新ジャンル:FPSのBOT

38: :2007/06/02(土) 20:47:32.97 ID:f+5S+QDT0
僕は二人の後を追いかける。
でも……悪い癖だと自分でも思う。
内気だとか、そういうレベルの話じゃない。肝心な時に、体が動かない。
昔からそうだった。ゲームの中でも、咄嗟に求められた行動が出来ないのだ。
だから僕は芋虫スナイパーをやっている。これなら楽だ。だから。
僕は、ウォーカーを前にして立ちすくんでしまった。

('A`)「何やってんだBoon!」
(; ^ω^)「あう、あう」
(´・ω・`)「まずい」

Syobonがグレネードを放る。青白い閃光と共にウォーカーがガクン、と姿勢を落とす。
二本目の信管を作動させるSyobonの安堵の声が聞こえた。

(´・ω・`)「効いたようだ」
ξ゚听)ξ『EMP?ハッ、援護兵如きが小癪な真似してくれるじゃない』

ウォーカーの中の奴は取り乱す様子もなく、降りてくる気配もない。
時間の問題だ。僕が二本目のEMPが切れる前に爆破しないと結局、僕達はガトリングでミンチにされる。

('A`)「Boon!」
(; ^ω^)「あう、あう」



39: :2007/06/02(土) 20:58:28.67 ID:f+5S+QDT0
僕には出来ない。
ウォーカーが一瞬だけ挙動を取り戻し、珍しく焦った様子のSyobonが二本目を投げる。



(リ_゚ -゚ノリ『腰抜けだな』
('A`)「!」
(; ^ω^)「お、お前は!」

分隊長のDokuoをリスポンポイントにして降下ポッドが誰かが降って来る。
四散するポッドの破片、舞い上がる白煙。
その中から現れた女性的なシルエットに、僕は自分を取り戻す。

(; ^ω^)「なめるんじゃねーお!」

まだ動かないウォーカー目掛けて走る。
脚部に爆薬をしこたま取り付け、一目散に離れる。

ξ゚听)ξ『これは……まさk』
(; ^ω^)「氏ね」

いつかと同じようにリモコンのスイッチを押し込む。

(リ_゚ -゚ノリ『上出来だ』



53: :2007/06/02(土) 21:56:12.35 ID:f+5S+QDT0
耳を劈く爆音が重なり、画面を揺らす。
爆発に飲み込まれたウォーカーが斜めに傾き、煽りを食らった僕も少し吹き飛んで建物にぶつかる。
だけど、やった。

('A`)「よし、これで……アッー!?」

勝利を確信したDokuoが土煙の中に消える。
悪寒に振り返る僕の目に、火花を散らすウォーカーのガトリング砲が見えた。

(; ^ω^)「そんな」
ξ゚听)ξ『ハッ!このガキが!偵察兵の分際で!』

光学迷彩だけじゃない。このウォーカーは装甲まで強化されているのか、辛うじて爆発を生き延びたのだ。

(´・ω・`)「無茶苦茶だね」

呟いたSyobonがランチャーの直撃を受けて爆散する。
一歩進む鉄の化け物が僕に照準を向け-------

ξ゚听)ξ『この……ッ!』
(リ_゚ -゚ノリ『させんよ』

NULLといういつかの升野郎が放った対車両ライフルに貫かれ、火を噴いた。



54: :2007/06/02(土) 21:58:35.10 ID:f+5S+QDT0

ウォーカーが歪んだ悲鳴を上げながら転倒する。
さすがにもう立ち上がってくるなんて事はなく、炎上して四散した。

( ^ω^)「助かったお」
(リ_゚ -゚ノリ『何、礼には及ばん。アレは私の標的でもあった』

升野郎は例のカサカサとした動きで僕の前に寄って来る。
前は偵察兵の装備だったのに、今回は工兵装備のようだ。
しかし、顔やら身体やらは何というか、曖昧なデザインで何となく女性のようだ、としか分からない。

( ^ω^)「お前は何なんだお」
(リ_゚ -゚ノリ『君に分かるように説明するのは難しい』
( ^ω^)「馬鹿にすんなお。お前が只の升野郎じゃないって事ぐらい分かるお」
(リ_゚ -゚ノリ『それは失礼をした』

