( ^ω^)ブーンたちは鈴の音を聞くようです
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:51:14.26 ID:8xUEAKk1O
- 第2話「カーチャン」
プギャーが消えてから1週間が経った。もはや『消滅』は『死』と同じになった。
消滅者は2000人を超えた。俺のクラスではプギャーしか消えていないが、VIP校でもすでに6人消えた。
鈴の音の情報もニュースで取り上げられ、自暴自棄になった男が刃物を持って小学校へ侵入し、児童12人を殺し消滅する事件も起きた。消えるならひっそりと消えろよな。
とにかくみんないつ鈴の音が聞こえるかビクビクしていた。
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:54:02.88 ID:8xUEAKk1O
- だけど、俺はまだ実感がわかない。プギャーが俺の隣で消えても、自分が消えるかもしれないとは思えなかった。
だが、鈴の音はものすごく近くまで来ていた。
J( 'ー`)し「ドクオ、夕ご飯できたよ」
カーチャンがドアを叩く。俺はいつも通り無視する。
J( 'ー`)し「ご飯、ドアの前に置いとくよ」
俺はカーチャンが階段を降りたのを確かめてからドアを開け、夕飯を自分の部屋で食べる。こんな生活が2年間続いている。
俺はカーチャンとの2人暮らしだ。父親は俺が産まれてすぐ逃げた。女手一つで、俺は育った。
カーチャンが嫌いなわけじゃない。なぜかわからないけど、中3になってから話せなくなった。それ以来、カーチャンにはずっと辛くあたってきた。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:55:46.72 ID:8xUEAKk1O
- その日も、カーチャンはドアを叩いた。
J( 'ー`)し「ドクオ、夕飯だよ」
俺は、また無視する。
J( 'ー`)し「カーチャン、久しぶりにドクオと夕飯食べたいなあ」
('A`)「・・・・・・」
何を言い出すんだ。このバカ女は。
J( 'ー`)し「カーチャンの一生のお願いだから、今日だけは一緒に食べてくれない?ね?お願い」
ずっとほっといていても、いっこうにドアの前から離れようとしない。鬱陶しいから、今日だけは一緒に食べることにした。
ドアを開けると、カーチャンの嬉しそうな顔があった。
('A`)「・・・・・・今日だけだぞ」
J( 'ー`)し「ありがとうね」
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:58:39.51 ID:8xUEAKk1O
- 夕飯の間中、俺は一言も話さなかった。黙々と食べ続けた。カーチャンは、笑いながら俺の顔を見てやがる。
食べ終わって、俺は席を立つ。
J( 'ー`)し「おいしかった?」
('A`)「・・・・・・知るかよ」
俺はそう言って、自分の部屋に戻った。
翌日、いつもなら俺はカーチャンより先に起きて、学校に行ってるはずなのに、今日はカーチャンの方が早く起きていた。
J( 'ー`)し「行ってらっしゃい」
('A`)「・・・・・・」
俺はカーチャンを無視して家を出る。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 23:00:52.96 ID:8xUEAKk1O
- ( ,,゚Д゚)「うっす」
( ^ω^)「おはようだお」
('A`)「よぉ」
最近のクラスの話題は鈴の音の話でもちっきりだ。消えた人間はどうなるのか。鈴の音を消えたらどうするか。
( ´_ゝ`)「鈴の音を聞いてから24時間しかないんだろ?まずは好きな食べ物食べたいな」
(´<_` )「その前に兄者はパソコンのフォルダを消すべきだ。残った俺が恥をかくだろ」
ξ゚听)ξ「消えたらどうなるのかな」
( ,,゚Д゚)「何も意識無くなるんじゃね?それか違う世界に飛ぶとか」
(*゚ー゚)「死ぬのと同じなんじゃない?帰って来た人はいないから、どうなるか全くわかんない。だから怖い」
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 23:04:12.47 ID:8xUEAKk1O
- 授業中、みんな前よりずっと静かになった。プギャーが消えてからずっと暗いままだ。
