( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです
- 9: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 19:40:54.44 ID:pIvl3DWs0
- 第15話
衣服が擦り切れていく。汚れも増していく。
今、ゴミ箱跡から滑り下っているのだが、臭いもきつい、身体も痛い。
ダストシュートを下っているのだから、仕方が無いといえば、仕方がないが……。
衝撃で視界がブレている中、ようやく光が見えた。
どんどんとそれは大きくなっていく。
(;^ω^)「っぶぁ!!」
突然光が辺りいっぱいに広がり、
ひゅっと身体も突然空中に晒される。
慌てふためきながら、身体を無理矢理動かすも今は落下中だ。 無意味なことだった。
どしん、尻と地面が激突した。
(;^ω^)「いッ……たいぉお……」
尻を擦りながら、よろよろと立ち上がり、頭上を見る。
ここは、高さにして10メートル辺りだろうか。
ドーム状となっている広々とした天井には無数の穴ボコが開いており、
どうやらその内の1つから飛び出てきたらしい。
しかし10メートルも上から飛び込んでよく大怪我しなかったもんだ……。
今度は下を見ると、青いマットが敷かれており その上にばらばらとゴミが散らばっていた。
(;^ω^)「マットがあったからかお……」
- 10: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 19:42:34.34 ID:pIvl3DWs0
- もっと周りを観察しよう、と見渡してみた。
ここの壁にはかなりの電球が配備されているが
それでも全体的に薄暗い。
広さもかなりある。
学校の体育館程度だろうか。
その広さと、10メートルほどの天井までの高さが相まって
余計にそう感じてしまう。
そういえば、ショボンは……どこに行った?
(´・ω・`)「おーい、こっちだよ」
声のする方へ目を向けると、そこには扉を前に佇んでいるショボンの姿があった。
少し赤く錆びた、重厚な造りの巨大な扉だった。
僕は近づいてショボンに話しかけた。
( ^ω^)「その扉を潜るのかお?」
(´・ω・`)「それが……あっちも見なよ」
反対方向を指差すので、追うようにして僕も見た。
そこにはこの扉ほどでは無いにせよ、やはり大きく、頑丈そうな 白い扉があった。
どうやらこの空間には扉は2つしかないようだ。
- 11: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 19:45:02.52 ID:pIvl3DWs0
- ( ^ω^)「ん?」
突然頭上から何かが滑り落ちるような音がした。
やがてその音はどんどん大きくなっていく。 そして天井の穴から何かが吐き出され
マットにどしん、と何かが落ちてきた。
('A`)「いててて……」
呻いてるそれはドクオだった。
僕と同じように尻を押さえ、呻きながら立ち上がろうとしている。
( ^ω^)「ドクオ! 遅い登場だお」
(;'A`)「う、るせぇ……途中で止まっちゃったんだよ何故か」
(´・ω・`)「君は軽すぎるもんなぁ」
ショボンも近づいてくる。
(;'A`)「にしても何ここ? くっせ!! 何処だよここは!!」
確かにここは臭い。 生ゴミも幾つか混じっているんだろう。
水の腐った酸っぱいような臭いやら、ジュースの甘ったるい匂いやらで
鼻を覆うしかないような臭さを醸し出していた。
ショボンが無言で壁の一点を指差した。
そこには、錆びた小さな鉄のプレートが嵌め込んであった。
【第4ゴミ集積所】 と。
- 13: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 19:47:23.93 ID:pIvl3DWs0
- (;'A`)「第4……か。こんなのが地下内にゃ、いくつもあんのか」
(´・ω・`)「この街全体のゴミ箱の総括だ、まだまだあるんだろうな」
( ^ω^)「…………」
ドクオ達の話を聞くことが出来ないほど、
僕は今、 今までのきっかけのことを、反芻していた。
僕達が何故、この街の暗部に足を踏み込んだのか。。。
それは、僕が想像したからだ。
この街全体のゴミ箱からゴミを回収するのは大変そうだな、て思って
ドクオがコンビニで募金をした際の、その小銭が滑る感覚で ダストシュートを連想して
ディズニーランドの話で唐突に、「ディズニーランドは地下で何かがある」という噂を思い出して
ドクオの「効率悪いな」という発言で、「ならばどうすれば効率良くなる?」と考えて……
それで、想像したのが 「この街には、地下帝国が存在する」というものだった。
これが全ての始まりだった。
その突拍子のない結論が、僕達をここまで招いたのだ。
【第4ゴミ集積所】
僕の想像した、地下の存在。
とうとう、ここまで辿り着いたのか……。どこか感傷的な気分になる。
