( 'A`)がポストペットになったようです

  
135: ◆SKMlSPfKqU :01/09(火) 20:11 xPavl0hbO
  

(;'A`)「……うっ」


ドクオが目覚めた時には既に夜は明けており、太陽が真上にまで昇っていた。
どれくらい眠っていたのかわからず、ただゆっくりと周りを見渡した。そこには死んだように眠るショボンとジョルジュの姿があった。


( 'A`)「そうか…俺は海で……」


思い出そうとしても思い出せない、脳がまだ混乱しきっている状態なのだろう。数日前から現れていた症状が、遂に本格的にドクオの体を蝕み始めた。

ドクオはふと、パソコンの内部を見渡した。

そこにはブーンとツンが、ドクオに寄り添う形で眠っていた。


(;'A`)「…暑苦しいと思ったら…まったく」


二人の間を器用に抜け出し、地面にたたまれていた毛布を被せた。


( 'A`)「これならあったかいだろう…?」


二人に問いかける。
しかし返事は返ってこなかった。
部屋の中に四人の寝息だけが広がる。


( 'A`)「こいつらのせいで慌ただしかったな…」


( ^ω^)

ブーン


ξ ゚听)ξ

ツン


( ゚∀゚)

ジョルジュ


(´・ω・`)

…ショボン



( 'A`)「でも…楽しかったな…」


ドクオの顔に満面の笑みが広がった。
こいつらに出会えた事が、俺の生きた証になる…そう思うようになっていた。
そして少しの後悔…


( 'A`)「もっと……もっと早くに出会ってればな…」


そして四人の笑い顔を思い浮かべ、ドクオは少しだけ涙した。
そして心の底から感謝した。

こいつらに出会った事を。



  
136: ◆SKMlSPfKqU :01/11(木) 20:30 sfmPfnwMO
  

(´・ω・`)「ドクオ……」


( 'A`)「…ショボン…起きたのか…」


ドクオの知らない内にショボンはパソコンの近くに歩み寄り、椅子に腰を掛けていた。少し前までは当たり前だった風景…それがもうすぐ消えてしまうのだとショボンは思った。
それがショボンの胸を締め付け、喉に栓をしてしまっていた。
何も喋る事が出来ない。


( 'A`)「ショボン…よく聞けよ…」


(´・ω・`)「……」


( 'A`)「俺はもうすぐ消えて無くなる…今までの記憶や思い出を道連れにして…俺は逝く……」


(´・ω・`)「…ド…ドク」


( 'A`)「けどそれが俺達の最後じゃない」


(´・ω・`)「……?」


ショボンにはドクオの言葉を理解する事ができなかった。不思議そうな顔をするショボンに、ドクオはただ静かに語り始めた。
自分という存在について。


( 'A`)「俺はポストペット…時期が来れば寿命がくるようにプログラムされている……それには俺も抵抗出来ない…」


(´・ω・`)「……」


( 'A`)「『今のドクオ』は消えてしまう…けど、また俺を…ドクオを選ぶ事で中身は違うが『ドクオ』との新しい生活が始まるんだ…」


(´・ω・`)「でも今日までの記憶は…」


( 'A`)「消えてしまう…だからお前は、新しい『ドクオ』との日々を楽しめば良いんだ……記憶は無くても、思い出が無くなってしまっても、新しく作り直せばいいんだから…」


沈黙の中で鼻をすする音が聞こえる。すでにキーボードは湿り気を帯びており、それがショボンの目から流れるものだと認識するのに時間はいらなかった。


(´;ω;`)「ウグッ……い、嫌だよ…僕らがドクオを覚えていても……それがドクオと共有出来なきゃ…嫌だよ……」


( 'A`)「ショボン…お前…」


ドクオは話しかけようとしたが、出来なかった。ショボンの涙の訳は自分が一番良くわかっている。
皆が自分を慕ってくれているのもわかっていた。
だからこそドクオは沈黙を守ったのだ。

