('A`)はダークヒーローのようです

32: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:09:02.68 ID:m0f5tZJIO
その昔、私は学生をしていて隣には親友と呼べる人達が居た。

とても楽しくて、喜びに満ちたあの日の事を、今でもたまに思い出す。

決して忘れる事の無い、輝ける日々を。



川 ゚ -゚)は思い出に浸るようです



33: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:10:12.10 ID:m0f5tZJIO
ξ゚听)ξ「クー、一緒に帰ろう」

廊下の向こうから駆けてくる、金髪巻き毛の少女の名をツンという。
私がこの学校に転入して来て初めて言葉を交わした生徒である。

川 ゚ -゚)「ツンか、今日は内藤と帰らないのか?」

冷やかすように言う。この後の決まりきったようなツンの反応は、見ていて愉快だ。

ξ*゚听)ξ「は?なんで私が内藤と帰らなきゃなんないの?」

川 ゚ -゚)「はいはいお約束お約束」

━━━━━

二人で帰り道を歩く。
何の事は無い、日常の一コマ。

ξ゚听)ξ「でね、またあの内藤の馬鹿がねー」

川 ゚ -゚)「ツンは本当に内藤が気に入ってるのだな」

ξ*゚听)ξ「んなわけないじゃない!なんで私が…って、そういうクーはどうなのよ!」

ツンは急に私の方にパスを回した。
強引なパスだ。

川 ゚ -゚)「どうとは?」

ξ゚听)ξ「クーにも好きな人はいないのかって事!」



34: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:11:04.74 ID:m0f5tZJIO
ツン、残念ながらそれはオウンゴールだ。
しょうがない、少しは乗ってやろう。

川 ゚ -゚)「ふむ…そうだな……随分昔に、居たような気はするが思い出せん」

ξ;゚听)ξ「いや、私達まだ十七ですけど…幼稚園の頃ですか?」

ツンが呆れたような顔をする。

川 ゚ -゚)「さぁ。もっと昔かもな。私が生まれる更にその前から、私は彼の事を愛していた…のだと思う」

ツンが怪訝な顔をしている。そろそろ悪のりも潮時か。

川 ゚ -゚)「なーんて、ロマンチックな恋を私もしてみたいものだな」

ξ゚听)ξ「何それwwwライオンハート?www」

夕焼け空に、私達の笑い声が響いた。



35: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:12:08.05 ID:m0f5tZJIO
( ^ω^)「そう言えば、クーは前はどこの学校に行ってたんだっけかお?」

掃除の時間に内藤が箒片手にエアギターを弾きながら尋ねてきた。

川 ゚ -゚)「海外だ。シベリアにジュニアハイからいた」

この質問にはいつもこう答えることにしている。
それが習慣だ。

( ^ω^)「じゃあシベリア語ペラペラなのかお?聞かせて欲しいお!」

何故、帰国子女だと外国語が喋れるという先入観があるのだろう。
迷惑だ。まぁ喋れるのだが。

川 ゚ -゚)「まぁ、長かったからな」

( ^ω^)「mjsk!?ちょっと喋ってみてくれお!」

ちょうどいい、からかってやるか。

川 ゚ -゚)「そうだな、向こうではお前のような男性の事を『キモピザ』と呼ぶんだ」

昨日ネットサーフィン中に見つけたスラングを、シベリア語だと偽り披露する。

( ^ω^)「それはどういう意味なんだお?」

彼は疑うという事を知らない。だが、そこが彼のいいところであり、私が彼という人間をひいき目に見る理由だ。



36: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:13:09.50 ID:m0f5tZJIO
川 ゚ -゚)「うむ、『がたいのいい色男』という意味だ」

確かに彼は「色男」ではある。複雑な意味で。

( *^ω^)「やっだぁん!クーったらお上手ぅ!僕照れちゃうお☆」

えーと、なんだったかな、こういう時に使うネットスラングがあったな。確か…

( *^ω^)「そうかおそうかお、そんなにブーンはカッコイいかお。それじゃあ、僕と付き合っt」

えーと、き…き…

ξ#゚听)ξ「内藤くーん、ちょっといいかしら?」

き…きん……

( *^ω^)「おっおっ、どうしたんだお?ツンも僕の色男っぷりに惚れちゃっt」

きん……えーと…

ξ#゚听)ξ「この蛆虫が!じわじわとなぶり殺しにしてくれるわ!」

そうだ、思い出した。

( ゚ω゚)「モルスァァァ!!!!111」

きんもー☆、だ。



38: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:14:14.74 ID:m0f5tZJIO
放課後の誰もいない教室で、ぼんやりと窓の外を眺める。
そんな時間が私は好きだ。
色々な事を忘れ、傾く夕日に集中できるから。

