( 'A`)がポストペットになったようです

  
105: ◆eF5r2PWbOc :08/31(木) 20:06 PmgfB7O1O
  

('A`)「……ッうぁ…!!」



二日目の朝


ドクオは背伸びをし、朝日と向かい合った。久々に見た朝日は眩しく、手を伸ばせば届きそうな距離に思えた。
落ち着いている証拠である。




('A`)「…今日も…俺は元気だ……!!」




その言葉は力強く、生命力に満ち溢れていた。ドクオが言うからこそ、その言葉は不思議な力を持つのだった。




(´・ω・`)「…おはよ…」




眠い目を擦りながらショボンが起き上がった。

口には白い跡が着いていたが、気にする事もなく、朝日を見つめていた。




(´・ω・`)「…今……何時なの…?」




('A`)「…九時前だな……早起きはいいもんだな…」



(´・ω・`)「……二度寝したい…」




('A`)「馬鹿かよ、今日はジョルジュと遊びに行くんだろう…?二度寝してたら遅れちまうぞ…」




ショボンは虚ろな目付きで時計を見た。
丸く小さい目を細めている姿は、寝ているそれと相違なかった。




(´・ω・`)「今日は…ジョルジュが迎えに来るんだ……だから寝てても平気だよ…」



('A`)「本当かよ?なんか胡散臭いな…それ…」




ドクオがショボンに疑いの眼差しを向けたと同時に、外から甲高い爆音が聞こえてきた。
その音はショボンの家の前で止まり、短くクラクションを鳴らすようにした。




( ゚∀゚)「おーい、ショボン、ドクオーッ!!!早く降りてこいってwwwwwwwwwww」




爆音の正体、それはジョルジュだった。

ジョルジュの手には大型バイクのハンドルが握られており、丁寧にサイドカーまで付いていた。


実はジョルジュはこの日の為に、父親の駆る『ハーレー・ダビットソン』を借りていたのだ。




(´・ω・`)「…迎えに来たでしょ…?」




('A`)「確かにな……早く用意しちまおうぜ…ッ!!」



  
106: ◆eF5r2PWbOc :08/31(木) 20:36 PmgfB7O1O
  

( ゚∀゚)「遅ぇよwwwwwwwwww」




ジョルジュがショボンの部屋へ乗り込んでいた。
その格好は皮ジャン、皮パン、バンダナにサングラスと言う『ハーレー乗り』をそのまま具現化したような姿だった。
しかしサイズが合っていない…恐らく父親の所有物を借りてきたのだろう。




