( ^ω^)は駆動兵器を操るようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:37:52.69 ID:S2R/Vylo0
いつものように、国境を介して行われる、守備という名の攻撃。
硝煙の匂いと、手に伝わる機械の熱。
もう帰ってこないあの友の笑顔と、銃弾を抱いて眠る。
そうはなりたくなかった。
そうなりたくないように、戦っていたのに。
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:38:48.93 ID:S2R/Vylo0
ミ,,゚Д゚彡「お前たちは、命を賭けて、この国、VIPを守る。これを、君たちはどう解釈しているのだ?」
ミ,,゚Д゚彡「答えろ。ブーン二等兵」
( ^ω^)「はっ!我々の命を燃やし、敵を業火の海へと葬りさってやることであります!」
ギリ、とフサギコが歯軋りをした。
ミ,,゚Д゚彡「ならば、なぜお前たちは今回の戦闘で、命を燃やさなかった?」
( ^ω^)「そ……それは……」
ミ,,゚Д゚彡「燃やせなかったのであろう?」
一歩前へと踏み出し、ブーンを威圧する。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:40:21.66 ID:S2R/Vylo0
(‘A`)(´・ω・`)( ゚∋゚)( ゚∀゚)「……」
他の二等兵、一等兵たちにも緊迫した空気が張り詰める。
ミ,,゚Д゚彡「燃やせなかったのであろう?と、聞いている」
( ^ω^)「……た……大変申し訳n
パン!
乾いた銃声の音と共に、ブーン二等兵はその場に倒れた。
「!!!!」
フサギコの右手に握られた拳銃からは煙が――
そして、頭の部分から血を流し動かないブーン。
その突然の行為に、兵士達は言葉を失った――。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:41:27.99 ID:S2R/Vylo0
――何をされたんだろうか。
気がつくと、医務室にいた。
「――ン!」
「ブーン!!」
( ●ω^)「……?」
('A`)「き……気がついたか!!」
(´・ω・`)「体は起こさないで!そのままで話を聞いて欲しい」
( ゚∋゚)「ブーン……」
(;゚∀゚)「く……!」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:42:16.28 ID:S2R/Vylo0
――まったく状況が読み取れない。
何があったんだろう?
(;●ω^)「っていたいお!!!目がいたいお!!!」
('A`)「いわんこっちゃねぇ……」
(´・ω・`)「ブーンよく聞いて、君はフサギコ少将に撃たれたんだよ」
そういわれて思い出した。
僕は、フサギコ少将に撃たれた。
だから、こんなにも痛いんだ。
(;●ω^)「右目……右目は大丈夫なのかお?真っ暗でよくわからないお」
( ゚∋゚)「そりゃあ眼帯してるからだろ……」
( ゚∀゚)「目のすぐ横を掠めたんだ。少し目を傷つけたらしいが、肌の切り傷と焼けど程度だそうだ」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:43:01.96 ID:S2R/Vylo0
(;゚∀゚)「それにしても……フサギコ少将……」
ブーンを除く四人は渋い顔をした。
あの躊躇のない至近距離からのブーンへの射撃。
隊員全員といっていいほどに戦慄が走った。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:43:52.91 ID:S2R/Vylo0
バタッ!
