( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです
- 3: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 19:54:15.37 ID:/4uAvQe30
- 第17話
(´・ω・`)「……どれほど歩いたのか……分からないな」
目を正面に向ければ、奥の闇まで続く長々とした1本道のみ映る。
後ろへ視線を向けても、同じようなものだった。
左右の壁にだって、土気色以外に特筆すべきものと言えば
間隔的に在る電球程度しかない。
この奥へ進めば階段がある……と
ジョルジュは言っていたが、段々不安になってきた。
別に彼を疑うわけではないが、
こうも道が続くと……生理的な不安という奴だろうか、
そいつが心の中に生まれてしまう。
(´・ω・`)「みんな、大丈夫かな……」
思わず呟いてしまう。
ブーンは、確か1番近い道を進んだ。
ドクオは、僕とは反対方向の道を。
ジョルジュは……元々走っていた道を……。
……ジョルジュ、何故だ……?
- 4: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 19:56:31.57 ID:/4uAvQe30
- 何故、逆走するんだ?
「遠回りする」と言っていたけど、嘘だろう?
あの第4ゴミ集積所のある方面の道に、目的地に到達する道が繋がってるとは……。
……あるかもしれない。でも、僕達が通らなかったということは、よほど危険な道なのだろう。
それを、負傷したジョルジュが単身……?
長いフェイスレスロードを越えて、その危険な道に行くとは、
いくらなんでも無謀だ。
おかしい。
(´・ω・`)「……!?」
気が付けば、ようやく見えた。
奈落へと続きそうな。
今までとは違う、アスファルトで作られた、下への階段が。
- 6: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 19:58:15.41 ID:/4uAvQe30
- 音を立てないよう足に注意を向けながら、
階段を少しずつ下りていく。
足を動かしながらも、考えるのはやはりジョルジュについてだった。
ジョルジュはどこへ向かっていったのか?
倉庫室に取り物をするとはあまり考えにくい。
すると
ふと、
とある箇所を思い出した。
……第4ゴミ集積所の、向かいの階段。
あそこはジョルジュの言葉によると危険な場所らしい。
おそらく、構成員達がその奥に居るのだろう。
……嫌な予感がする。
……あの階段へ、まさか向かったのか?
だとすると、だとすると……!
(;´・ω・`)「……敵兵の、足止め……?」
考えられないことではない。
負傷したジョルジュが、「自分の今出来ること」を考えたのなら……
無理にでも、敵を足止めさせるのではないだろうか
- 8: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:00:39.33 ID:/4uAvQe30
- (;´・ω・`)「…………」
ジョルジュの出来る、足止めの方法。
考えたくもない手段が頭に浮かんでしまう。
……いや、もう、考えないようにしよう。
僕達は1つの目的へ向かい走っているところなのだから。。。
歩は休めず、淡々と静かに階段を下る。
踊り場に辿り着いた。
立ち止まり、下へと続く階段を眺める。
その奥には更に廊下が存在している。
その廊下は今までとは違い、多少整備されているようだった。
とはいっても、土気色の壁と地面はそのままだが……。
この先を歩き続ければ、バルコニーエリアに辿り着くそうだ。
そこから第8通路に行き、奥の階段を下り、
ホール・ロビーへ突入し、黒のエレベーターに乗り込み
町長の屋敷に侵入する。
(´・ω・`)「……道はまだまだ長いな……」
再び歩き出す。
- 9: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:03:40.30 ID:/4uAvQe30
- (´・ω・`)「……む?」
階段を下りきり、廊下に差し掛かったところで気付く。
この廊下の脇には今までと違い、扉らしきものがいくつか存在していた。
それだけではない。
正面へ続くこの廊下には、分かれ道もあった。
(´・ω・`)「……ジョルジュも詳しく教えてくれればよかったのに……」
しょうもない愚痴を思わず言ってしまう。
しかし、この廊下を正面に突っ切ればドクオのいる方向に。
左手に曲がれば、ブーンの行くバルコニー・エリアの方角に。
迷路ではないのだから、単純に考えて左の曲がり道へ行けばいい。
そう判断し、廊下を進み続ける。
- 22: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:06:45.73 ID:/4uAvQe30
- (´・ω・`)「………」
この廊下には扉がいくつもある。
CPの構成員が居ても、決して不思議ではない。
気配を出来る限り抑え、静かに歩む。
そろそろと歩いていくと、
少し進んだ先に左への分かれ道があるのに気が付いた。
そこを進もう。と決め込んだ。
(;´・ω・`)「……!」
唐突に足が止まってしまう。
気付いてしまったからだ。
その左手の分かれ道の奥から、
人の気配がすることを。
- 28: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:08:34.50 ID:/4uAvQe30
- ・・・ ・・・・
('A`;)「………」
目線は【第2酒蔵】のプレートに張り付いたままだ。
いや、そこから動かすことなど出来なかった。
今、聞こえた「ザリ」という足音。
それは決して空耳などではなかった。
生々しい砂の擦れ合う音は、確かに聞こえたのだ。
動かないと。逃げないと。
この足音を出した人間が、"味方"である可能性は限りなく少ないのだ。
まず、敵だ……!
