( ^ω^)ブーンたちは鈴の音を聞くようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 23:53:54.61 ID:gvvIWSXiO
- 第6話「ギコ」
ギコ君に出会ったのは、中学三年のはじめだった。
その頃までの私は、勉強が全てだった。
牛乳ビンの底みたいな眼鏡をかけ、制服は完璧にビシッと着て、髪も黒かった。
テストではいつも学年10位以内をキープし、成績の低い奴らを見下していた。
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 23:55:06.82 ID:gvvIWSXiO
- だけど、中学三年になって最初の定期考査。
( ゚∀゚)「ただ普通にテスト返却するのもつまんないし、良い順に返すぞ。点数も言うか」
「えぇー」
そう言って担任は、テスト用紙を成績順に揃え始めた。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 23:57:29.35 ID:gvvIWSXiO
- 隣の男子が、私の肩を叩いた。
( ,,゚Д゚)「なあ、どっちが早く返ってくるかジュース賭けね?」
見るからにバカそうな奴だ。まあ私は当然一番最初に呼ばれるだろう。これで驚かせてやるのも悪くない。
(*゚ー゚)「良いわよ」
先生が名前を呼び始めた。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/07(木) 23:59:51.65 ID:gvvIWSXiO
- ( ゚∀゚)「出来杉、全科目満点」
「ありえねぇー」
( ,,゚Д゚)「やべぇヤツもいるもんだな」
私だってたまには一問ぐらいミスするだろう。気にする必要はない。
( ゚∀゚)「頭良杉、494点」
( ゚∀゚)「賀利便、489。素直、452。高岡、451。杉浦、438・・・・・・」
あれ?私は?
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:02:11.12 ID:ePR8jjM2O
- 次々とテストが返却されていくのに、私の名前は呼ばれない。
( ゚∀゚)「……人生、276。斉藤、273。しぃ、271。ギコ、270……」
私は自分の解答用紙を受け取った。信じられない。私がこんな点数を取るなんて。
( ,,゚Д゚)「あぁ〜。あと1点かよ〜。しょうがねえな、放課後ジュース奢るよ」
私は彼を無視して、すぐに家に帰った。
何が悪かったんだ。テストを全て見直した。出来なかったところだけじゃなく、全部解きなおした。
翌日から、誰とも話さずひたすら勉強した。隣から話しかけてくる男子もいたけど無視した。全ては次の定期考査のために。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:04:35.92 ID:ePR8jjM2O
- そして次の定期考査。
( ゚∀゚)「……ギコ、249。しぃ、248……」
なんで?ひたすら勉強したのに。
間違いなく、私は勉強できなくなっていた。教科書を読んでも頭に入らなくなった。
( ,,゚Д゚)「っしゃぁ!!勝った!!そういやこの前のジュ……」
(*゚ー゚)「うるさいっ!!私に話しかけないで!」
私は彼を突き飛ばした。
( ,,゚Д゚)「・・・・・・」
話しかけてくれる唯一のクラスメイトも失った。
もうだめだ。最低だ。私は勉強でしか生きていけなかった。私から勉強をとったら何が残るって言うんだ。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:08:42.53 ID:ePR8jjM2O
- 気がつくと、私は校舎の屋上にいた。
風が気持ちいい。思い返してみれば、私の人生勉強しかしてなかったな。もっとみんなと仲良くしたかったな。今さら無理だろうけど、生まれ変わったら。
私は足を踏み出した。体が宙に浮く。
さよなら、世界中のみなさん。
その瞬間、誰かに腕を掴まれた。メガネが滑って、はるか20m下に落ちた。
「何やってんの?今引っ張り上げるから暴れんなよ」
顔がぼやけて見えない。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:10:44.98 ID:ePR8jjM2O
- 「もしかして自殺しようとしてた?俺にテストで負けたから?」
その声は、ギコ君?