- 15: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 19:49:10.92 ID:pIvl3DWs0
- ( ^ω^)「………ん?」
再び、天井から何かが滑り落ちる音がする。
まさか……。
"シャッ……" 何かが空中に投げ出された。
(;^ω^)「っ……ジョルジュ!!」
それは太腿から血を流し、苦しそうな顔をしていたジョルジュだった。
慌てて僕達3人は駆け寄るも、豪快にマットと激突してしまった。
(;゚∀゚)「痛っ……ぁ」
持っていた金属バットを杖代わりにして何とか立ち上がるも
やはり、辛そうだ。
右腿からは、おそらく弟者に撃たれたであろう銃痕が残っており、
そこから血がだらだらと垂れ流れている。
(;゚∀゚)「わ、悪いなお前ら……こんな、キッたねえとこに……プランBて奴でさァ……」
(;´・ω・`)「案は幾らあっても足りないさ……。それより、こんな不衛生な所に居たら
傷が化膿してしまうよ!!」
(;'A`)「ジョルジュ……ほんと大丈夫かよ!?」
- 16: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 19:51:43.08 ID:pIvl3DWs0
- (;゚∀゚)「でーじょーぶでーじょーぶ……」
(;^ω^)「と、とりあえず手当てしないと!」
ショボンが自分のハンカチをさっと取り出すと、
それをジョルジュの傷口に押し当てて、更に何処から持ってきたのか
布ガムテープをぐるぐる巻きにして、固定する。
('A`)「どこで持ってきたんだよ、そんなガムテ?」
(´・ω・`)「ここに落ちてたんだけど……マズいかな……?」
(;゚∀゚)「構わねぇよ……それより」
ジョルジュは天井を見上げる。
(;゚∀゚)「大丈夫……奴らは来ねぇ。 侮ってるからな、俺達を。
俺達がゴミ箱跡に入ったのを笑ってたしな、お似合いってよ。
そんな奴らが、ここに来るワケがねぇ……」
息も絶え絶えに、僕達を安心させるかのように言う。
(;^ω^)「……ジョルジュ……!」
- 17: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 19:53:46.11 ID:pIvl3DWs0
- (;゚∀゚)「とにかく……こっから移動しねぇと、な」
(´・ω・`)「扉は2つあるけど……」
( ゚∀゚)「ああ」
汗を片手で拭いながら、その2つの扉を交互に見た。
( ゚∀゚)「こっちだ」
白い扉の方を指差し、よろよろとジョルジュは歩き始めた。
僕達はジョルジュが倒れそうになるのを支えながらも、扉前に辿り着く。
( ^ω^)「鍵はどうするんだお?」
( ゚∀゚)「この扉に鍵は無ぇ。あっちの赤い方は外側通路に通じてるから、あんだけどよ」
('A`)「外側通路?」
( ゚∀゚)「言葉の通りだ、そこん奥の通路を歩いてると、外界へ通じるんだぜ」
この地下内にはどうやら外側・内側といった区別が付いているらしい。
更に渉外室のある、あの第8通路はまるで何処かの会社のような廊下となっている。
労働者用の施設もあり、構成員用の働く場所もあれば、
ホール・ロビーのような豪華な区域もある。
地下帝国はかなり複雑な造りなのだろう。
- 27: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:19:36.46 ID:pIvl3DWs0
- ( ゚∀゚)「ここだ……」
ジョルジュは白の扉を押し開けた。奥の廊下が目の前に広がる。
向かいにはアスファルトで出来た下への階段があり、右と左には通路が伸びていた。
岩盤の露出した、埃っぽい場所である。
バルコニーエリア周辺の通路を少し雑にしたような印象だ。
('A`)「いよし!」
( ゚∀゚)「待った!」
通路へ飛び出そうとする僕とドクオを、ジョルジュが制した。
ジョルジュは1人で通路に出て、右と左をキョロキョロと見回すと、
僕達へ言う。
( ゚∀゚)「ここで待ってろ。いや……隠れてろ。
扉も閉めとくからな。 もし、向かいの階段から誰かが上がる気配がしたら……
そんときはゴミに成りすます勢いで隠れろ!」
かなり気のこもった忠告だった。
「いいな」と念を押すと、よろよろとした足つきで通路に出た。
――ギィィィ……。扉が閉まる。
閉ざされた集積所には、僕とドクオとショボンしか居ない。
心配だ。
自分達の心配も勿論あるが、怪我をしたまま1人進んだジョルジュへの心配。
そして、シャキンさんの安否。
- 29: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:22:45.39 ID:pIvl3DWs0
- (´・ω・`)「…………」
ショボンは虚ろな目で天井の穴の数々を眺めていた。
穴からは僅かに光が漏れている。
太陽の光だろう。
ショボンが何を考えてるのか、当人に聞く以外 知り得ないが
大体の予想はついてしまう。
父への心配。だろうか。。。
すると、突然罪悪感が生まれた。
