( ^ω^)ブーンたちは鈴の音を聞くようです

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:56:59.84 ID:+UZvXz0ZO
第5話「クー」



ξ゚听)ξ「ふぅ」

フルーツを山ほど入れたカゴを持って、私は坂を上っている。まだ5月だっていうのに、首筋に当たる日差しがめちゃくちゃ暑い。
病院の受付についた時にはもう汗だくになっていた。涼しい。天国だ。
受付のテレビでは鈴の音のニュースをやっている。ついに世界で消滅者は50万人を超えたらしい。しかも原因が未だにわからない。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:00:16.34 ID:+UZvXz0ZO
私はカゴを持って病室へ向かう。
【素直クール】
私は名前を確認して部屋に入った。
透き通るような白い肌。長い黒髪。女の私でもわかる。ものすごい美人だ。ただ、少し掴んだら折れそうなぐらい、やせ細っている。
彼女は、窓の外を見ながら歌っていた。

川 ゚ -゚)「からたちの花が咲いたよ 白い白い 花が咲いたよ」

ξ゚听)ξ「めぐ乙www」

川 ゚ -゚)「お、バナナ買ってきてくれたのか。よくそんな高価なものを」

ξ゚听)ξ「バナナが高価とかいつの時代の人間よ」

そういいながら私はバナナをクーにわたす。クーはバナナをエロチックに舐めまわすふりをした。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:02:47.22 ID:+UZvXz0ZO
どこにでもいそうな普通の女子高生の彼女だが、実はあと数ヶ月の命だ。あと1ヶ月もすれば目が見えなくなるらしい。
幼いころから体が弱く、中学に入る前に良くなったけど、また悪化してしまったらしい。

川 ゚ -゚)「早く来週にならないかな」

そう言って彼女はカレンダーを見た。来週から一週間だけ学校に戻ることを許されてる。普段クールな彼女が、涙を流してお願いしたのだ。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:05:32.98 ID:+UZvXz0ZO
川 ゚ -゚)「ブーンたちの様子はどうだ?」

私が来ると、クーは決まってこのことを聞く
私は学校の様子を彼女に詳しく話してあげた。ブーンの話になると本当に楽しそうに聞く。よっぽどブーンが好きなんだな。
プギャーやヒッキー、ぃょぅの話は黙っておいた。こんなに嬉しそうな彼女に、暗い話はしたくない。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:09:24.96 ID:+UZvXz0ZO
川 ゚ -゚)「みんな変わってないな」

ξ゚听)ξ「そろそろ時間ね」

川 ゚ -゚)「また来てくれよ」

クーは寂しそうな顔をした。

ξ゚听)ξ「またすぐに来るわ。来週、みんなに会えるように体調に気をつけるのよ」

川 ゚ -゚)「わかってるよ」

バナナを喉の奥まで突っ込んで遊んでるクーを残して、私は病室をあとにした。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:13:10.03 ID:+UZvXz0ZO
3日後、私はまた病院を訪れた。

「素直クールさんの面会ですね?」

ξ゚听)ξ「はい」

「えっと……なんていうか、今彼女は精神が不安定な状況でして。最近多いんですよね、そういうの。面会しますか?」

クーが精神不安定?何が起きたんだろう。
私は心配になったが、面会することにした。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:19:15.70 ID:+UZvXz0ZO
クーは部屋の真ん中にうずくまっていた。花瓶は割れ、ベッドのシーツは引きちぎれ、枕の羽毛が舞っている。

ξ゚听)ξ「クー・・・・・・?」

私は恐る恐るクーに近づいた。クーは目を赤くして、何かを持っている。
壊れた写真立てだった。中学の修学旅行の写真だ。クーを真ん中に私やブーン、みんなが写っている。


川 ゚ -゚)「ツン・・・・・・私ってなんでこんなに運が悪いんだろうな」

クーが私に話しかける。私はクーの腕の切り傷に気づいた。明らかに自分でひっかいた痕だ。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:23:54.02 ID:+UZvXz0ZO
川 ゚ -゚)「私は本当は中学上がる前に死ぬはずだった。やっと死ねる。やっと苦しみから解放されると思った」


