( 'A`)がポストペットになったようです

  
86: ◆eF5r2PWbOc :08/28(月) 21:23 rRkAjgz8O
  

(´・ω・`)「………」




一日目



ショボンはドクオの異変に一早く気付いた。
いつもは残さず食べる朝御飯を、今日は箸さえ付けていなかった。テーブルの上に乗った目玉焼きが、いつの間にか冷たくなっていた。

当のドクオは、布団の中に潜り込み、一度も顔を出してはいなかった。




(´・ω・`)「ドクオ…大丈夫?どこか具合いでも悪いの…?」



('A`)「…なんでもねぇよ……放っておいてくれ…」




(´・ω・`)「そういう訳にはいかないよ……」



('A`)「いいからッ!!……頼むから、独りにしてくれよ……」




(´・ω・`)「…わかった」




ショボンはゆっくりと部屋を出ていきました。
何度かドクオを気にしながらも「何か事情があるんだ…」と思い、ドアを静かに閉めた。




('A`)「もったいない事…しちまったな…」




ドクオはテーブルに乗ったままの朝御飯を見つめ、力無く呟いた。




('A`)「でも…どれだけ食べたって……結局は死んじまうなら…食べたく無いよ……」






('A`)「そういえば…俺には両親も…いないのか……トーチャンも…カーチャンも……いないんだな…」





('A`)「畜生…」



  
92: ◆eF5r2PWbOc :08/29(火) 07:56 nF+rImqdO
  

('A`)「……メール…届いているのか…」




ドクオは郵便受けを見た。
郵便受けには小さなランプが付いており、メールを受信した時に光るようになっていた。
これもショボンがアイディアを出し、わざわざ設置してくれた物だった。




('A`)「…ん?……ショボンからのメールじゃないか…」




内容はこうだった。






ドクオ

何があったのかは知らないけど、元気出しなよ…?
いつものドクオらしくないし、それじゃ僕もテンソン上がらないよ…

夕飯には帰ります。


(´・ω・`)ショボンより






それには、ショボンの気持ちが綴られていた。
ドクオにはその意図を読み取る事は出来たが、あえてそれをしなかった。
読みかけたメールを郵便受けに戻し、再び布団の中へ潜り込んだ。





('A`)「…ごめんな、ごめんなショボン……でも俺は…俺はもう…いなくなっちまうんだ……」




独り言は続く。





('A`)「お前は凄いよショボン…短期間で自分の欠点を克服できているもんな……俺は…違う……変わらない…変われない……」




ドクオは枕を顔に押し当てた。
電気のついていない部屋の中で、ただ…ただ泣き声だけが静かに響く。




('A`)「畜生……まだ童貞も捨ててない、美味い物も食ってない、もっと……ショボンと…あいつらと遊びたい……死にたくないよ…ッ!!」




ドクオは力一杯叫んだ。
しかし、その声は布団に遮られ、外に漏れる事は無かった。


窓から見える山に夕陽が沈む。
ドクオにとって、長く、それでいて短い時間だった。


泣き疲れたドクオは布団の中で寝てしまった。そして夢を見た。


いつまでも仲の良いショボンとドクオ自身の夢を。



  
98: ◆eF5r2PWbOc :08/29(火) 20:40 nF+rImqdO
  

(´・ω・`)「ただいま…」




('A`)「……」





(´・ω・`)「………」




夕方

ドクオは、未だに心を閉ざしたままだった。
いつもなら元気な声で「おう、おかえり!!」と言うのだが、今日は違っていた。
ショボンは次第に腹立たしくなってきた。
ドクオの態度に、遂に堪忍袋の緒が切れたのだ。