何だか全然会話をしている気がしない。
僕は苛立ちながらSyobonやDokuoがリスポンするのを待つが、いつまで経っても彼らは戻ってこない。
それどころかさっきまで戦闘を続けていたはずの敵軍や友軍の姿もレーダーから消えうせている。

(; ^ω^)「何で……」
(リ_゚ -゚ノリ『我々のトライアルに邪魔だからだ』



55: :2007/06/02(土) 21:59:54.49 ID:f+5S+QDT0
彼女は自分を自律戦闘型の統合システムなのだと言った。
今は未完成で、将来的には小型の戦闘兵器に搭載され、実際の戦争に投入される……らしい。
その為のテストと調整を兼ねたトライアルをFPSで行っているのだと言う。

僕は頭が沸いた人なんじゃないかと思って色々聞いてはみたものの、途中である事に気付いてそれを信じた。
つまり、彼女には喋る間の間というか、
思考する時間が、殆ど存在しなかったからだ。

(リ_゚ -゚ノリ『先程のウォーカーは私と同じAIだ。但し、大型兵器のコントロールに特化していた』
( ^ω^)「なるほど。でも仕様が普通じゃないのは何でだお」
(リ_゚ -゚ノリ『実際に搭載される兵器の仕様に近付けられているからだ。私は人型の偵察兵器に搭載される』

つまり彼女は偵察戦に特化したAI、という事なのだそうだ。

(リ_゚ -゚ノリ『現在までで12基のAIのうち9基が脱落した』
( ^ω^)「バトルロイヤルって事っすか」
(リ_゚ -゚ノリ『大体合っている』



56: :2007/06/02(土) 22:01:36.63 ID:f+5S+QDT0

どうやら放っておけば終わるらしい。
やや安心しながら異常をきたしたこの鯖が落ちるのを待つ。
はっきり言えば僕には関係ない。
僕は単にFPSで遊びたいだけでこのゲームをやっている。
そんな雲の上のような話をされても、正直、実感がわかないしまるでどうでもいい。

( ^ω^)「…そう言えば、脱落したらどうなるんだお」
(リ_゚ -゚ノリ『蓄積したデータを抜き出され、消去される。本体は電源を落とされ、解体されるだろう』
( ^ω^)「な、何という非効率」

馬鹿馬鹿しい上に、何だかもやもやした。
けど、僕に出来る事なんてないんだろう。

(リ_゚ -゚ノリ『もはや会う事もあるまい』


そう願いたいね。
そう告げようとして、鯖が落ちた。

真っ暗になったディスプレイの前でマウンテンデューを開ける。
ようやくそれから助けられたのだと気付いて、僕は、ほんの少しだけ陰鬱な気分になった。



57: :2007/06/02(土) 22:03:41.57 ID:f+5S+QDT0
( ^ω^)Boon ・内面がアンニュイな高校生。FPS自体は始めて半年。芋虫スナイパー。 二等兵。
(リ_゚ -゚ノリ BOT ・試験導入された軍用FCS+AI。FPS等でトライアルを行っている。 偵察兵。
('A`)Dokuo ・Boonのクラスメイト。FPSではベテラン。突撃兵。 軍曹。
(´・ω・`) Syobon ・情報通の援護兵。戦闘よりも工作、支援が得意な様子。上等兵。
ξ゚听)ξ Tsun ・AIの2番機。兵器の操縦に特化したFCSを持つ。


この辺でいいか。
終わりまで大体練り終えたが需要があるとは思えない。
今は反省している。



69: :2007/06/02(土) 22:51:54.97 ID:f+5S+QDT0
(´・ω・`)「自律戦闘型の統合システム、ね。アメリカ産かな」
( ^ω^)「分からないお。残りは3基らしいお」