川 ; -;)「なのになんで助かったの?なんで、ツンやブーンやみんなと出会ってしまったの?そこでなんでまた病気が再発するの?」

クーは割れた写真立ての破片を握りしめた。手のひらから血が流れ落ちた。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:26:43.81 ID:+UZvXz0ZO
川 ; -;)「死にたいと思ったら生かせられる。生きたいと思ったら死ななきゃならない。なんで?」

川 ; -;)「やっとのことで、最後のチャンスを得た。来週みんなと会って、全てを吹っ切るはずだった。なのに、なんで・・・・・・」

川 ; -;)「なんで鈴の音が聞こえるの?なんで今私が消えなきゃいけないの?なんでみんなそんな幸せそうなのに、私だけこんな目にあわなきゃいけないの?」

クーは私の肩を掴んで叫んだ。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:32:58.47 ID:+UZvXz0ZO
川 ; -;)「・・・・・・ごめん。私って最低だな。ツンは何も悪くないのに。」

そんなことない。私の方が最低だ。
クーが長期入院するって聞いたとき、心の奥底で喜んでいたに違いない。これで、ブーンがクーにとられることはないと。
そんな自分が醜くて、罪滅ぼしの自己満足のためだけに、頻繁にクーに会いに来てた。最低な女だ。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:38:08.24 ID:+UZvXz0ZO
川 ; -;)「神様が本当にいるなら、私、神様が憎いよ・・・・・・」


しばらく2人とも何も話さなかった。看護婦の人が、面会時間の終わりを告げに入ってきた。
私は、明日も必ず来ると約束して、部屋を出た。部屋を出る間際に、クーが「11時」と呟くのが聞こえた。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:42:27.84 ID:+UZvXz0ZO
私は翌日、学校を休んでクーに会いに行くことにした。それでも、何もしてあげることができない自分が憎かった。結局私は良いとこ取りだ。
クーの代わりに私が消えてしまえばいいのにと思った。でも、もし代われたとしても私は代われないだろう。私は臆病だから。結局は自分が最優先なんだ。

初めて見たクーの泣き顔。部屋中暴れまわったんだろう。そして、宝物だった写真を壊してしまったんだろう。彼女に生きる希望を与えた唯一の物。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:50:03.29 ID:+UZvXz0ZO
彼女はベッドに腰掛けて窓の外を見ていた。

川 ゚ -゚)「来てくれてありがとう」

私はそばの椅子に腰掛けて、クーにバナナを渡した。

川 ゚ -゚)「最後に親友がそばにいることが、こんなに心強いなんてな。最後にやりたかったこともあるが」

私なんかでいいんだろうか。

ξ゚听)ξ「クー、今一番やりたいことは何?」

川 ゚ -゚)「ブーンに会いたい。無理だけどな。あいつは今学校だ」

クーは迷わず答えた。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:56:25.72 ID:+UZvXz0ZO
私は急に思いついた。最低な私がクーのためにできるたった一つのこと。
時計を見た。11時まで40分。まだ間に合う。

ξ゚听)ξ「クー、ごめん。ちょっと待ってて。絶対戻ってくるから。絶対」

そう言って私は病室を飛び出した。

私は本気で走った。50m6秒7をあまく見るな。私をあまく見るな。
もう一度、クーの笑顔が見たい。見てやる。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:59:21.45 ID:+UZvXz0ZO
私は体育の授業中の校庭を突っ切った。後ろから体育科の呼ぶ声が聞こえるが無視する。
クラスのドアを思いっきり開けた。全員がこっちを見る。私は教室の後ろの方にアイツを見つけた。

ξ゚听)ξ「ブーン!!」

私はブーンを掴んだ。

(;^ω^)「なんだお?今授業中だお」

ξ゚听)ξ「関係ないわ!黙ってついてきなさい!」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:02:50.20 ID:VvMLiQU5O
(`・ω・´)「おいおまえたち!どこへ行くんだ!ツンはなんで私服なんだ!」

