( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:10:28.05 ID:hKMkfP7e0

( ^ω^)は駆動兵器を操るようです


第5話



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:11:33.32 ID:hKMkfP7e0

川 ゚ -゚)「……そうですか……」
( ^ω^)「……」


 南部指令基地の緊急救護室。
真っ白な部屋の中に、一つ少し大きめのベッドが置いてあった。
そのベッドを囲む、ブーンとクー。

 戦場から遠ざかったその場所は、あまりにも静かで、あまりにも空虚であった。
その二人が見つめるのは、そのベッドに横たわる一人の人物。

――ドクオ。

( A )「……」

 あの国境会議から5日が経ち、ν帝国からの宣戦布告。それに応じたVIP、ニーソクの返答。
そして、ラウンジの横槍ととれる戦争への参加声明。
この4国を中心とした、大陸全土へ戦火は飛び火していった。

( ;ω;)「いつになったら……目を覚ましてくれるんだお……ドクオ……」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:12:20.42 ID:hKMkfP7e0

そう。
ドクオはラウンジの兵器に『負けた』。


川 ゚ -゚)「さっきも医者が言っていたが、今は絶対安静が続いている。ドクオが目を覚ますまで、じっと待とう」

 痛々しい管や、酸素呼吸器をつけられているドクオを見ると、いたたまれなくなった。
なんで、こんなことに。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:14:21.06 ID:hKMkfP7e0

(#'A`)「うらぁぁぁ!!!!!」

 白の駆動兵器へと突っ込むドクオ。
と、その時。
ドクオの駆動兵器へと通信が入った。

『……ふふ……』


 誰かの薄ら笑い声?
白に乗っている奴だろうか……ナメやがって……。

脚部のブーストを展開し、白の駆動兵器と距離を詰める。

(;'A`)「これで……どうだ!」

 相手の上空に位置を付け、爪を振り下ろす。
しかし、黒の爪は空を裂き、地面のみを抉る。当の白の駆動兵器は加速し、ドクオの後方を狙っていた。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:15:02.56 ID:hKMkfP7e0

『ふふ……。』
ラウンジの駆動兵器の腕部が開き、ミサイルが発射される。

(;'A`)「うっぐぁあぁあっ!!!」

 背中に着弾し、黒煙をあげながらその場へ倒れる2CH-VB。
樹木をなぎ倒し、勢いよく地面にたたきつけられた。



(;'A`)「はっ……はっ……!!」

 息が続かない。
不安と恐怖に、肺が、胃が、内臓すべてが潰されそうになる。

ドクオが混乱しているところに、間髪いれず白の駆動兵器がアームによる攻撃をしかける。
さきほど着弾し、装甲にダメージが蓄積されている部分を、集中的に叩く。


ズズン……ズズン……


衝撃が絶え間なく続き、ドクオを死へと駆り立てる。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:15:43.68 ID:hKMkfP7e0

――後部ブースト、損傷甚大。第二腰間接部、問題発生。

(;'A`)「し……死にたく……ない……」

 死にたくない?
国のためになら、命を捨てられるはずじゃなかったんだろうか……。
フサギコ少将へ歯向かったときの自分は、そんなことを微塵も考えていなかった。

フサギコ少将……。

そうだ、死にたくないのは、まだ死ねないからだ。
死なないためには、今どうすればいい?

……そうだな。



こいつを、殺せばいいんだ。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:17:48.43 ID:hKMkfP7e0

('A`)「――右腕部、カッツバルゲル。」

――承認。右腕部、カッツバルゲル展開。

 白の駆動兵器による、攻撃をしりぞけると、右手先端部分に、細長い短剣状の武器が展開した。
ビーム状の刃を持ち、敵を切り裂くというよりは、突き刺す、といった印象を持つ。
名前の由来は、荒巻スカルチノフによる、古代武器への執着であろう。


 そして、2CH-VBが起き上がると、相手にカッツバルゲルで指をさすような体制をとった。
本来、ドクオの駆動兵器は遠距離戦闘に特化して製作されている。
しかし、今日のような会議で、ここまでの大問題に発展するということを、誰が予想しえたであろうか。
ドクオ達も、ラウンジが駆動兵器を開発している、ということは知っていた。
しかしその情報は、情報部とのパイプを持つクックルがいたからなのである。このラウンジの駆動兵器を知っている人間は、軍内部にもごく少数。
ましてや、中尉、少尉など、いわゆる幹部の末端などが知る由も無かった。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:18:48.24 ID:hKMkfP7e0

 知らされていないラウンジの駆動兵器。
そのラウンジ駆動兵器の強襲。
可能性は底を行く低さであった。
なので、この駆動兵器に本来備わっている兵器がすべて装備されるわけも無く、重火器を最小限に抑えられた、ということである。

 備えあれば憂いなし。まさにこのとおりである。
そのような権限が無い自分を、今悔やんでもしょうがなかった。

 そして、ドクオは、頭が良かった。
色々な可能性を、戦いながらも考えていた。


 ラウンジは、わざと開発過程を衛星に感知させたのではないのだろうか?
存在をちらつかせ、駆動兵器を前線に出させようとしていたのではないだろうか?