俺に言わせてみれば、いつ死の宣告が聞こえるかもわかんないんだから、もっと明るくしたい。
もし自分が消えるとわかったらどうするだろう。告白?銀行強盗?それとも親孝行?親孝行なんかするだろうか。
そういえば昨日の晩から、カーチャンの様子がおかしかった。一緒に夕飯を食べたがったり、朝見送ったり。
まるで自分がずっとやりたかったことをやるような……
('A`)「まさか・・・・・・」
気がつくとその場に立ち上がっていた。全員の目が俺に集まる。そのまま俺は教室を飛び出した。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 23:05:50.98 ID:8xUEAKk1O
- (´・ω・`)「どこへ行く!ドクオ!授業中だぞ!」
先生が後ろで叫んでいる。
( ^ω^)「ドクオ!」
( ,,゚Д゚)「ドクオ!」
(´・ω・`)「おまえらまで!待て!!」
ブーンとギコが後から追いかけてくる。なんでついてくるんだ。
それでも俺は振り向かなかった。今はとにかく時間が惜しい。何で今なんだ。頼む。間に合ってくれ。
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 23:11:00.62 ID:8xUEAKk1O
- 家のリビングに、カーチャンは座っていた。落ち着いている。でも目が少し赤い。
('A`)「カーチャン・・・・・・」
J( 'ー`)し「ドクオ、学校は?」
('A`)「そんなもんいらねえよ」
J( 'ー`)し「良かったよ。最後にまたおまえと話せて」
('A`)「・・・・・・!!」
J( 'ー`)し「鈴の音を聞いたんだよ。カーチャン、後5分で消えるから。ごめんね。最後までダメなカーチャンで。カーチャンのこと嫌いだったでしょ?」
そんなことない。俺がバカで、カッコつけてたからだ。何で素直に言えないんだ。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 23:14:31.06 ID:8xUEAKk1O
- J( 'ー`)し「ドクオは優しいからねえ。カーチャンが居なくなっても、仲良くやってけるよ。いつ何があるかわかんないから、悔いのない人生をおくるんだよ」
( A )「・・・なら・・・ないで・・・」
目が熱い。声が出ない。
J( 'ー`)し「??」
(;A;)「消えるなよ!消えたらぶっ飛ばすかんな!まだ全然親孝行とかしてないんだよ!!」
J( 'ー`)し「ドクオにとこんなに話せただけでもカーチャン満足だよ。これ以上親孝行してもらおうとは思ってないよ」
(;A;)「そんなんじゃ俺が納得できねえよ!今までカーチャンに大切に育ててもらったのに、こんなに……」
J( 'ー`)し「あと1分だよ」
カーチャンが時計を見て言った。
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 23:17:13.50 ID:8xUEAKk1O
- J( 'ー`)し「じゃあ最後にカーチャンからお願い」
(;A;)「・・・・・・何でも聞いてやんよ」
J( 'ー`)し「頭、撫でさせて」
俺は黙ってカーチャンに寄り添う。カーチャンの温かい手。何年振りだろう。カーチャンとこんなに近づいたのは。
('A`)「カーチャン・・・・・・」
J( 'ー`)し「なんだい?」
('A`)「夕飯、うまかったよ」
J( 'ー`)し「・・・・・・ありがとうね」
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 23:20:54.82 ID:8xUEAKk1O
- カーチャンの感触が消えた。紙が一枚、舞い落ちた。涙で滲んだあとがある。
『ドクオが優しい子に育って、カーチャンはもう悔いはないです。
覚えてますか?ドクオがまだ小学5年生の母の日。ドクオが近所のお花屋さんからカーネーションを盗んできて、2人で謝りに行きましたね。
あのとき、キツく怒っちゃったけど、本当はカーチャン、すごく嬉しかったんだよ。
カーチャン、こういう手紙書いたことないから、うまくまとまらないんだけど、カーチャンが居なくなっても、元気に暮らしてね。
愛する息子 ドクオへ』
俺は声をあげて泣いた。もう、カーチャンがドアを叩いてくれることはないんだ。カーチャンの夕飯は、もう食べれないんだ。
戻る/第3話