( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

10: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:06:10.81 ID:MVtdHWVX0




( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第15話



13: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:07:37.84 ID:MVtdHWVX0



ミ,,゚Д゚彡「作戦開始は、30時間後。厳しい作戦になるであろう。各自、悔いのないように、この30時間を楽しめ。以上!!」



――30時間。
各々は何をするかを頭に描く。
ただ、なんとなく仲間と談笑をする者もいれば、故郷の家族へと、手紙を書いたり、電話をかけたりする者もいた。
そして、ブーン達もまた、自分がこれから戦火へと体を放り込む事を考え、各々の過ごし方を考えていた。

( ^ω^)「……ドクオは、作戦開始まで何をするつもりだお?」
('A`)「ん?ああ、俺は仮眠してから駆動兵器の調整をするつもりだ。ブーンはどうするんだ?」

( ^ω^)「ブーンも、特にしようと思っていることは無いお」

('A`)「……ワタナベさんはいいのか?」



15: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:10:23.48 ID:MVtdHWVX0

(;^ω^)「わ、わわわワタナベさんは、い、いいんだお!!ブーンも調整することにするお!」
('A`)「……そうか。じゃあ俺は部屋に戻るよ。また、30時間後、かな」

 ひらひらと手を振ると、ドクオは部屋へと戻っていった。
それを見届けると、ブーンは一人、駆動兵器の置いてある演習棟へと向かう。
演習棟には、人の気配は無く、いつも響いているはずの銃声や、キャタピラの音は聞こえない。

( ^ω^)「誰もいない演習棟も、何か変な感じだお」

 順応スーツへ着替え、ベンチに腰をかけ、ボーッとしているとクーがやって来た。
クーも順応スーツを着ており、ブーンと同じく、最終調整をしようとしているのが見てわかる。

川 ゚ -゚)「む。ブーンも駆動兵器の調整か?」
( ^ω^)「はいですお。別にやり残しているような事は無いですし、死なない為にも、調整は欠かせないですお」

川 ゚ -゚)「ふふ。いい心掛けじゃないか」

 ジメジメした大陸の空気を、順応スーツごしに感じ、パイロット二人は月夜を見上げる。
もう深夜の3時程であろうか。時折月を隠す雲が作る影が、黒味がかった群青の空をより映えさせた。
美しく輝く空を、何を言うわけでもなく見つめていると、クーが口を開いた。



17: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:12:53.95 ID:MVtdHWVX0

川 ゚ -゚)「……戦争が起きようとも、これほど空は綺麗だ。私は、こういう事を忘れていたのかもしれん」

( ^ω^)「いい、空ですお」
川 ゚ -゚)「ああ。いい、空だ」

 虚空に響く、何かの音は、私を動かそうとする。
隣にいる、この安心感は一体……。

( ^ω^)「では、調整に入るので失礼しますお」
川 ゚ -゚)「あ……」

 何故か、声が出た。
ブーンを呼び止めたくて、私の体が自然に、声を発したようであった。

( ^ω^)「なんですかお?」
川 ゚ -゚)「……いや、何も無い。私も調整に入るとするよ」

 それでも、慣れない事はできない、言えない。
ただ、もう一度、この月を共に見たい、そう言いたかっただけなのに。
駆動兵器に乗る事以外は、何もできない、そうクーは、実感した。

そんなことも露知らず、ブーンはVGへと乗り込み、調整を開始する。
ヴィプクロメタリウムが共鳴をし、鼓動が鳴り始める……。



18: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:14:35.33 ID:MVtdHWVX0

ゴゥン……ゴゥン……。

 聞きなれたこの音。
心地のいい駆動兵器の鼓動を聞いているだけで、ブーンは落ち着く事ができた。

( ^ω^)「じっとしてると眠たくなってくるお。しっかり調整を済ませないと……」

 厳しい戦い、そうフサギコ少将は言っていた。
あのνの駆動兵器も現れるのだろうか……、そして、自分に倒せるのだろうか。
頭に不安がよぎる。
だが、もう以前の自分ではない。

VGと全てを共にすると決めたんだ。

いつか言われたように、命を、燃やしてやる。

少し、力を入れてトリガーを握る。
金属音が鳴り、VGの指が動いた。その感覚を忘れずに、一つ一つ確かめるように動かしていく。
順応スーツのプラグと繋がれているだけ、それだけなのに、お互いは、お互いを欲するようにできている。
ノトーリアスの起動を確認したところで、ブーンは調整を終えた。

( ^ω^)「……こんなものかお。って、もう朝の七時かお」



19: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:16:39.87 ID:MVtdHWVX0

 先程までクーと見ていた月は、もう逃げるかのように姿を隠し、代わりに、乾いた熱を持つ太陽が現れていた。
現れていた、と言っても、大陸に日が差すのは遅い。
朝の七時といえども、まだ太陽は半分ほどしか出ていなかった。