顔が見えた。
( ,,゚Д゚)「そんなに俺に負けるのイヤだった?」
(*゚ー゚)「あの……」
( ,,゚Д゚)「ん?」
(*゚ー゚)「顔近いです」
そんなに顔近づけなくても見えますから。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:16:05.63 ID:ePR8jjM2O
- ( ,,゚Д゚)「わりぃわりぃ。まあ、飛び降りようとした理由は聞かねえけど、自殺はよくねえぞ。友達とか悲しむぞ」
(*゚ー゚)「友達いないし」
( ,,゚Д゚)「え?いないの?」
(*゚ー゚)「誰もガリ勉で根暗で性格悪い私なんかと友達になろうと思わないでしょ?」
( ,,゚Д゚)「え?つーか俺は?」
(*゚ー゚)「え?」
( ,,゚Д゚)「俺、友達じゃなかったの?」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:20:25.47 ID:ePR8jjM2O
- そう言ってギコ君は私にファンタグレープを渡した。
( ,,゚Д゚)「びびったよ。せっかくジュース買ったのにどこにもいないからさ。まさか屋上から一瞬で一階まで行こうとしてたとは」
(*゚ー゚)「……これ、飲んでいいの?」
突き飛ばしたのに。怒鳴ったのに。友達なの?
( ,,゚Д゚)「あたりまえじゃん。この前の賭けの分だよ」
真面目で友達のいない私にとって、初めての賭け事だった。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:23:00.26 ID:ePR8jjM2O
- (*゚ー゚)「でも、さっき私負けたし」
( ,,゚Д゚)「それは別だよ。いつか返してくれりゃいいぜ」
缶を開けた。泡が吹き出した。
( ,,゚Д゚)「やべぇwwさっき走ったから炭酸がwww」
久しぶりに笑った。
ギコ君といると、もう勉強とか、どうでも良くなった。
私は生まれ変わろう。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:25:55.43 ID:ePR8jjM2O
- 翌日、私はコンタクトにした。真っ黒だった髪も茶色くした。両親は絶句してたけど、まったく気にならない。
( ,,゚Д゚)「うおっ!イメチェンかよ!コンタクトのほうが似合うじゃん!」
(*゚ー゚)「コンタクトが似合わないって生まれつきの顔否定されたようなもんじゃない」
( ,,゚Д゚)「それもそうだなwww」
こうして私は生まれ変わった。
ブーン君、ドクオ君、プギャー君、ツン、クーたちと仲良くなった。
今まで行ったことなかった、カラオケやゲーセンに行った。授業を抜け出して河原で遊んだ。ドクオ君にタバコを吸わされた。テストで赤点を取った。
でも、楽しかった。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:27:55.19 ID:ePR8jjM2O
- そして修学旅行の最終日。別に、高校も一緒なんだからこんな大きな行事やらなくてもいいのに。
ξ゚听)ξ「ほら、いくって言ったんだから」
(*゚ー゚)「えー緊張してきた」
川 ゚ -゚)「もし失敗したら急いで逃げるんだぞ。決して振り返るんじゃないぞ。いざという時のために脱出ルートを確保しとけよ」
ξ゚听)ξ「なんの話してんのよ」
(*゚ー゚)「じゃあ、しぃ二等兵、逝ってきます!!」
川 ゚ -゚)「御霊となって靖国で会おう!!」
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:32:05.20 ID:ePR8jjM2O
- その時のことはよく覚えている。普段何気なく話してるのに、目を合わせることすら難しい。口が乾く。心臓がバクバクいってた。
(*゚ー゚)「好きです…付き合ってください」
( ,,゚Д゚)「そんな改まんなくても。俺も好きだったわ」
あっさり成功だった。
その日から、ギコ君と私は恋人になった。それで何か変わったわけじゃないけど、お互い両想いだってだけでうれしかった。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:33:58.40 ID:ePR8jjM2O
- そんな、私を地獄から救ってくれたギコ君。私の大切なギコ君。
( ,,゚Д゚)「俺、鈴の音聞いちまった」
朝、登校中にサラッと言ってきた。私は最初、聞き間違えかと思った。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:37:03.29 ID:ePR8jjM2O
- ( ,,゚Д゚)「昨日の夕方さ、急に聞こえてびびったよ」
(*゚ー゚)「え?ちょっと待って。なんで?私は……」
( ,,゚Д゚)「まあとにかく、俺、消えるから」
(*゚ー゚)「いや、そんなこと……」
( ,,゚Д゚)「じゃあな」
そう言うとギコ君はそのまま1人で走って行ってしまった。少し、目が光ってた気がした。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:39:14.00 ID:ePR8jjM2O
- その日、学校でギコ君は話しかけてくれなかった。私が問いだそうとしても、すぐどこかへ逃げてしまう。
そして放課後になった。いつのまにかギコ君は居なくなっていた。
(*゚ー゚)「ギコ君知らない?」
(*゚∀゚)「ギコなら屋上に行ったよ」
屋上?