動かないと……! 背中を見せ続けるだなんて駄目だ……!
- 31: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:10:53.59 ID:/4uAvQe30
- 喉を鳴らし、空気を飲み込む。
身体を動かせ、と心の中で必死に命令し続けた。
何でだよ……
何で動かないんだよ! 死ぬかもしれないのに!!!
後ろから突然声を掛けられた。
( )「振り向け……不意"撃ち"のような真似も、背を向けた者を撃つ真似もしたくはない」
余裕を持ちつつも、何処か苛立ちの篭った声色だ。
その人間の正体は声で判断がついた。
だとしても……動くことは不可能だった。
その正体の"恐ろしさ"は知っていた。
歯が震えないのが不思議なほど、心は怯えている。
発言からいって間違いなくその"人間"は銃を持っている。
死への恐怖が、身体を動かさせない。
酒蔵の扉の前、俺は立ち尽くしていた…………。
- 33: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:13:01.51 ID:/4uAvQe30
- ( )「振り向け……と言ってるのだ。 後頭部を撃ち抜けられたいのか?」
('A`;)「ヒッ……」
( )「もういい」
「ジャキッ」という音が後ろから聞こえた。
その人間は撃鉄に指を掛けたのだ。
―――撃たれる……!!
(;'A`)「うッ……ぅうわあああああああああああ!!!」
とうとう本能が恐怖に反応し、身体が動いた。
思い切り叫びながら、奥の廊下へとがむしゃらに逃げる。
- 36: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:15:40.41 ID:/4uAvQe30
- ( )「ふん」
そいつが鼻を鳴らしたかと思えば、
突然心臓が潰れるかと思うほどの爆音……
銃声が、轟いた。
真後ろで弾けるような音がしたかと思うと
瞬間、自分の近くの足場から砂の飛沫や小石群が飛び散った。
(;'A`)「ひィィ!!!」
恐怖心が身体を更に加速させる。
目の前に下への階段が広がった。
それを走り下りる、とにかく必死で走り下りた。
途中何度もつまづき、転げそうになる。
それでもひたすら走り続け、
とうとう踊り場に到着し
ターンしてから同じように全速力で下った。
最後の方になると
何段か飛ばして動いたため、
バランスをいくらか崩しそうになったが、
とうとう、階段を下りきった。
- 38: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:18:12.01 ID:/4uAvQe30
- (;'A`)「はぁっはぁ!!」
敵が階段を下りきらない内に、何処かへ隠れてしまいたい――
と必死で、目についた扉に一目散で向かうと
中に入り、
少しホっとする。
(;'A`)「……いや、まだホっと出来ねえ」
呟き、部屋内を見渡す。
巨大な棚がいくつも存在し、その棚には
木箱やダンボールが、隙間をほとんど作らずに置かれてあった。
樽は無造作に置かれていて、奥には上のスペースへの階段があり、
その「上」もまた、棚と樽があるようだ。
樽のラベル、ダンボールと木箱に何重にも貼られたシールの表示を見る限り、
ここは酒蔵で間違いないようだ。
(;'A`)「……え? 酒蔵……外の階段下りたはずじゃぁ……」
後ろの、自分が入ってきた扉を眺める。
すると合点が行ったような気がした。
この扉は、先程の扉と違いチープな木目調のものであった。 そして、錠はない。
おそらく、この扉は【第2酒蔵】の裏口だ。