(´・ω・`)「…ねえ、いつまでスネてるつもりなのさ……いい歳してみっともない…!!」




('A`)「…スネてる…だと……今、そう言ったのかよ…?」




(´・ω・`)「そうだよ、朝から様子も変だし…それを話してくれないし…!!」




('A`)「…話したところで…一体どうなるってんだよッ!!どうにもならないんだよッ!!」




二人は、互いが互いに腹を立て、同時に罵声を浴びせ始めた。いつもの喧嘩ならばすぐに収まったが、そうではなかった。
二人とも、本気で怒っているのだから。




(´・ω・`)「いつもそうだよッ!!肝心な事は何一つ話さない…ドクオの悪い癖だよ!!」




('A`)「直す気は無いね!?どうせ……どうせ俺はもうすぐ死んじまうんだからなッ!!」




(´・ω・`)「……え?」




('A`)「……チッ!!」




部屋全体が凍りついたようだった。
さっきのドクオの一言が、今までの喧嘩を止めとしまった。

「しまった」という顔をしているドクオに、ショボンはゆっくりと話しかけた。
さっきの勢いがまるで嘘だったかのように。




(´・ω・`)「どういう…事なの…?死んじまうって……一体何なのさ?」




('A`)「うるせえよ…放っておいてくれ……」




(´・ω・`)「ちゃんと話してくれるまで……ずっとここに居る…!!」




('A`)「……良く聞けよ…?」





そしてドクオは話しだした。
ブーンの変化、ドクオの体調不良、そして…その原因となった『ポストペットの寿命』の事を。



  
101: ◆eF5r2PWbOc :08/29(火) 21:02 nF+rImqdO
  

(´・ω・`)「…そうだったんだ…」




('A`)「ああ…どうやら俺の命はあと……三日らしいんだ…」




ドクオは安堵に近い感覚に包まれた。
胸のつっかえが取れたような、そんな感覚だった。
人に話すという事は、それだこで安らげる事が出来る…ドクオはそれを学んだ。

カチッと、日付の変わる音がした。
時刻は0:00…ドクオは時計を眺めて呟いた。




('A`)「あと…二日か…」




(´・ω・`)「…ドクオ…」




ショボンは少し考え、言いたい事をまとめてから口に出した。
昔からそうなのである。




(´・ω・`)「『あと二日』とか『もう時間が無い』とかさ…そういう考えって…何て言うか……もったいないと思うよ?」




('A`)「…何を言ってるん…」



(´・ω・`)「だってさ、ジェットコースターに乗って『あと少しで終わる』とか『もう終わっちゃう』とか…そんな風には思わないだろ?」




('A`)「……」




(´・ω・`)「人生も同じだよ……そんな事を考えてる暇なんて…僕達には無いよ……ただ、今を精一杯生きる…それだけだよ…」




ドクオは知っていた。
その台詞がショボンの好きな漫画『リアル』に書かれていた文と同じだと。

知っていながらも、涙がこぼれた。今まで泣かなかった分の涙が、一気に溢れ出したようだった。




('A`)「おま……パクるなよ…自分の言葉は無いのかよ…!!」




(´・ω・`)「えへ…ごめん…」




('A`)「でも…ありがとうな……そうだよな、悩んでるなんて…俺らしくなかったよな?」




(´・ω・`)「そうだよ……悩む暇があるなら…精一杯……精一杯生きなきゃッ!!」




('A`)「おう、任せておけッ!!」




ドクオの顔には正気が宿り、言葉にも張りが出てきているようだった。

ドクオは呟く。


ショボンには聞こえない声で。



ただ一言

『ありがとう』と…



  
103: ◆eF5r2PWbOc :08/29(火) 21:29 nF+rImqdO
  

( ゚∀゚)「…そうか…ドクオも……『寿命』がきちまったのか……」




ξ゚听)ξ「ええ……」




( ^ω^)「ドクオって…この前来た、すごい失礼な奴の事かお?あれはムカついたお…」




ジョルジュ宅


ショボンからメールの返事が来ない事を心配した『あかねちゃん』は、親友でもあるジョルジュに連絡をとっていた。

その時やってきたツンによって、ジョルジュはドクオに『寿命』が近付いている事を、初めて知った。




( ゚∀゚)「…バックアップが取れるならしてやりたいが……今の状況では何とも……」



ξ゚听)ξ「分かってる…それは分かってるの……けど…ッ!!」




( ゚∀゚)「残念だけど…肝心の『ツール』が無ければ、いくら俺でも無理なんだよ…それほど複雑なんだ……」




ξ゚听)ξ「……なら、せめて…」




( ゚∀゚)「ああ、満足出来るまで…遊んでやるよ……なあ、ブーン?」




( ^ω^)「遊ぶのは大好きだお!!それは任せてほしいおッ!!」



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