先公が前に立ちはだかった。腕時計を見る。あと20分しかない。急いでるってのに。

ξ#゚听)ξ「どきなさいよ!!どかないとぶっ殺すわよ」

(;`・ω・´)「なっ・・・・・・教師になんて口を」

先公が詰め寄ってくる。
こんなところで捕まってたら、間に合わない。強行突破しようにも、相手はガタイの良い若い男だ。ちくしょう。
そのときだった。

(;`゚ω゚´)「ふぎゃぁ!!」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:08:16.87 ID:VvMLiQU5O
先公はその場に倒れた。席に着いてるドクオがニヤニヤしながら足をぶらぶらしてる。

(#`・ω・´)「おまえ!!わざと足引っ掛けただろ!!」

('A`)「なんかツンが必死そうだったんでwww」

ξ゚听)ξ「・・・・・・あんがと!」

(#`・ω・´)「あ!待て!!」

私はブーンの手を引いて走った。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:12:13.33 ID:VvMLiQU5O
(;^ω^)「ハァ…もう疲れたお…どこへ行くんだお」

ξ゚听)ξ「黙って走りなさい!男でしょ!」

弱音を吐くブーンを引きずりながら、病院の前の坂を上った。あと10分。

(;^ω^)「病院?」


私は病室のドアを蹴破った。

川 ゚ -゚)「・・・・・・!!」

クーは驚いたように私を見て、それからブーンを見た。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:16:42.64 ID:VvMLiQU5O
川 ゚ -゚)「ツン?なんでブーンがここに?」

ξ゚听)ξ「ほら、最後に会いたかったんでしょ!!」

私はブーンの肩を掴み、前に突き出した。


川 ゚ -゚)「ツン・・・・・・」

川 ;ー;)「ありがとう」

なんでまた泣くのよ。私はクーの笑顔を見たかったのに。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:19:26.08 ID:VvMLiQU5O
川 ; -;)「ブーン?」

(;^ω^)「なんだお?」

クーは首からかけてた物を外してブーンに渡した。修学旅行のとき買った御守りだ。

( ^ω^)『クー、御守りあげるお』

川 ゚ -゚)『いいのか?』

( ^ω^)『いいお。クーが良くなるようにだお』

川 ゚ -゚)『ありがとう』

私はそのとき、すごく嫉妬したのを覚えてる。

川 ;ー;)「ありがとう。これのおかげで、今まで生きてこれた」

(;^ω^)「そんな大した物じゃないお」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:25:29.14 ID:VvMLiQU5O
時計の針が動く音が響いた。

川 ;ー;)「あと1分か」

クーは時計を見て呟いた。

川 ; -;)「最後に質問していいか?」

( ^ω^)「どうぞ」

川 ;ー;)「私のこと、好きだった?」

クーはからかうように言った。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:29:25.61 ID:VvMLiQU5O
(;^ω^)「えっと・・・・・・」


( ^ω^)「クーのことは大好きだお。一生忘れない大親友だお」

この大バカ野郎……


川 ;ー;)「そうか・・・・・・」

川 ;ー;)「一生忘れない大親友か。それもいいな」

クーは私の方を向き直った。
そして、目に涙をいっぱいに浮かべ、笑って言った。

川 ;ー;)「ツン、ありがとな。ブーンを大切にしろよ」

川 ;ー;)「じゃあね、ツン、ブーン。またどこかで会えるといいな」



クーは上を向いて、フッと消えた。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/03(日) 00:36:36.00 ID:VvMLiQU5O
ブーンは驚いたようにクーがいた場所を見つめている。急に目の奥が熱くなってきた。

ξ;;)ξ「なんでわかんないのよ!!クーはあんたのこと、大好きだったのよ!!」

(;^ω^)「・・・・・・」

ξ;;)ξ「学校のあんたの話を、すごく嬉しそうに聞いてたのよ!!なのになんで・・・・・・」

ブーンにあたったって、何にもならないのに。
私はその場に崩れて、大声で泣いた。
親友を、良きライバルを、失った。
クーがいたから、こんなにも楽しかったんだ。お互いに心の内をさぐり合い、どっちがブーンを手に入れるか。
もう、こんなことはできない。

私はブーンによりかかって、いつまでも泣いた。



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