( ^ω^)ブーンと('A`)は走りに生きるようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 20:37:53.01 ID:uy75R56IO
第十一話
ブーン




僕は浜辺で目を覚ました。

頭が痛い。
酸欠のようだ。
立とうとするとクラクラする。

(;^ω^)(ええと、何してたんだっけお)

僕は今の状況がわからず、砂浜に膝を付きながら、周りをきょろきょろと見回す。

そのうちに、浜辺にいる人の視線がこっちに向いていることに気付いた。

(;^ω^)(お?ブーンかお?)

だが、視線が集まっているのは僕より若干上。
何かいやそうな目で見ている。
僕は上を見上げる。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 20:39:54.32 ID:uy75R56IO

すると、そこには全身の肉体を露にしたドクオが立っていた。

(;^ω^)(なんだおこいつ……………)

いくらドクオだからって、それは犯罪だろ。

どうみても変態です、本当にありがとうございました。

そう言う間もなく、警察が駆け寄ってきて、ドクオに手錠を掛け、パトカーへと連れ去っていった。

僕は他の警官に肩を借りて、近くの日陰へと移動した。

ξ;゚听)ξ「ブーン!!」

ツンが砂の上を猛スピードで走り寄ってくる。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 20:41:44.22 ID:uy75R56IO

ξ;;)ξ「ごめんね、あたしが考え無しにブーンを蹴ったから」

あぁ、思い出した。
確か、ツンに金の玉を蹴られて、そこから海に沈んでいったんだっけ。

しかし、悪いのは僕だ。
あんなところで勃起してたら、女の子は怒るに決まってる。

( ^ω^)「ブーンは全然大丈夫だお。ツンこそ大丈夫かお?」

ξ;;)ξ「う〜、大丈夫」

よかった。
とりあえず、僕の不安要素は無くなったかな。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 20:43:37.13 ID:uy75R56IO

その日の帰りは、みんな暗い雰囲気で新幹線に乗っていた。
ドクオが捕まったのに、笑って帰れるわけがない。

話を聞くと、ドクオは短距離の人にタイツを盗られ、
それを取り返した流れで僕達を発見、救出に向かったそうだ。

当事者の短距離2名は、泣きながらコーチに事情を話していたから、
きっと事件の原因を作ってしまったことに反省をしているんだろう。

クーはと言うと、何事もなかったかのように、無表情のまま新幹線に乗っていた。
クーらしいって言えばらしいけど。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 20:44:58.31 ID:uy75R56IO

翌日の新聞には写真付きでドクオの記事が載っていた。

『裸の少年、人命救助するも逮捕』

僕はそれを家で見て、つい吹き出してしまった。
僕空気嫁。

でも、ドクオはその日中に釈放された。
ツンからは、短距離の2人が嘘偽り無く警察に話してくれたおかげで、
罪には問われなかったって聞いたけど、本当にそうなんだろうか。

強制スカトロはともかく、公衆の面前でペニスを曝したのはどうかと思う。
何か裏がありそう…

まぁ、そんな一週間だった。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 20:46:52.71 ID:uy75R56IO

インターハイまで、今日であと2週間となっている。
僕は合宿が終わってからというもの、今までの練習が余裕を持ってこなせるようになった。


例えば、1000Mを2分35秒で5本。
6月のころなんて3本でへばっていたけれど、今は5本でも足りない。
確実に速くなっている。

うちの部員は、もう誰も僕についてこれない。
むしろ1本もこなせない。
それだけ僕は、速いんだ。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 20:48:03.07 ID:uy75R56IO

(=゚ω゚)ノ「おーい、内藤。ちょっと来るよぅ」

今日も本練習でいい汗をかいて、僕がクーリングダウンをしていると顧問に呼ばれた。

( ^ω^)「なんですかおー?」

急いで顧問のいるベンチまで走っていくと、一冊の冊子を渡された。

( ^ω^)「これは?」


(=゚ω゚)ノ「ランキング表だよぅ。今届いたばかりだから見るよぅ」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 20:50:00.58 ID:uy75R56IO

