( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

40: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 20:54:31.26 ID:EagyJmYX0

( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第13話



41: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 20:56:50.02 ID:EagyJmYX0

 ――ν帝国、中央都市ピチカート――

(#・(エ)・)「あいつは一体どれだけ問題を残して逝けば気が済むんだ!!!」

 大きな部屋で一人苛苛を抑えられずにしているクマー。
そう。その怒りの原因は、ヒッキーに対してのものである。
資金を与えたのをいいことに、開発を急進、驚異的な速度での3機の量産。
単独での発進。二機をVIPに奪還され、搭乗していた一機も殲滅。ヒッキーも同時に死亡。
これ以上の醜態が無いといってもいいほどのものであった。

(#・(エ)・)「やはりあいつには、荒巻の後釜など到底無理であったのだ!!」
从 ゚∀从「荒れているようですが、クマー殿……」

(#・(エ)・)「……なんだ」
从 ゚∀从「こんなものが、ヒッキーの机からでてきたんですよ」

 机の上にバサバサとプリント類を置いていくハインリッヒ。
クマーの目に入ってきたのは、あまりにも斬新すぎる設計図――。
ツーコクピットの、駆動兵器。

(・(エ)・)「……ほう。あいつも、悪い問題ばかりを残して逝った訳ではなさそうだな」
从 ゚∀从「では、これも含め予定通り、あちらとの交渉を進めても……?」

(・(エ)・)「……ああ。構わん。断るなら腕の二、三本でも切り落としてやれい」



46: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 20:59:27.91 ID:EagyJmYX0

 『カンダタゴロシ』と呼ばれるその駆動兵器の、解剖、解析が進む。
その様子を、ドクオとクーは見ていた。
あの戦闘からは、もう2週間程たっているのだが、各地での戦闘が、明らかに激化し始めていた。
この駆動兵器がきっかけに、双方の戦闘意欲の増強、戦争意義の確立に繋がっていった。

核兵器保有を肯定し、戦争に使用するを宣言したν帝国。
核兵器保有を否定し、戦争により使用を防ごうとするVIP、ニーソク。
依然参戦宣言以外は沈黙のラウンジ。

 元は侵略戦争だったのだが、いつの間にか、大陸を巻き込んだ大きな核戦争へとなりつつあった。

('A`)「カンダタゴロシ……。趣味悪い名前をよくもまぁνはつけるもんですね……」
川 ゚ -゚)「まあ元々は同じ国民だったんだがな……」
('A`)「五年で変わるものでしょうか?」

川 ゚ -゚)「うむ……。そういえばブーンはどこへ?」
('A`)「ああ、ブーンなら……ワタナベさんと向こうで話してましたよ?」

 演習棟の地下実験室の外の廊下をドクオが指差した。
確かに、向こうにはワタナベとブーンが二人で話をしている。

川 ゚ -゚)「……そうか」
('A`)「最近仲いいですよね、あの二人。なにかあったんでしょうか?」
川 ゚ -゚)「むう……」

 少し薄暗いライトが照らす地下廊下で、二人は話をしていた。
あの作戦が終わってからというものの、二人はよく一緒にいる機会が多い。
ワタナベの励ましが、ブーンの心へと響いたのか、またはその逆なのか――。



47: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:01:49.66 ID:EagyJmYX0

从'ー'从「ブーンさん。今日は、訓練あるんですか?」

( ^ω^)「いいえ。無いですお!どうかしたんですかお?」
从*'ー'从「いや……。よ、よろしかったら、晩御飯……一緒にどうかって……」

( ^ω^)「本当ですかお!?自分を誘ってくれるなんてありがたいですお!」
从'ー'从「そ、それじゃあこの調整が終わったら行きましょう?」
( ^ω^)「了解ですお!」
从'ー'从「じゃあ、行ってきます」

 ブーンは、何故か不思議な気持ちになっていた。
これは、恋心というものなのだろうか――?