これが現実なのだと諭すように。



  
137: ◆SKMlSPfKqU :01/11(木) 20:53 sfmPfnwMO
  

( ゚∀゚)「ドクオ…ショボンの気持ち…わかってやってくれよ……」


( 'A`)「ジョルジュ…お前まで何を」


(#^ω^)「ドクオッ!!ショボンさんをいじめる奴はウホッだお…!!」


( 'A`)「ブーン…」


ξ ;;)ξ「あ、あんたみたいな奴でも……皆消えてほしく無いのよッ!!」


( 'A`)「ツン……」


ドクオの周りには、いつの間にか四人が…いつものように寄り添っていた。
それはドクオが封印していた『ある感情』を呼び起こすのには十分な『鍵』になっていた。抑え込んでいた思いが溢れ、それが体にも表れている。


( 'A`)「俺だって…俺だってまだ生きたい!!皆と遊びに行ったり、バカしたり、来年も海へ行きたいよッ!!」


(´;ω;`)「ドクオ…」


( 'A`)「でも無理なんだよッ!!消えちまうんだよ…お前らの前から消えちまうんだよ…!!」


( ゚∀゚)「……」


(+'A`)「だから…!!だから……」


ドクオの目から一筋の涙が流れて、床に落ちた。その涙は跡を残さず、床に落ちた時点で消えてしまった。


( 'A`)「だから…今の俺と同じくらいに…『新しいドクオ』と遊んでやってくれよ……俺の…オレノ…カワ…リ……」


(´;ω;`)「ドクオ…ドクオォォォォォ!!!!」


(;゚∀゚)「な…か、体が…!?」


ジョルジュが気付いた時には、すでに最期の時が始まっていた。
ドクオの体が徐々に曖昧になっていく。小さな光の粒が次々とドクオの体を離れ、空中に消えていく。足などはもう原形が残っておらず、初めから何も無かったかのように消えてしまっていた。


ξ ;;)ξ「い、いやあぁぁぁぁぁぁ…ドクオ!!」


(;^ω^)「ドクオが消えてしまうお!!早く…早くしないと……」


同じ画面の中にいるブーンとツンは、ドクオの体から出てくる光の粒を必死に集めようとした。
だがその粒は掌をすり抜け、勢い無く空へとのぼっていく。

もう誰にも止める事は出来なかった。



  
138: ◆SKMlSPfKqU :01/11(木) 21:18 sfmPfnwMO
  

( 'A 「ア…アウ……ショボ……」


(´;ω;`)「ドクオ!!何…何だいドクオッ!!」


画面に向かって叫ぶショボンを残っている片目で見つめ、微かに感覚の残っている口で、ドクオはショボンへの言葉をつむいだ。
もはや声は出なかったが、それでもドクオは喋るのを止めなかった。消えてしまう前に、どうしても伝えたかった事…今までは恥ずかしくて口には出せなかった事を。


あ り が と う


更に言葉は続く。



お 前 に 会 え て

俺 は

幸 せ だ っ た よ



(;゚∀゚)「ダメだ…もうこれ以上は……」


(´;ω;`)「ドクオ……グスッ……ドクオォ…!!」



泣 く な よ

こ っ ち ま で

悲 し く な る



ξ ;;)ξ「ウッ……もう…喋らないで…お願いだからぁッ!!!」



ま た 俺 と



(;^ω^)「か、顔が……ドクオ!!しっかり、しっかりするんだお!!!!」



一 緒 に



(´;ω;`)「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ…ドクオォォォォォォォォォォッ!!!!」



ア  ソ  ボ ウ  ナ



……







ドクオは最期にそう言い残し画面の中の、限られた空間の空へと消えていった。

また一緒に遊ぼうな

そう言って消えたドクオの顔は、とても幸せそうだった。

最期を見とったショボンはツンとブーンを別のパソコンへと移し、静かにその電源を落とした。
ドクオの居た部屋を見るのが、たまらなく辛かった。
明日になればまた、あのひねくれた顔で座っているのでは無いか…?

そんな考えが絶える事無く頬を伝っては、カーペットに落ちていった。



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