表には全国高校陸上総体なんたらかんたらと書いてある。

中をぺらぺらめくってみると、各種目ごと、記録が良い順に上から並んでいた。

(=゚ω゚)ノ「1500をまず見るよぅ」

顧問にそう言われ、冊子中ほどにあった1500のランキングを見る。

(;^ω^)「お?」

僕はそのランキングを見て、一瞬怯んだ。

現時点での僕は、ランキング2位。
上に1人いる。
ドクオに至っては5位だ。

僕は一位のやつが気になり、タイムと名前を見る。

オナーヌ・セイジン 破廉恥学園 3分49秒62


(=゚ω゚)ノ「一位はケニア人だよぅ。お前の記録よりかなり上を行ってるよぅ」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 20:53:24.21 ID:uy75R56IO

(=゚ω゚)ノ「一位はケニア人だよぅ。お前の記録よりかなり上を行ってるよぅ」

うん、確かに。
僕の記録は3分53秒。
彼の記録より4秒も遅い。

よく、箱根駅伝とかで留学生を見ると思うけど、向こうの人間は体の作りが違う。

僕達の人種は野生での生活からかけ離れ、一部機能は弱体化してる。

けれども、ケニア人は筋肉の質、疲労物質の排出速度、暑さへの適応能力。
全てが僕達の上を行き、運動向きの体なんだ。
狩猟を視野にいれているからね。

だけどね

( ^ω^)「先生、僕には勝てないとでも言うのかお?」

(;=゚ω゚)ノ「そ、そんなことはないよぅ。でも……」

ここまで来たら、もう誰も僕を超すことはできない。

こいつも、そしてドクオでさえも。

能力の差なんて、僕が超えてやる。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 20:57:44.62 ID:uy75R56IO
ドクオ



「600M、1分21、22、23―――」


(; A )「ハァッハァッ、ハァッ」

マネージャーがタイムを読み上げる。
600M3本目、1分23秒。
うん、いいカンジだ。

「お疲れさまです!お水どうぞ」

後輩が俺にオレンジ色のボトルを渡してきた。

(;'A`)「おぉ、サンキュー」

俺はボトルを受け取り、水を口に含みながら、ゆっくりと歩きだす。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 21:06:03.47 ID:uy75R56IO

夕暮れのグラウンドは美しい。
太陽が400Mの土でできたトラックを赤く染める。
今まで何人もの競技者が、この土の上を走ってきたのだろう。
そして、この想いの詰まった土が俺に闘志を奮い起こさせる。

俺はちょっと感傷的になりながら、更衣室へ向かった。


更衣室に入ると、俺はまずカレンダーを見た。
最近は、これが日課になっちまってる。
インハイが近いからって俺、緊張してんのかな。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 21:10:20.62 ID:uy75R56IO

('A`)「あと、14日か」

誰が書いたか知らねえけど、一日ごとにインハイまでの日数が書いてある。
計算が苦手な俺にはわかりやすくて助かるぜ。


俺はここまでいい調子で来ている。
ケガもしてないし、脚も軽い。
問題なし。

先週はサツに捕まったりとばたばたしてたけどな、その件に関しては親父が人肌脱いでくれたよ。
ほら、うちってそういう仕事してるから。

ま、それは置いといて。
とにかく、調子がいい。
本練習だって屁の河童。
あんまり楽勝なんで、練習強度を上げてもらったりもした。
それでもまだいけるって感じてる。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 21:11:38.24 ID:uy75R56IO

顧問は、
「ここでケガしたら本も子もない」
とか言ってそれ以上はさせないつもりみたい。

でも俺、他のやつには内緒で一日3回練習してるんだ。
朝10km走って、授業中に早弁して、昼休みにウエイトトレーニング(ベンチプレスとか)して、最後に放課後の練習。
さすがに夜はゆっくり過ごすけど。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 21:12:34.84 ID:uy75R56IO