 軍人同士で、このようなうつつをぬかすのはよろしくないな。うん。
などと、そんなことを交互に考えながら廊下に背を預け、腕を組む。

('A`)「……ワタナベさんと仲いいな、ブーン」
(;^ω^)「ブ……ブラクラ!!じゃなかった、ドクオかお」
('A`)「……」
( ^ω^)「そんな仲じゃないお。ただ、ワタナベさんはブーンを励ましてくれたんだお」

( ^ω^)「弱い人間じゃない、って言ってくれたお……。それが、とっても嬉しかったんだお」
('A`)「は、はぁ……」
( ^ω^)「もっと強い兵士になって、ワタナベさんの期待に沿えるように頑張るんだお!!」

('A`)「目標、ってやつか?」
( ^ω^)「……そう言える気がするお」
('A`)「そうか、よかったじゃないか」



48: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:03:17.03 ID:EagyJmYX0

 ポン、とブーンの肩を叩く。
ブーンにはワタナベさんの期待に添えられるように、といった目標が。
そして、ドクオにはブーンを守るという使命が。
共にベクトルは違えど、背中に刻み込まれていた。

( ^ω^)「じゃあ、ブーンは晩御飯を食べにいってくるお!!」
('A`)「おう。行って来い!」


 ブーンと別れたドクオは、久々にいつもの仲間の元へ向かった。
いつぶりだろうか。もう一ヶ月は会っていない。
食堂に着くと、いつもの三人が変わらず迎えてくれた。

( ゚∀゚)「お!!ドクオじゃねえか!!」

(´・ω・`)「待ってたよドクオ」
( ゚∋゚)「久しいな」

('A`)「おう。みんなかわらねぇな」

 相変わらずのメンバー。
駆動兵器に乗る前の事を思い出す。
あの頃……といっていいのか、ほんの数ヶ月前の事なのに、死ぬ間際に見る走馬灯のように思い出された。



49: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:04:39.25 ID:EagyJmYX0

('A`)「そういえば、ジョルジュは一等兵になったんだって?」
( ゚∀゚)「ああ。ミルナ元国民代表を助けたのと、ニーソク国のデミタス中尉からの打診があったんだってよ」

( ゚∋゚)「ジョルジュより立場が下とは、どこか複雑なものだな」
(´・ω・`)「ほんとほんと」

( ゚∀゚)「うるせーよ!!まあ、二等兵と一等兵に大きな違いなんて無いんだけどな」

('A`)「他に何か変わった事は?」
(´・ω・`)「やっぱり、最近はこの付近の国境が騒がしいね。よく警備しても、国境向こうで銃声が響いたり……」

( ゚∋゚)「以前よりは確実に戦闘が増えたな。俺達も、いつ向こうへと駆り出されるか、時間の問題か」

 やはり、いつもの話題というには重い、戦争の事である。
クックルもショボンも、ジョルジュもいつも通りだ。

ドクオは、口へオムレツを運ぶ。よく食べている好物の一つなのだが、いつも食べるより美味しく感じた。

('A`)「みんな、相変わらずでほっとしたよ」

(´・ω・`)「ドクオは、前よりもずっとたくましくなってるように見えるよ?」
('A`)「駆動兵器隊の人にもたまに言われるな、それ」



51: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:06:36.94 ID:EagyJmYX0

( ゚∀゚)「軍人なのにひょろひょろだったお前が、こうもガッチリしてくるってのは、いやはや駆動兵器ってすげぇなぁ!!」

(;´・ω・`)「駆動兵器をトレーニング機器か何かと勘違いしてない?」
('A`)「ハハ……いつもの事だな」

( ゚∋゚)「では、俺は持ち場に戻る事にする。構わずゆっくりしていてくれ」
(´・ω・`)「ああ。僕も今日はクックルと同じ場所だから一緒に行くよ」

('A`)「おう。またな」
( ゚∀゚)「ニーソク側ならあまり問題は無いが、ラウンジの方が少し不穏な感じだ。警戒しとけよー」

( ゚∋゚)「了解」

 クックルとショボンが監視体制へと戻り、ジョルジュも召集が入ったのか、そそくさと行ってしまった。
ドクオも、仕方ないので手短に食事を済ませ自分の部屋へと戻った。

 久しぶりに部屋でゆっくりする。
そういえば、大きい怪我などをしていたせいで、ここ最近は自分の部屋のベッドより、病棟のベッドで寝ることが多かった。
それよりも、さらに多いのが、駆動兵器のコクピットであるのだが……。

