( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

43: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:10:12.71 ID:bdyvNrbq0




( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第19話



44: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:11:29.40 ID:bdyvNrbq0

『電子レンジ、ご存知ですか?』
『う……うん。知ってるよ』

『今回で使うのは、それなんです』

(;´・ω・`)「そ、それって言われても……一体どういうこと?」
( <●><●>)「時にショボンさん。海を挟んだ向こうの大陸の小話なんですが、
         猫を電子レンジにいれて乾燥させた……とかいう話をご存知ですか?」

(´・ω・`)「いや、知らないけど……どういう話なの?」
( <●><●>)「あるおばさんが、飼い猫の体を洗ってあげた後、早く乾かしてあげようと電子レンジに放り込んだんです。
       そうしたら、猫は体中の水分が沸騰、内臓を痛めて死んでしまいました。すると、その飼い主のおばさんが、電子レンジを作っていたメーカーへ、
       ”猫を電子レンジに入れてはいけないとは書いていない!”というイチャモンをつけてその会社から莫大な慰謝料を受け取った――というものです」

(;´・ω・`)「ほ、本当にそんな話が!?」

( ゚∋゚)「……」
( <●><●>)「……いえ、これは作り話なのですが、まあ後ろのほうは置いておいてください。
        問題は、前の部分。”電子レンジに放り込んだら、体内の水分が沸騰、内臓を痛めて死んだ”という所です」



45 名前: 空白スレ乱立祭り中みたいなので素早く投下 ◆Cy/9gwA.RE 投稿日: 2007/06/29(金) 20:13:28.13 ID:bdyvNrbq0

(´・ω・`)「つ、作り話ってわかってたよ」

( ゚∋゚)「……」
( <●><●>)「相手は大きく、強固な装甲を持った駆動兵器なんです。そうなると、略奪に必要となってくるのは、その装甲を破る力」

(´・ω・`)「……なるほど」

( <●><●>)「大きな電子レンジように、マイクロ波を発生させる物を、足元に作ってやればいいんです」
( ゚∋゚)「そして、それを駆動兵器の足元へと設置、そして奪還するのが俺たちの役目だ」

(´・ω・`)「でも、どうやって?駆動兵器を包み込むだけの大きいマイクロ波を発生させるなんて普通じゃあ……」

( <●><●>)「硬度が2000%超、金属内でエネルギーを精製する金属、という代物が存在する時代に、普通とおっしゃいますか?」
(´・ω・`)「……」

( ゚∋゚)「俺も最初は、お前と同じような反応をしていた。どうも軍の中にずっといると、時代に後れてしまうらしい」

 腕を組み、クックルが言う。
ショボンは、ワカッテマスも軍人じゃないか……、と言いたかった。



46: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:15:13.68 ID:bdyvNrbq0

( <●><●>)「今からお二人に渡すのは、小規模爆発とともに周囲の空間を固定。
              そして、その固定空間内にマイクロ波を射出する、といったものです」

ワカッテマスから、大きな乾電池のようなものを受け取る、ショボンとクックル。
固定されたフレームから見える、透明の容器に、緑の光る液体が入っており、”いかにも”な感じであった。

(´・ω・`)「これを……」
( <●><●>)「駆動兵器へと、取り付けてください。」

(;´・ω・`)「と、取り付け?」

( <●><●>)「取り付けることができると一番いいのですが、
        今回必要なのは、そのマイクロ波による空間を作る為の、二つの装置の距離を縮めていただければいいというだけなのです」



49: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:17:44.78 ID:bdyvNrbq0

 ワカッテマスの説明は、こうだ。
そのフレームから覗く緑の液体の部分を、駆動兵器を挟み、照らし合わせる。

通信により、若干精度が下がるが、ショボン達の指示を受け、ワカッテマスが遠隔操作により起爆。
照らしあわされていた方向へと、マイクロ波の固定空間を形成、空間内にマイクロ波が爆散。

そして、その空間内が大きな電子レンジと同じようになる、ということであった。

( <●><●>)「地面に突き刺していただいてもかまわないんです……。しかし、もしも起動しようこちらへ通信、
        そしてこちらから起爆する時間の間に、駆動兵器が範囲からでてしまった場合。もう、これは失敗に終わるんです」

