川 ゚ -゚)クーが恋愛するようです

  
72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 20:46:27.25 ID:ZfJpELLXO
  

第6話 戦女神

平穏な日々から一転。
もう29日だ。

乗馬の準備を済まし、大荷物を肩にかけ、車に乗り込む。
親が送ってくれるのだが、一度だけしかクーの乗馬風景を見てくれたことがない。

見てほしいなんて思っていない。

クーは礼だけ言って、受付を済ましロッカーへ急いだ。
着替えや荷物をロッカーに仕舞い、馬が待機する馬房へと向かう。
鞍や頭絡を用意し、馬装を手早くする。



  
74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 20:50:49.10 ID:ZfJpELLXO
  

川 ゚ -゚)(ドクオくるかな)

ちゃんと時間を伝えたものの、心配になってくる。
大体、何故見にきたがったんだろう。

川 ゚ -゚)(乗馬なんて珍しいからかな…。私はあんまり上手くないんだが…)

時間があったため、ドクオ探しにうろついてみたが顔見知りの人間ばかりで
それらしき人物は見当たらない。

知り合いに声をかけられるばかりで、鬱陶しいので今日自分の乗る馬の元へ戻る。



  
75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 20:52:31.35 ID:ZfJpELLXO
  

川 ゚ -゚)「ほら、にんじんだ。食え」

掌に転がしたニンジンを馬の口許へ持っていく。
鼻の辺りのぷにぷに感が堪らないなぁとクーはニンジンをやる。

ドクオも多分来るだろうし、これは賄賂だ。たんと食え。
クーは念じる。

はたから見たら絵になる光景だが、クー自身は念じるなんてアホなことをしている。



  
76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 20:54:26.74 ID:ZfJpELLXO
  

(*'A`)「一万年と二千年前から愛してる〜♪八千年過ぎた頃からも〜〜っと恋しくな〜った♪」

ドクオは車に乗り、歌いながら目的地へと走っていた。
気分揚々である。

くぅちゃんに会える。
乗馬なんて見たことなければ、したこともない。
それも見られる。楽しみも倍というものだ。
上機嫌にならないはずもなかった。

クーに告げられた時間より少し遅れているが、相手が馬に乗っているのなら関係ないだろう。



  
77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 20:56:11.01 ID:ZfJpELLXO
  

レッスン時間がきてしまった。

ドクオを結局見つけられなかったが、クーは馬を馬場へ出しにかかった。

川 ゚ -゚)「そのうち来るだろうしな」

手袋をしながら馬に向かって話しかけ、鞭と手綱を持つ。
馬場で馬に跨り、一息する。

今日のレッスンは障害。
上手くいくといいのだが。



  
79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 20:58:17.10 ID:ZfJpELLXO
  

ドクオはレッスンが開始されて10分程度したところで、駐車場へ着いた。

ふらっと馬場まで行き、くぅを探す。
日曜だからなのか思いのほか、レッスンに出ている人がいた。

大人の、それもドクオよりずっと年上の人たちばかりだ。

('A`)「馬すげー」

まるで普通の見学者のように感嘆の声を漏らす。

馬場を見回し、本来の目的を目を細めて探す。



  
81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:00:26.70 ID:ZfJpELLXO
  

その中に、ひときわ目をひく存在。

ドクオには何と言う名前の物かは分からなかったけど
乗馬用のかっこいい帽子を目深に被った長髪の少女。

その帽子のせいか顔はよく見えない。





姿勢良く、先を鋭く見据えた瞳。





黒髪がふわりと舞った。





周囲の者たちも馬に乗りながら、口を開けてみている。



  
83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:10:27.51 ID:ZfJpELLXO
  

本当に一瞬のことだった。
それはもう本当に、人馬一体となった瞬間をみたように思えた。

それなりに高いだろう障害を跳んだはずなのに、平然としている。

そして、何事もなかったように少女は馬の首筋を愛撫した。

戦女神が実際にいるとしたら、あんな感じかもしれない。
そう思わせる程の美しさと力強さだった。

川 ゚ -゚)(あまり上手くいかないな…)