コクピットを開き、ブーンは駆動兵器から降りると、もう何人かの兵士がライフルの手入れや、作戦についての会議が行われているのが伺えた。

みんな、何かしらの思い入れ、大義が胸にあるんだろう、そうブーンは感じた。
が、それ以上に眠気がブーンを襲う。

( ´ω`)「……さすがにぶっ通しは眠たいお……」

 フラフラになりながら、自分の部屋へと帰るブーン。
ベッドに入り、目を瞑った途端に、ブーンは眠りに落ちる。

そして、ブーンが眠りについたころ、ワカッテマスによる、”駆動兵器奪還計画”が、ショボンに伝えられた。



20: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:19:11.99 ID:MVtdHWVX0

( <●><●>)「まずこの作戦は、今回の強襲にラウンジの駆動兵器が絡んでこないと話にならない、と言う事なんです」

 メモ用紙に、今回の式典の会場である、ν国立競技場の間取りであろう絵が書かれている。
そこへ、ワカッテマスが、説明をしながら、矢印や、文字を書き込んでいく。
クックルとショボンは、じっと耳を傾けながら作戦を理解していった。

(´・ω・`)「でも、この作戦には少し無理があるんじゃ……?下手をすれば、二人とも死んで終わり、なんてことになっちゃうよ?」

( ゚∋゚)「うむ。だが、これ以外にラウンジの駆動兵器を奪える策は無い。あったとしても、三人では無理だろう」
( <●><●>)「そうなんです。他の可能性も多々含め考えてみましたが、これよりいいものは浮かばなかったんです」

( ゚∋゚)「ブーンとドクオ、あの二人もこちらへと入れる事ができたなら……」

(´・ω・`)「それは、駄目。ブーン達は、この国を信じてる。表も裏も無い『綺麗なVIP』を信じてる」

真剣な物腰で、クックルへと返答するショボン。
あの二人は、まだ幼すぎる。何も知らない。下手をすれば、僕達に牙を向くだろう、そうショボンは続けた。



22: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:20:36.36 ID:MVtdHWVX0

( ゚∋゚)「……そうだな。俺が悪かった、すまない」
(´・ω・`)「まあ、この作戦が成功すれば、僕はもうブーン達と一緒にいられなくなる。それほどの覚悟は、できてるよ」

( <●><●>)「お話し中申し訳ないんです。自分はもう情報部へと行かないといけないので、また作戦開始前にお会いしましょう」
( ゚∋゚)「ああ。最終確認はその時だ」

 クックルは、小銃を肩に担ぐと、部屋を出て行く。
ワカッテマスもそれについていくように部屋を後にした。
ショボンは、作戦を頭にさらに叩き込む為に、さっきのメモに目を通す。

やはり、少々難のある作戦ではあるが、ショボンの頭にこれ以外のいい案が思い浮かばないのも事実であった。

 少し、自分へ悪態をつく。
その様な事をしても、何も変わらないのであるが。

(´・ω・`)「それでも……。それでも、やり遂げなきゃ」

 さあ、戦争へと出向こう。
胸に勲章、肩に小銃を担いで、なんて皮肉さ。

そして、作戦開始まで、あと2時間。
南部指令基地は、ザワつきだした。兵士達の声、金属音。
死を背中に感じるものたちの、覚悟を、皆が皆感じていた。



23: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:22:06.53 ID:MVtdHWVX0

( ,'3 )「みんな、今回の作戦は、非常に厳しいものになるであろう。νの駆動兵器、核戦力。色々な障害が、君達の命をそぎとろうとやってくる」

 バルケンの声が、演習棟に響く。
そこには、ブーン達を含む、駆動兵器隊がいた。
皆、今生の別れを覚悟し、バルケンの話を聞き入れる。

( ,'3 )「しかし、私達駆動兵器隊は、駆動兵器という力を持った、いわば最強の部隊!!
       νなどに、負ける要素などないのだ!!みんな、その事を胸に掲げ、最後まで戦い抜いて欲しい。
                 上官の私が言う事ではないことであるのはわかっている……。みんな、生き残ってくれ!!!」