( ゚∋゚)「そして、俺たちも起爆させるまでに離れないといけない」
( <●><●>)「そうなんですが、それほど離れる必要はないんです。少し離れ、地面に思い切り伏せてください」

(´・ω・`)「それにしても、よくこんな作戦を思いついたね」
( <●><●>)「行動力はありませんが、こういう事を考えるのは得意なんです」



50: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:18:57.71 ID:bdyvNrbq0

 そして、今僕たちは、駆動兵器のすぐ近くまで迫っていた。
バックパックを胸に担いで、体勢を低くして――。

(;´・ω・`)「はっ……!!はっ……!!」
( ゚∋゚)「……近くで見ると、やはりデカいな……」

トラックを乗り捨てる直前に、僕は右脚部分、クックルは左脚部分に設置することに決まっていた。
霧が濃いせいか、まだボンヤリとしか駆動兵器を確認できない。

(;´・ω・`)「……どうする?これ以上近づいての待機はむずかしいよ!!」
( ゚∋゚)『ワカッテマス。聞こえているか?』

( <●><●>)『はい。聞こえているんです』

( ゚∋゚)『今俺たちの地点には、何体の駆動兵器がいるんだ?』
( <●><●>)『レーダーによると、少しはなれたところにドクオさんの乗るVBとラウンジ駆動兵器が一機。
               今クックル達の目の前にはブーンさんの乗るVGとラウンジが二機の模様です』

 ワカッテマスの通信が、とぎれるほどの地響きが連続して聞こえてくる。
駆動兵器の一挙手一投足が、人間の致命傷になる。
足をゆっくり動かしても、その大きな金属の塊は、人の命を奪うほどのものだ。ショボン達に緊張が伝わる。