 そして、その出動要請を容易に出せる人物。
自分とブーンを、この会議にあわせて駆動兵器へと当てた人物。
その人物が、ラウンジと繋がっていれば……?


――いや、考えるのはよそう。

今は、この目の前の敵を……。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:19:37.62 ID:hKMkfP7e0

(; A)「はっ……はっ……」


 自分の機体の周りを、土煙、水しぶきをあげながら白が動く。
また近づいても、あのスピードには勝てないだろう。
これほど駆動兵器が地形に左右されるなんて……。


バチ……バチ……と、カッツバルゲルが静かに激しく音を立てている。


 敵が攻撃をしかけてくるのを待っているわけにもいかない。
こんな状況……頭がどうにかなりそうだ。


 ふと、ドクオはあることに気づいた。
そして、それが勝機に繋がるかもしれない、という淡い期待をドクオに抱かせることになる。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:21:09.83 ID:hKMkfP7e0

('A`)「駆動兵器は……地形に左右される……?」

 思いついたように、トリガーを握り返すドクオ。

('A`)「CPU。今この機体が装備している広範囲爆撃兵器をリストアップ」

――了解。現在2CH-VBニ装備サレテイル広範囲爆撃兵器ヲリストアップシマス。

 すると、コクピット内部右側にサブモニターが展開された。
といっても、装備を最小限にとどめているので、リストアップされたのは一つ。

('A`)「これでいくぞ」

――了解。

 地形の変化に弱いなら……いくらキャタピラでも!!



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:21:51.06 ID:hKMkfP7e0

 2CH-VBが勢いよく飛び上がる。
すると、それを待っていたかのように、ラウンジの白は腕部のミサイルを構えた。

(;'A`)「やっぱり俺を待ってやがった……!!」

 ミサイルが撃たれる。8発ほどであろうか……。

ドクオの2CH-VBに向かって勢いよくミサイルが向かってくる。
だが、そんなことはかまっていられない。

(#'A`)「肉を切らせて骨を断つ……これで……どうだ!!」

 2CH-VBが肩を前に押し出す。すると、肩にいくつかの発射口のようなものがあり、そこから球状の爆弾が飛び出した。

 そして、ドクオにラウンジの駆動兵器からのミサイルが着弾するとほぼ同時に、周囲を爆発と炎が襲った。
ドクオが放ったのは、クラスター爆弾といわれる空対地爆弾の一種。
しかし、一般的に戦闘機に積まれているような集束爆弾とは違い、規模を制限されている。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:23:15.58 ID:hKMkfP7e0

 地面に突っ伏した形に沈黙しているドクオの2CH-VB。
何mもの高さから落ちたので、いくらバランサーが調節していたといっても、ドクオへのダメージは大きいものであった。

(;A)「ゲホッ!!……ゲホ……。」

 どこか骨が折れているのは……間違いない。
だが、それより先に相手へ攻撃を仕掛けないと――。
そう考え、先ほどのきれいな常緑の森とは違い、地獄のように赤く燃え滾る森で相手の駆動兵器を探す。

 すると、右腕と体の一部が融解し、山肌へと叩きつけられているラウンジの駆動兵器を見つけた。

(;'A`)「み……見つけた……!!」

 そういっても、もう現時点でドクオの2CH-VBは大事に至るほどの損傷を受けていた。
だがこのヴィプクロメタリウム。堅さは半端ではない。
あれほどの攻撃をくらったのに、機体が大破していないのだから。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:24:16.77 ID:hKMkfP7e0

 改めて、右腕にカッツバルゲルを展開させるドクオ。
少しガタつきながらではあるが、この美しくも燃えて見える森を進み、ラウンジの駆動兵器の方へと向かう。

 ――これを相手に突き刺せば、俺の……勝ち……。
どこか焦りながらも、安堵を感じたドクオ。


(;'A`)「俺の勝ちだぜ、名前も知らないラウンジ兵士……」

 正面へと立ち、カッツバルゲルを構える。
周りの炎の影響か、汗が額から流れ落ちた。

『あたしの名前は……』

(;'A`)「――?」


『あたしの名前は……ツー……。覚えておいてね?』


『あたしの勝ち。名前も知らない、VIPの兵士さん』


 胸の部分が開き、巨大なレーザーカノンが姿を現す。
しかし、ドクオが気づくには、とても、とても遅すぎた。

 そしてドクオは、虹を見た。
自分を消す、大きな虹を。



18: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/05/30(水) 00:25:55.40 ID:B7WkP9ID0