クーの頭の中に、ドクオのことは今、一切なかった。
馬と自身のことしか考えられない。

馬すら、クーに意識を集中させているようだった。



  
84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:12:43.20 ID:ZfJpELLXO
  


(*'A`)「かっけえ……」



そのレッスンが終るまで、ドクオはその少女に釘付けとなる。

素人目には何度跳んでも、駈歩をしても全てが完璧にみえた。

それでも少女は満足いかないのか、下唇を噛む様を何度か見せた。
けれど馬を撫でるときは口許を綻ばせ、最高に可愛かった。

くぅと思しき人物は何人もいたが、ドクオには分からない。
連絡が入らないから、まだきっとレッスン中なのだろうと待ち続けた。



  
85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:14:38.88 ID:ZfJpELLXO
  

ドクオが釘付けとなった少女のレッスンが終わり、30分くらいしたところでメールが入った。


『受付まできてくれ』


(*'A`)「やっと会える…」

ドクオを釘付けにさせた少女も気になったが、くぅに言われたように受付まで足を運んだ。



  
88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:18:42.70 ID:ZfJpELLXO
  


そこには先ほどまで、ドクオが夢中になっていた美少女が立っていた。

他にも人間はいたが、この少女がそうとしか言いようがなかった。

ドクオを真っ直ぐな目で見つめ、こちらへ歩み寄ってくるのだから。




('A`)「!!!!!1」









川 ゚ -゚)「ドクオか?」



  
89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:20:42.69 ID:ZfJpELLXO
  

周囲から「誰だ、こいつは」と言わんばかりの、槍の様な視線がドクオに突き刺さる。


痛い。

すごく痛い。
何だか心まで痛くなってきた。

('A`)「は、はい…」

語尾も小さくなるというものだ。
180cmもあるドクオの方が、クーよりも遥かに身長は高いはずなのだが、小さく見えた。



  
91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:24:16.05 ID:ZfJpELLXO
  

川 ゚ -゚)「クーだ。よく来れたな。行こうか」

クーは顔見知りの人間に挨拶をし、ドクオを引っ張り外へと連れ出す。

内心、安心した。
体はデカいが気が小さく弱そうだ。
ネット弁慶ってやつだったのか?

クーは周りのドクオへ向けられている視線なんて分からない。
だからそう思った。

川 ゚ -゚)「なにでここまできたんだ?」

(*'A`)「車できたんだ。とりあえず荷物持つよ」

重そうな荷物だ。クーは重たいぞと言いながら手渡した。



  
93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:26:55.57 ID:ZfJpELLXO
  

何が入っているのかと思うほどに、ずっしりと重かった。

('A`)(意外と肩とか腕とか強いのかな)

(*'A`)(にしても美人過ぎwwwwフヒッww)




('A`)「あ、あれ?」

ドクオは気づいた。

24日、あの朝
電車に乗っていた美少女…。



  
94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:29:25.45 ID:ZfJpELLXO
  

(*'A`)「電車で見たことある」

川 ゚ -゚)「む?」

















川;゚ -゚)「あああああああああ、このあいだの不審者!!1」

柄にもなく、大きな声を出してしまった。
すぐに我に返り、謝った。



  
96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:31:24.92 ID:ZfJpELLXO
  

川;゚ -゚)「とりあえず、車へ案内してくれ」

叫んでしまった恥ずかしさと、ドクオの抜けた顔を見てられなくて早足に駐車場内を歩き回った。


('A`)「あ、あの、行き過ぎ…この車なんだけど」

間の抜けた声が後ろから掛かり、クーは振り返った。

意外にも外車。
似合わないなと思いながら、助手席のドアを開けてもらい乗り込んだ。



  
99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:34:28.84 ID:ZfJpELLXO
  

('A`)(会ってくれるって言ったけど、無防備だなぁ。普通に乗り込んじゃった…)

やましいことを考えたりはしていないが、ドクオとしては拍子抜けなようだ。

荷物を後ろの座席に置き、運転席へ乗り込む。

川 ゚ -゚)「気分を害したかもしれないが、すまない。悪気はなかった」

('A`)「いや、気にしないでいいよ。慣れてるし」



  
100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:37:11.76 ID:ZfJpELLXO
  

清々しい程、あっけらかんとドクオは言った。
本当に気にしていないようだ。

すぐに発車すると思ったが、ドクオにまじまじと観察される。

クーも負けじと見返し、話しを振った。

川 ゚ -゚)「どこへ行こうか?」

(*'A`)「あ、え、どこいこうか」

クーはどこまで見惚れさせれば済むのだろう。
ドクオの胸は高鳴った。
思ったよりも、ずっとずっとクーは若かった。

チャットしているときにはもっと、大人だと思っていた。



  
101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:39:46.33 ID:ZfJpELLXO
  

(*'A`)「もう夕方だし、ご飯いこう」

川 ゚ -゚)「そうだな」

車を発車させ、近所のレストランへと入った。
そして向かい合わせに座る。
暫し無言の時間が流れた。
クーはそれを特に苦痛とも感じず、ドクオを見続ける。



(*'A`)(そんなに見られるとハズカチーwwww)