53: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:21:02.07 ID:bdyvNrbq0

( ゚∋゚)『了解した。これより作戦を開始する。おって通信を入れる。起爆を頼んだぞ、ワカッテマス』
( <●><●>)『もちろんです。わかってます』


通信を切ると、クックルがショボンの方を見る。

( ゚∋゚)「これを成功させれば、俺たちの野望が一歩進む」
(´・ω・`)「……うん」

( ゚∋゚)「では、いくぞ……!!!」

 二人は、一斉にラウンジの駆動兵器へと向かい走り出した。
足元を掬われそうなほど、沼の足場は悪い。重い足を動かし、マイクロ波爆弾を抱え、足元へと急ぐ。

と、その時、轟音と共に、ラウンジの駆動兵器がこちらへと飛んできた。

(;´・ω・`)(;゚∋゚)『なっ……!!!』

地面を抉り、機体を滑らせながらこちらへと駆動兵器が吹き飛んでくる。

(;´・ω・`)「ふ……伏せて!!!」

駆動兵器の左腕が、クックルとショボンを襲う。
二人とも、素早く伏せる。匍匐前進のような体勢になっていた二人の背中を、大きな金属の塊が掠めた。

泥が舞い上がり、駆動兵器が持つ熱で、周囲は一気に蒸し暑くなる。
本来、人間がいかに駆動兵器の前では無力か、身を持って教えられた。



54: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:21:47.84 ID:bdyvNrbq0

(;´・ω・`)「……」
(;゚∋゚)「……さすがに、死ぬかと思ったぞ」

 しかし、こんなところで止まっているわけにはいかなかった。
すぐに立ち上がり、クックルは頬についた泥を拭う。

( ゚∋゚)「さあ、行くぞ!!」
(´・ω・`)「……うん!!」

雑木林を抜け、VBの足元を通過する。
ブーンは、こんな大きな物を操って、戦っているのか……。そう、ショボンは考えていた。

(;´・ω・`)「はっ……!!はっ……!!」

自分が乗れと言われたら、怖くて乗れないだろう。
孤独と戦って、未知の敵とも戦って……。

『歩く棺桶』

死ぬときは、一人。
死んだら一人なんだから、死ぬ時はせめて、誰かに見取られたいもの。
人間は、そんな孤独に強い生き物じゃないんだ。



55: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:22:46.10 ID:bdyvNrbq0

(;´・ω・`)「クックル!!足に取り付けるよ!!!」
(;゚∋゚)「……了解した!!!」

 ラウンジの駆動兵器の脚に全速力で向かうショボン、クックル。
息が切れる。胸が痛い。足が重い。

全て無視する。

抱えているマイクロ波爆弾を、上下に引っ張り展開させると、下部に取り付けアームが現れる。

(;´・ω・`)「うおぉぉぁぁぁ!!!!」

駆動兵器の右脚へと取り付いたショボンは、脚の膝関節部に、思い切りアームを突き刺した。

が、駆動兵器の脚が動き、ショボンは蹴飛ばされてしまう。
2,3m吹っ飛んだショボンは、口から血を流し、わき腹へ走る激痛により悲鳴を上げた。

(;´ ω `)「うっ……ぐぁっ……!!!」


 しかし、くたばってばかりもいられない……!!
ショボンは、わき腹を庇いながらムクリと立ち上がり、クックルを呼ぶ。



57: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:24:17.57 ID:bdyvNrbq0

(;´ ω `)「……く、クックル!!!!こっちは成功したぁぁ!!!!」

肺が破れているのだろうか、呼吸をするたびに激痛が走る。
車に轢かれた人は、このような感じなのだろうか。

(;゚∋゚)「こっちも取り付けに成功した!!!!」

(;゚∋゚)『ワカッテマス!!!!!起動だ!!!!』
(;<●><●>)『……わかってます!!!』

 少し、耳鳴りがする。
二人とも、地面に伏せていたのでその瞬間はわからなかったが、
もう一度駆動兵器の方向を見ると、駆動兵器は傾いており、その後、ゆっくりとその場へ沈んだ。

( ゚∋゚)「……よし!!!」
(;´・ω・`)「や……やったんだね……」

 それにしても地味だな……。
などと考えながらも、立ち上がるショボン。
クックルも同様に立ち上がり、駆動兵器のハッチへとよじ登った。
VIPの駆動兵器と違い、ラウンジの駆動兵器の搭乗口は後ろについてある。
うつ伏せに倒れてくれたというのもあってか、余計な部分を壊さずに済んだ。

ハッチを開けると、中年の男が、鼻血を垂らして死んでいた。
内臓が破裂して、中に血がたまっているのであろう、腹が大きく膨れ、水風船のようになっている。



58: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:25:12.42 ID:bdyvNrbq0

(;´・ω・`)「これ……二人乗れるの……?」
( ゚∋゚)「見たところ、補助コクピットをつければ大丈夫だ。さあ、乗り込むぞ」

 クックルは、ショボンの負傷を気にして、素早く補助コクピットを取り付ける。知ったような手際に、ショボンは驚いた。
そして、中に入っていた水風船のような死体が着ていた順応スーツを脱がせ、パンツ一枚になった死体を外に放り投げる。

そして、すぐに着替えると、コクピットへと二人乗り込んだ。

(;´・ω・`)「なんで……乗ったこともないのにそこまで……?」
( ゚∋゚)「……わからない。だが、脳の奥に焼き付けられているかのように操作方法がわかるんだ……」

テキパキと駆動兵器を立ち上げ、搭乗者のデータを書き換えていく。
その手際は、ブーンやドクオとは比べ物にならなかった。

――搭乗者、クックル。登録イタシマシタ。

( ゚∋゚)「怪我……しているんだろう。しっかり捕まっていろ」
(;´・ω・`)「……うん」



63: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:27:58.51 ID:bdyvNrbq0

( ゚∋゚)『ワカッテマス!!聞こえているか!!』

( <●><●>)『聞こえているんです』
( ゚∋゚)『そっちへ向かう。管制塔を出て待っていろ』

( <●><●>)『了解なんです』

( ゚∋゚)「……これからが、本番だ。反旗を翻す、ぴったりの言葉じゃないか」

うつ伏せだったセパタクロウに光が点る。
三人の、野望が芽を出した。


(;^ω^)「な……!?何が起こったんだお!?」

 自分を後方から狙っていたラウンジの駆動兵器が、いきなり”沈んだ”。
ブーンが、混乱していると、通信が入る。

その相手は、さらにブーンを混乱させることになった。



65: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:29:23.72 ID:bdyvNrbq0

( ゚∋゚)『……聞こえているか、ブーン』
(;^ω^)『だ……誰だお!!』


( ゚∋゚)『……クックルだ、ショボンもいる』
(;^ω^)『え……?』

ブーンはすぐさま通信元を特定する。
その通信元は、まぎれもなく、今、倒れたラウンジの駆動兵器。
セパタクロウからのものであった。

(;^ω^)『な……なんでそ、それに……乗っているんだお?』
( ゚∋゚)『俺たちが、奪ったんだ』

 全く理解のできないブーン。
奪った?なんでラウンジの駆動兵器を奪うんだろう?