- 39: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:20:40.64 ID:/4uAvQe30
- ……だとすると、懸念が残る。
錠が無い、ということは簡単に銃を持った"奴"がここから入ってくるということ。
更に、上にも玄関の形で扉は在る。
……敵が何処から入ってくるのかが分からない―――
―――しかし、逆に出し抜ければ、チャンスが巡る……。
そう判断し、外の物音に耳を澄ませる。
わずかだが、あの階段を下りる無機質な足音のような物が聞こえた。
「よし」、と一瞬で判断し
素早くこの酒蔵内の短い階段を上った。
アルミ製の簡素なものだったため、安っぽい金属音が出そうになったが
そこは少し注意した。
上りきると、辺りを見渡す。
ここも基本的に、「下」と同じようなものだった。
そして玄関を発見すると急いで駆け寄った。
ここは"【第2酒蔵】のプレート"の裏側だろう。
そんなことを考え、ドアを見て
俺は、驚いた。
錠がイカれてやがる。
- 43: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:23:31.90 ID:/4uAvQe30
- 何故だ、と錠とドアノブ周りを観察し、ようやく真相を理解した。
"奴"は、どういう原理か知らないが銃弾を巧くブチ込んで扉を開かせないようにしたのだ。
(;'A`)「くゥ……! くそっ……!」
取っ手をガチャガチャと音を言わせ何度も回すが、開く気配は全く無かった。
止まらない冷や汗を垂らし、周りに散らせ
早くなる鼓動の音を聞きながら
悪態をつく。
(;'A`)「くそぉっ! このまんまじゃ……袋小路じゃねぇか……!!」
今 が絶望的に悪い状況というのは、嫌でも分かる。
俺は……この罠にまんまと引っ掛かったようなものだ。
あの裏口から"奴"が入ってきたら、俺はもう……逃げられない!
(;'A`)「開けよっ……開けェ!!」
しかし、いくら取っ手を回しても、やはり……開かなかった。
ちくしょう、と諦めて
物音のした裏口の方を見た瞬間、背筋が凍った。
"奴"……流石弟者が、この酒蔵に拳銃を片手にとうとう、
侵入したからだ。
- 51: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:42:44.49 ID:/4uAvQe30
- 思わず反射的にサっと身を屈め、棚の後ろに隠れる。
(;'A`)「(もう……おしまいだ……)」
絶望的だ。
もう、俺は罠に掛かったネズミのように、いたぶり殺されるんだ……!
身体が震えていく。どうしようもない。
俺は終わりなのか……。
(´<_` )「多少は遊んでやろうと思ったが、もう面倒臭いな」
弟者の声が聞こえる。一人言ではなく、俺への言葉だ。
(´<_` )「え? そうだろう……愚かなジョルジュの連れなんぞをいたぶっても、つまらんわ」
('A`)「(……愚か、だ……?)」
(´<_` )「靴の発信機すら気付かず、地下に逃げ込んだ愚か者さ! 奴はな! ハハハ!」
……。 怒りがふつふつと湧き上がってきた。
それと同時に、1つの疑問。
俺、何考えてたんだ?
- 56: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:44:31.10 ID:/4uAvQe30
- なんで……この状況下で、「もう終わり」と考えてたんだ?
なんで……なんで、「逃げの一手」ばかりなんだ?
……おかしいよなァ。何で……だよ。
俺言っただろ!? ブーン達に!!
" 「戦う」って!!! "
で……俺は、何してる?