これ、最初はまったくやる気なんてなかった。

でも、この前兄貴から

(,,゚Д゚)「俺は朝、昼、夕方、夜の4部練習をしてた」

って聞いたら、そりゃ俺だって頑張らなきゃでしょ。
だから苦痛でもなんでもない。
むしろ、強くなるためには努力は欠かせないんだって思えて、やる気が出てくる。

――俺には、負けられないやつがいるから――



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 21:16:06.11 ID:uy75R56IO

今、駅の待合室でクーを待ってる。
いつもはクーが待ってる側だけど、今日は練習が早く終わったから俺が待つ側だ。

先週の海事件で、俺が捕まったのは知っての通りだけど、なんと警察に連絡したのはクーだった。

俺が、なんでそんなことしたんだ?って聞いたら

川 ゚ -゚)「暇だったから」

って。
俺はそこでキレた。
だって、クーが通報しなきゃ俺は平穏な合宿で終わることができたかもしれねぇ。
それをおもしろ半分で終わらされたんじゃ困るからな。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 21:18:39.80 ID:uy75R56IO

そしたら次の日、クーは駅で「ごめん」の一言。

俺、当分一緒に帰らないようにしようと思ってたけど、その場でクーを許した。

だって、あの困った顔をされれば、シカトはできねぇよ。


川 ゚ -゚)「ドクオ、今日は早いのだな」

俺がぼーっとしてると、気がつかないうちにクーが俺の前に立ってた。

('A`)「あぁ、まあな」

俺は適当に言葉を返す。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 21:21:23.64 ID:uy75R56IO

クーは俺の両脇が空いてなかったから、そのまま俺の前に立っていた。

席を譲ろうとしたけど、あと少しで電車が来るから、って言って座らなかった。

俺はクーが座らなかったのをいいことに、クーの観察を始める。

クーは待合室の窓の外をずっと見ていた。
近くの鉄橋とかじゃなくて、もっと遠くのどこかを見てるみたい。
その待合室の窓からは、今にも山に隠れそうな太陽から夕日が差し込み、日焼けしたクーを美しく魅せる。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 21:28:09.01 ID:uy75R56IO

クーは、先週でかなり日焼けした。
俺が最初に会ったときとは比べものにならない。
短いスカートから出る脚は腿の辺りで白黒がはっきりしていて、クーがどれだけ焼けたかを物語っている。

だけど、この焼け方はスポーツをしている人独特のもの。
日サロ行って焼いたやつとは違う。
何か、自然の美しさが溢れている。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 21:30:24.68 ID:uy75R56IO

駅に電車が着くと、俺たちはいつもの車両に乗り、いつもの席に座り、いつものように話を始める。

話す内容は特に決まってない。
陸上とか、学校とか、服とか。
たまにHな話もする。

毎日のように俺たちはおしゃべりをしてるけど、話のネタが尽きることはない。
むしろ、話すことがありすぎて困るぐらいだ。

俺はクーのことが知りたいし、クーは俺のことが知りたい。
だから、俺たちそう欲するかぎり、これからも話題が尽きることはないと思う。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 21:31:29.91 ID:uy75R56IO

川 ゚ -゚)「そういえば、今日私の学校にインハイのランキング表が届いたぞ」

クーがはっと思い出したように、テレビの話題から急に話を変える。

('A`)「へぇ、うちのとこにはきてないな」

クーの学校は伝統ある陸上部を持った学校だ。
けど、俺んとこは部活ができて20年も経ってないし、第一顧問がぼけっとしてるからな。

川 ゚ -゚)「確か、ドクオがランキング5位で、内藤が2位だ」


('A`)「内藤2位?」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 21:34:35.06 ID:uy75R56IO

俺が5位ってのは納得。
あんなくそタイムだったら妥当だ。
でも気になるのは内藤の上に一人いることだ。

川 ゚ -゚)「確か、一位はケニア人だぞ。今月の月刊陸上競技にも載っていた」

('A`)「ケニア人、ねぇ……」

俺、正月に駅伝とか見てるといつも思う。
外国人が日本のことに手だすなっての。
そうすると日本人の感覚が狂っちまうよ。

でもな

('A`)「俺は、負ける気しねぇな」

川 ゚ -゚)「ほぅ、それは頼もしいな」

ランキングどうこうなんて関係ねぇ。
あるのは今。

今、最速なのは、この俺なんだ。



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