 思い入れの強さか、バルケンの目には、うっすら涙が浮かんでいた。

自分も、その期待に応えなくては――。
そう、ブーンは思った。

( ,'3 )「私からの話は以上。各自、最後の調整をし、作戦開始時まで待機していてくれ」

『イエス!!サー!!』

( ^ω^)「……頑張るお。ドクオ」
('A`)「ああ。生きて帰ろう」


 二人は、力強く肩を組む。
そして、ブーンがVGに乗り込もうとすると、ワタナベがやってきた。



25: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:24:13.21 ID:MVtdHWVX0

从'ー'从「……ブーンさん」
( ^ω^)「……」

 どこか思いつめた顔のワタナベが、ブーンへと近づく。
ブーンは、ただただ棒立ちになっているだけ。いつもと違う表情のワタナベに、違和感を感じていた。

从'ー'从「……」
( ^ω^)「……」

続く、沈黙。

そして、ワタナベが、もう一歩、距離を縮める。
ブーンの右手を、両手で包むように握り、震える声を我慢しながら、言った。

从'ー'从「……生きて、NRPへ帰ってきて下さい!」
( ^ω^)「……もちろんですお!!!」



('A`)「いいなぁ……」


 答えは、それだけでよかった。
二人の間にあるものに、言葉はいらず。
ワタナベの涙と、微笑みを後ろに、ブーンは駆動兵器へと搭乗する。



26: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:26:13.50 ID:MVtdHWVX0

( ^ω^)「CPU、オールチェック」

――了解。各部オールチェック。所要時間ハ約130秒。

 ブーンは、コクピットの正面。
サブモニターの下部に取り付けてある、銀色に輝くバッジに目をやる。

( ^ω^)「……そうだお。約束したんだお」

 そう、これは生還の約束の証。
ワタナベとした、小さな盟約。守らなければいけない、ささやかなもの。

そして、バルケンによる鼓舞が行われていた頃、ショボン達も、軍用トラックにて現地へと向かっていた。

(´・ω・`)「……」
( ゚∋゚)「気負ってはいては、成功もしないと思うのだがな」
(´・ω・`)「……だね」

20人ほどが同時に乗り込んでいるトラックの隅。
二人は、耳に無線のイヤホンを、そして軍服の胸ポケットに小型マイクを入れ、管制塔の情報部にいる、ワカッテマスと通信を試みていた。

( <●><●>)『……聞こえていますか?』
(´・ω・`)『……うん』
( ゚∋゚)『聞こえているぞ』

( <●><●>)『では、当初の通り、お願いするんです』



27: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:27:39.57 ID:MVtdHWVX0

(´・ω・`)『うん。わかったよ』

( ゚∋゚)『作戦開始の合図は、またここからすればいいんだな?』
( <●><●>)『はい。戦闘が始まればこちらも混乱することは必死なので、開始は容易なんです』

( ゚∋゚)『了解した。それでは、回線を切るぞ』
( <●><●>)『了解なんです。頑張りましょう』

 プツッ、と耳に少しだけ不快な音が響くと、通信が切れる。
それを確かめると、二人はバックパックを再度確認する。これが無いと、作戦は始まらない。

(´・ω・`)「成功すれば、いいね」
( ゚∋゚)「当たり前だ。成功、させる」

 二人がそう話している間に、どんどんと、ニーソクを抜け、νの領地へと迫っていった。
着々と、ニーソクとνの国境付近へと集結するVIP軍とニーソク軍。決してνに悟られてはいけないよう、細心の注意を払っていた。

『各部隊。点呼を取れ』

『通信妨害の電波を流しているので、通信は現在不可である』

そういった声が、到着したばかりのニーソク国境基地へと響いていた。



28: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:28:40.68 ID:MVtdHWVX0

(´・ω・`)「通信妨害電波って……大丈夫なのかな?」
( ゚∋゚)『ワカッテマス。応答してくれ』

( <●><●>)『……い。……n……でし……』

( ゚∋゚)「……ダメか。向こうにもほとんど届いていなさそうだ」
(;´・ω・`)「マズいことに……なった?」

( ゚∋゚)「いや、戦場ではないのだから、問題はなかろう」

 そうは言いつつも、この後の不安に繋がりかねないこの状況が、少し気になっているようであった。
元々成功率の見積もりが、それほどよくない作戦。
そして、3回しか予定が立っていないのだ。

焦る気持ちは、ショボンもよくわかっていた。

(´・ω・`)「……。いざとなったら、妨害電波を発しているところへ乗り込んで、殺そう」
( ゚∋゚)「……ああ」

 不本意だ。
だが、仕方が無い。人間は、自分の事を優先に考えている。
僕達だってそうだ。
僕は国が欲しくて動いている。クックルは、復讐の為に国を乗っ取ろうとしている。
自分の利益を追究した上での共同戦線。

障害物は、取り除くしかない。



29: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:29:43.63 ID:MVtdHWVX0

――ν帝国建国記念式典。
この式典は、スレスト湿地という、沼の用に湿気が強く、原生林が生い茂る巨大な地帯に囲まれた、ν国立競技場で行われる。
ν帝国の幹部が一同に喫し、体操選手や、国民歌手などによる大きい式典が行われるのだ。
もちろん、各国からの国賓を普段なら呼ぶのであるが、こんなご時勢呼べるわけもなく、国民の戦争への不安を払拭するためのイベント、というものに成り下がってしまっていた。

( ゚∋゚)「ショボン」
(´・ω・`)「なんだい?」

( ゚∋゚)「昔から、野望は高く、大きく持て、というもんだ。死と結果は後からついてくる。だが、死の前には結果が来る」

(´・ω・`)「……君らしい考え方だね。嫌いじゃないよ、僕は」


 さあ、あと残すは90分。
VIPというメインディッシュの前に、前菜のνを叩き潰す。



( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第15話 『ストーリー・オブ・カンタベリ』 完



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