ショボンの踏み込んではいけない領域に、足跡をつけてしまったような気がする。
( ^ω^)「……いかんお」
('A`)「ん、どーした」
ドクオが近くに来たため、咄嗟に話題を出す。
( ^ω^)「不安で堪らないんだお……」
('A`)「……ああ、俺も」
- 30: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:25:19.40 ID:pIvl3DWs0
- ドクオは頷く。その姿にはどことなく、勇ましい風格が漂っていた。
('A`)「だがな……俺達は賽を投げちまったんだ。 CPの奴らもな。
だから、俺達はやるっきゃねぇ」
(;^ω^)「ドクオ……」
一体どうしたんだ、と驚くばかりの変貌ぶりだ。
以前、「幹部候補生のまま知らずに過ごそう」と発言した奴と同一人物とは思えないほどだ。
('A`)「ブーン……俺達はカウントダウンを止mfさいfgv;うわv!!!!」
(;^ω^)「ドクオぉ!?」
ドクオは突然絶叫を上げ、走りだしてしまった。
何事か? とドクオを見ると 涙目で震えていた。
(;^ω^)「ドクオ?」
(;゚A゚)「ゴゴゴッゴゴゴゴGOKIBURIがッ!!」
GOKIBURI? ドクオの先程までの立ち居地周辺を見ると、
カサカサと何かが素早く動いてるのが分かった。
(;^ω^)「…………」
(;゚A゚)「アッー! アッー! アッー!」
- 31: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:28:12.50 ID:pIvl3DWs0
- (;^ω^)「お前ホントにやれんのかお?」
僕のその問いでやっとドクオは我に返った。
(;'A`)「と、当然だろ……! やるときゃ、やるぜ。賽は投げられたんだ!」
何だか急に萎んだような。
本当に大丈夫なんだろうか。
すると再び天井の穴へ向けて、何かが滑り抜けていく音が集積所内に響き渡った。
(´・ω・`)「む……」
(;^ω^)「な、何が……」
(;'A`)「C、CPの野郎かッ!?!?」
テンぱっているドクオの丁度目の前の辺りにそれは降ってきた。
(;゚A゚)「おわぁ!! ……て、ゴミじゃねぇか!」
ドクオのツッコミ通り、それは単なるコンビニゴミだった。
ショボンの発信機を仕込んだあのゴミとよく似ている。
- 36: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:33:16.23 ID:pIvl3DWs0
- (´・ω・`)「ドクオお前ホントにCPに立ち向かえるのか?」
さすがにショボンも心配になったのか、からかい混じりに問いかけた。
(;'A`)「お……おう! 格闘とかバトル、し、しちゃうぜ!」
(;^ω^)「本当かお?」
('A`)「俺は変わったんだよブーン、ショボン。期待してろって」
そう言うと格好つけるように親指を立てた。
笑いつつも、僕も返す。
やれやれ、と言わんばかりにショボンも親指を立てる。
( ^ω^)「……今、何時だお?」
(´・ω・`)「……2時過ぎ」
ショボンが腕時計を見ながら答える。
('A`)「まだ2時かよ!」
ドクオと同じく、僕もまだ2時過ぎという事実に驚いた。
もう結構、時間は経ったのかと思っていたからだ。
- 39: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:36:11.01 ID:pIvl3DWs0
- ・・・ ・・・・
( ^ω^)「……まだかお〜」
('A`)「今、何時?」
(´・ω・`)「……3時、前」
('A`)「……もう3時か……」
( ^ω^)「ジョルジュ大丈夫かお……」
かれこれ1時間近くだろうか。
部屋の隅にて3人で縮こまっていた。
ドクオはゴキブリが怖いらしく、じっとマット方面を眺めている。
たまに上からゴミが降ってくること以外、
特に変わったことは無かった。
扉の近くの壁に居たため、外の通路にも耳を傾けたが
何一つ、物音は聞こえない。
静寂の中だが、場所が場所なだけに、喋り合って時間を過ごすのも躊躇われた。
シィーンとした中、たまにぽつりぽつりと話すばかり。
時間だけが過ぎていく。
焦りが砂時計の砂のように、少しずつ、確実に溜まっていくのが分かった。
- 41: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:38:16.66 ID:pIvl3DWs0
- (;^ω^)「…………」
焦りが、「カウントダウンを止める」という誇り、緊張感をゆっくりと削いでいく。
……やばい。
この空気は、危険だ。
息をする度に、「気」が抜けていく。集中力が、切れていく。。。
('A`)「……あーぁ……疲れたな……Tシャツも汚れちまったし……」
ドクオがとうとうぼやきだした。
そういえば、ドクオの着ているTシャツはショボンから譲り受けたとかいう、
例のお気に入りのシャツだった。
( ^ω^)「そのシャツそんなに重要なんかお?」