逃げてる……逃げることしか、していない……。考えてない。。。
クズだ、どうしようもない……。
言ったことすら守らず、友を裏切って、無様に死ぬ……
このままじゃ!!
- 57: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:46:04.69 ID:/4uAvQe30
- (;'A`)「(俺だって……! 俺だって……!)」
両手を握り拳にして、心の中で幾度も唱える。
痙攣していた歯を無理に噛んで、精神統一に心がける。
耳を立て、弟者の現在の行動を把握しようとする。
どうやら今は、丹念に下を調べ回っているらしい。
言葉は発していないが、また少し経てば再び話し出すだろう。
拳銃はこの酒蔵内では今のところ撃っていない。
ただ、撃鉄を指に掛けたり離したりと、"遊んでいる"音は先程から何回も聞こえていた。
この様子では、まだ時間は残されている。
俺の立ち居地から弟者の居る階段下は見えるが、奴からは
ここは見えないはずだ。俺が立って動いたりでもしない限り。
そう、まだチャンスはある。
戦える。でもどうすればいい?
ずっと考えていた。どうすれば拳銃を持っている弟者に勝てるか、を。
そして思い出すのは仲間のことだった。
- 59: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:47:59.63 ID:/4uAvQe30
- ブーン、ショボン、ジョルジュ。
ジョルジュは、今日マンションのエントランスで会ったばかりだというのに
まるで昔のよしみのように接してくれた、こんな俺を。
そして、ジョルジュは……この計画のために、必死で走って
今だって、俺達のために自分の力を尽くしている。
ショボンは、いつだって俺をリードしてくれた。
あの夏祭りの夜だって、俺とブーンを助けるために、兄者と戦った。
今も、戦っているかもしれない。
ブーンは、この街の地下の真相を暴いただけじゃなく
離脱した俺を戻してくれた。こんな俺を、わざわざ。
今最もバルコニーエリアに近い位置に居る、一番危険かもしれないのに。
だから俺だって、俺だって……
やるべきことはしたい!! しなくちゃいけないんだ!!
だから、だから……。
(;A;)「……っ……ぅっ……!」
声を出さないように、しゃくりあげながら泣いた。
涙がたらたらと頬を通り、雫となって木面の床に一滴ずつ落ちていく。
後悔の涙だった。
そして、決意の涙でもあった。
- 62: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:49:30.92 ID:/4uAvQe30
- やってやる! やってやる!!
声は出さずに力強く叫んだ。
涙を拭き、吹っ切れた気分で
自分のバッグの中身を見る。
その中には倉庫室で詰めた"もの"が入っていた。
ポケットもまさぐり、同じく倉庫室で取ってきた"もの"を取り出す。
これらが……俺の、武器 か。
いや……使う勇気が無ければ武器にはならない。
勇気が、要る。
(;'A`)「(やってやる……やってやるさ……!)」
俺だって、かっこよくなりたい。
もう、ヘタレは嫌だ! 戦わないといけない……絶対に!