('A`)「やっぱり、ベッドはいいな……」

 目を瞑ると、スゥッと夢の世界へと入ることができた。
心地のよい眠りが、体を癒す一番の特効薬。どこかでそう聞いた通りだ。
明日も、VIPの為に、ブーンの為に頑張ろう。



52: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:08:02.70 ID:EagyJmYX0

 そして、宵闇が大陸を染める頃。
ラウンジ共和国西部研究所で、ある交渉が行われていた。

从 ゚∀从「だーかーらぁ、私達の要求は、この二体の駆動兵器を製造して欲しいってだけだよ」

(;´ー`)「そう言われても、この設計図には、無理が多すぎる……それに、駆動兵器は量産できるようなものではないんだ」

 ハインリッヒとの交渉に臨んでいる少し人を小馬鹿にしたような面持ちの男。
名前はシラネーヨ。ラウンジ共和国の幹部の一人で、ラウンジの駆動兵器を製造した第一人者。

从 ゚∀从「言っておくが、あんたたちラウンジに拒否権は無い。
     こっちが本気を出せば、1週間ほどでラウンジ全体を火の山にする事だって……不可能じゃあないぜ?」

(;´ー`)「……。νが力を持っているのは、百も承知だ。だが、なぜそれだけの力があるのに、更に駆動兵器なんかを必要とするんだ?」

从 ゚∀从「さあね。クマー殿が決めたことなんだから、私には何もわかんないよ。
      それこそ、私達にしては、なぜあんた達ラウンジがこの戦争に介入してくるか、そっちの方が気になるんだがな」

 そうハインリッヒが言うと、シラネーヨが笑いを含みながら返答する。

( ´ー`)「……どれだけうちの駆動兵器が強いか、試してみたいじゃないですか」

从 ゚∀从「ふん……お前達ラウンジも、国家くるめて頭おかしいようなもんだよ」



54: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:10:42.79 ID:EagyJmYX0
 そして、ある程度、ヒッキーの設計図とにらめっこをしていると、急に思い立ったかのように、持っていたメモに何かを書きなぐり始めた。
ガリガリと、無我夢中にペンを走らせるシラネーヨを見て、ハインリッヒは気色悪く感じた。
さっきまでだんまりであったのに、堰を切ったかのように……。

( ´ー`)「このバランスを含め……いや……こうなると……」
从;゚∀从「……」

 何を書いているのか覗いてみると、エンジン……であろうか、大きな何かをメインとした駆動兵器の絵と、各部の説明のようなものがビッシリと書かれていた。
それを見て、ニヤリと笑う。
交渉成立が無ければ、この施設にいるやつ全部殺して、こいつを誘拐してでも作らせようと思っていたんだが、このやる気があれば、すぐにでも製作にうつれるだろう。

从 ゚∀从「……そのやる気は、YESと受け取っていいんだな?」
( ´ー`)「……ここを……そうか、関節部に……」
从 ゚∀从「……」

( ´ー`)「ん、ああ。こちらとしては協力させてもらうよ。当初の通り、ラウンジへの資金の提供。相互平和条約を結ぶ事が条件でね」
从 ゚∀从「いい返事、聞けて嬉しいよ。では、また後日、条約締結の時にでもな」

( ´ー`)「いいよ……これは、いい……!!VIPの駆動兵器なんて目じゃない……」

 ハインリッヒが帰った後も、その男は、夜が明けるまでメモにペンを入れ続けていた。
シラネーヨの頭には、悪意の塊が、着々と色づけられていく。
悪の子種は、時間を必要とせず、形へと育っていった。ゆっくり、地下深くに着床して……。



( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第13話「子種」 完



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