('A`)「ああ、見ろよこの生地! 綿とは思えねぇ柔らかさだろ!? ブランドもんだぜ?!」
(´・ω・`)「ああ、ネットオークションで買った中古モノなんだけど……」
('A`)「いい感じなのによー、スリ汚れちまった……。クソっやっぱ火曜日はついてねークソ日だな!!」
何だかよく分からない罵倒だが、火曜日がつまらない日だというのは心の中で同意した。
( ^ω^)「ていうかドクオがファッションに興味を持つとは」
(´・ω・`)「よく知るといいブーン。こだわる奴ほどセンスは悪い」
- 42: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:40:28.05 ID:pIvl3DWs0
- ( ^ω^)「なるほど」
('A`)「……はぁ。まだか……」
ドクオはへたりと座り込み、溜息を大きくつく。
集中力はもうほとんど切れ掛かっているようだ。
(´・ω・`)「……ん? 何かが来るぞ」
え、と思いつつ耳を壁の奥の通路へ傾けた。
……確かに、聞こえる。 何かが、来る。
これは、
( ^ω^)「車の音だお!」
ブロロロロ……というエンジン音、間違いない。
その音はこちらへ確実に向かってくる。
(;'A`)「ひっ……やべぇ……!」
……ヴロロロロッロ……
そして、扉前にて、それは、停車した。
- 45: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:42:15.81 ID:pIvl3DWs0
- ……バタン。ドアを閉める音が壁の向こうから聞こえた。
そして、こちらへ向かってくる足音。
一気に沸騰するかのように緊張感は高まった。
(;^ω^)「 ……… 」
壁に身をぴったりとくっつけて、息を潜める。
もしCPの人間なら、僕達はあっけなく殺されてしまうだろう。
白い扉が、ギ、ギ、ギ――と不快な、まるで金切り声をスロー再生
したかのような、暗い金属音を立てながら
開かれていく。
息の詰まる時間、
しかしそれは、その者の声により一瞬で終わった。
( ゚∀゚)「大丈夫かお前らァ!!」
その歯切りのいい、張りのある大声は
僕達に安心感をもたらした。
(;^ω^)「ジョルジュゥ!!」
安心感を与えつつも、緊張感を削がせない声だった。
急いで駆け寄る。
- 47: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:43:31.06 ID:pIvl3DWs0
- 走っている最中、ドクオが堪らず叫んだ。
(;'A`)「だ、大丈夫かよぅ!?」
ドクオと同じく僕も心配してしまう。
足を怪我しているジョルジュが、車を運転するだなんて。
ショボンも叫びはしないものの、眉間に皺を寄せた、心配そうな表情を浮かべていた。
( ゚∀゚)「でーじょーぶでーじょーぶ!」
あっけらかんとした声色から、大丈夫なものかと
安心してしまったが
ジョルジュの足は、確かに血塗れであった。
(;^ω^)「だ、大丈夫かお!?」
( ゚∀゚)「ちと運転してるとき急にダラッってよ……」
(;'A`)「そんな……」
(;´・ω・`)「止血しないと……!」
( ゚∀゚)「いや、もう止まったぜ、大丈夫だ。それより……」
ジョルジュは自分の歩んできた道を振り返った。
- 48: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:45:35.36 ID:pIvl3DWs0
- 開いた扉奥の通路には、血痕が短い間隔で垂れたせいに
よって出来た蛇腹のような道筋が出来ていた。
(;゚∀゚)「悪いな……痕を残しちまった…… 杖代わりのバット痕は、細工したけどよ……」
(;^ω^)「わ、分かったお!!」
それでも僕らに謝るジョルジュに何かしたくて、
震える声を大きくして、励まそうとする。
しかし、ジョルジュの謝罪で胸が張り裂けるような感覚が襲い
思わず涙声のようになってしまった。
( ;ω;)「ジョッ……ルジュ……!」
ジョルジュはそんな僕に
少し微笑んでみせると、言った。
(;゚∀゚)「この車に乗れ! 急がないと!!」
(;'A`)「あ、ああ!」
言葉通り、僕達はジョルジュの運転してきた車――白の軽トラの
荷台に乗り込んだ。
それを確認してから、ジョルジュはよろよろと運転席へ向かう。
心なしか、虚ろな瞳をしていた。
- 49: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:47:40.17 ID:pIvl3DWs0
- (;゚∀゚)「……じゃ、行くぜ」
運転席に乗り込み、エンジンを掛ける。
その姿を小窓から覗いていたのだが、
見てしまう。 ジョルジュの身体が、小刻みに震えていることを。
(;^ω^)「…………」
そして、ショボンやドクオも 震えてはいないものの
かなり真剣な表情で座り込んでいた。
皆、分かっていた。
自分の状況、現実。
今、立ち向かうべき者を。
手を組んで、僕はまるでお祈りするかのように俯いた。
やるしかない、いや やるんだ!