 ――そして、クーとブーンが追いついたころには、燃え盛る森の中に、胸部半分と両腕、そして頭部が消し飛んでいる2CH-VBが倒れていたのである。


 何があったのか。
山肌をえぐるような一直線の形跡。
円形の爆発痕。

ブーン達にわかったことは、ドクオの敗北、そして、ドクオの命の危険であった――。

( ^ω^)「……。」

 一人、割り当てられている宿舎で考え込むブーン。
あの時、ドクオを無視してラウンジの駆動兵器と戦っていたなら勝てたかもしれない。
ドクオの代わりに戦えば……。
様々な思惑が、ブーンを襲う。

 ブーンの部屋に、ノックの音が響いた。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:26:58.41 ID:B7WkP9ID0

( ^ω^)「……はいですお」

 ドアの先には、ショボンとクックルがいた。
(´・ω・`)「……やぁ」
( ゚∋゚)「体調は大丈夫か?」

 どこか気を使っていてくれているのだが、今はその気遣いさえも痛く感じてしまう。

( ^ω^)「気を……使わないでくれお?」
(;´・ω・`)「い……いや、気を使ってなんかないんだよ?ただ……」

( ゚∋゚)「ドクオを守れなかった事を攻めているのか?ブーン」
(;´・ω・`)「た……ただ、そこまでストレートなのもどうかと思うんだけどなぁー……」

( ^ω^)「いや、これくらいが僕たちにはいいんだお」

(´・ω・`)「今、ドクオが一般面会できるようになってさ、行ってきたんだ」
( ゚∋゚)「光粒子による、ショック状態と聞いた」
( ^ω^)「いつになったら、ドクオは目覚めるんだお?」

(´・ω・`)「それは……どうなんだろう」
( ゚∋゚)「大丈夫だ。死にはしない。それに、あのドクオだ」

 あのドクオだ。
この言葉は、なぜか僕を元気にした。
ドクオだから、きっと生きて帰ってくる。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 00:27:44.10 ID:B7WkP9ID0

( ^ω^)「そ、そうだおね!!あんな紙一重で生き残ったんだから大丈夫おね!!」
(´・ω・`)「ジョルジュはジョルジュで、戦争の原因になった場所に飛び込んでいっちゃったもんだから、三国による事情聴取だよ」
( ゚∋゚)「やっかいごとに首を突っ込むのが好きな奴だな、まったく」

( ^ω^)「そういえば、ショボンとクックルはいつも冷静でいられてうらやましいお」
( ゚∋゚)「兵士たるもの取り乱してはいけない、そう習っただろ?」
(´・ω・`)「そうそう。でも実際は無表情で読み取られて無いだけさ」

( ^ω^)「ショボンは確かに無表情だお」
(´・ω・`)「いやそこまでバシッといわれても……」

三人が談笑をしていると、またもやノックの音が響いた。
( ^ω^)「はい。誰ですかお?」

ドアを開けると、そこには珍しい人物がいた。
川 ゚ -゚)「や……やあ」
( ^ω^)「クーさんですかお!ど、どうぞ入ってくださいお」

部屋へとは入るクー。
クーの事は聞いていたので、ショボンとクックルは敬礼をした。



21: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/05/30(水) 00:29:33.13 ID:B7WkP9ID0
川 ゚ -゚)「いや、そんなにかしこまらないでくれ……。」
クーが軍服を着ていると、どこか兵士らしくなく見えた。

川 ゚ -゚)「それより……今ドクオが目覚めたそうだ」
( ^ω^)「本当ですかお!?」

川 ゚ -゚)「ああ。今無線に連絡がはいった」
( ^ω^)「わかりましたお!!いってきますお!!!」

とんでもない速さで緊急救護室まで向かうブーン。
あっという間に救護室の前に着く。

そして、ドアを開いた――。


( ^ω^)「ドクオ!!!」
ドアを開いた向こうは、ドクオだけではなかった。

(;'A`)「お……おう……」
(;^ω^)「な……なんでこのようなところまで……?」



ミ,,゚Д゚彡「――ブーン、二等兵か」




( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第5話 「Daddy」 完



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