- 65: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:51:58.14 ID:/4uAvQe30
- 溢れる思いを心に満たしながら、思案をめぐらせる。
どうすれば、いい。
この道具達で。ロープ、ジッポ、ナイフで……。
何となく、潜入者っぽい道具を選んだのだった。
(;'A`)「(考えろ……考えろ……!)」
必死に頭を稼動させる。
どうにかしてこの局地を乗り越えなければならない。
弟者はまだ下を調べているが階段を上がり、ここに来るのはもう時間の問題だ。
何をすれば、
どうすれば―――
(;'A`)「ぁ……!」
思いがけず声が出てしまい、ヒヤリとしたが……
そうだ、思いついた というよりは、思い出した。
昔、子供の頃ブーン達にされたことを。
- 68: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:55:06.36 ID:/4uAvQe30
- だとしたら、急がないと―――
必要なものも、ある。探さないと……。
パっと天井を見上げる。
(;'A`)「(あった……)」
後は……後は、この近くにあれを、
声を出さず呟きながら、周りの木箱を凝視する。
そして……
(;'A`)「(見つけたッ……!)」
これで……これで、可能だ。
音を立てず静かに木箱から"それ"を取り出す。
これで……これで、可能ということは。
この作戦を今から……
実行するということ。
(;'A`)「(………うぅッ……)」
(;'A`)「(やってやる! 俺だって、みんなと一緒になりたいんだ!!)」
- 71: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:57:34.14 ID:/4uAvQe30
- (´<_` )「ならば上か……」
唐突に声が聞こえた。急がないと、
早くしなければ、と天井の梁を見上げる。
(;'A`)「(よし……)」
するりと手順を済ませたと同時に、軽い金属の軋む音が鳴り始めた。
とうとう、弟者は階段を上りだしたようだ。
(;'A`)「(ぅうっ!)」
ここで手に入れた道具の"1つ"を自分の目の前に放り投げる。
音を立てないように、"もう1つ"の道具をかける。
金属の軋みは鳴り止み、
次は僅かに木の軋みが生じる。
弟者はもう、すぐ近くに居る。
(;'A`)「(早くセットしないと!)」
慌てながら、"セット"を開始する。
この作業自体は楽なものだった。
- 72: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 20:59:31.57 ID:/4uAvQe30
- 上を見た。
オーケー。
前を見た。
オーケー。
後ろを見た。
オーケー。
自分自身を確かめた。
(;'A`)「(……オー、ケー……)」
セリフも、頭の中で何度も反復する。
足音が棚の裏から近づいてくる。
来る! 来る!!
影が、見えた。
それはユラりと揺れることなく、一定の進路で
こちらへ向かってくる。
- 75: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:04:11.87 ID:/4uAvQe30
- 弟者の姿が、現れた。
(´<_` )「おや。おや。おや……どうしたんだ? そのオモチャは……」
弟者は目の前の光景に、ぼそりと言う。リボルバーの銃口を俺へ向けながら。
(;'A`)「う、撃つんじゃねぇぞ!! 撃ったら……お前は焼け死ぬ!!」
(´<_` )「……焼け死ぬ、ねぇ」
弟者は気にも留めない、という様子だったが
撃つ気配は微塵もなかった。消え失せていた。
巨大な棚に挟まれた、
俺と弟者の間には白い布が幾重に重ねて敷いている。
更にその布にはアルコール度数の高い酒をかけておいた。
弟者はその白い布を躊躇い無く踏みつけながら、俺の近くへ寄ろうとする。
(;'A`)「それ以上来るんじゃねえ!! "これ"が目に入らねぇのか!?」
ロープを持った手をこれ見よがしに弟者に見せ付けた。
このロープは頭上の梁を通して、俺の後ろで、スピリタスのボトルを吊るして上げている。
そのスピリタスのボトルの落下位置近くに、火が点ったままのジッポライターを立てて置いておいた。
- 89: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:07:48.61 ID:/4uAvQe30
- もし、俺がこのロープを離せば、
スピリタスはライターの近くで飛び散り、更に、炎は拡散する。
そして、この酒蔵は火事となる!
それを理解しているようで、弟者はフゥ、と溜息をつくと
鼻をひくつかせた。
(´<_` )「こんな高級な酒を……置いておくとはな……」
(;'A`)「……あ?」
(´<_` )「ここはな、普段は奴隷の褒美の酒を置く所だ。
粗悪なジンやら……たまにトニックウォーターも一緒に渡したりしてな。
お前と同程度の人間達は……それを
よ〜く、涙を流しながら飲んでいたもんだ。 カス酒を、ははは……!」
(;'A`)「んだと……!?」
(´<_` )「やれやれ……。で? お前は何がしたいのだ?」
(;'A`)「……」
(´<_` )「何が目的だ? どう転ぼうがお前は死ぬ。窮地に立たされている。
俺が……"こんなクズのために傷を負いたくない"という考えを捨てれば、一瞬で終わるぞ、お前?」
弟者は撃鉄を引いた。
- 93: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:10:21.37 ID:/4uAvQe30
- (;'A`)「うッ……!」
(´<_` )「……無駄な脅し、か」
そう言うと弟者は、
次に人差し指を動かし、引き金を
引こうとした―――
――――今だ!!