もう既に腹を決めたというのに、何を迷う必要があるってんだ。
荷台の上から眺める、流れる景色。
それは、土色がほとんどを占める無機質なものだ。
だからかもしれない。
見れば見るほど気分が落ち着いていった。
- 50: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:50:09.13 ID:pIvl3DWs0
- 荷台の上に乗ってからは、しばらく皆 声を発しなかった。
しかし、先程とは違い
この状況を全く退屈とは思わなかった。
それから10分ほど、走っただろうか。
急に停車したので、何事かと小窓を覗くと
ジョルジュが振り返り、僕達に笑いかけた。
( ゚∀゚)「降りろ、ここで一休憩すっぜ」
何があるのだろう、と僕は道脇を見て、ようやく理解した。
そこには【第2雑貨倉庫室】と書かれたプレートを埋め込んだ
木製の大きな扉があった。
ここで何か、物の補給でもするのだろう。
僕はさっと荷台から飛び降りた。
( ^ω^)「ドクオもショボンも来るおー」
('A`)「お、おう」
(´・ω・`)「うん」
半分放心状態だった2人も降り、倉庫室前に4人が並んだ。
- 51: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:53:32.39 ID:pIvl3DWs0
- ( ゚∀゚)「ここで物の補給するぜ、渡した鞄は……あるよな」
その言葉でやっと自分がずっと握っていた空の鞄を意識した。
そういえば、バーボンハウスで渡されたこの鞄は
ずっと手に持ったままであった。
ジョルジュは3人全員の鞄を確認した後、
どうやって手に入れたのか4、5つ付いた鍵の束を取り出し
その内1本を鍵穴に差込み、扉を引いた。
(´・ω・`)「これは……」
ジョルジュは部屋へ入り、壁に寄ったかと思うと
部屋内の電球が一斉に輝きだした。
どうやら灯りをつけたらしい。
部屋内は「雑貨」のの名通り、あらゆる物が取り揃えられていた。
スコップやら作業ヘルメットやら、セメント袋、
パッチング作業用のプレートコンパクター等々、工事用の道具が揃えられている。
更に保存食らしきものもあれば、懐中電灯、非常用袋などもあり、まるで家の物置を連想させる。
それ以外にも単車が数台、煙草のカートンが積まれており、その近くにはブックマッチ、ジッポライター。
消火器……本当に雑貨倉庫のようだ。 井戸なんてものもある。
('A`)「すげぇ!」
ドクオはさっと煙草のカートンの近くに走り寄ると、置いてあったジッポライターを弄りだした。
どうやらそのデザインがいたく気に入ったみたいで、一通り遊んだ後はポケットにしまいこんだ。
- 54: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 20:58:14.48 ID:pIvl3DWs0
- (´・ω・`)「いい単車じゃあないか……Zか……」
( ゚∀゚)「紺メタたぁセンスあっだろ? 俺もそいつにゃ前から目ェつけてんだぜ」
単車を眺めるショボンの後ろに、バットをつきながらジョルジュがやってきて、話しかけた。
ショボンがバイクに興味を持っていたとは意外だった。
確か1回も僕とドクオには話してないと思う。 この2人がバイク談義に花を咲かせるとは、想像しなかったことだ。
僕は何となく一人ぼっちになったような気がして、
黒のデスクの上にあったバタフライナイフを手に取ってみたが、
とても使用する気にはなれず、デスクの上に戻した。
('A`)「おッそのナイフ! かっこいい!!」
するとドクオがそれに興味を示し、ライターと同じくポケットにしまった。
( ゚∀゚)「……よし、じゃちょっとした話でもすっか」
自らの鞄に何かを詰め込みながら、ジョルジュは話をする。
( ゚∀゚)「まずは、トリビアみてーな話だけどよ。 CPの由来はな……」
(´・ω・`)「City……Policeman……からだろ」
( ゚∀゚)「ご名答、町長のファーストネームの略語だな、"町の警官"。"景観"とも掛けてるとか」
ドクオはロープをバッグにしまい込みながら、その話をじっくり聞いていた。
- 56: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:00:23.34 ID:pIvl3DWs0
- ( ゚∀゚)「それとな……」
鞄の取り出し口の紐をきちっと締めながらジョルジュはにたりと笑った。
まるで悪戯をする直前のようだ。
( ゚∀゚)「驚けよ、ここが出来たのはな、20年以上前なんだぜ」
(;^ω^)「そんな前からかお!?」
(´・ω・`)「……ひぐらしが急成長を遂げた時期か」
('A`)「20年……とんでもねー執念だな……」
( ゚∀゚)「当然、カウントダウンの計画も20年前からな……」
20年も前から計画されていただなんて。
しかし、そこまで時間を掛けるような計画なのだろうか……。
見えない触手に20年も前から絡め取られていたヴィップが
"綺麗な街"だなんて、皮肉なものだと思う。
- 59: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:04:12.31 ID:pIvl3DWs0
- ジョルジュは今までついていたバットを壁に立てかけると、
代わりに手近にあった松葉杖を脇に挟んだ。
( ゚∀゚)「おい、ブーン」
( ^ω^)「お?」
( ゚∀゚)「そのバット、おめーにやるよ」
僕は立てかけてあるその金属バットを手に取った。
確かに、松葉杖を手に入れた今のジョルジュには必要ないものかもしれないけど
どうして僕に?
