか?それとも…」

頬杖をつきながら、悶々と考えた。

くぅ『どういうことだ』

結局、こんなことしか言えなかった。
そして数十秒もしないうちにドクオから囁きがあった。



  
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/02(水) 19:08:41.40 ID:N14RPfK0O
  

ドクオ『こんなこと言ったらドン引きすると思うし、ネット上だからありえないって思うかもしれないけど』

川;゚ ー゚)(何故、そこで区切るのだ、はやく言え。はやくはやくはやくはやく)

頭が変になりそうだった。

くぅ 『うん?』

何故だか焦りを感じ、相槌を打った。そして、間髪いれずに一言。

ドクオ『好きなんだ』

川;゚ ー゚)「うっ…」



  
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/02(水) 19:15:21.17 ID:N14RPfK0O
  

思わず頭を押さえた。クーは今の今まで男と付き合ったことがなかった。
社交の場はいくらでもあったし、人目を惹く容姿であったから告白されないわけがなかった。
でも、クーは恋愛を避け続けた。怖かったから。
男が怖かったのではなくて、本当は何も出来ない自分を知られるのが怖かった。
人はクーを完璧な人間のようにみた。
勝手に素晴らしい人間だと勘違いしてかかるのだ。
本当の自分を知られたくない。弱さを見せたくないのかもしれない。

でも、続く言葉にクーは安心するのだ。


ドクオ『ゲームの中だけでも良いから、一緒にいてほしい』



  
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/02(水) 19:19:56.39 ID:N14RPfK0O
  
ゲームの中だけ…その言葉を鸚鵡のように反芻した。
紅茶を一啜りしてクーは笑った。

川 ゚ ー゚)「それなら、利用出来るな」

相手もこちらも甘い蜜を吸える。
ドクオを利用したらネトゲ上ではアイテムも融通が利くし、経験値狩りをするのにも丁度いい。
今まで組んだ中では一番強かったはずだ。
盾にもなるし、攻撃面でも役に立つ。
あとドクオには私という存在だけで蜜になるだろうし。

恐らく会う心配もない。相手もネトゲ廃人だから、会おうなんて言うはずはない。

言われたら渋ればいい。



  
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/02(水) 19:21:57.66 ID:N14RPfK0O
  

くぅ『本当にゲームの中だけでいいのか?』

念を押すように確かめる。少しだけ、期待させるように続ける。

くぅ 『しばらくゲームの中で付き合って、もし、大丈夫そうならリアルでも会おう』


かくして、クーのネット上だけの偽の恋愛は始まった。



  
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/02(水) 19:26:04.47 ID:N14RPfK0O
  
そして、クーはいかにもドクオに興味があるといった素振りで話をした。

くぅ 『何故、私を好きになったのだ?』

ドクオは色々聞かれることを苦とせずに、答えてくれた。

ドクオ『くぅが復帰して、同じギルドに入った。んでー、何度かPT組んで話したりしただろ?』

ドクオ『何で好きになったって言われると困るけど、たぶん感覚的なもんだよw』

確か引退しようと決心したところで、今のギルドマスター(ギルドのトップ。リーダー)に
『他のギルドとやりあうためには、お前の戦力が必要なんだあああああああ』と口説き落とされた気がする。

そんなこともあったなぁと思いながら、ドクオの言う事を脳に叩き込む。

ドクオ 『海に行きたいなんて、くぅが突然言い出しただろ?俺が一緒行ってやるよw
なんて軽いノリで言ったが、あれは本心だぜ?』



  
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/02(水) 19:32:44.75 ID:N14RPfK0O
  

くぅ『今でも綺麗な海に行きたいさ』

ドクオ『ほんとか?いつか行こうぜ!』

川 ゚ ー゚)「そのいつかは絶対ないけどな」

川 ゚ -゚)「…しかし、怪しいな」

ドクオがクーと知り合ったのはたった数ヶ月前ということ。
その期間で、しかもネットだけしか接点がないのに、私を好きになるのか?
一目惚れなのか?ネトゲ内でそんなことあるのか?
小さな疑問は消えない。
利用するだけだから、別にどうでも良いことなのだが、気になってしまう。
しかし、もし、逆に利用されているかもしれないとなると癪に障る。

川 ゚ -゚)「まぁ、次第に分かることだから今はいいか」

適当に話を続けつつ、一緒に狩りをしようと誘い、早速蜜を吸わせてもらった。



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