俺は、自分の手に握られている、
ロープを……思い切り、
引いた!!!
(´<_`;)「なッ…!?」
スピリタスのボトルは、
梁を通って、そのまま……俺の前へ
弟者の頭上に目掛けて、 飛んでいった。
(;'A`)「(成功してくれええええええ!!!)」
- 94: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:13:46.16 ID:/4uAvQe30
- (´<_`;)「くッ!! 貴様……!」
俺から目を離した弟者が再び目を俺へ向け、
銃弾を放とうとしたが
その瞬間に、
鈍い音と、 ガラスの弾け散る つんざく音が鳴り響いた。
弟者の頭に、見事ボトルは直撃した。
顔にガラスの切り傷をつけ、酒を浴びながら、弟者は呻く。
(;'A`)「やった!!」
俺は駆けた、弟者の方へ。
棚と棚の間の狭い空間を。
(´<_`#)「おのれがァッ!!」
弟者は拳銃を握り直した。
顔を歪ませ、俺を睨む。
('A`)「ライターはフェイクだよッ!!」
決めセリフとばかりに弟者に言いつけた。
- 97: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:17:07.03 ID:/4uAvQe30
- (´<_`#)「貴様……」
弟者の近くに詰め寄った、
そして……
(;'A`)「うらぁ!!」
つけておいた加速を最大限利用して、
弟者の乗っている白い布を、
片足の靴底に力を思い切り乗せながら
……後ろへ、引いた!
(´<_`;)「なッにぃ!?」
弟者の身体のバランスが崩れ、後ろへ倒れかける。
更に弟者の近くへ寄り
作っておいた拳を、バランスの崩れたその身体、胸へ、浴びせた。
弟者は、銃弾を発射することなく
(´<_`;)「ぐッ……あ、あに……」
後頭部から地面に、
叩きつけられた。
派手な音を立てて、高そうな黒スーツが汚れながら、
弟者は、気絶した。
- 103: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:20:44.68 ID:/4uAvQe30
- (;'A`)「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
肩を揺らしながら、必死に呼吸をした。
気絶した弟者の姿を見下ろしながら、
ボトルのガラス屑を踏まないように気をつけながら。
そして、
(;'A`)「や、やったああぁあああ!!!」
大きく叫んだ。
拳を作りあげ、天井を見上げながら、
歓喜で声を震わせた。
大成功だった。
この作戦は……何もかもが、上手くいった。
見事に弟者にスピリタスを浴びせたので、
結果的にリボルバーを防ぐことも出来た。
怪我を負うこともなく……
俺は……成し遂げた。成し遂げたんだ!!
- 106: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:24:27.93 ID:/4uAvQe30
- へたりと力なく座り込んで、
来る喜びを堪能した。
俺もやれば出来る、
出来る奴に成れた。
あの憎い弟者を……やっつけた。
('A`)「♪〜〜。サイコロの目がよかったんだな……」
('A`)「そうだ、ジッポを元に戻さなきゃな……」
思い出したので、ジッポのある後ろの方へ
振り向いて、
俺は、再び肝を凍らせた。
(;'A`)「ッ!?」
ジッポライターは
倒れて、
周辺に炎を纏わせていた。
- 109: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:27:43.09 ID:/4uAvQe30
- (;'A`)「に、逃げねぇと……」
パっと跳ぶように立ち上がり
階段の方へ駆けた。
しかし、立ち止まり
俺は、弟者を見た。
(;'A`)「…………」
弟者は頭から強烈なアルコール度数の「スピリタス」を被った。
火が少しでも近づけば、いや、酒が少しでも気化すれば
間違いなく弟者は
死ぬだろう。
(;'A`)「………」
このまま放っておけば、俺は……助かる。
- 110: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:30:00.21 ID:/4uAvQe30
- そう考えた瞬間、
心の中にドス黒い自虐と、
それに勝る強い虚無感が出現した。
そして、深い悲しみ。
自分への、深い、深い悲しみが、同じく現れた。
これは……?