( ^ω^)「何で僕にくれるんだお?」
( ゚∀゚)「ん? おめーが一番弱そうだからw」
(;^ω^)「…………」
( ゚∀゚)「冗談冗談! おめーにゃ期待してるってこと!!」
あっけらかんとした口調だ。悲しいことだが、それは否定出来そうで出来ない現実だった。
道具をしこたまポケットに詰めてるドクオと、今の僕では歯が立たない気がする。
- 61: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:07:40.39 ID:pIvl3DWs0
- ジョルジュのくれたバットを力強く握ってみる。
グリップの黒テープには粘着感がない。よくよく観察すると、新しく張り直されてるようだ。
ヘッドを見る分には相当年季が入っているようで、ジョルジュは野球少年だったのかな、と推察した。
「愛用バット」ということはすぐに分かった。
そんな大事なものを僕に渡してくれたのが、信頼されてるみたいで嬉しい。
もう一度部屋内を見渡した。
小型ドリル、ハンマー、杭。殺傷力の高そうな物は沢山あるが
やはり、使いこなせる自信もなければ使う自信もない。
このバットが一番、自分に合ってると思う。
( ゚∀゚)「無くっても歩けるが……やっぱ松葉杖ってのぁ便利だな」
試し歩きのように何度か体を動かしながら、満足そうにジョルジュは頷いた。
( ゚∀゚)「……よし、じゃ行くか」
その言葉に賛同するように僕達は外に出た。
途中何度もジョルジュの歩行を助けようと思ったが、
何故だろう、それを無理に遮らせるような視線をジョルジュが送っていたため、
僕達は全く動かなかった。動けなかった。
- 62: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:10:26.45 ID:pIvl3DWs0
- ( ゚∀゚)「……よし」
それだけ言うと、ジョルジュは1人運転席に乗り込みエンジンを掛けた。
置いてかれては堪らない、とばかりに僕達は慌てて荷台の上へ行き
座り込んだ。
無事乗り込んでホっと一息ついたと同時に、軽トラは発進した。
やはりジョルジュは気迫めいた何かを持ってる。 そう感じてしまう。
彼の瞳の奥にはまるで涅槃の炎のような
確固たる"もの"があったような気がしてならない。
いや。それだけジョルジュも本気ということだろう。
むしろこの状況であっても、未だそんなことを考えている僕こそ問題だ。
何度も何度も自分に言い聞かせたはずなのに、
「もうやるしかない」って。
"真剣"をもう一度取り出さなければならない。
( ^ω^)「…………」
大きく息を吐いて、肩の力を抜いて目も優しく"閉ざされて"みる。
精神を落ち着かせてみて、 思い出すのはカウントダウンの異常性。
ふつふつと沸き起こる苦さをじっと噛み締めて
これからの事態に備えようと心に語りかける。
「死ぬかもしれない。でも、やり遂げるしかないんだ。
明日はまだ誰も知らない。どうなるかは、全て自分自身なのだ」と。
- 65: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:13:44.87 ID:pIvl3DWs0
- 語り終わると同時に、震えが体に生じた。
武者震いという奴か。 次に目を開けて、視線を定まらせないよう注意してから
もう一度息を、今度は閉じた歯の隙間から細長く出すようなイメージで吐き出した。
( ^ω^)「……ふぅ」
息を吐き終え、体に少しずつ力を加えていく。 すると視界に変わった行動をするドクオが映った。
右掌を握って、軽く蠢かせていた。 そして微かに聞こえる「カラカラ」という硬質音。
何かを持っているようだ。
(´・ω・`)「ドクオ、何持ってんだい?」
('A`)「え……ああ、お守り代わりによ」
そう言うとドクオはパッと握った掌を開き、荷台の上に何かを放った。
白い、小さな何かがカン――、カン――、と数度跳ねてから、
コロコロと荷台の床を転がり始めた。
それは、サイコロだった。小さな、麻雀用に使うようなサイズだ。
3個、それはあった。
( ^ω^)「サイコロかお……」
('A`)「おちゃー、4つ持ってきたはずなのにな。1個どっかいっちまったか」
- 66: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:17:21.01 ID:pIvl3DWs0
- ショボンは3つのサイコロを覗き込み、一笑いした。
(´・ω・`)「ははは、6の目じゃあないか。"ツキ"があるね」