(´・ω・`)「待って…もう少しだから……」




('A`)「…さっきから何やってんだよ…パソコンをいじって……うわッ!!」




瞬間、ドクオは自分の部屋の扉に吸い込まれた。

そしてショボンの携帯電話の中に、ドクオの姿があった。



('A`)「こ、これは…一体ッ!?」




( ゚∀゚)「お、初めてにしては上手くいったな…!!」



(´・ω・`)「うん…教え方が分かりやすかったからだよ……僕ひとりじゃとても…」




('A`)「ジョルジュ、どういう事だよ……なんで俺が…ショボンの携帯の中にいる!?」




( ゚∀゚)「調べたんだがな…ショボンの携帯は『ポストペット対応』だったんだよ。アプリさえダウンロードすれば、こういう事も可能になるんだ。」




(´・ω・`)「だってさ…」





('A`)「……?」





(´・ω・`)「ドクオは外…出た事無いでしょ…?だから一回、一緒に外の世界を感じてみたかったんだ。ほら、海とか山を見たいって…言ってたでしょ?」




('A`)「ショボン…お前…」




ドクオは感無量だった。
自分の為に、たかが『ポストペット』の為にここまでしてくれるショボンに感謝した。
その思いは頬を伝い、床へ少しずつ落ちていった。




( ゚∀゚)「おまwwwww泣くなよwwwwwwwwww」




('A`)「なッ、泣いてねえよ…!!汁だよ汁ッ!!!」




(´・ω・`)「よし…まずは山へ行こうッ!!!」



( ゚∀゚)「よし、お前等ァ乗り込めwwwwww」



('A`)「楽しんで、楽しんで、死ぬまで人生を楽しんでやるッ!!」



  
118: ◆eF5r2PWbOc :09/28(木) 19:55 h+UQFgY+O
  

三人はバイクにまたがり、国道を目指した。

捕まったらただでは済まない事は分かっていた。もしかすると停学…運が悪ければ退学処分になってしまうだろう。

しかしジョルジュは走った。
決して臆する事なく、ただ目的地へ向かって。




( 'A`)「で…今からどこへ行くって言うんだ?」



(´・ω・`)「たしかに…それは僕もまだ聞いてないし……」




( ゚∀゚)「こんなに良い天気だからな……まずは海に行くぞッ!!」




そう言うとジョルジュはバイクの進路を変え、広い国道へと舵をとった。

この街の中心部を横切る国道、南へ進み県を越えれば『ニー速記念公園』、そのそばには太平洋が広がっている。




(´・ω・`)「?…なんだろう、あの渋滞は…」




(;゚∀゚)「まずいな…ありゃ『検問』だな…ッ!!」



(;'A`)「な……まさか、こんな昼間から…!?」



(;゚∀゚)「ここんとこ飲酒運転の事故が多いからな……それに、連休だから警戒しているんだろ…クソッ!!」




ジョルジュは何とか方向転換しようとした。

だが、それが裏目に出てしまった。


急に方向転換したバイクを警官が見逃すはずもなく、やかましいサイレンがジョルジュの後を追っていた。

ジョルジュは目一杯にアクセルを握った。

ハーレーの寸胴な車体が、低い排気音を出しながら脇道を突き走る。


全てはドクオの為に



  
124: ◆SKMlSPfKqU :12/20(水) 01:11 LmGX00pMO
  

(;゚∀゚)「くそッ…いい加減しつこいんだよ!!」


(;´・ω・`)「おわぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


(;'A`)「待て待て待て待て待て…揺れる、液晶の中まで揺れてるってッ!!!」


なんとかパトカーの静止を振り切り、ドクオ達はようやく海の見える道へとたどり着いた。
潮風が頬に当たり、心地好い波の音だけが広がっている景色があった。


(;゚∀゚)「うお……綺麗だな…」


(´・ω・`)「すごい…」


(*'A`)「すげえ…これが本物の海ってやつか……」


近くのコンビニでバイクを停め、しばらく眼前に広がる青い海を見つめる三人…どこにでもある風景だが、どこにも無い、今だけの美しい海に見いっていた。


(*'A`)「…来て良かったよ…こんな風景が見れるなんて思わなかった……」


( ゚∀゚)「昔親父と来たんだ…その時はお袋も一緒だったんだ…」


(´・ω・`)「あ…そうか、ジョルジュのお母さんって…」


( ゚∀゚)「五歳の時にな……先に逝っちゃったよ…」


( 'A`)「……」



三人はそれでも静かに海を眺めていた。

するとジョルジュが思い立ったかのように話だした。


( ゚∀゚)「誰にも出会いはあるし、誰にでも別れはある……それは自分の肉親かもしれないし、友達かもしれない…」


( 'A`)「……」


( ゚∀゚)「俺の場合はお袋と…友達のブーンだった…」


(´・ω・`)「ジョルジュ…」


( ゚∀゚)「思うんだ…大切なのは「過程」なんだって……別れは避けられない、だからこそそれまで一緒に共有してきた時間、出来事、思い出……それが大切なんだと思うんだ……」


( 'A`)「……」


夕暮れが近付き、太陽が水平線の向こうに吸い込まれていく。
いつも世界を照らし、その役目を終えた太陽は暫しの休息につく。

自分もそれと同じなのかもしれない……ドクオはそう思った。



  
126: ◆SKMlSPfKqU :12/20(水) 01:43 LmGX00pMO
  

( ゚∀゚)「…さて、そろそろ行くとするか…?」


(´・ω・`)「そうだね…」


夜の九時過ぎ

太陽は既に沈み、代わりに穏やかな月が海を照らし出していた。
時間を忘れていたジョルジュはバイクに火をいれようと歩き出した。ショボンもそれに釣られて後を追う。

しかしその時、既に異変は起こっていた。


( ゚∀゚)「ちょっと冷えるな…ファミレスでも寄って帰るか?」


(´・ω・`)「それがいいね…いいでしょ、ドクオ?」


('A`)



(´・ω・`)「ドクオってば…」


('A`)



(;´・ω・`)「ド…クオ…?」


('A`)



(;´゚ω゚`)「ドクオ!!どうしたんだよ、返事をしてよ!!!」



('A`)



(;´゚ω゚`)「ああ…あ……ドクオ!!早く…早く起きてよッ!!!」


(;゚∀゚)「ドクオッ!!…こりゃ不味いな…早く家に連れて帰らないと…」


(;´゚ω゚`)「あ…ああああぁ…!!」


(;゚∀゚)「落ち着けショボン!!」


(;´・ω・`)「ジ…ジョルジュ…」


(;゚∀゚)「お前がしっかりしないでどうするんだよッ!?とにかく今は急いで家に帰るぞ!!」


(;´・ω・`)「わ、わかった!!」



  
130: ◆SKMlSPfKqU :12/20(水) 07:49 LmGX00pMO
  

( ゚∀゚)「……」


(;´・ω・`)「……」


時間は夜中の三時をさしていた。
ドクオの異変に気付いたジョルジュとショボンは急いで家に帰り、早速パソコンの電源をつけた。そしてドクオを中に戻し、精一杯の処置をした。

その結果、ドクオはなんとか命を取り留める事が出来た。が、未だ意識は戻らず、画面の中にはぐったりと倒れているドクオの姿しかなかった。


( ゚∀゚)「…これが限界だ……いつ逝ってもおかしくない…」


(´・ω・`)「そう…覚悟はしてたけど…」


二人はただブラウザを覗きこむ事しかできなかった。最善は尽した、あとはただ時がくるのを待つしかなかった。


(´・ω・`)「結局…ドクオは満足して…くれたのかな?」


( ゚∀゚)「さあな…それはコイツにしか…わからない…」


コーヒーを飲みながら二人はあても無く話す。
何も出来ない自分、ただ待つ事しか出来ない自分、色んな感情が入り乱れていた。


( ゚∀゚)「…じゃあブーンも起こしておくか…」


(´・ω・`)「そうだね…」


( ゚∀゚)「ブーンの時はいきなりだったからな…今回は見届けないとな…?」


(´・ω・`)「ジョルジュ」



( ゚∀゚)「…なんだ?」


(´・ω・`)「色々…ありがとうね…」


( ゚∀゚)「…友達だろ?」


ショボンはそんなジョルジュの気持ちが嬉しかった。
ドクオもそうだが、ジョルジュもショボンにとっては大切な「友達」なのだと、この時改めてそう思った。


深夜四時

外に明かりはなく、静かで深い夜だった。



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