(´・ω・`)「やぁ、まだ帰らないのかい?」

ショボンが私に話しかけてくる。
内藤と私とツンとショボンは、よく一緒に行動する。
現代風に言うと、「仲良し四人組」と言ったところか。

川 ゚ -゚)「少し、夕日を見ていた」

(´・ω・`)「そうかい。僕もご一緒してもいいかな?」

私が頷くと、ショボンは隣の椅子に腰掛けて窓外に目を向ける。

(´・ω・`)「平和だね。何の変哲も無い、夕日だ」

ポツリとショボンが呟く。

川 ゚ -゚)「あぁ。毎日変わらない。変化の無い、日常の一風景だ」

考えごとをしないように、強く、強く、夕日をこの目に焼き付けようと睨む。

(´・ω・`)「それにしては、平凡じゃない顔をしているみたいだけど?」

彼は察しがいい。いつもそう思っていた。だが、今はそれが疎ましい。

川 ゚ -゚)「気にするな。深い意味など無い」



39: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:15:17.83 ID:m0f5tZJIO
少し棘のある言い方をしてしまっただろうか。
窓に映るショボンの顔を見たが、彼は特に気にした様子も無く、ただ真っ直ぐに沈み行く夕日を眺めていた。

私も、改めて夕日の朱に集中する。

(´・ω・`)「君は時々、凄く遠い目をするね」

川 ゚ -゚)「それが、何か?」

(´・ω・`)「ここでは無いどこかを、そう、まるで懐かしむように」

川 ゚ -゚)「………」

(´・ω・`)「その時の君は、なんだか切迫したような追い詰められたような表情をしている」

ショボンの言葉にはっとする。

(´・ω・`)「何があるのかわからないけど、もう少し肩の力を抜いてみたらどうだい?そうしたら、あの夕日ももっと綺麗に見えると思うよ」

川 ゚ -゚)「……」

(´・ω・`)「少し、クサかったかな」

彼は照れたように伸びをする。

川 ゚ -゚)「いや、とても心に染みた。有難う」

椅子から立ち上がり、夕日からショボンに視線を移すと笑顔をつくる。

とても、自然な笑顔が作れた。



40: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:16:33.02 ID:m0f5tZJIO
修学旅行。
皆が浮き足立つイベント。学生生活最大のイベントだ。
それまでに、どれだけフラグを立てられたかで今後の学校生活の明暗が決まると言っても過言では無い。
そして、

(´・ω・`)「修学旅行と言えば」

( ^ω^)「枕投げ!だお」

なんやかんやでいつもの四人は修学旅行でも一緒の部屋になったのだ。

ξ;゚听)ξ「男女混合の相部屋とか…うちの校長はどうかしてるわ」

そうなのだろうか。そうなのだろう。

( ^ω^)「今、伝説の、パラダイスロストォォ!!!」

内藤が中二病っぽい技名を叫び、ショボンに枕を投げつける。

(´・ω・`)「ぐっ……ならば、僕も本気をもって応えよう。『筋力』の増加」

川 ゚ -゚)「はいはい版権版権」

男二人が枕投げに熱を上げる中、ツンは一人で雑誌を読んでいる。

川 ゚ -゚)「なんだ、ツンは男祭りには加わらないのか?好きそうに見えるが」

ξ゚听)ξ「誰があんなガキっぽい事に加わるのよ。つうか好きそうって……あんたのフィルターに私はどういう風に映ってんのよ」

そう言って、また雑誌のページをめくる。



42: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:17:51.11 ID:m0f5tZJIO
ツンの開いている雑誌を何気なく見る。

川 ゚ -゚)「ん?『気になるあの人と急接近〜修学旅行編〜』……そうか、ツンも今夜ついに内藤と…」

ξ////)ξ「ば、馬鹿!そんなんじゃないわよ!こ、このページはたまたま開いてただけd」

相変わらず、この反応は滑稽で愛らしい。おっと、予め私が同性愛者では無いことを断っておこう。

川 ゚━゚)「いや、否定しなくてもいい。思春期には誰でもこういった物事に興味を持つものだ。それに今日は修学旅行だしな」

ξ////)ξ「だ、だから違うっt」

( ^ω^)「サイレントスナイプ!!」

内藤の投げた枕が、見事にツンの頭を打ち抜いた。
なかなかの狙撃だ。将来は有望だな。

(´・ω・`)「ナイスだブーン!明日はホームランだね!」

( ^ω^)「おっおっ〜♪駄目だお〜ツンちゃん。折角の修学旅行なんだから、もっと楽しまなきゃ損だお」

ゆらり、とツンの周囲の空気が揺らいだ。

ξ )ξ 「そう…ね。もっと、楽しまなきゃね…」

枕を掴んだ腕に、血管が浮き出る。
もしや、範馬の血を受け継いでいるという設定なのか?