そのサイコロを取りながら、嬉しそうに頷くと
ショボンはドクオへ振り向いた。
(´・ω・`)「だけど、どうしてサイコロなんかを?」
('A`)「ん、ああ……」
ドクオは一呼吸を置く。
('A`)「賽は投げられた、て言葉あっだろ? なんつうか、その言葉にハマってるっつうかさ。
とにかく、俺にとっちゃぁ勇気の出る言葉なんだ……」
ウン、と頷いてからショボンも賽を投げた。
ドクオとは違い、多少丁寧に。
(´・ω・`)「……ほう、シゴロだ。 ははは、ドクオよりツイてるよ」
(#'A`)「なにおうっ!?」
( ^ω^)「今度は僕もやるお!」
バットを床に置いてから、サっとサイコロを引っ手繰ると、すぐに下へ軽く落とした。
何回か危なっかしくバウンドしながらも、サイコロ達は動きを止めていく。
(´・ω・`)「……6ゾロかい? スゴいな」
- 68: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:20:43.10 ID:pIvl3DWs0
- ショボンの言うように、その3つのサイコロの目は全て6だった。
何だ何だ、景気がいいじゃないか。
('A`)「ショボン、何だよ俺らに隠れてこそこそ振ってんのかよ?」
(´・ω・`)「夜のバーボンでちょっとね……」
( ゚∀゚)「何だ何だおめぇら!! チンチロとBJなら後から入れろよ!!」
威勢のいいジョルジュの声が飛んできた。
その元気な様を見て僕は少しほっとした。
(´・ω・`)「勿論さ。うちじゃあピンゾロは6倍づけ、6ゾロは4倍づけ……」
('A`)「何でえ、チンチロかよ。おやじの遊びじゃねえか」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
そんな会話を横で聞きつつも、僕は今走っている通路を観察した。
ここ一帯は扉もなければ曲がり道も、分かれ道もない。
延々と続く一本道のようだ。
( ゚∀゚)「おうブーン。ここらはフェイスレスロードっつってな。のっぺら道なんだよ」
( ^ω^)「のっぺら道……不気味だお」
( ゚∀゚)「ハハハ! でも、もうちっとで十字路だぜ。
その分かれ道の先全てもまたのっぺりしてんだぜ! ハハ、自分の車でドライブしてーぜ!」
- 69: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:24:00.75 ID:pIvl3DWs0
- すると、ジョルジュの言う通り十字路が見えてきた。
後少し走れば通過するだろう。
それにしても、CPの構成員が1人も見当たらない。僕達以外、無人のようだ。
そこがまた、不気味であった。
( ゚∀゚)「このまま正面突っ切るとバルコニーエリアに直で行けるな。
右左も多少遠回りだが、そのまま奥の階段下れば行け……ッ?!!」
急にジョルジュは急停車した。
荷台に居たため、シートベルトすらしていない僕達は一瞬、振り下ろされるかと思うほど揺れた。
停車した位置は、ちょうど十字路の中心だった。
(;'A`)「ちょっ! 何だよいきなり」
(´・ω・`)「……?」
(;゚∀゚)「さっさと降りろ!!」
ジョルジュが強い口調でピシャリと言い放つ。
突如緊迫とした空気が辺りを包んだ。
- 71: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:27:01.51 ID:pIvl3DWs0
- 何が何だか分からないまま、僕達3人は荷台から飛び降りた。
同じくジョルジュも、扉を開けて、よろよろと松葉杖を手に持ちながら降りる。
その顔には笑いが一粒も存在せず、険しい表情が張り付いていた。
(;゚∀゚)「よし……お前ら、正面1人、右1人、左1人って感じで、これからは行く。単独行動だ。
時間が無ぇしな……」
(;^ω^)「(これからは……!)」
ジョルジュは言う。
これからは単独行動……。
予想していたことだが、やはり現実となってしまった。
ドクオとショボンも反論はしなかった。
元々頭の中に、その考えがあったのだろう。
- 72: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:31:32.28 ID:pIvl3DWs0
- 正面に1人。一番近かった僕がそこへ行く。
右への道に1人。ショボンが独断でそこへ行く。
左への道に1人。ドクオが口を尖らせながらそこへ行く。
(;゚∀゚)「よし……いいな? そこまま突っ切れよ、お前らァ……」