頭の中はクエスチョンで埋まって行く。
さらに、クックルは話を続ける。

( ゚∋゚)『俺たちは、今をもってVIPから出て行く。だから、最後のお別れの言葉を言いにきた』

(;^ω^)『……お別れ?一体何を言ってるんだお!!理解できないお!!』
( ゚∋゚)『……ブーン。お前はもう一人前の兵士なんだ。別れを惜しむなとは言わない。
                   ただ、もう俺とショボンは、ブーン、お前の前には現れない』

 淡々と説明を続けるクックル。
呆然と話だけを聞いてるブーン。



66: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:30:17.66 ID:bdyvNrbq0
(;´・ω・`)「も……もう止めて……クックル。は、早く行こう……」

( ゚∋゚)「これが、いい機会なのかもしれない。ブーンは、内面が弱すぎる。
     このままでは、仲間との離別、仲間の死。そういうものに耐えられなくなる。お前も、ブーンには早死にしてもらいたくないだろう?」

(;´・ω・`)「……そうだけど……」

( ゚∋゚)「なら、話を続けさせてくれ。俺も、あいつとの別れは、悲しい」

 目の前が真っ暗になった気がした。
クックルとショボンがVIPから出て行く?
意味がわからなかった。

もう会えない?
友達なのに、戦友なのに……。
あの食堂で、みんな一緒にいた頃が頭によみがえる。
ドクオ、ショボン、ジョルジュ、クックル。

(  ω )『なんで……なんで……』
( ゚∋゚)『……ブーン、悲しみを表に出すな。お前の首を、どんどんと絞めていく』



69: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:31:16.47 ID:bdyvNrbq0

(  ω )『なんで……』
( ゚∋゚)『俺たちは、もう行かなくてはならない。これが、最後の挨拶だ』

(  ω )『なんでだお……なんで……』


(#゚∋゚)『ブーン!!!!!』
(;゜ω゜)『はっ……はひぃ!!!』

 クックルが、大きな声でブーンを怒鳴る。
こんなクックル、ブーンは見たことがなかった。

(#゚∋゚)『しっかりしろ!!お前は、VIPの力なんだ!!!
     そんな大役を背負っている奴が、それでどうする!!俺たちの別れを受け入れろ!!めげるな!!前を見ろ!!』

 グッとトリガーに力を入れるクックル。
セパタクロウが、ゆっくりと立ち上がる。マイクロ波爆弾が、搭乗者だけをうまく殺すようにできていることを確認した。

そして、胸部装甲が開き、カノンの発射準備を始めた。



72: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:32:35.87 ID:bdyvNrbq0

(;^ω^)『な……何をするんだお……?』
( ゚∋゚)『お前の前にいる駆動兵器、それを消すんだ』

( ゚∋゚)「ショボン、捕まってろ」
(;´・ω・`)「う……うん」

( ゚∋゚)『ブーン……』

光が集まり、光線がもう一機の駆動兵器へと吐き出された。
周囲を吹き飛ばし、駆動兵器は跡形もなく消える。
そして、小さな声で、クックルは言う。

( ゚∋゚)「……また、会おう」
(  ω )『……』

 呆然としているVGを背中に、クックル達はVIP南部指令基地へと急いだ。
ブーンは、今起こったこと、そして、今までのこと、これからのこと。全てを一度に考えて、何をすればいいのかが、全くわからなくなっていた。

頭に残る、クックルの言葉。

『ブーン、お前の前にはもう現れない』

悲しくなり、涙が溢れる。
戦場で流す涙は、どこか冷たく感じ、孤独をより一層強めた。



( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第19話 『Familiar』 完



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