43: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:18:59.60 ID:m0f5tZJIO
ξ#゚听)ξ「こぉんな風にねぇぇぇ!!!」

空気の唸る音と、メシャッという肉の潰れる音がして、内藤の顔面に枕が生えた。
いや、突き刺さったのか。

( ゚ω(枕「めめたぁ!」

奇声を発して布団の上に倒れ伏した内藤の上にツンが馬乗りになる。
両手には枕。

ξ#゚听)ξ「ロードローラーだ!!」

川 ゚ -゚)「ロードローラープレイと言うのか。これは新s」

めしゃ。

川 -(枕「なる程。吸血鬼の血を受け継いでいるのか」

ξ#゚听)ξ「どうだ!どうだ!どうだ!どうだ!どうだぁぁぁ!!!」

( #)ω(#)「ぶひぃぃぃぃ!!!???」

ゴッバァァアン!!

(´・ω・`)「やれやれだぜ」

たのしいしゅうがくりょこうのよるはふけていく まる



44: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:20:29.39 ID:m0f5tZJIO
━━その日は雨が降っていた。
天気予報は大はずれ。
私は傘を持たないまま、裏通りを歩いていた。
ちょっとの散歩のつもりが、猫の生態を観察しているうちにこんな所にまでやってきてしまったのだ。

川 ゚ -゚)「まぁ私が風邪をひくことは無いから問題ないが」

人気の無い裏通り。
聞こえるのは雨音だけ。

川 ゚ -゚)「綺麗な、音だ」

なんだか、心が洗われるような音だ。

川 ゚ -゚)「体は確かに洗われるてがな」

何か歌でも歌いたい気分だ。

川 ゚ -゚)「When Iwas young I'd listen to the redio♪」

雨の中を、一番好きなカーペンターズの曲を歌いながら歩いていく。

川 ゚∀゚)「Every Sha-la-la-la Every Wo-wo-wo-wo♪」



46: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:23:06.33 ID:m0f5tZJIO
ふと、目の前に人影が立っている事に気付き、歌を中断する。
女性だ。
彼女も傘をさしていない。

从'ー'从「お久しぶりです」

認めたくない事を、認めなくてもいいと許されるなら、私は、今私の目の前にいる彼女の存在を認めたくない。

从'ー'从「…時間が、来ました」

川 ゚ -゚)「あぁ、そうみたいだな」

ポツリと、呟く。



47: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:24:18.96 ID:m0f5tZJIO
いつかやって来ることは解っていた。

あの日から、随分と長い時間が過ぎた。
充分過ぎる自由な時間を過ごした筈だ。

それでもできるなら、できることならもう少しあの三人と一緒に居たかった。
あの三人と、一緒の時間を過ごしたかった。

川 ゚ -゚)「ツン、内藤、ショボン……」

なんとなく彼らの名前を呟く。
無理な願いなのは解っている。

从'ー'从「…どうか、しましたか?」

解っているけれど。

川 ゚ -゚)「いや、何でもない。行こうか」

彼女を促し、雨の中を進む。



48: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:25:51.53 ID:m0f5tZJIO
川 ; -;)「Waitin'for my favorite songs

When they played I'd sing along

It made me smile

Those were such happy times

And not so long ago

How I wondered where they'd gone」

雨の音が、静かに、私の口ずさむ歌と、涙を、包み込んで、隠した。



50: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:27:41.39 ID:m0f5tZJIO
━━懐かしい夢を見ていた。

泣きたくなる程幸せな、ずっと見ていたいような夢を。

身を起こし、窓の外を眺める。
四人で並び、楽しそうにふざけ合いながら歩く学生達が見えた。

ふと、昔好きだった歌を思い出し、口ずさむ。

川 ゚ -゚)「Lookin'back on how it was

In years gone by

And the good times that I had

Makes today seem rather sad」



51: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 15:28:51.07 ID:m0f5tZJIO
こうして あの頃のことを振り返り
消えていった年月や
楽しかったことを思い出すと
あまりにも変わってしまった今日のことが
少し悲しく思えるわ
あの頃 私が歌っていたのは
愛の歌
歌詞も隅々まで覚えたものよ
そんな懐かしいメロディは
今でも私の心に快く響くわ
過ぎ去った日々をとかしていった
あの頃のように

過ぎ去った日々よ もう一度



川 ゚ -゚)は思い出に浸るようです

fin



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