それだけ言葉を残すと、杖をついてジョルジュは今まで走っていた道の方向へ行く。
何故かジョルジュが乗り捨てた軽トラを挟み、
4方にメンバーは分散された。
(;^ω^)「ちょっと待つおジョルジュ! 何で戻るんだお!?」
(;゚∀゚)「やること思い出してな……」
振り向くことなく、ジョルジュは答えた。
(;゚∀゚)「ちょっち、遠回りするんだぜ」
(´・ω・`)「………」
(;'A`)「み、みんなァ!!」
急に叫んだかと思うと、ドクオは親指を立てた。
(;'A`)b「グ……グッドラックゥ!! やるっきゃねーよ!!」
- 74: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:33:54.44 ID:pIvl3DWs0
- 僕も、皆に言う。
いや、皆も言う。
(;^ω^)b「ア、アイルビーバック!!」
(´・ω・`)b「……ゲットバック」
( ゚∀゚)b「……アデュー……なんつってな」
………。
親指をだらりと下げる。
視線も自然と下になりそうだが、堪えて中央を見据えた。
これからは、1人。
すると、奇妙な電子音。ピピピピ……という単純な音が突然鳴り響いた。
どうやら、今まで乗っていた軽トラからのようだ。
ジョルジュが必死に道へ戻りながら、叫ぶ。
(;゚∀゚)「とうとうか、お前ら逃げろッ!! 流石の野郎がッ……」
- 75: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:37:48.46 ID:pIvl3DWs0
- (;^ω^)「 ! 」
急いでこの先続く道を振り向いた。
ジョルジュの言葉に危険なものを感じ取り、
反射的に逃げるように道の奥へ向かって走り出した。
ジョルジュが言い切らないうちに。
後方から何故か、凄まじい音が響き渡った。
そっと、振り向いた。
軽トラが
爆発していた。
- 78: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:40:36.01 ID:pIvl3DWs0
- (;^ω^)「うッうわああああああああああああああ!!!!」
必死で逃げるように駆けた。
幸いなことか、爆発自体は大したものではなかったが
その衝撃と轟音は、心臓を体外まで跳ね上がるかと思うほどのものだった。
とにかく、がたつく膝を無理に走らせ、
バットを落としそうな勢いで逃げた。
今でも心臓は恐怖で怯えていた。鼓動が大きくうねっている。
喉奥で息が詰まりそうだ。
鼓膜が先程の爆音で破けそうになり、心配だった。
もう一度、振り返った。
恐ろしい黒煙が十字路を支配していた。
もはやドクオ達の姿など、一生見えないだろうと、勝手に決め付けてしまいそうなくらい。
轟音を放ち、炎上していく車体。
ゾっとするような光景だった。
「死」を脳裏に焼き付けるほどの光景。
「お前達の運命は、こうなるんだ」とCPの人間がおどけながら言い放ったのような。
拉げたドアが溶けるように姿を蠢かせている。
もう見たくない。 バットを強く握りしめて、僕は再び、
バルコニーエリアへ続く道を走り出した。
- 79: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/22(水) 21:42:19.11 ID:pIvl3DWs0
- ・・・ ・・・・・
ザザザ……――……ザ……ザザッ……―――
――「つまり、兄者は楽しむというわけか? この状況を?」
「ああ、そうだ。もう一度ショボンと手合わせしたいしな。それに……」
――「反乱する気概に、敬意を表す……というわけか?」
「ふむ……それもあるが、私が遊びたい、という気持ちのが遥かに強いな」
――「この状況で、遊ぶ……か」
「うむ。もう滅多に無いことだからな。狩猟など久しぶりじゃないか……」
ザ……ザザッ……―― ザ……
――「だから兵を動員しなかったのか」
「カウントダウンで、ただでさえ少ない兵だしな。元々使う気も無いが。
……このゲームにはフーさんも乗ってくれた。多少の私兵は使うつもりらしいが……」
――「あちらは4人。こちらは……」
「本来なら我々とアレとフーさんで、対等に殺りたかったがな、しょうがない。
………しかし、存分に楽しませてもらうぞ。 あの4人には、な……」
ザ……ザザッ……ザ……――― (第15話終)
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