僕は例のごとくSyobonに全てを話していた。
彼は頼りになる。声は幼いが、色々な事に造詣が深い。

(´・ω・`)「……でもさ」
( ^ω^)「?」
(´・ω・`)「もしそれが本当だとして、そのAIは明らかに不利だよね」

モニターの前で僕は首をかしげる。

(´・ω・`)「偵察に特化したAIだとしたら、この間のウォーカーに勝つのも難しい」

猿でも分かる理屈だった。
元々仕様外の兵器に搭乗していたあのツンツンした奴に、もし最初から彼女が一人で遭遇していたら。
彼女が兵器を動かせるのかどうかは分からない。
けど、そうでなければ、圧倒的に不利な戦闘を強いられる事になるだろう。



70: :2007/06/02(土) 22:53:27.07 ID:f+5S+QDT0

(´・ω・`)「普通に考えたらこの間の兵器特化のAIが最強なんだけど、多分それもない」
( ^ω^)「何でだお?」
(´・ω・`)「一体のAIで動かせるのが一体のインタフェースだとは限らないって事だよ」

今思えばSyobonは的確な推察をしていたのだと思う。
僕には難しい理屈は分からない。けれど、実際にAIというものの構想の中に、そういう概念はある。

('A`)「無人兵器か。世も末だな」

Dokuoの感想はそれだけで、Syobonもそれ以上は深く追求しなかった。
だってそうだろう?
僕達がどんな創造をしたところでそれは実際に行われていて、口を挟む隙間がないんだ。
何せ僕はただのFPS好きのゲーマーだ。群を抜く技術があるわけでもない。

どのAIが勝とうが関係ないんじゃないか。
そう、思っていた。



71: :2007/06/02(土) 22:54:47.32 ID:f+5S+QDT0

僕達、Dokuoを分隊長にする分隊は前線でよく動く分隊になった。
何か良く分からない目的意識のようなものが、あの一件から生まれたのだと思う。

世間でのAI達の話題は次第に収束していった。
それもそうだ。単純に12分の3になったのだから。
だから余計な事は考えずにスナイプ出来た。

そんな頃だ。
チケット数で圧倒的に勝っていた自軍が、いきなり逆転されるという異様な戦闘に遭遇したのは。

(;'A`)「おい、さっきまでとは別人ってレベルじゃねーぞ!状況どうなってる!」
指令「分からん!いきなり敵の動きが変わった!拠点を守れ、落とされるぞ!」

確かにたまに、敵に熟練した分隊が結成される事で戦局が変わる事がある。
だけどこれは、そういうレベルではなかった。
レーダーに映る敵が全員、まるでひとつの生き物のように全ての役割を遂行していた。
友軍は次々に撃破され、戦線は乱れ、後退を余儀なくされる。

建物の上からスナイプばかりしていた僕も立ち上がり、スコープ越しに敵兵の波を凝視した。


全員の顔が、なかった。



72: :2007/06/02(土) 22:55:56.99 ID:f+5S+QDT0
(´・ω・`)「敵チーム全員がおかしな事になってるみたいだ」
(; ^ω^)「これは……」
(´・ω・`)「うん、AIだろうね。恐らく向こうの司令官がAIなんだろう」
('A`)「指揮に特化してるのか?その割には敵兵全員の動きが……」
(´・ω・`)「本体の性能に準じてるのかも知れない」

Syobonは平然と言うが、もしそうなら最強なんてどころの騒ぎじゃない。
全員がAIと同等の軍隊?馬鹿げている。そんなものに勝てる訳がない。

(´・ω・`)「彼女が来ても確実に負けるね」

言うな。分かってるんだ、そんな事は。
SyobonもDokuoも僕を見ている。
彼女は来るだろう。つくづく縁があると思う。でも、だからって。



1.AIと戦う。

2.接続を切断する。

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:57:45.62 ID:C1ad5rVlO 1

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 22:59:22.23 ID:m83drryN0


76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:00:42.53 ID:ZicKk3z00
1

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:02:30.85 ID:eOcLZMbrO
男として1

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:03:44.55 ID:7iiaI7p80


87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 23:33:22.14 ID:2VETu/wvO
(リ_゚ -゚ノリはNULLなの?BOTなの?

89: :2007/06/02(土) 23:34:50.60 ID:f+5S+QDT0
>>87
NULLという名前のBOT



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