(;‘A`)「ブー…むg…!!!!」
(´・ω・`)(……ガマンして……)
( ω )「……」
(;゚∀゚)「……くっ」
( ゚∋゚)「……」
ミ,,゚Д゚彡「諸君。」
フサギコは拳銃をしまい、乱雑においてあったパイプ椅子に腰掛けた。
ミ,,゚Д゚彡「私の今の行為……どう……感じた?」
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:44:52.66 ID:S2R/Vylo0
あまりにも唐突な「問い」。
ミ,,゚Д゚彡「モララー一等兵。」
(;・∀・)「は……はっ!!!わ、わたくしは……」
('A`)「わたくしは、一度の失敗で部下を撃つべきものではない、そう思いました。」
モララーの答えをさえぎるかのようにドクオが答えた。
(;・ω・`)「な……!!!」
(;゚∀゚)「……!!!」
( ゚∋゚)「……ドクオ……。」
ミ,,゚Д゚彡「……ほう。」
(;・∀・)「……。」
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:46:19.95 ID:S2R/Vylo0
いやな静寂が空間をまた覆った。
背筋をなめられるかのごとく、イヤらしく、ねちっこい感覚。
冬のその日、寒く乾いた基地の中で、どこか、蒸し暑く感じた。
ミ,,゚Д゚彡「私のした行為が、間違いである。そういいたいのだな?」
深く刻まれたフサギコの額のしわが、少し動いた。
すると、勢いよく立ち上がり、ドクオに詰め寄った。
ミ,,゚Д゚彡「……そうなのだな……?」
(‘A`)「い、イエス……サー……。」
冗談で言っているのか、はたまた本気で言っているのか。
見極めが難しい答え方であったが、ドクオははっきりと、肯定の合図を、フサギコにだした。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:48:52.01 ID:S2R/Vylo0
ミ,,゚Д゚彡「ドクオ二等兵。」
(;'A`)「は……ハッ!」
ミ,,゚Д゚彡「次のν帝国、ニーソク国との境界会議時、ブーン二等兵とともに、2CH-Vに搭乗し、周辺を警護することを命ずる。」
('A`)「え……2……CH−V……ですか?」
ミ,,゚Д゚彡「そうだ。」
(;'A`)「あ……あれは……。」
フサギコは、ドクオの肩へとポンと手を置く。
もちろん、ドクオの体は、波をうったように震えた。
ミ,,゚Д゚彡「2CH-Vに搭乗してもらう……いいな?」
(;'A`)「……はい……。」
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:50:38.16 ID:S2R/Vylo0
ミ,,゚Д゚彡「それでは、各々警戒体制へ戻れ。
ブーン二等兵はドクオ二等兵が救護室へ連れて行くこと、以上。」
フサギコがそう言い放つと、各自警戒担当場所へと戻った。
ドクオはその時、自分が「駆動兵器」に乗れ、と言い放たれたことと、
フサギコの不敵な笑みで、放心状態になっていた。
('A`)「……。」
ショボンが手を差し伸べ、ドクオに言う。
(´・ω・`)「ドクオ……早くブーンを。」
('A`)「す……すまない……。」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:52:47.08 ID:S2R/Vylo0
粗方の事情を説明し終わったドクオは、ブーンに頭を下げた。
('A`)「ブーンすまない……。」
( ●ω^)「いいんだお。」
('A`)「俺のせいで……あんな化け物に乗らなきゃいけなくなった……。」
2CH-V
「化け物」「駆動兵器」「歩く棺桶」「死神」
嫌な呼び名がたくさんあるのが、これからドクオたちが乗り込む「2CH-V」。
VIPの切り札。
VIPにおけるこの国境戦争の主力兵器。
( ●ω^)「それに、一度乗ってみたかったんだおww」
('A`)「……ブーン……。」
先をまっすぐ見据えた目で笑うブーン。
ドクオは、この目をうらやましく思っていた。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:54:13.69 ID:S2R/Vylo0
ベッドの横で座り、うつむいていたジョルジュ。
( ゚∀゚)「で、でもよ……今度の国境会議で何も起こらなければいいんだよ、な?」
(´・ω・`)「そう。何も起こらなければ、2CH-Vが出る幕なんてないよ。」
( ゚∋゚)「ただ、一つだけ不安要素があるんだ。」
クックルが神妙な面持ちで口を開いた。
その面持ちが、より一層ドクオを不安にさせる。
('A`)「……な、なんだ?」
( ゚∋゚)「お前たち、この戦争が一体どういうことか忘れてないよな。」
(´・ω・`)「もちろん。この戦争の大前提なんだから、忘れたりしない。」
( ゚∀゚)「いわゆる、三つ巴、だろ?」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:56:18.21 ID:S2R/Vylo0