泣きたくなるような悲しみだった。
全てを失ってしまいそうな、
自分を掴めずに、
そのまま……奈落へ堕ちてしまいそうな。
現れた地割れにそのまま飲み込まれていっていく。
差し出された手を掴めず
転落してしまう。
(;'A`)「な……? う……」
何が何だか分からないが、俺は……それを振り切るように、
弟者を助けて、
ここを脱出しようと決意した。 弟者の方へ向かった。
- 113: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:34:06.25 ID:/4uAvQe30
- (;'A`)「うわぁ!!」
階段を下りる際に、弟者を背負っていたせいでバランスが崩れて
思い切り落ちてしまいそうだったが、
足がうまく地面に先に着き、着地に成功した。
(;'A`)「ふぅ……」
裏口まで歩きだす。
弟者の身体は想像以上に軽かったため
こじんまりした自分の身体でも背負うことが出来た。
でも、疲れるけど……。
裏口へ向かう途中、ずっと考え事をする。
何故、弟者を
助けなければいけない、と思ったのか について。
- 114: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:36:37.20 ID:/4uAvQe30
- "ブーンやショボンなら、人を見捨てたりはしないから"
……確かにそうかもしれない、
でも、違う。
それもあるんだけど、本質的なことではない。
もっと……もっと、別の理由だ。
………。
あぁ、そうだ。
('A`)「そうだ、思い出した……」
裏口を開けて、とうとう、思い出した。
"弟者は、俺を、助けてくれた"
- 117: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:39:27.48 ID:/4uAvQe30
- ('A`)「……そうだった」
弟者の身体を壁に立てかけ、ぼそりと呟いた。
"弟者は、俺が死ぬところを、助けてくれた"
その瞬間、
突然、右手の廊下の方からまたも銃声が鳴り
俺の後ろを、何かがかすめていった雰囲気が走った。
('A`)「…………ッ!」
俺は、その銃声の主の方へ振り返り、
歩を進めた。正体を見た。
恐怖はもはや、無かった。
"弟者は俺が死ぬところを、兄者と共に助けてくれた。
俺が……殺されかけたところを……救ってくれた。"
- 118: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:41:33.30 ID:/4uAvQe30
- "誰に、殺されかけたって?"
(#'A`)「てめぇだよッ……クソじじぃい!!!」
闇へ向け、叫ぶ。
応えるように、1つの影がゆらりと動き、
俺の前へ、
姿を現した。
( ,'3 )「ひひひヒぃ……!」
バルケン、俺を殺そうとした人間が再び
俺を襲ってきた。
猟銃を、手にして。
- 120: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:44:25.77 ID:/4uAvQe30
- (#'A`)「……!」
恐怖を、闘志と怒りが塗り替えた。
迷いはない。こいつをやる!!
( 。゚3 )「命尽き果てるまでぇェェェェッ!!」
(#'A`)「ジジィぃいいいいいい!!!!!」
激昂し 駆けた。
バルケンは猟銃を構えた。
灯りの充分でない、暗い通路の一部にて、俺は覚醒した。
- 123: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:47:21.13 ID:/4uAvQe30
- ・・・ ・・・・
(;^ω^)「ふぅ……」
全然先が見えない。
巨大な通路を歩いても、歩いても。
きりが無いようだ。
この道をずっと進めばバルコニー・エリアに辿り着く。
そのため、途中途中で遭遇する分かれ道には
まるで寄ることなく突き進んできた。
(;^ω^)「みんな大丈夫かお……」
休んでも、歩いても、走っても
考えることは、そればかりであった。
- 125: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/29(水) 21:51:05.12 ID:/4uAvQe30
- でも、そんなことを考えていても埒はあかない。
次、再び会うためにも
僕は、突き進むしかない。
( ^ω^)「……だお」
ジョルジュのバットを握り締め、
僕は再び、歩を進めた。
ただただ、見えない闇に向かって。(第17話終)
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