私は言われた通りに屋上へ行った。
なぜかすでにツンとドクオ君もブーン君も居た。ツンは泣いていたし、ドクオ君は目が赤かった。
そして、そこに、ギコ君は居た。
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:41:30.46 ID:ePR8jjM2O
- ( ,,)「・・・・・・」
(*゚ー゚)「ねえ・・・・・・本当に消えちゃうの?」
( ,,)「・・・・・・まあな」
(*゚ー゚)「なんでこっち見ないの?」
( ,,)「・・・・・・」
(*;ー;)「ねえ!こっち見てよ!!」
( ,,゚Д゚)「・・・・・・ったく。最後ぐらいカッコよく消えさせろよ。だから呼びたくなかったんだ……」
ギコ君は泣いていた。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:44:16.25 ID:ePR8jjM2O
- (*;ー;)「じゃあ……本当に消えるんだ……」
( ,,゚Д゚)「ああ・・・・・・」
(*;ー;)「じゃあ私も死ぬ!今からここから飛び降りる!」
私はフェンスに手をかけた。
( ,,゚Д゚)「バカ、せっかく助けたんだから死ぬなよ」
(*;ー;)「だって、ギコ君がいなかったら私……どうやって生きていけばいいの?」
( ,,゚Д゚)「まだ高一だぜ。生きてりゃ俺よりいい男なんていくらでもいるだろ。そいつらのほうが、おまえも幸せになれるだろ」
(*;ー;)「だめなの!ギコ君じゃないとだめなの!」
どんなにかっこよくて金持ちでスポーツできて頭よくても、ギコ君には勝てない。
彼は絶望の淵にいた私を救ってくれた。ギコ君がいなかったら、私はまだ地獄にいた。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:46:38.44 ID:ePR8jjM2O
- ( ,,゚Д゚)「そんなこと会ってみないとわかんねえだろ。だから、泣くな。な?頼むから泣くな……」
そう言いながらギコ君は私の背中をさすった。私は無理やり涙を拭いた。ギコ君の頼みだ。
(*゚ー゚)「……自分だって泣いてるくせに」
( ,,゚Д゚)「泣いてねえよ。目にゴミが入っただけだ」
ギコ君は目を擦りながら腕時計を見た。
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:50:04.92 ID:ePR8jjM2O
- ( ,,゚Д゚)「そろそろか……」
ギコ君はみんなの方を向いた。
( ,,゚Д゚)「・・・・・・ブーン、ドクオ、ツン。しぃのこと頼んだぞ」
('A`)「……ああ」
( ,,゚Д゚)「しぃ、生きろよ。ずっと見守っててやるからな。いつかまた会おうな」
私は黙ってうなずいた。口を開けたら、その拍子にまた泣きそうだから。
( ,,゚Д゚)「それと最後に……」
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:53:40.65 ID:ePR8jjM2O
- ( ,,゚Д゚)「しぃ、目つむって」
(*゚ー゚)「え?」
私は言われたままに目をつむった。
次の瞬間、ギコ君は私にキスをした。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 00:55:57.02 ID:ePR8jjM2O
- そういえば、恋人って言っときながら恋人らしいこと一回もしてなかったな。一緒に帰ったりしたけど、デートとかはしなかったな。
でも楽しかったな。本当に、ギコ君に会えて良かった。
神様、どうか、時間を止めてください。
ギコ君の唇がフッと離れた。
(* ー )「もう……泣いていいでしょ?」
返事は返って来なかった。私は思いっきり泣いた。
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