( ゚∋゚)「そうだ。このVIPは、三つの国と面している。今、問題があるとされているのが――」
(‘A`)「VIP、ニーソク国、ν帝国……か。」
( ゚∋゚)「そう。それと、この三つ巴の傍観者、ラウンジ共和国――。」
クックルが立ち上がり、説明を始めた。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:57:36.93 ID:S2R/Vylo0
――ブーンたちのいるVIP。
この国は、元々はν帝国の一部であった。
大陸が大きかったこともあり、ν帝国の力は大きく、隣国も吸収されるのを時間稼ぎするしかなかったほどであった。
その中での、VIPの独立。
そして、なぜVIPが独立できたか。
それが、この「2CH-V」の力があったからである。
ν帝国の研究員であった、荒巻スカルチノフによって開発された、この兵器は、従来の戦車、戦闘機、軍艦などと大きく違う点があった。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 22:59:32.03 ID:S2R/Vylo0
それは、燃料をほとんど必要としない、ということ。
「生きている合金」
ヴィプクロメタリウム
合金内に存在する微生物が、搭乗者の体温を感知し、エネルギーを生み出すのである。
当時、この合金を発見した荒巻スカルチノフは、これまでのν帝国の侵略、奪取、虐殺に嫌気がさしていた。
そして、荒巻の研究チームの中にも、ν帝国の体制に不満を抱くものが多かった。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 23:02:05.78 ID:S2R/Vylo0
( ●ω^)「スカルチノフ博士は、今考えると本当に天才だお。」
( ゚∀゚)「バカ野郎。その天才の作った機械がお前を殺そうとしてるんだぞ?」
――そして、荒巻博士率いる研究者チームによる「2CH-V」の開発。
あくまでも極秘裏に、という名の元に行われた、反逆行為。
そして、「2CH-V」による、中央研究所の制圧。
搭乗者が生きている間、動きを止めない超兵器。
便乗し、ν帝国に不満を持つものたちの発起。
この動きの大きさには、ν帝国軍も鎮圧できる術もなく、VIPという一つの独立国家を生み出すことになった。
( ゚∋゚)「それから、5年。今、ν帝国が、VIP、ν、ラウンジの中心に位置するニーソク国を侵略しようとしている。」
(´・ω・`)「――それを阻止するための、戦争。」
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 23:02:47.13 ID:S2R/Vylo0
('A`)「VIPからすると、パワーバランスが壊れることへの恐れ、そしてなにより侵略下になることの苦痛を味わうことになる人をひとりでも減らさないといけない。」
( ゚∋゚)「そう。それがこの戦争の定義。」
( ゚∋゚)「だが、さっきもいったように、不安要素がある。」
クックルはベッドに手をつき、ほほを少し掻いた。
( ゚∋゚)「ラウンジが、一枚噛んでいるようなんだ。」
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 23:05:34.77 ID:S2R/Vylo0
( ゚∀゚)「は?ラウンジ共和国は俺たちの一連の行動に中立って立場をとってたんじゃないのか?」
( ゚∋゚)「それは5年も前の声明だ。それに、証拠とは言えないが、情報部のワカッテマスは知っているな?
アイツが、衛星映像にラウンジが『駆動戦車』の製造、訓練をしている映像が映った、といっていた。」
('A`)「……。」
――ラウンジは、正直何を考えているのかわからない国。
確かに、五年前、ラウンジはVIP独立に際して――
我々、ラウンジ共和国は、一切の干渉をしない。
といった声明をだしている。
そして、軍事記録には、ν帝国からの防衛のために当時開発途中であったレーザー兵器を応用したバリアを作り出した、と書いてあった。
中立、そして軍事的にも、応用が効く国。
そういえばいいのだろうか……。
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/24(木) 23:08:22.35 ID:S2R/Vylo0
( ゚∋゚)「ラウンジがいつ襲い掛かってくるかなんてわからない。
だから、気をつけろ。ドクオ、ブーン。」
( ●ω^)「心配無用だお。」
('A`)「ああ……。」
( ゚∀゚)「じゃあ、俺たちは戻るか。ブーン、おとなしくしてろよ?」
( ●ω^)「了解だお。」
('A`)「……。」
そして、僕たちは『駆動兵器』に乗ることになった。
ν帝国、ニーソク国、ラウンジ共和国、そして……VIP。
戦争になるまで、戦争の予感に気づけなかったのは、嵐の真ん中にいたからだ。
違いない。
( ^ω^)は駆動兵器を操るようです
プロローグ 完
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