  
103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:43:25.94 ID:ZfJpELLXO
  

川 ゚ -゚)「馬」

('A`)「ん」

川 ゚ -゚)「今日はあまり上手に乗れなかった。もしかして見ていたか?」

クーは俯き、口をへの字に曲げた。

('A`)「見てたけど、上手だったよ?」

川 ゚ -゚)「そうか」

話が続かない。
ドクオには不釣合い過ぎる少女は黙っている。



  
105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:45:43.35 ID:ZfJpELLXO
  


店員「お待たせしました。チョコレートアイスでございます」

突然、クーは喜々として顔を上げ、店員に笑いかけた。
店員も笑顔でクーの前にチョコレートアイスを置いた。

川*゚ -゚)「先、いただいていいか?」

もう既に手にはスプーンを持っている。
ドクオは頷いて、クーの食べる様子をデレっとした顔で見た。

(*'A`)「……」



  
107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:50:29.00 ID:ZfJpELLXO
  

白い頬にハムスターのようにアイスをつめこみ、食べている。
可愛すぎる。

熱心に食べていたクーはドクオの視線に気付いた。



川 ゚ -゚)「あ、なんだ。もしかして欲しいのか?」

ドクオの顔をじっと見てクーは問いかけた。

違うんだけど、とドクオが言う前にスプーンは差し出された。

川 ゚ -゚)「私はチョコアイスが大好きなんだ。だが特別だぞ。食え」








(*'A`)(萌えしぬwwwww)



  
109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:53:48.69 ID:ZfJpELLXO
  

あとはもうクーのペースだった。

川 ゚ -゚)(チョコアイスも食べられた。ドクオも意外と分かり易いやつだし、よかった)

クーは微妙に勘違いしつつも、チョコアイスを嬉しそうに口に運んだ。

話題もゲームの話、乗馬の話、リアルのこと。
多くを話した。
ドクオは廃人で不審者で、変なやつだけど嫌いじゃないかもしれない。

クーのドクオの評価は悪くなかった。

ドクオが笑顔で話しかけてくれると、嬉しくなった。



  
111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 21:56:26.11 ID:ZfJpELLXO
  

…嫌いじゃ、ないかもしれない。

『付き合うなんてありえない』

その意識も変わりそうだ。

でもクーは気づかない…


…フリをした。


こちらからは絶対に告白はしない。
クーはそう妙な決心をして、ドクオと店を後にした。



  
5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 12:31:52.76 ID:rijPwlqcO
  

('A`)「住み、どこ?」

川 ゚ -゚)「VIP町」

('∀`)「うはww同じ町wwww」

川 ゚ -゚)「ご近所さんかもしれないな」

('A`)「学校は、VIP学園だろ?」

川 ゚ -゚)「ちゃっかりどこの駅で降りたのかも、覚えているのか…」



  
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 12:34:26.76 ID:rijPwlqcO
  

(;'A`)「とりあえず家の傍まで送るわ」

川 ゚ ー゚)「あぁ、ありがとう」

ドクオを見つめる。
運転中のドクオはこちらを見ることは出来ないが、信号待ちになった瞬間、目があった。

('A`)「クー、ごめんな」

川 ゚ -゚)「なんのことだ」



  
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 12:37:20.61 ID:rijPwlqcO
  

('A`)「いきなりゲーム内で告白なんて驚いただろ?」

川 ゚ -゚)「あぁ、死ぬくらい驚いた。というか死んだ。経験値も減った」

(;'A`)「す、すまん…」

川 ゚ -゚)「謝るな、気にしていない」

('A`)(謝りたくなるような言い方をしたのはそっちjy)

川 ゚ -゚)「ドクオ、青だぞ。私の顔ばかり見るな」

('A`)「……へい」



  
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 12:39:18.42 ID:rijPwlqcO
  

クーは、頼りなさそうなその年上を観察し続ける。
恥ずかしいのだろうか、耳まで赤くなっている。

川 ゚ -゚)「ドクオ」

呼びかけにびっくりしたように反応する。

川 ゚ -゚)「今日はありがとう。あまり遊べなかったがすまないな」

(*'A`)「いや、会えただけで嬉しい…」



  
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 12:41:49.62 ID:rijPwlqcO
  

家が見えてきた。
そろそろお別れの時間だ。

川 ゚ -゚)「楽しかった」

ぼそっと言ったそれが、ドクオに聞こえたかは分からない。

川 ゚ -゚)「ドクオ、またゲーム内で会おう」

('A`)「うん。クー、おやすみ」

クーは荷物を後部座席からとり、その場を離れ手を振った。



  
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 12:44:58.92 ID:rijPwlqcO
  

川*゚ ー゚)「またな」

ドクオも手を振り返す。

('A`)「あの、クー。電話するから…っ」

川 ゚ ー゚)「あぁ、待っているよ」

クーは笑顔で見送った。



  
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 12:46:50.31 ID:rijPwlqcO
  

川 ゚ -゚)「ただいま」

両親とも居る筈なのだが返事はない。
犬だけがご機嫌にリビングから出てきただけだった。

川 ゚ -゚)「お風呂、入るか…」

乗馬で汗をかいた。

川;゚ -゚)「汗臭かったかな」

後の祭りである。



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